SaaSビジネスの健全性を測るひとつのメトリクスである「CAC(Customer Acquisition Cost)」は、SaaSビジネスにおいてとても重要視されているキーワードのひとつです。
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「顧客獲得コスト」を意味するCACは、高すぎると利益を上げられなくなりますが、低すぎても健全な投資とは言えなくなります。
本稿では、CACを計測すべき理由を整理し、CACを味方につけた事業展開を行うために必要な考え方、ノウハウを解説していきます。
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SaaSの概要を確認
SaaS(Software as a Service)とは、インターネットを通じて利用できるサービス全般を指します。
ビジネス関連のツールは、従来であれば利用企業自身がサーバーを用意するタイプ(オンプレミス)が主流でしたが、SaaSではサービスの提供企業側がサーバーを用意します。
このことから、SaaSはクラウドサービスとほぼ同義だと言えます。
SaaS理解に重要なPaaS、IaaSとの比較
SaaSと似たような言葉に、PaaS、IaaSがあります。
PaaSはPlatform as a Serviceの略で、サーバーとソフトウェアが動作する環境を提供します。SaaSと違い、ソフトウェアは提供しません。
IaaSはInfrastructure as a Serviceの略で、インフラ、つまりサーバーを提供します。IaaSの利用者はサーバーのみを利用し、ソフトウェアを動かすためのOSやミドルウェアを自社で用意します。
PaaSやIaaSは基本的にソフトウェア開発で使用されます。PaaSやIaaSで開発されたソフトウェアが、SaaSとしてエンド企業やエンドユーザーに提供されるとイメージできます。
SaaSを提供するメリット
なんらかのサービスを開発したいと思ったとき、SaaSを選ぶ理由としては利用者の利便性が高いことが挙げられます。
基本的にはサブスクリプションサービスとして提供することになりますが、近年は都度課金の仕組みが好まれており、申込みがインターネット上で完結できることも利用者からは好まれます。
こうした仕組みから、SaaSにはサービスを継続利用してもらいやすいメリットもあります。
なお多くのユーザーに継続してもらうためには、使い続けたいと思ってもらえるようなサービス・仕組み・料金体系の構築が必要です。
SaaSについてさらに詳しくは、以下コラムをご覧ください。
CAC(顧客獲得コスト)とは
「CAC」とは「Customer Acquisition Cost」の略であり、日本語では「顧客獲得コスト」を意味します。
具体的には、顧客1社を獲得するために必要となるマーケティングや営業のコストのことを指し、ある一定期間に投資したマーケティングおよび営業コストの合計金額を獲得した顧客の数で割ることによって算出します。
CACの計算式は以下の通りです。
- CAC = 顧客獲得コスト ÷ 顧客数
もし、このCACがLTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を上回るならば、当該事業の存続は非常に厳しいと言えるでしょう。
CACがLTVを上回るということは、一顧客あたりの生涯利益が5,000円のサービスに対して、一顧客あたりの獲得費用に5,001円以上を投じるということです。つまり、顧客を獲得するたびに必ず損失が発生するため、非常にナンセンスな事業活動となってしまいます。
CACがLTVを下回れば利益が生じることになりますが、ビジネスとして良い結果だと言えるにはCACをLTVの3分の1以下にまで抑える必要があります。
この指標の理由については、第4章「SaaSの公式「LTV / CAC > 3x」って何?」にて解説しています。
CPAとの違い
CACと似たような言葉に、CPA(Cost Per Acquisition)があります。こちらも「顧客獲得コスト」という意味になりますが、主に使われるシーンが異なります。
