自社内にて顧客からの問い合わせに対応するなど、顧客接点を担う部門としては「カスタマーサポート」と「コールセンター」があります。両者にはさまざまな点で違いがあり、自社に導入しようと検討している場合は、違いを知った上でどちらが最適かを見極めることが重要です。

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今回は、カスタマーサポートとコールセンターの違いについて、わかりやすく解説します。
共通点や両者で使用するツール、AI技術の導入についても解説しますので、成果の出るカスタマーサポート/コールセンター構築の参考にしてください。
カスタマーサポートとコールセンターの違い
カスタマーサポートとコールセンターには、次の違いがあります。
カスタマーサポートは、既存顧客からの問い合わせに対応し、抱えている課題や悩みを解消して課題解決へと導く部門です。電話だけでなくメールやチャットといった複数のチャネルを活用し、ニーズに応じて柔軟に顧客とコミュニケーションを図る点に特徴があります。問い合わせやクレームの対応、商品・サービス導入後の支援などを通じて課題を解決し、中長期的に顧客満足度の向上を目指します。
一方のコールセンターは、入電と架電の両方に対応する、電話を中心とした顧客対応とそれにともなう事務処理を行う部門です。顧客からの問い合わせやクレームに対応するインバウンド業務のほか、新規顧客創出を目的に企業側から架電するアウトバウント業務を行うこともあります。
一方で、近年は顧客と接する(コンタクトする)業務を一手に担う部門として「コンタクトセンター」と呼ぶことも増えており、メール対応やチャット対応など実務全般を担うセンターも多くあります。この場合、カスタマーサポートとの境界は曖昧で、名称による明確な役割の違いはありません。
カスタマーサポートとコールセンターは、企業における役割や業務内容などさまざまな違いがあります。以下にて具体的な違いについて解説しますが、企業によって役割や対応範囲が異なってくるため、参考としてご確認ください。
1. 目的・役割の違い|満足度の向上 vs 問い合わせ対応
カスタマーサポート
カスタマーサポートの役割は、顧客が抱えている課題解決や顧客満足度の向上です。また、購入前の対応よりも購入後のアフターフォローが重視されるため、既存顧客メインのサービスといえます。
カスタマーサポートでは幅広い対応が求められるので、一つの専門的な部門として設置されるのが一般的です。顧客対応の具体例は、次の通りです。
- 商品開発のために顧客ニーズをヒアリング
- 追加サービスの提案
- 連絡先などの変更依頼への対応
- 商品のクレーム対応やアフターフォロー
カスタマーサポートのなかには、オペレーターとスーパーバイザーの2つの役割が存在します。スーパーバイザーは、カスタマーサポートの管理者として、オペレーターの育成や進捗管理などを行い、チームを束ねます。
コールセンター
コールセンターの主な役割は、潜在顧客と既存顧客に対する電話での顧客対応です。
一般的には、商品やサービスの申し込み受付や問い合わせ対応などがあり、それにともなう事務処理も行います。また、キャンペーン対応など、時限的な組織として設置されることもあります。
2. コミュニケーション手段の違い|さまざまなチャネル vs 電話が主
カスタマーサポート
カスタマーサポートでは、顧客とのやり取りで使うチャネルは限定されておらず、電話対応やメール対応など、さまざまな窓口を使います。必要に応じて、対面でのサポートも実施します。
最近では、AI技術の発達により自動で顧客の質問に返答する「チャットボット」が設置されることもあり、顧客が課題を自己解決できるサポートが実現しています。
カスタマーサポートは、顧客の課題解決のためにさまざまな手段で対応するのが特徴です。
コールセンター
コールセンターは基本的に電話対応に特化している組織です。社内への大量の入電に対応できるよう、コンピュータと電話を連携させるPBX(Private Branch eXchange:機内電話交換機)やCTIを導入してオペレーター人員を配置します。
問い合わせ対応で大量の電話をさばく場合は、設備や人員を集約させることで、業務効率化につながります。
例えば、イベント企画や新商品の販売開始時に問い合わせが殺到することが予測される場合、コールセンターに対応をまとめることで業務効率化やサービス向上が図れます。
3. 業務内容の違い|柔軟な対応 vs 定型業務
カスタマーサポート
カスタマーサポートの主な業務内容は、既存顧客からの商品やサービスに対する問い合わせやクレームなどの対応です。
例えば、商品に不具合があった場合に、顧客は修理や改善を要求します。このような内容に対応するのが、カスタマーサポートの仕事です。時には専門知識が必要になることもあります。
カスタマーサポートは基本的に自社内に設置する部門であり、一部業務内容をアウトソースするケースはあります。
カスタマーサポートの具体的な対応内容は次の通りです。
- 商品やサービスの初期設定サポート
- トラブルシューティング
