カスタマーサポート部門や営業部門、マーケティング部門など顧客・見込み客と接するセクションからは、日々多くの問い合わせや意見が集まってきます。こうしたデータを活用すれば、商品・サービスの品質向上やカスタマーサポートにおける対応品質向上につながるため、収集した上で適切に分析することが重要です。

カスタマーサクセス部門を成功に導くKPIテンプレート
顧客満足度向上!カスタマーサクセスKPIテンプレートと重要KPI解説集
- KPIの進捗状況がわかるダッシュボード
- 月次実績を管理できるテンプレート
- 「NPS®」「CSAT」を実行するための解説
- 重要KPIの解説集
今すぐダウンロードする
全てのフィールドが必須です。
問い合わせデータの活用に役立つのが、VOC分析やKPI分析などの分析手法です。それぞれの手法を効果的に利用することで、課題解決に向けたヒントを発見できます。
本記事では、問い合わせデータを分析する必要性や分析手法、分析時のポイントを解説します。
問い合わせデータを分析する必要性
問い合わせデータの分析が必要とされる理由は、主に次の3つです。
- 顧客ニーズを把握できるため
- 業務パフォーマンスの向上につながるため
- 業務品質の標準化につながるため
顧客ニーズを把握できるため
カスタマーサポートに寄せられた問い合わせは、顧客の生の声を反映しているため、顧客ニーズを把握する貴重なヒントになります。売り手側の視点からは気付きにくい新たなニーズを発見できる可能性もあります。
問い合わせなどによって得られる顧客の声は、「VOC:Voice of Customer」と呼ばれます。問い合わせデータの分析においては、いかにVOCを収集するかも重要となります。
問い合わせに多く寄せられるのが、「商品やサービスの使い方がわからない」「設定方法が難しすぎる」などの、商品・サービスの仕様に関するフィードバックです。「オペレーターの対応が悪い」といったクレームも寄せられます。
このように、良い点や悪い点を含めた意見には、「顧客が商品やサービスに何を期待しているのか」に関するヒントが隠れています。商品やサービスへの客観的な評価を活用することで、商品・サービスの品質向上や新機能の開発、顧客対応の最適化など、顧客満足度向上に向けた施策へと改善できるのが利点です。
業務パフォーマンスの向上につながるため
問い合わせデータを分析する際は、顧客から寄せられた意見だけでなく、カスタマーサポートの業務内容や目標達成度に焦点をあてることも必要です。
例えば、顧客対応に要した時間や内容を可視化すれば、業務における課題やボトルネックを発見できます。問題点が明らかになれば、解決策や仮説を立てやすくなります。
日々の業務を客観的に分析することで、業務パフォーマンスの向上や最適化が実現するでしょう。
業務品質の標準化につながるため
問い合わせデータを分析すると、各担当者の顧客対応を客観的に評価できます。対応に問題がある場合は、マニュアルの充実や研修の実施によって品質向上を図ると良いでしょう。
また、優秀な担当者の対応を部門やチームで共有すれば、業務品質の底上げや標準化が可能です。
問い合わせ分析のベースとなるKPI
問い合わせデータを分析し業務改善につなげるためには、分析するための目標を設定することが重要です。目標を設定しないまま分析しても、適切な効果測定が行われず、顧客満足度が改善したかどうか定量的に図ることができません。目標の設定は、KPIと呼ばれる指標で行います。
KPIとは、目標達成に向けた中間指標(KPI/Key Performance Indicators)のことを指します。目標達成に向けて複数のKPIを設定することで、目標までの進捗率や業務パフォーマンスを定量的に評価できるようになります。KPIでは、数値化できるような具体的かつ客観的な指標を設定し、目標と実績の差を明らかにしていきます。
カスタマーサポートでは、主に次のKPIが用いられます。
- 課題解決率:問い合わせ総数のうち、顧客が課題を解決できた割合
- 課題解決時間:問い合わせが解決し、追加の課題解決が発生しなくなるまでの所要時間
- 一次応答時間:問い合わせへの初回応答に要した時間
- 応答率:顧客からの問い合わせを取り逃さずに応答できた割合
- 処理時間:電話などの対応開始から後処理が完了するまでの時間
- リピート率(継続率):新規顧客数に対するリピーターの割合
KPI分析において、目標値に対して実績値が低い場合は、業務改善による対策が必要です。また、散布図によって各数値のばらつきを確認し、できるだけ中央値に寄せて業務の均質化を図るのも良いでしょう。
問い合わせデータの活用手段として、特にKPI分析は、業務効率化や生産性向上に欠かせない手法です。
問い合わせ内容(VOC)の種類
企業・ブランドと顧客との接点(チャネル)ごとに、VOCの種類があります。それぞれのチャネルの特徴を理解することで、VOCの適切な分析につなげられるようになります。
問い合わせフォーム
問い合わせフォームは、Webサイトの特定ページに設置し顧客自身のタイミングで問い合わせを送信してもらうためのチャネルです。
顧客は自身が聞きたいと思ったタイミングで問い合わせを送ることができ、電話のようにつながらない心配をする必要はありません。チャネルの中でも比較的気軽に利用しやすく、自己解決が難しかった際の第一候補としてもよく選択されます。
チャットボット
チャットボットは、主にWebサイトの特定ページに設置し、顧客と自動応答システムがやり取りをすることで課題解決を目指すチャネルです。問い合わせフォームと同様、顧客は自分のタイミングで問い合わせをすることができ、かつその場で回答をもらうことができます。
一方で、チャットボットで対応できるのは簡単な質問や定型的な問い合わせに留まり、複雑な問い合わせには有人チャットへの移行が必要となります。
チャットボット上のやり取りはデータとして記録されるため、どのような問い合わせが多かったのか、どこで詰まったのか、解決できたのかといった観点でVOC分析ができます。
