近年、企業がコミュニティを通して自社の製品やサービスを世の中に広めていく「コミュニティマーケティング」という手法が注目を集めています。

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例えば、企業からのメールやセールストークでとある商品を勧められ、そのメリットは理解できたものの購入の意思までは沸いてこないことが多いです。ところが、その商品の領域に詳しい知人から「その製品なら使っているけど、確かにいい製品ですよ!」と言われた途端に「購入を考えてみようかな?」と思った経験はありませんか?

実際に、私たちの製品であるHubSpot(ハブスポット)を購入した顧客に購入のキッカケを聞いてみたところ、実に33%もの顧客が友人や知人による口コミを元に購入していることがわかりました。

企業が自社の製品を「自画自賛」して販売するのは難しくなってきています。一方で、SNSやファンコミュニティなどの場で、製品のユーザーやファンがその製品の良さを共有することで、売上の拡大につながったり、新たなる製品の開発やアップデートにつながったりするケースは多く見られるようになりつつあります。

そこで今回は、コミュニティマーケティングが注目されている背景や成功事例、コミュニティマーケティングを実践するためのプロセスをご紹介します。

Webマーケティングだけでは頭打ち状態になりつつあると懸念している担当者の方に、参考になればと思います。

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コミュニティマーケティングとは?

コミュニティマーケティングとは?

そもそもコミュニティマーケティングは、従来のマーケティング手法と何が違っているのでしょうか?

コミュニティマーケティングは、コミュニティ「を」通じて売るマーケティングです。特定のコミュニティや自社で築いたコミュニティ「へ」売るマーケティング手法ではありません。

コミュニティマーケティングが注目されている理由は様々ですが、サブスクリプションサービスが勢いを増していることは、これを後押しするひとつの要因と言えます。サブスクリプションサービスは、一定期間の当該製品の利用権に対して契約を行い、月あたりの利用料を払うという仕組みのサービスです。

サブスクリプションサービスの普及により、企業には消費者と「契約を結ぶ」ことではなく、「使い続けてもらう」ことを考える必要性が出てきました。

とはいえ、興味や関心が多方向へ散っている現代の顧客に、商品を使い続けてもらうアプローチを続けることはなかなか大変です。そこで、担当者一人のサクセスではなく、企業の意思や商品の理念が浸透している「コミュニティ」を利用して、多様な関心をカバーできるよう動いていくコミュニティマーケティングが注目され始めています。

見込み顧客が成約に至るまでの従来のマーケティングファネル(下記図左側)とは違い、コミュニティマーケティングのファネル(下記図右側)は、ファンによってコミュニティがスケールしていくことを目指しています。

従来のマーケティングファネルとコミュニティマーケティングのファネルの違い

出典:My Clips by TetsujiTsubota’s

AWS(アマゾン・ウェブ・サービス)の日本コミュニティである「JAWS-UG」を立ち上げた小島氏は次のように主張しています。

「コミュニティマーケティングは、顧客の中でも特に「熱量」と「顧客ロイヤルティ」が高いファンがコアとなり、コアなファンによって形成されたコミュニティを通して、製品やサービスを使い続ける中で、さらにより良いものにブラッシュアップしていくこと」

コミュニティマーケティングは、自社プロダクトのファンを巻き込んで進めていくマーケティング手法なのです。

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今、コミュニティマーケティングが注目される理由

今「コミュニティマーケティング」が注目されているのはなぜなのでしょうか。理由として、3つの要素が考えられます。

  1. 従来にはない、効率的な顧客課題解決と需要喚起プロセスの必要性
  2. マスマーケティング手法の限界
  3. ソーシャルメディアの発達による顧客の情報発信力の増大

以下、それぞれについて説明いたします。
 

理由1.従来にはない、効率的な顧客課題解決と需要喚起プロセスの必要性

総務省が発表した「情報通信白書平成28年版ポイント」によると、2015年時点の日本の総人口は1億2,520万人生産年齢人口は7,592万人でした。ところが、2030年には総人口が1億1,662万人生産年齢人口が6,773万人となり、その後も右肩下がりに減少していくことが予測されています。