- 商品やサービスのアフターフォロー
- 不良品などのクレーム対応
コールセンター
コールセンターの主な業務内容は、電話対応とそれに伴う事務処理です。対応内容は大きく分けて2種類あり、インバウンド(受信)業務とアウトバウンド(発信)業務があります。
インバウンド業務は、サービスの申し込み受付など顧客からの問い合わせに対応する業務で、アウトバウンド業務は、企業側からキャンペーンやイベントの案内などを行う業務です。
コールセンターでは、入会登録やイベント案内など、カスタマーサポートに比べて定型的な業務が多く、マニュアル管理がしやすいのが特徴ですマニュアルを活用することでオペレーターは仕事の全体像を容易に理解できるようになり、業務の質を向上させることができます。
コールセンター、特に電話対応業務は一定以上の人数を必要とすることから、初めて導入する際はアウトソースするのが一般的です。一方で、業務内容のコントロールや目標の共有がしやすい内製化にてコールセンターを構築することもできます。
4. 主な効果の違い|満足度・サービス品質 vs 業務効率化
カスタマーサポート
カスタマーサポートを実施することで、中長期的な顧客満足度やサービス内容の向上が期待できます。適切なカスタマーサポートが行われていれば、既存顧客のリピート率も向上するでしょう。また、カスタマーサポートを通じて顧客のニーズを知ることができ、新商品の開発や既存商品の改良にも活かせます。
さらに、カスタマーサポートが適切に行われると、商品やサービスに対する顧客の不満も最小限に抑えることができます。その結果、主にBtoCビジネスで起こりがちなSNSでの炎上も未然に防げます。
コールセンター
申し込みや問い合わせ受付といった顧客対応業務をコールセンターに集約すると、従業員の負担が軽減され、業務効率化につながります。さらに、問い合わせの種類によってコールセンターの部門を分けることでサポートの質が高まり、顧客の満足度向上も期待できます。
コールセンターを設置する具体的なメリットは、次の通りです。
- 従業員が電話対応から解放されて他業務の生産性向上につながる
- 電話業務の集中化で電話対応品質のバラつきが減る
- 顧客対応に必要な設備や維持費も1か所で済むため経費の節約になる
コールセンターには潜在顧客からも問い合わせがあります。潜在顧客との接点を創出する意味でも、コールセンターは重要な役割を担います。
5. 主なKPIの違い|満足度重視 vs 実務重視
カスタマーサポート
カスタマーサポートでは、顧客の満足度を重視したKPIが主に設定されます。
例えば、問い合わせ件数に対して解決した割合を示す「課題解決率」や、アンケート調査・ネットプロモータースコアなどで求める「顧客満足度」、リピート率などが挙げられます。
こうしたKPIは、カスタマーサポートだけで目指すものもあれば、他部門と連携して目指すものもあります。顧客の課題が解決されることを目指し、結果的に顧客満足度が上がり、企業やブランドの価値が向上するよう努めます。
カスタマーサポートのKPIについては、以下コラムにて詳しく解説しています。
コールセンター
コールセンターでは、実務における定量的なKPIが主に設定されます。
例えば、問い合わせ1件にかかった時間を示す「AHT(平均処理時間)」や、顧客の問い合わせから最初に対応を開始するまでの時間を示す「一次応答時間」などが挙げられます。
業務の効率化に寄与するKPIを追うことで、コールセンターの対応力を上げ、結果として顧客満足度が向上することを目指します。
カスタマーサポートとコールセンターの共通点
ここからは、カスタマーサポートとコールセンターの共通点を解説します。
コミュニケーションスキルが重要
カスタマーサポートとコールセンターの業務内容は、インバウンドとアウトバウンドという点で違いますが、顧客と密に接する点は同じです。そのため、いずれの業務でも高いコミュニケーションスキルが欠かせません。
カスタマーサポートでは、顧客のニーズや課題を的確に把握する傾聴力や課題を解消するための問題解決力も必要です。また、コールセンターにおいても、通話相手が納得しやすく共感を得やすいトークスキルが求められます。
ただし、担当者のスキルに依存する状態が続くと、属人化を招きかねません。業務の均質化を図るためにトークスクリプトやマニュアルを活用すると良いでしょう。
電話関連のツールが不可欠
カスタマーサポートとコールセンターのいずれにおいても、電話は重要なチャネルです。両業務では、CTIやIVRといった電話関連のツールが有用であり、カスタマーサポートとコールセンターの両面で併用できるツールも多くあります。電話以外のチャネルを活用して業務を行うコンタクトセンターを設置する企業も増えており、ツールの垣根はなくなりつつあります。
ツールを選ぶ際は、現状の課題を明確に見極めて要件を洗い出したうえで、自社に最適なものを選定しましょう。
AI技術の導入検討が必須
カスタマーサポート・コールセンターの両方において、適したデジタル技術の導入は必須です。現在は、生成AI技術を活用したツールの導入検討も必須段階となっています。