CPAは主にデジタル広告において使われ、1つひとつの施策が有効かどうかの指標となります。
一方、CACはSaaSにおいてマーケティングコストが適切だったかを測るものです。
CACとLTVの関係
LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)は、1人あるいは1社の顧客が生涯のうち企業へもたらす利益を指します。サブスクリプション型ビジネスが主となるSaaSにおいて特に重要な指標で、長く利用してもらうほどにLTVは増加していきます。
LTVとはすなわち利益のため、その利益を得るために支払ったコストであるCACがこれを上回ると、ビジネスとして損を続けてしまうことになります。
CAC(顧客獲得コスト)の構成要素
CACの計算方法の解説に入る前に、CACは大きく以下の3種類に分類できることを押さえておくと良いでしょう。
- Organic CAC
- Paid CAC
- Blended CAC
この3種類のCACの分類について詳しく見ていきましょう。
Organic CAC
自然増の顧客獲得コストを表します。例えば、既存顧客による紹介やクチコミ、検索からの流入は「Organic CAC」に分類されます。
Organic CACは、広告などの費用を払わずに顧客を集めることができたものです。Organic CACは広告などの費用を払っているCACより、比較的コストが安価になっていることが多くなります。
期間限定のキャンペーンや、折り込みチラシやWeb広告を打ち出した際には、広告の効果やキャンペーンの効果を見るために、顧客の数やコストを計算します。しかし、そのCACは、広告などを打ち出したことによるものだけではありません。キャンペーンや広告を実施しなくても自然と増えるCACもあります。
Organic CACを考えずにCACの計算をしてしまうと、正しい効果の測定ができなくなる可能性があるため、Organic CACについても理解しておきましょう。
Organic CACの計算式としては、以下のようになっています。
- Organic CAC = 自然増の顧客に掛かったコスト ÷ 自然増チャネルからの新規顧客数
Paid CAC
Paid CACは、広告を始め、お金を支払って獲得した顧客コストを表します。
Paid CACには、企業の戦略ごとにさまざまなPaid CACがあり、それぞれの広告チャネルによって計算できるため、しっかりと分類分けをしておきましょう。
Paid CACの計算式は以下のようになっています。
- Paid CAC = 有料チャネルにかけたコスト ÷ 有料チャネルからの新規顧客数
Paid CACがLTVを上回っている場合、その有料チャネルで広告を出せば出すほど赤字になってしまう可能性があります。
そのため有料チャネルごとに検証してみることがおすすめです。
Blended CAC
Blended CACは、「Organic CAC」と「Paid CAC」の2つを合わせた顧客コストを表します。
Blended CACは、以下のように計算できます。
- Blended CAC= (全営業コスト + 全マーケティングコスト) ÷ 新規顧客獲得数
SaaSビジネスが好調に成長していくと、ある壁にぶつかる可能性が生まれます。
それは「顧客数は順調に増加している。しかし収益は赤字続き。一旦、顧客数の増加を捨てて事業を黒字化すべきか?それとも顧客数の増加をこのまま追求し続けるべきか?」という壁です。
収益が出ない状態を続けるわけにもいかず、顧客獲得のスピードを緩めるわけにもいかない…。当然、どちらも捨てられないところですね。
このような時、CACを細分化しておくと次の戦略立案に対して有効に活用できます。
「顧客は増え続けているが、収益化ができない」状況の時は「Organic CACを増やす戦略」「Paid CACを効率化して低下させる戦略」を同時に立案し、Organic CACの増額よりもPaid CACの減額を大きくすることでBlended CACを低減させるのです。
CACを下げる努力をすることで、顧客数の増加を妨げることなく収益を改善していけるのです。
なぜCAC(顧客獲得コスト)を知る必要があるのか?