働き手が減る企業においては、従来とは違う効率的な顧客課題の解決が必要です。その1つとして、コミュニティマーケティングが注目されています。

また大多数の市場では既に、消費者の製品やサービスに対する基本的なニーズは満たされています。そのため、海外市場も含めて、ブルーオーシャン市場を見つけるのは困難な状況です。顧客の需要を探すのではなく、新たに開拓するという点においても、顧客と密接に関われるコミュニティマーケティングの活用が検討されます。
 

理由2.マスマーケティング手法の限界

従来のマーケティング活動は、マスマーケティング手法に頼らざるを得ませんでした。一人ひとりの顧客の声にアクセスする手段が限られていたため、「平均的なペルソナ像」を設定したうえで、限られた「顧客の声」を製品に反映させていました。

しかし、消費者の購買動機は時代に合わせて変わってきています。株式会社メンバーズが2015年に実施した「第1回エンゲージメント・サーベイ 調査・分析レポート」を見てみると、「商品の購入の際に企業の考え方や理念が重要」と考える人は50%と、実に半分を占めています。単純な価格の安さや性能ではなく、製造している企業の理念を購入動機としている顧客が多く存在しているのです。

また、「商品や企業の考え・理念を知るうえで、どのようなコミュニケーションをとれば共感しやすいか」についてはWebサイトが53%ブランドや企業のSNSが22%となっており、二つ合わせればテレビ(45%)の1.6倍の影響力を持ちます。

このような背景を受け、多額の宣伝費を投じて大量の人の目に少ない情報を触れさせるテレビ広告だけではなく、企業の理念をダイレクトに伝える土壌となり得るコミュニティが求められるようになりました。そのひとつとして、コミュニティマーケティングが注目されているのです。
 

理由3.ソーシャルメディアの発達による顧客の情報発信力の増大

最近ではSNSなど、企業と顧客、あるいは顧客同士が直接つながりあう手段が広く普及しています。その結果、企業は個々の顧客が持つより深いニーズや課題に直接アクセスできるようになりました。

同時に、顧客側も自ら製品を利用した感想や意見をSNS上に発信する流れができています。この流れは、一部の利用者に対して、「利用者としての立ち位置」だけでなく、「自ら製品を生み出すプロセスにかかわる立場」となることを促しました。

顧客によるSNSの言動も、インパクトを強めています。

PGF生命が2016年7月に実施した「シェアリング・エコノミーと所有に関する意識調査 2016」では「買い物をするとき、購入者の口コミや評判の良し悪しに影響を受ける」消費者が84.1%でした。多くの人が口コミによって購入の意思を左右されていることがわかります。

また、株式会社サイバー・バズが「商品投稿に関する購買行動」について2015年12月に調査を行ったところ、商品投稿を見たあとの消費者の行動には興味深い結果が出ています。

有名人(インフルエンサー)によるInstagram内の投稿を見て、実際に商品購入をした割合は35%、気になってネットで検索をした人は39%でした。

一方、友人や同僚など、知り合いによる投稿を見て、実際に商品購入をした割合は50%、気になってネットで検索をした人は27%でした。

つまり、商品を知ってもらうにはインフルエンサーの投稿の方が優れているものの、実際購入への後押しに貢献しているのは知人・友人といった一般的な消費者による投稿なのです。

消費者はインフルエンサーの投稿に対して、企業側から支払われる報酬の存在を感じ取っています。インフルエンサーの自発的ではないシェアと、その商品を広めたいと思うファンによる無償のシェア、どちらが消費者にとってより有用な口コミでしょうか?

誰もが発信者となれるこの時代に、良質かつ自発的な口コミを生んでくれるファンを育てるコミュニティマーケティングは適しています。
 

コミュニティマーケティングを実施する目的とは?