生成AIの発達により、各分野にてAI技術の活用が模索されています。現在はトレンド的な扱いを抜け、AI技術を導入し業務効率化や新たな要素の創出を検討しなければ競合他社に対抗できない時代となっています。カスタマーサポートにおいても、関連ツールへのAI技術導入が積極的に進められており、業務におけるAI技術導入は積極的に検討するべきといえるでしょう。
AI技術の導入を検討する際は、楽観的な見方や焦りによる拙速的な導入ではAI技術の良さを活かすことができないため、慎重な検討が必要です。具体的には、分散しているデータを統合する基盤を用意すること、小規模なチームからのスモールスタートを行う段階的な導入、AIと人間の適切な役割分担などがポイントとなります。
カスタマーサポート・コールセンターで使用するツール
カスタマーサポートとコールセンターでは、使用するツールがある程度共通しています。
ここでは、カスタマーサポートおよびコールセンターにて使用される主なツールについてご紹介します。
カスタマーサポートツール
電話やメール、チャットなどのチャネルを一元管理できるツールです。チケット管理やワークフロー、データ分析など、カスタマーサポートに必要な幅広い機能を集約したものが多く、後述のCTIやIVRが機能として搭載されているケースもあります。
顧客に関する情報や顧客とのやり取りを一元管理できる点が特徴で、チーム内で同じデータを確認しながらサポート業務を行える、1人の顧客に対して切れ目のないサポートを提供できるなどの利点があります。
CTI(Computer Telephony Integration)
電話・FAXをコンピュータと統合させるためのツールで、コールセンターおよび電話対応を行うカスタマーサポートにおいて必須のツールです。
これにより、パソコンのシステム上で電話の受発信や録音、通話振分などの機能を利用でき、効率の良い電話対応を実現します。
CRM(Customer Relationship Management)
顧客情報をひとつのシステムに集約できるツールです。顧客に関連する情報を全体的に管理できるもの、営業に関連する機能に強みがあるもの、コールセンターシステムとの連携に強みがあるものなど、用途によってさまざまなタイプ・製品があります。
コールセンターに最適化されたCRMでは、CTIとの連携により、電話の発着信時にCRMツールに蓄積した顧客情報を即座に呼び出すなどの機能が利用できます。
IVR(Interactive Voice Response)
音声自動応答システムと呼ばれるもので、電話でのガイダンスや応答、転送などの作業を自動的に処理できます。
顧客からは一つの電話番号から問い合わせしてもらい、目的や要望に合わせて適切なスキルセットのオペレーターへつなぐ役割があります。
チャットボット
チャット形式で顧客からの問い合わせを受け付け、機械が自動回答するツールです。
AI搭載型の製品は、機械自らが学習して適切な回答ルートを提案でき、定型的な問い合わせを無人で解決することによる業務効率化、顧客満足度向上が期待できます。
VOC分析ツール
VOC(Voice Of Customer/顧客の声)を分析するツールです。
アンケートツールなどで取得したVOCデータを解析して、顧客満足度向上や業務改善につなげます。
カスタマーサポートとコールセンターのどちらを設置するべき?
ここからは、カスタマーサポートとコールセンターの違いをふまえたうえで、どちらを設置するか迷った場合の基準をご紹介します。
カスタマーサポートを設置すべき企業
カスタマーサポートを優先して設置するべきなのは、長期的なアフターフォローを必要とする商品やサービスを扱っている企業です。
例えば、ソフトウェア会社であれば、説明書を読んでも難しい設定やバージョンアップ、法律改正によるシステム変更などが必要な商品を扱っている場合です。このように、長期的なアフターフォローが必要な商品は、カスタマーサポートの設置が必須といえます。
コールセンターを設置すべき企業
コールセンターの設置がおすすめなのは、売り切り型の商品・サービスや、比較的取り扱いが複雑ではないサービスを扱っている企業です。定期的にキャンペーンを行う企業やイベント運営会社などでは、申し込み受付や入会登録などにコールセンターを活用すると業務を効率化できます。
また、インバウンド業務において、膨大な問い合わせ件数を処理する必要がある場合、カスタマーサポートからコールセンターへの部門転換を図るのも有効です。
自社の顧客を理解した上で、両部門を使い分けよう
カスタマーサポートとコールセンターの担う役割は、全く異なる部分も重複する部分もあります。それぞれの役割を理解し、自社に適した部門の設置や業務改善を行うことが大切です。
これから顧客支援の体制を整えていく段階であれば、自社の顧客に最も必要な部署から設置していくのがおすすめです。常に顧客の目線で必要なサポートを段階的に取り入れていきましょう。
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