では、なぜCACを把握する必要があるのでしょうか。理由は大きく分けて以下の2つがあります。
- 投資すべきマーケティングチャネルを把握するため
- ユニットエコノミクスを計測するため
- CAC payback periodを把握するため
それぞれの理由を詳しく見ていきましょう。
1. 投資すべきマーケティングチャネルを把握するため
複数の顧客獲得チャネルに投資をしているなら、低コストで高い利益を出しているチャネル、なかなか顧客獲得につながらないチャネルが存在します。
このようなチャネルごとの差を見極めるためにも、チャネルごとのCACを算出し把握することが重要です。
投資対効果は日々刻々と変化していきます。CACを正しく把握することで、効果の高い顧客獲得チャネルに投資を集中させることができます。
2. ユニットエコノミクスを計測するためするため
ユニットエコノミクス(unit economics)とは、顧客1人当たりの採算性を表す指標です。
ユニットエコノミクスの概要
サブスクリプションサービスが一般に浸透してきたことで重要性を増してきたのが、LTVとユニットエコノミクスです。
都度納品と支払いが発生するビジネスと違い、サブスクリプションサービスは通常の損益計算書では健全性が測りにくいという問題があります。これは長期の契約を前提としているためであり、ユニットエコノミクスを計算することで、サブスクリプションサービスがビジネスとして健全かどうかを図れるようになります。
顧客1人の顧客生涯価値(LTV)を顧客1人当たりの顧客獲得コスト(CAC)で割って、1以上の数値になっていればユニットエコノミクスは健全と言えます。また、できれば3以上あるほうが望ましいとも言われています。
ユニットエコノミクスの計算式は以下の通りです。
- ユニットエコノミクス = LTV ÷ CAC
特に投資に対して回収期間が長いSaaSビジネスにおいて、ユニットエコノミクスによる収益性の算出は欠かせません。
ユニットエコノミクスの計算例
以下のようなKPI(重要業績評価指標)を示すSaaS事業を例に考えてみます。
- ARPU(顧客平均月次単価):1,000円
- 粗利率:80%
- Net Revenue Churn Rate(解約率):3%
- CAC(顧客獲得コスト):5,000円
- LTV(顧客生涯価値): 26,666円(1,000 × 0.8 ÷ 0.03)
上記の数字だけを見ると「月間売上1,000円の顧客を獲得するために、5,000円の広告投資は高すぎる」と感じられるかも知れません。しかし、ここでユニットエコノミクスに注目しましょう。
ユニットエコノミクス=26,666(LTV)÷5,000(CAC)≒5.3
つまり、この事業が「顧客獲得にかける投資に対して、1ユーザーあたり5倍以上の利益が得られる」ことが分かります。
3. CAC payback periodを把握するため
さらに、これらの数字からはSaaS事業においてもう一つ重要な「CAC Payback Period」についても読み取れます。
CAC payback periodとは、どれだけの期間でCAC(顧客獲得コスト)を回収できるかを示すものです。上記のプロダクトはユニットエコノミクスが約5.3のため、健全なビジネスだと言えますが、獲得のためにかかった5,000円をいつまでに回収できるかも重要な指標となります。
CAC payback periodの計算式は以下のとおりです。
- CAC payback period(ヶ月)=顧客獲得コスト ÷(顧客の平均単価×粗利率)
従って上記の例では、
CAC payback period=5,000÷(1,000×0.8)=6.25(ヶ月)となります。
一般にCAC payback periodの目安は6ヶ月から12ヶ月程度とされるため、このプロダクトの収益性は充分であると考えられるでしょう。
このように各種指標の数字を丁寧に見ることで、投資判断をしやすくなるのです。
SaaSの公式「LTV / CAC > 3x」って何?
一般的に「LTVがCACの3倍以上」、「CAC Payback Period(顧客獲得コストの回収期間)は12ヶ月以内」であることが、シリーズAにおける投資の判断基準として多用されています。
なおシリーズAとは、投資家が投資先の企業の成長度合いを段階ごとに見極める「投資ラウンド」において、最初のプロダクトで一定の顧客を獲得し、これから初めて本格的な資金調達に臨む企業のフェーズを指します。スタートアップにとってはもちろん、今後の成長性を見極めたい投資家にとっても重要なフェーズと言えるでしょう。
そこで出てくるのが「LTV/CAC>3x」です。この公式は、前述した「ユニットエコノミクス」をあらわします。
投資家への事業説明でまず間違いなく注視される数値となるため、もし投資家による投資を呼び込みたいのならば「LTVはCACの3倍以上」「12ヶ月以内のCAC投資回収」という2つのポイントを必ず押さえておきましょう。
なぜなら、以下のようなSaaSビジネスの黄金律が成立するためです。
- 「LTVがCACの3倍」「Payback Periodが12ヶ月」であれば、事業が順調に成長していると考えることができる
つまり「LTVがCACの3倍」「Payback Periodが12ヶ月」であれば、自動的に「平均の利用継続期間は36ヶ月」が算出されます。ここから解約率を表すChurn Rateを算出すると約2.8%という数字が割り出されます。
BtoBのSaaSビジネスにおけるChurn Rateは、3%未満が理想的であるとされています。
LTVを最大化させるには
健全なSaaSビジネスのためには、CACを下げることだけでなく、LTVを上げることも有効です。
LTVを上げるには顧客との信頼関係を築き、課題をいち早く解決できるよう努めることが重要です。そうすることで顧客の離脱が少なくなり、LTVが増加していきます。
顧客との信頼関係を築くには、後にご紹介するCRMやSFAなどの顧客管理ツールを活用します。
どこで顧客が離脱しているのかが分かれば、その顧客チャネルにおけるコミュニケーションを改善できます。
LTVについて詳しいことは、以下の記事をあわせてご覧ください。
CAC(顧客獲得コスト)は下がれば下がるほど良い?