コミュニティマーケティングは、なんのために実施されるべきなのでしょうか。基本的には、コミュニティから得られる情報により商品価値を高め、顧客から長期的に選ばれ続けることを目的に据えるのがいいでしょう。コミュニティを形成することをゴールにするのではなく、あくまでもマーケティングの一環としてコミュニティを形成することが重要です。

より具体的に言うと、コミュニティを形成し、コミュニティに参加している顧客同士を結び付けることが第一歩です。その結果企業や商品に対しての意見や要望がカジュアルな会話の中で生まれ、それを吸い上げることが商品やブランド力の向上につながります。

さらに、コミュニティに参加している顧客同士が繋がりあい、商品や企業に対しての愛着が高まることも期待できるでしょう。

顧客ロイヤルティが高まることで、LTV(顧客生涯価値)の向上に繋がり、企業は売上・利益を長期的に増加させていけるのです。

参考:
LTV(顧客生涯価値)とは?LTV最大化に必要なアクションまとめ

これは、広い意味でのカスタマーサクセスにもつながります。カスタマーサクセスについて詳しくは別の記事で紹介しています。こちらも合わせてご参照ください。

カスタマーサクセスとは?定義やカスタマーサポートとの違いを解説
 

コミュニティマーケティングの代表的な手法

ここでは、実際に行われているコミュニティマーケティングの手法について、代表的なものを2つ紹介します。ポイントは、いずれも顧客のコミュニティとして場が成長していることです。それを踏まえていれば、具体的な手法はこの限りではありません。
 

オンラインコミュニティ

最も一般的なコミュニティマーケティングの手法のひとつは、オンラインコミュニティの提供・運営でしょう。

企業が、自社のユーザーを対象としたコミュニティサイトや小規模なSNSのようなプラットフォームを提供し、そのプラットフォーム上での顧客同士の結びつきを促す手法です。コミュニティが成長するよう上手にハンドリングする手腕が必要となりますが、うまく成長すれば顧客のコミュニケーションの場として成立します。その結果、顧客同士の結びつきによる自然なコミュニティマーケティングの実現と、顧客ロイヤルティの向上が実現できます。
 

ミートアップイベント

オンラインコミュニティだけでなく、リアルな場を設定したオフラインコミュニティもコミュニティマーケティングの重要な柱のひとつです。
コミュニティマーケティングを成功させている企業の中には、定期的なミートアップイベントを開催し、顧客との「顔の見える関係性」を構築している企業も多くあります。実際に顔を合わせてコミュニケーションをとることで、顧客の企業に対する親密度は大きく向上しますし、顧客同士のコミュニティもより強固なものになります。
 

コミュニティマーケティングにおけるKPI設定

コミュニティマーケティングにおけるKPI設定は、とても難しい課題の1つです。

マーケターは、売上であるKGIにつながるKPIとして設定してしまいがちです。例えば参加人数などです。しかし、コミュニティマーケティングの目的は集客ではなくコミュニティの形成にあります。その結果、熱狂的なファンを作ったり、商品やブランド力を高めるための情報を得たりできるのです。

また、コミュニティに参加された顧客同士が繋がりあい、強いファンを作っていくことも目的となります。そのため、コミュニティに参加した人数だけでKPIを設定してしまうと、コミュニティマーケティングの本質からズレる可能性があります。

KPIの設定としては、例えばミートアップの実施頻度や生成するコンテンツの数、顧客から外部への情報発信数などを選ぶと良いでしょう。

また、顧客のロイヤルティを高めるという点においては、NPS(ネットプロモータースコア)なども指標のひとつになるでしょう。
 

コミュニティマーケティングの事例紹介

コミュニティマーケティングの事例紹介

では、実際に成功しているコミュニティマーケティングにはどのようなものがあるのでしょうか?

ここからは実際の事例として「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」と「スノーピーク」をご紹介します。
 

アマゾン・ウェブ・サービスの成功事例

アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は、Amazon.comにより提供されているクラウドコンピューティングサービスを扱う企業です。

Amazon社内のビジネス課題を解決するために生まれたITインフラストラクチャーの構築ノウハウをもとに、いわゆるIaaS(Infrastructure as a Service)として2006年に提供を開始しました。

アマゾン・ウェブ・サービスの特徴は、同サービスを利用するユーザーのコミュニティ(JAWS-UG)が存在することです。JAWS-UGでは勉強会や交流イベントが活発に行われ、一人のユーザーではできないような学びや交流が実現されています。

着目すべきは、こういったイベントのほとんどは企業側からの働きかけではなく、ユーザーの自発的な発案によるものであるという点です。
 

JAWS-UGが生まれたきっかけは?

