コミュニティマーケティングとは?手法やメリット、注意点を解説

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水落 絵理香(みずおち えりか)
水落 絵理香(みずおち えりか)

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近年、LTV(顧客生涯価値)の向上が、営業やマーケティングの課題として取り上げられるケースが増えています。

コミュニティマーケティングとは?手法やメリット、デメリットを解説

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LTVの基本的な考え方は、既存顧客とのコミュニケーションを通じてブランドや商品・サービスのファンになってもらい、売上の安定化を目指すことですが、期待できる効果はそれだけではありません。既存顧客が自発的に商品・サービスに関する情報発信を行うことで、新たな顧客を生み出すサイクルの構築を目指すことも可能です。

コミュニケーションマーケティングは、企業・既存顧客・潜在客がそれぞれの立場を超えてコミュニケーションを楽しむ場所を提供するマーケティング手法です。既存顧客が潜在客とつながることで、ブランドや商品・サービスに興味を持ってもらいやすくなる効果が期待できます。

本記事では、コミュニティマーケティングの概要や目的、メリット、実施する上での注意点を解説します。既存顧客だけでなく、潜在客と上手に関係を構築するためのガイドラインとしてお役立てください。

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コミュニティマーケティングとは

コミュニティマーケティングとは

まずは、コミュニティマーケティングの定義や従来のマーケティング手法との違いについてご紹介します。
 

コミュニティマーケティングの定義

コミュニティマーケティングとは、既存顧客がコミュニケーションを行える環境を用意し、ロイヤルティの向上やファンの創出につなげる方法です。形成したコミュニティでは、参加者同士が企業や顧客という立場を超えてコミュニケーションを楽しむことができます。

具体的には、オンライン上にコミュニティサイトを形成するほか、ユーザー参加型のイベントといったオフライン上での取り組みもあります。

TwitterやInstagram、YouTubeなどのSNSを活用すると参加者を増やす効果が期待でき、よりスムーズにコミュニティを形成できるでしょう。
 

従来のマーケティング手法との違い

コミュニティマーケティングは、リファラル(他者による紹介)を狙って新規顧客を創出する手法だといえます。

従来のマーケティング手法は、幅広い潜在客にアプローチを行い、徐々に購買意欲を醸成しつつ、商品やサービスの購入へと結び付ける手法が一般的でした。

対してコミュニティマーケティングは、既存顧客による情報発信や顧客同士のコミュニケーションによって、新しい顧客を創出する方法です。企業から一方的に商品の機能やメリットをアピールされるよりも、同じ消費者の立場である既存顧客から率直な意見を聞いたほうが、興味を持ってもらいやすいでしょう。
 

コミュニティマーケティングの目的

コミュニティマーケティングの目的は、商品やサービスを継続的に利用してもらえるファンを創出することです。

そのためには、コミュニティに参加する顧客同士を結び付けることが第一歩です。

顧客同士の関係性が強化されると、日常会話を楽しむようなフランクな雰囲気が生まれ、企業やブランド、商品などに対する率直な意見や本音が現れやすくなります。顧客の声を製品開発に反映することで、商品やブランド力の向上につながるでしょう。

さらに、コミュニティに参加している顧客同士の関係構築により、商品や企業に対しての愛着が高まる可能性があります。顧客ロイヤルティが高まれば、LTV(顧客生涯価値)の向上や安定した売上の確保に寄与します。

コミュニティマーケティングを活用できるのはマーケティング領域だけではありません。

顧客の声を参考にしたマニュアル・FAQの拡充や勉強会の実施など、カスタマーサクセスの施策を拡充できるのも利点です。商品やサービスに対する不満を解消できれば既存顧客の定着につながり、安定した売上を確保できます。

 

コミュニティマーケティングの手法

コミュニティマーケティングの手法

コミュニティマーケティングでは、顧客の行動傾向に合わせて適切な環境を構築しましょう。構築する環境によって取るべき手法が異なります。コミュニティマーケティングの代表的な手法は次の4つです。

  1. コミュニティサイト運営
  2. SNSのハッシュタグを活用
  3. ライブ動画の配信
  4. オフラインイベントの開催
     

1. コミュニティサイト運営

企業のコミュニティサイトを作り、顧客同士の交流を促す方法です。会員専用のファンコミュニティの構築や、すべてのコンテンツの無料公開など、企業によって運営方針が異なります。

コミュニティサイトは、「コンテンツ投稿型」と「課題解決型」の2パターンに分けられます。

コンテンツ投稿型は、実際に商品やサービスを利用した顧客が使い方や活用方法などを投稿する仕組みです。ほかの参加者は商品やサービスに関する情報収集に役立てることができます。

課題解決型は、参加者が投稿した不明点や疑問点に対して、別の参加者が回答する仕組みです。参加者同士が相互にやり取りをすることで、自然とコミュニケーションが生まれます。また、参加者の質問から、企業が顧客の課題やニーズを把握できるのもメリットです。

両方の仕組みを取り入れて積極的にコミュニティマーケティングを実践しているのが、飲料・食品の総合メーカーであるカゴメです。カゴメは2015年より、会員制のコミュニティサイト「&KAGOME(アンドカゴメ)」を運営しています。