ここまでお読みいただいて、SaaSビジネス運営における鍵は「LTVを向上させ、CACを低下させる」ことにあるということをご理解いただけたのではないでしょうか。
しかし、一点だけ注意しなければいけないことがあります。それは「CACはとにかく下げ続けるればいいというものではない」ということです。
極端な数値になりますが「LTVがCACの10倍」である場合、それは「適正な投資ができていない」という判断にもつながります。上記のような数値を提示した場合、投資家は「攻めの投資が足りないのではないですか?」とコメントすることでしょう。
つまり、CACは上げすぎても、下げすぎても駄目なのです。
「LTVがCACの3倍」というひとつの水準を目安に、CACの投資額をコントロールしなければいけません。そして投資額を具体的な戦術へと落とし込んでいく段階では「Organic CAC」「Paid CAC」の双方を細かくチェックしていく必要があります。
CAC(顧客獲得コスト)を改善する施策例
目標としているCACを実現するためには、以下のような施策があります。
顧客を管理できるツールの導入
CRMやSFA、MAなど、顧客を管理できるツールを導入することで顧客のステータスを効率良く管理できるようになります。
顧客1人ひとりへのアプローチをシステムで管理できれば、適切なタイミングでの投資や時間的コストの削減につながります。
どのツールを導入するべきかは、業種や自社のビジネス内容を鑑みて判断しましょう。
顧客管理について詳しいことは、以下の記事にて解説しています。
広告の最適化
顧客獲得チャネルごとのCACを把握できれば、費用対効果を圧迫しているチャネルがどこか分かります。
複数の広告へ投資を行っていれば、効果の出ているところへ集中し、CACを改善することが可能です。
CVRの向上
CVR(コンバージョン率)を上げることで、CACを下げることに直結します。
CVRが多ければ、同じコストで顧客獲得数が増加するためです。CVRを上げることも簡単ではありませんが、よりコンバージョンに至りやすいターゲットを見極める、上記のツールを用いて離脱が起きている部分を見つけて改善する、などの対策ができます。
CAC(顧客獲得コスト)を下げることに成功した事例
それでは「Organic CAC」「Paid CAC」を細かくチェックしながら「Blended CAC」を低下させた企業の事例を見ていきましょう。
Dropbox社の事例
Dropbox社は、高騰するWeb広告の費用に課題を感じて「紹介キャンペーン」を展開しました。
友人にDropboxを紹介することで、紹介した人と紹介を受けた人の両方が容量の追加を得られるというキャンペーンです。
筆者自身もこのキャンペーンを利用した記憶がありますが、既存ユーザーによる紹介を促進することで「Organic CACを増やす」「Paid CACを効率化して低下させる」という双方を同時に実現した非常にスマートな戦略と言えるでしょう。
ウーバー・テクノロジーズ社の事例
ウーバー・テクノロジーズ社が展開した戦略は、提供アプリUberの既存ユーザーである紹介者と紹介されて新規に登録したユーザーの双方に、無料のUber利用チケットを配るというキャンペーンでした。
その金額は日本円で約2,000円ほどですが、Uberの利用者が増え、ドライバーが増えれば増えるほどその金額の価値が大きくなるであろうという心理が働くキャンペーンであったため、利用者とドライバー双方の獲得に大きく貢献し、CACの低減を実現しました。
Dropbox社とウーバー・テクノロジーズ社のいずれの戦略も「Paid CAC」と「Organic CAC」のバランスを見極め続けた中で課題感が生まれ、その課題を解決すべく見出された施策です。
CAC(顧客獲得コスト)を利用したSaaSビジネス健全度の計測手順