「JAWS-UG」は、AWSの社員だった小島英揮氏がゼロから立ち上げたコミュニティです。AWS日本法人の一号社員として小島氏が入社した2009年12月当時、日本市場における「クラウド」の認知度はまだ低いものでした。EC事業で名を馳せたAmazon社も、クラウド事業においては殆ど認知されておらず、予算もなければ人手も足りない状況でした。

そこで小島氏は、初期ターゲットを「自分で学べば勝手に使いだしてくれるであろう層」に絞りました。そしてその層へのマーケティング手法として「コミュニティマーケティング」を選択しました。その手段として生み出されたのがJAWS-UGです。
 

JAWS-UGの価値観(ステートメント)とは?

JAWS-UGは、コミュニティ全体においての共通の価値観(ステートメント)として以下のものを掲げています。

  • Have fun!
    個人の個性に関係なくつながり、個人ではできない成長・発見を共有できることを喜びとする。
     
  • Make a difference!
    新しいテクノロジーが起こす社会の良い変化に貢献できることを喜びとし、クリエイティブかつポジティブに活動する。
     
  • Go global!
    ワールドワイドなユーザーグループのひとつとしてフラットな交流に参加し、ユーザーグループの成長にも貢献する。
     
  • Find new heroes!
    コミュニティ活動を通じて、コミュニティに貢献する誰もがヒーローになれる機会を共有する。

この価値観からわかるのは、JAWS-UGが誰でも参加できるコミュニティを目指しているということです。同じ関心を持つ人々がコミュニティをつくり、共に意見を出し合い、製品にフィードバックする。この一連のプロセスによって、JAWS-UGは企業と顧客が共に成長していくコミュニティとなっています。

参加者には、AWSに関するノウハウを積極的にアウトプットして共有することが求められています。アウトプットの形態はブログやSNSでの発信、Wikiへのノウハウ提供、ライトニングトーク、講演会など多岐に渡ります。

アウトプットにより、発信者はこのコミュニティに参加をしているのだ、という積極的な意識を獲得します。また有用な知識を発信してくれる「ヒーロー」であるという他者評価を得る可能性があります。一方受け手は、AWSに関するトラブルの解決策や、自身のビジネスをグロースさせる情報を獲得できます。

積極的な参加者は特定の製品に対する知識だけではなく、類似した業種内での繋がりや業界全体の知識を得ることができます。その結果、自身の生活やビジネスを、製品を通してより良いものへアップデートできるのです。

JAWS-UGは全てのメンバーに対して「オープンでフラット」「クリエイティブでポジティブ」なコミュニティであることを掲げています。それは、ひとりでも多くの参加者にこういったメリットを獲得してもらうためなのです。
 

JAWS-UGの成功の要因とは?

AWSの日本市場における急速な広まりは、JAWS-UG初期メンバーの活動によるものが大きいです。

そのポイントは以下です。

  • 製品の良さやメリットを、「企業の中の人の言葉」ではなく「サービス利用者自身の言葉」として広めたこと
  • 製品を先に利用した「リーダー(先駆者)」の利用体験を「フォロワー」が積極的に真似し、さらに外部に広げていく行動

こういった作用を小島氏は「焚き火理論」と呼んでいます。焚き火の炎を大きくするためには、着火した種火へさらに「燃えやすいもの」を入れ続けなければなりません。

「JAWS-UG」の初期メンバーは20名ほどでした。彼らは企業の外で「リーダー(先駆者)の言っていることはすごいよ」と周囲に伝える「フォロワー」として活動したのです。その結果、JAWS-UGという種火は大規模に燃え上がりました。

注目すべきは、「JAWS-UG」の初期メンバーの多くが「リーダータイプ」ではなかったという点です。この「リーダータイプでない人たち」が「さらに燃えやすいもの(新たな参加者)を入れ続ける」ことに注力したことでAWSのコミュニティは広がり始め、現在では全国にまで展開されるようになったのです。

その間、小島氏はコミュニティの積極的な舵取りをしなかったと言います。コミュニティの自走を目指して、サポートに徹しました。そういったコミュニティマーケター自身のポジション設定もコミュニティの成功を左右します。
 

スノーピークの成功事例

スノーピークは新潟県に本社を置くアウトドア総合メーカーです。1980年代にキャンプ事業をスタートさせ、日本のオートキャンプブームをけん引してきました。

同社は1988年に制定したミッションステートメント「The Snow Peak Way」のもと、徹底したユーザーの立場に立った製品開発、およびフィールドでの実証によって品質を磨くことを、ものづくりの理念としてきました。

スノーピークのマーケティングの中心に位置付けられるのが、1998年から毎年開催してきているキャンプイベント、「Snow Peak Way」です。「Snow Peak Way」は30万人を超える会員ユーザーの存在と熱狂的なファン、「スノーピーカー」によるコミュニティです。

スノーピークにおける「コミュニティマーケティング」開始のきっかけとは?