具体的には、オリジナルレシピを投稿できる「レシピのーと」や、自分が好きなカゴメ商品の口コミを投稿する「おいしいレビュー」など、参加者がコンテンツを自由に投稿できるのが特徴です。また、「トークルーム」に参加することで、参加者同士で気軽にコミュニケーションできます。

2023年2月時点で会員数4万9,000人を超えるコミュニティサイトに成長しています。
 

2. SNSのハッシュタグを活用

企業名や商品名、あるいは専用のハッシュタグを使ってSNSの投稿を呼びかける方法です。コミュニティ参加者は、ハッシュタグを通じてSNS内のコンテンツを横断的に検索できます。

企業側も、ハッシュタグ付きの投稿を検索して「いいね」やシェアなどを行うと、参加者とのコミュニケーションをはかれます

例えば、本田技研工業は、Instagramで「#MeandHonda」のハッシュタグを用いて、Hondaの車やバイクとユーザーが一緒に写った写真の投稿を促しています。質の高い写真はHondaの公式アカウントで紹介するという仕組みです。

公式アカウントで紹介された写真には喜びのコメントが付いていたり、熱量の高い意見や感想が寄せられたりと、ファンによるコミュニティが自然に形成されます。2023年2月時点で、同ハッシュタグを使った投稿は19万件を超えます
 

3. ライブ動画の配信

YouTubeやTwitter、Instagramなどのライブ配信機能を用いて映像コンテンツを提供する方法です。ライブ配信中は視聴者からリアルタイムでコメントが流れます。配信者である企業がコメントに応答することで、双方向のコミュニケーションができ、ライブ配信がコミュニティに生まれ変わります。

また、ライブ配信を通じて商品を販売するライブコマースという手法も活用できます。コメント機能で参加者とコミュニケーションを取りながら、自社の商品やサービスを積極的にアピールできるのが特徴です。

アパレル系セレクトショップを運営するBEAMS(ビームス)は、2020年3月27日からライブコマースを活用した販売促進を展開しています。

最初に開催された動画配信では、クリエイティブディレクターの中村達也氏と「BEAMS F」ディレクターの西口修平氏が出演。アパレル業界に精通するプロが、メンズ向けのコーディネートを紹介しました。

この動画配信は大きな反響を呼び、配信1時間で6,000人以上の視聴者が参加し、100万円弱の売上につながりました
 

4. オフラインイベントの開催

商品発表会や展示会、ファンミーティングといったイベントを開催し、顧客同士の対面式での交流をはかる方法です。オフラインイベントはテーマ別に開催されることが多いため、参加者同士で共通の話題が生まれやすくなります

三井不動産商業マネジメントが運営する三井ショッピングパークアーバンドック ららぽーと豊洲は、2022年5月に「SeaSide GOMI ZERO Project(シーサイド ゴミ ゼロ プロジェクト)」というイベントを開催しました。

「日本一楽しいゴミ拾い」をコンセプトにした同イベントでは、海洋ごみ問題の解決を通じて、誰でも気軽にSDGsの重要性を学べます。同時にヒーローショーやライブパフォーマンスも開催されており、子どもから大人まで幅広い年代の方々が楽しめるのが特徴です。

単にコミュニティを形成するだけではなく、企業として環境に対する意識の高さを外部にアピールすることにも成功しています。
 

コミュニティマーケティングによる効果

コミュニティマーケティングを実施することで、新規顧客の創出やエンゲージメントの強化など、さまざまな効果が期待できます。具体的に見ていきましょう。
 

1. コミュニティメンバーの発信による新規顧客の創出

顧客同士がコミュニケーションを取りやすいコミュニティが形成されると、商品・サービスに対する良い意見や口コミが生まれやすくなります。特に自社のヘビーユーザーが好意的な情報発信を行うと、潜在客や見込み客が商品・サービスを比較検討するうえで、影響の大きい判断材料となります

潜在客や見込み客は、既存顧客のリアルな感想を聞いたうえでの購買決定ができます。また、企業側は広告費や宣伝費を投入する必要がないため、新規顧客の創出コストを大幅に下げられます
 

2. ユーザーインサイトを素早く集められる

企業独自のコミュニティを構築することで、素早くユーザーインサイトを収集できます。ユーザーインサイトとは、購買行動における顧客の動機や本音のことです。

企業が商品やサービスの質を改善するには、アンケートやインタビューなどで顧客の声を収集するのが一般的な手法です。しかし、アンケートやインタビューを実施するためには、調査会社の選定やヒアリング内容の設計、謝礼の用意などを行う必要があります。

企業独自のコミュニティが形成されていれば、アンケートやインタビューを実施しなくても、自社の商品やサービスを利用したことのある顧客からの意見がプラットフォーム上に投稿されます。また、企業側から感想やフィードバックに関する質問を投げかけることで、活発な意見が出てくる可能性もあります。
 

3. エンゲージメントの強化に結び付く

コミュニティ内では顧客同士はもちろん、企業と顧客が双方向的なコミュニケーションを取り合えます。例えば、商品やサービスに対する質問を受け付けて、参加者に加えて企業担当者も回答をすれば、顧客がよりスムーズに問題解決へとたどり着けます。