SaaSビジネスを成功させていくためには、これまでご紹介してきたCACを利用した測定をしていくことが大切です。
CACは顧客獲得のコストを指しており、コストがLTVを上回るとビジネスとしては成立しません。SaaSビジネスが健全な事業として成立しているかを確認するには、CACがLTVを上回っていないかという計測が必要です。
また、LTVをただ上回っていないかというだけではなく、ベンチマークを設定して四半期ごと、上・下半期ごと、1年ごとなどベースラインを設けて比較判断していくことにより、SaaSビジネスを健全な事業として進んでいるか判断できるでしょう。
計測手順は、以下の様な流れとなります。
- 期間を設定する
まずはCACの計測をする期間を設定します。製品や業種などによっても異なるため、企業ごとに指標を持つ必要があります。 - 営業とマーケティングに掛かった費用を計算する
新規顧客を獲得するために掛かった営業コストやマーケティングコストを計算し、合計値を求めます。 - 新規獲得の数を割り出す
期間の中で獲得できた新規顧客数を出します。 - コストを顧客数で割り出す
新規顧客数を2で計算したコストで割ります。 - LTVを超えていないか計測する
算出したCACがLTVを超えていないかを判断します。 - CACの回収期間を計測する
LTVがCACを上回っている場合、次にCACを回収する期間が重要です。CACを回収できた期間がどれくらい掛かっているのかを確認します。 - CACの回収期間を減らせて行けているかを判断する
CACを回収する期間を短くしていくためにどのようなことができるかを判断し、施策を実行しながら計測・最適化を繰り返します。
SaaSビジネスにおいて重要なその他のKPI
SaaSビジネスにおいて重要なCACについて解説してきましたが、他にもKPIとして追いかけるべき指標はいくつもあります。
ここでは特に重要とされているその他のKPIをご紹介します。
LTV(顧客生涯価値)
本記事でもたびたび登場したLTVは、それ自体もKPIとして重要な指標です。
ユニットエコノミクスを計算する上でも必要な指標であり、1人の顧客とどのくらい長く良い関係性を築けているかを数値で見ることができます。
MRR(月次経常収益)
MRRとは、毎月決まって発生する売上を示す指標です。サブスクリプションビジネスにおいて重要な指標で、初期費用や追加費用を除き、毎月必ず発生する金額のみで計算します。MRRを比較することで、ビジネスの成長度合いを見ることができます。
また、契約したばかりとしばらく経ってからは顧客のスタンスも変わっているため、フェーズごとに計算するのが一般的です。例えば、新規顧客を対象とするNew MRR、前月と比較して取引額が減少した顧客を対象とするDowngrade MRRなどがあります。
解約率(チャーンレート)
SaaSビジネスは長期的な契約を前提としているものの、満足してもらえなかった、マッチングしなかった場合には解約されます。どれだけ解約されたかを示す解約率は、ビジネスに課題が潜んでいないかを知る重要な指標となります。
SaaSにおいて重要なKPIについては、以下コラムにて詳しく解説しています。
CAC(顧客獲得コスト)はウォッチし続けることが重要
「とにかくCACを下げよう!」という方向性でマーケティングを考える企業も少なくありませんが「実はそれだけでは不十分である」ことをご理解いただけたでしょうか。
CACを低下させることに成功すれば、次なる顧客獲得への投資余力が生まれます。そして、その余力を持て余すことなく、次なる顧客獲得に向けたチャネルの発掘へとつなげることが求められ続けるのです。
「とにかくCACを下げる」ことに留まらず、できる限り細分化してCACをウォッチし続けながら、適正な投資と最大限の効果創出を狙い続けていくことが、SaaSビジネスの収益性を確実に向上させていくために必要となってくるのです。