キャンプイベント「Snow Peak Way」は、オートキャンプブームの終焉に伴い、会社経営が危機に瀕する中でスタートしました。

この時期、同社は多くの経営改革に取り組んでいますが、その中でも代表的な2つの改革があります。

  • 広告・マーケティングに対するコストの見直し
    専門誌などに掲載していた広告費を削減し、リアルイベントの開催・運営にコストを投じる方向へ転換した。
     
  • 商品に対する永久保証の導入
    製品を寿命まで永久に保証するアフターサービスを導入した。

上記の2つの改革により、同社と顧客との関係は「商品を売った瞬間」だけではなくなりました。顧客との関係性を「商品購入以降も継続」させる仕組みを作ることにより、商品やブランドに対する顧客満足度を高め、LTV(顧客生涯価値)の上昇に繋げたのです。

また、イベントの企画には実店舗のポイント会員のデータを活用し、その効果を会員全体に広げていく取り組みも行っています。
 

オフラインイベントによってコミュニケーションを強化させる

さらに特徴的なのは、同社が顧客との直接的なコミュニケーションの機会として設けた「Snow Peak Way」の開催です。

「Snow Peak Way」は全国のキャンプ場で行われる、スノーピーク社と顧客のミートアップイベントです。「Snow Peak Way」には店舗のスタッフだけでなく営業・管理・企画と同社に関わる全ての社員が参加します。

「Snow Peak Way」の期間中は、エリアによってはイベントに合わせて実店舗を閉店させることもあります。スタッフが顧客と直接的なコミュニケーションを持つことをそれだけ重視しているということです。

短期的な数字だけ見れば、イベント期間中の日次売上は減少するでしょう。しかし、直に顧客の声や目線に触れられる機会、実体験を通して得られる絆の効果を数字で測ることはできません。直接的な売り上げに繋がらなくとも、プロダクトの熱烈なファンを創出します。

また、同社は1993年からオンラインコミュニティも運営しています。リアルなキャンプイベントとオンラインコミュニティとを連動することで、顧客との接点をより深め、熱狂的なファンの誕生を促しました。

「ユーザーと同じ目線で考えることで、ユーザーが求める『本物』を創ることができる」
「我々がコミュニティイベントでやってきたことは、純粋にブランドを作り上げていくこと」
「コミュニティマーケティングで重要なことは、アウトリーチとエンゲージメントの2つ」

既存の広告費をカットしたうえで、顧客に直接向き合うことに人的、金銭的なコストを投じる。単なるブランディングだけではない、顧客を取り込んだコミュニティマーケティングが、同社の経営方針の軸となっています。
 

コミュニティマーケティングのメリット・デメリットと考慮すべき点

コミュニティマーケティングのメリット・デメリット

ここからは実際に取り組む段階で知りたい、コミュニティマーケティングがもたらすメリット・デメリットと、実践における考慮点を検討します。
 

企業側のメリットとデメリット

コミュニティマーケティングが企業側へもたらすメリットは主に以下です。

  • ロイヤルティが高い顧客から本音でフィードバックを貰えるため、今後のマーケティングに活かしやすい
  • より多くの顧客の声に触れて、自社製品に顧客ニーズを反映できる

一方で、コミュニティマーケティングの運用は、既存のマーケティングと比べて下記のようなデメリットが挙げられます。

  • 顧客との関係構築を間違うと製品自体が売れなくなる可能性がある(顧客とのゴールの共有、製品ライフサイクルなど)
  • 顧客との関係構築に時間がかかる

コミュニティマーケティングは短期的な施策ではなく、長く腰を据えて取り組むべき手法だという点は意識しておくべきでしょう。
 

顧客側のメリットとデメリット

それでは、顧客側にはどのようなメリットが挙げられるのか見てみましょう。

  • 企業側との直接のコミュニケーションにより、製品ライフサイクルに直接関与できる
  • 単なる「消費者」としてではなく、企業と同じ目線で製品とつきあえる
  • コミュニティを通じて、製品に対する知見や、関心軸に基づいた人間関係を獲得できる