メール
特にBtoBのビジネスにおいては、メールでのやり取りが顧客との重要なチャネルとなります。
BtoBにおいては、担当者同士の名前や顔を認識した上でのやり取りになることが多く、それを踏まえたうえでのVOC分析が必要となります。
電話
カスタマーサポートにおいて電話は長く活用されてきたチャネルであり、インターネットが広く普及した現代においても軽視することはできません。AI技術の発展によりチャットボットによる自動回答の精度がどれだけ増しても、本当に複雑な課題やすぐにでも解決したい問題に関しては顧客は電話にて確実な回答を求めます。
電話からは、簡単な問い合わせから複雑な問題、こちらの不手際などに対するクレームなど、さまざまなVOCを収集することができます。これらを分析することで、カスタマーサポートの対応品質はもちろん、商品・サービス改善のためのフィードバックを送ることも可能です。
SNS
さまざまな意見が集まるSNSも、重要なチャネルの一つです。SNSへの投稿は、通常の問い合わせと違って独り言のような性質があるため、SNS投稿のVOCからは深いインサイトを分析できる可能性があります。
また、積極的に意見を募集したり、困っている声に対応したりすることで、VOCを収集することも可能です。
アンケート
アンケート調査によって、VOCを定量的に収集することができます。
アンケート回答者が「回答しなきゃ」と少し身構えてしまう面はありますが、適切に質問項目を作ることで商品・サービス・カスタマーサポートの対応品質に対する有益なVOCを得ることができます。
問い合わせ内容(VOC)の分析手段
ここでは、具体的なVOCの分析手段についてご紹介します。
VOC分析の専門会社に依頼する
VOCを収集し一元管理するところまでは、対応するシステムを導入することで自社完結することが可能です。
その先のVOC分析については、VOC分析の専門会社へ依頼することで、自社のリソースを節約しつつ有益な分析結果を得られるためおすすめです。
VOC分析ツールを活用する
VOCを分析するための専門ツールを活用するという手段もあります。
ツールを適切に使用できれば、カスタマーサポートチームでVOCの収集から分析、活用までを内製化でき、費用対効果を高められる可能性があります。
BIツールを活用する
企業が保有しているさまざまなデータを分析し、可視化することができるのがBI(Business Intelligence)ツールです。
BIツールはデータを効率よく可視化することで、事業戦略の策定や経営判断の参考にするためのツールであり、VOCの分析においても優れた結果を期待することができます。わかりやすく可視化されるため、チーム内外への共有も簡単に行えます。
CRMシステムを活用する
VOCを分析するためには、できるだけデータ形式を揃える必要があります。VOCを収集できるチャネルにはさまざまな種類があるため、そのまま保存するのではなく、データ活用できる形式で蓄積していくことが重要です。AI技術を活用し、大規模なデータ分析を行う場合でも、データの形式をそろえておくことが非常に重要となります。
そのためのベースとなるのが、CRM(顧客関係管理)システムです。CRMシステムは顧客単位で案件の進捗ややり取りのログ、問い合わせ内容などを一元管理するためのシステムで、VOCについてもデータ活用しやすい形式で蓄積していくことが可能です。
当社HubSpotでは、さまざまなチャネルの顧客対応を一元管理し、カスタマーサポートの規模を拡大しつつ顧客満足度を高めていくためのツールとして「Service Hub」を提供しています。ヘルプデスクやナレッジベース、カスタマーサクセスのためのワークスペース、IVR、スキルに応じた割り振りなどの機能があり、AIを活用した分析や顧客対応も可能です。
問い合わせデータを分析する際のポイント
問い合わせデータを分析する際のポイントは次の通りです。
- 分析目的を明確にする
- ブレインストーミングで仮説の幅を広げる
- 分析に役立つツールを活用する
分析目的を明確にする
問い合わせデータの分析は手法ごとに評価内容が異なります。適切な手法を選択して正確な結果を導くには、分析目的を明確にすることが大切です。
まずは現状の課題を洗い出しましょう。仮に、リピート率が低下している場合、顧客満足度を高める施策が必要です。そのためには、VOCに着目し、顧客ニーズを正確に把握することから始めなければなりません。
目的が明らかになれば方向性が定まり、効果的な分析が可能になります。その結果、課題解決に役立てられるでしょう。
ブレインストーミングで仮説の幅を広げる
問い合わせデータを分析する際は、「なぜ成果が目標に到達しないのか」「データ間の関係から判断できるものは何か」といった点を検証する仮説立案が重要です。しかし、関係性や規則性を見極めようとするあまり、主観的な仮説を立ててしまうケースは珍しくありません。主観的な分析は、その後の分析結果に偏りを生じさせる原因になりうるため、排除する必要があります。
分析において客観性を維持するには、ブレインストーミングで仮説の幅を広げることが有効です。複数人で仮説を立案・検証することで、多角的な視点からデータの関係性や規則性を発見しやすくなります。
問い合わせデータを分析して業務改善を図ろう
カスタマーサポートで取得した問い合わせデータは、顧客満足度の向上や業務効率化など、さまざまな目的に活用できます。本記事でご紹介したVOC分析やKPI分析、トーク分析を用いることで、課題解決に向けたヒントを得られるでしょう。
ただし、やみくもに分析を行っても、方向性が定まらず、正確な結果を取得できない可能性があります。問い合わせデータの分析は現状の課題をもとに適切な目的を設定することが大切です。社内に蓄積されたさまざまな問い合わせデータを分析して、業務改善を図りましょう。
カスタマーサポート