コミュニティマーケティングにおける、顧客側のメリットは報酬ではないほうがよいでしょう。お金を渡せばそれは仕事になります。仕事になった瞬間、どこかで「好きだから発している」という意識は薄れていくのです。報酬以外のメリットを提供できている限り、基本的に、顧客側にデメリットは存在しません。仕事ではないので、嫌になれば抜ければ良いのです。

あくまで顧客には「このプロダクトにお客の立場から関わりたい!」という自発的な意思で、コミュニティに参加してもらうべきでしょう。
 

コミュニティマーケティングを軌道にのせるコツ

コミュニティマーケティングを成功させるためには、そのコミュニティを顧客にとって価値ある場へと成長させる必要があります。コミュニティ作りを成功させない限り、コミュニティマーケティングの成功はありえないのです。

ここでは、コミュニティマーケティングを軌道にのせるために意識しておきたいポイントを紹介します。
 

企業側のスタンス

最も大切なポイントは、企業側担当者のスタンスと関わり方です。成功事例でも紹介しましたが、コミュニティ形成における企業側担当者の立ち位置は、あくまで「サポート役」であると理解するべきです。

コミュニティの中心は顧客であり、ひとりひとりの顧客が自分を主役としてコミュニティを広げられれば、顧客にとってのコミュニティの価値は上がります。その結果、コミュニティに魅力を感じる顧客は徐々に増えていき、価値あるコミュニティに成長していくことでしょう。
 

コミュニティ運営と成長の促進

企業側が行うべきことは、コミュニティの運営と成長の促進のため「縁の下の力持ち」としてサポートを行うことです。つまり運営自体はあくまで顧客主導で行い、そのうえでコミュニティが正しい方向へ成長しているのかを監視します。

健全なコミュニティとして活動が始まれば、顧客は自発的にコミュニティメンバーを増やし、コミュニティをさらに成長させてくれることでしょう。
 

顧客ロイヤルティに注目する

コミュニティマーケティングの目標は、売り上げなど数値的なものでない方が良いでしょう。むしろ、コミュニティを通じて生まれる、顧客ロイヤルティに注目すべきです。

コミュニティマーケティングにより得られる最も価値ある存在は、自社や自社プロダクトに対する強い愛着を持ったロイヤルユーザーです。コミュニティマーケティングにおいては、売上など直接的な目標ではなく、高いロイヤルティを持った優良顧客をどれだけ生み出せたかという視点を持つことが大切です。
 

マーケティング戦略におけるコミュニティマーケティング

コミュニティマーケティングは、マーケティング戦略における唯一解ではありません。むしろ、他のマーケティング戦略と並行して行うことでより高い効果を発揮できると考えるべきです。

マーケティングにおける目標は様々ですが、例えば次のようなものがあります。

  • 企業認知度・ブランド力の向上
  • 売り上げの向上
  • 顧客ロイヤルティの向上

この中でコミュニティマーケティングが担うのは、特に「顧客ロイヤルティの向上」の部分です。
しかし、顧客ロイヤルティの向上を実現するためには、その前段階として、自社や自社プロダクトを知る顧客を増やし、認知度を高める必要があります。また、その結果売り上げを伸ばすことも、企業の健全な経営のためには欠かせません。
この部分は、コミュニティマーケティングが得意とする分野ではありません。

参考:
顧客ロイヤルティとは?5分でわかる総論と具体的な改善手順まとめ

コミュニティマーケティングの効果を最大化するためには、全体のマーケティング戦略や目標を立て、そのうえで、コミュニティマーケティングが担うべき目標を明確化することです。

マーケティング戦略全体において、コミュニティマーケティングの立ち位置を明確化することは、真に効果のあるコミュニティマーケティングの実践のために欠かせません。

以下の記事で、顧客へ提供できる価値を増やすためのポイントを、具体例を交えて解説しています。よろしければ参考にしてみてください。

戦略的な「顧客価値の提供」とは?スターバックス・ザッポス社の事例をもとに解説
 

コミュニティマーケティングをうまく活用するポイント

コミュニティマーケティングをうまく活用するポイント 

次に、コミュニティマーケティングをうまく活用するポイントについて、「活発化させるポイント」と「よくある失敗例」から学んでいきましょう。
 

コミュニティマーケティングを活発化させる

コミュニティマーケティングを成功させるには、いかにコミュニティを活性化できるかが重要となります。では、コミュニティを活性化させるためにはどのようなことができるのでしょうか。

ポイントは以下の3つになります。

  • 顧客を第一に考える
  • コミュニティの目的を定める
  • ロイヤルティの高い少人数を招待する

コミュニティマーケティングを活発化させるためには、まずは顧客第一で考えなければなりません。

売上や目先のコンバージョンに捉われず、顧客がコミュニティに参加しやすい環境づくり、話題づくり、居心地のより空間づくりが不可欠です。また、顧客同士がつながりを求めるような場にする必要があります。

企業側の意図や売上目標、コンバージョンへの期待が見え隠れすると、顧客はカジュアルな雰囲気でコミュニケーションを取ることができません。

また、コミュニティの目的を明確に定める必要があります。

コミュニティを形成するにはコアがあります。そのコアがなんであるかを明確に定めなければ、顧客はコミュニティに参加する目的意識が持てません。それでは、コミュニティは形成されません。

コミュニティの形成は、人数を多くすればよいというものではないという点もおさえておくべきでしょう。人数を多くしすぎるとコミュニティ参加への意識が薄れ、コミュニティマーケティングを成功させるのが難しくなってしまいます。

少人数でも関心の強い方から集めていくことが成功のポイントです。
 

コミュニティマーケティングでよくある失敗例

コミュニティマーケティングでよくある失敗例を見ていきましょう。

  • コミュニティが盛り上がらない
  • 売上を狙って失敗する
  • 結果をすぐに求めてしまう
  • 参加者を怒らせて炎上してしまう

コミュニティマーケティングを実施していく中で課題となるのは「コミュニティが盛り上がるかどうか」でしょう。

コミュニティが盛り上がらなければ、目的である顧客同士の繋がりも、熱狂的なファンの育成も、顧客の生の情報の獲得もできません。コミュニティマーケティングを実施するうえで、コミュニティの盛り上がりは欠かせないのです。

自然と盛り上がるのを期待していては、コミュニティマーケティングは失敗に終わるでしょう。コミュニティを思ったとおりに成長させていくためには、企業側のサポートも重要なのです。

また、これまでご紹介してきたように、すぐに売上やコンバージョンに繋がることを期待することも、コミュニティマーケティングでは失敗に繋がる行為となります。

あくまでもコミュニティを盛り上げて顧客のロイヤルティを上げることを意識した、中長期的なコミュニティ計画が必要です。

最も避けたいのは、運営側のミスやサポート不足によりコミュニティの参加者の気分を害し、掲示板やコメント欄などが炎上してしまうことです。

こうなってしまうと、コミュニティマーケティングとしては逆効果と言わざるを得ません。
 

「Sell To The Community」 から 「Sell Through The Community」へ

「Sell To Community」から「Sell Through The Community」へ

AWSやスノーピークの事例など、コミュニティマーケティングの手法について紹介してきました。これらの事例から、コミュニティの育成にあたってロイヤルティの高い顧客をつくること、そして企業の担当者と顧客とが同じ目線で製品をより良くするために取り組んでいくことの大切さに気づかれたかと思います。

HubSpotでは、NPS(ネット・プロモーター・スコア:顧客ロイヤルティを計測する指標)を計測するためのカスタマーサービス測定指標計算用ツールを無料でご提供しています。コミュニティマーケティングの実践の際には、NPSのご利用もぜひご検討ください。

HubSpotではこの他にもマーケティングやセールスに役立つ資料を無料で公開していますので、ぜひこちらからご覧ください。

 

カスタマーサクセス部門を成功に導くKPIテンプレート

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元記事発行日: 2019年9月19日、最終更新日: 2021年3月01日

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