結果、いままで商品やサービスのみを通じてかかわっていた企業との関係が、仲間とのつながりのような強固な関係性へと発展します。強力な結び付きが生まれることで、「この企業にある商品やサービスを買いたい」という思いから、「この企業でしか買いたくない」という気持ちに変化する顧客もいるはずです。

企業にとっては、顧客とのエンゲージメント強化により、安定した売上の確保につながります
 

4. 顧客単価の向上につながる

顧客単価の向上につながるのもコミュニティマーケティングのメリットです。

コミュニティから取得した顧客の声を商品・サービス開発に反映すれば、顧客の好感度が高まる可能性があります。自分たちの意見が尊重された、あるいは要望が実現されたなど、顧客が好意的な感情を持つことで、ロイヤルティの高い顧客(=ファン)へと生まれ変わります

ロイヤルティの高さは企業に対する信頼の証なので、アップセルやクロスセルを提案しやすくなります。

アップセルは上位商品や上位プランへの乗り換えを、クロスセルは関連商品とのセット売りを提案する手法です。スムーズなアップセルやクロスセルを行った結果、顧客単価の向上へとつながります

 

5. カスタマーサポートにかかるコストを削減できる

顧客同士がコミュニケーションを取り合えるコミュニティを形成すると、カスタマーサポートにかかるコストの削減が期待できます。

コミュニティ内では、顧客同士で積極的にナレッジの共有が行われる傾向があります。例えば、顧客が自由に投稿できるトークルームのような環境があれば、商品の使い方に関する質問に対して、その商品の特徴をよく知る別の顧客が代わりに回答してくれます。さらに企業側でも、質問への回答を通じて商品のより便利な使い方を伝授することで、周りの参加者に商品の価値が伝わりやすくなります。

コミュニティ内で疑問や悩みを解消できた顧客は、わざわざ電話やメールで企業に問い合わせたり、FAQページを閲覧したりする可能性は低いでしょう。結果的にカスタマーサポートにかける時間や手間を削減できます。
 

コミュニティマーケティングで成果を出すためのコツ

コミュニティマーケティングで成果を出すためのコツ

コミュニティマーケティングで成果をあげるためには、次のようなコツを押さえることが大切です。

  • コミュニティの目的を明確にする
  • コミュニティメンバーを第一に考える
  • コミュニティ内で売り込みをしない

コミュニティは顧客の感情や意思が現れやすい環境です。参加者がポジティブな意見を出せるよう、適切な運用方法を知っておきましょう。
 

コミュニティの目的を明確にする

コミュニティを運営する際は、最初に目的を設定しましょう。目的があいまいな状態では、単なるユーザー同士の交流の場となり、マーケティングとしての効果が薄れてしまう可能性があります

また、コミュニティの目的がわかりづらいと、参加者側も発信する内容が理解できずに困惑するでしょう。そのため、前述した「&KAGOME(アンドカゴメ)」の事例のように、「おいしいレビュー」や「トークルーム」といった明確なカテゴリーを設定することが大切です。

事前にしっかりと目的を定めておくことで、参加者が離脱するような失敗を避けられます。
 

コミュニティメンバーを第一に考える

コミュニティの参加者が積極的に発信できるよう、常に参加者を第一に考えることが大切です。自分が大切にされていると参加者が感じると、ポジティブな意見が現れやすくなります

また、企業側だけで盛り上がってしまい、参加者を置き去りにしないように注意が必要です。誰でも気軽に発言ができるようにするために、アンケートや商品レビューといったユーザー参加型の企画を用意すると良いでしょう。
 

コミュニティ内で売り込みをしない

コミュニティマーケティングは、「マーケティング」という名称ではあるものの、商品やサービスを売り込む手法ではありません。コミュニティはあくまで、企業と顧客が一緒になって関係を構築する場という意識を強く持つことが大切です。

顧客とコミュニケーションを取るなかで商品やサービスの話題が出てくることもあります。しかし、セールス色の強いコミュニティは参加者が敬遠する可能性があるため、立ち上げたばかりの頃は過度な売り込みを避けるのが無難です。アップセルやクロスセルの提案を行う場合は、参加者との関係が強化されたタイミングを見計らう必要があります。
 

コミュニティマーケティングを実施する際の注意点

コミュニティマーケティングには、次のような注意点があります。
 

1. 成果が出るまでに時間がかかる

コミュニティを立ち上げてから認知度が高まるまでは時間がかかるほか、ロイヤルティの向上や顧客創出などのメリットが現れるのにも、ある程度の時間を見ておく必要があります。運営が軌道に乗るまでには、準備・認知・拡大という3つのフェーズを経由する必要があるからです。

そのため、コミュニティマーケティングを実施する際は、長期的な運用を見据えることが大切です。充実したコミュニティが形成されるまでの間、従来通りのマーケティング手法で顧客を創出したり関係性を構築したりするのが良いでしょう。
 

2. 高度なノウハウが求められる

コミュニティを運営するには、顧客とのコミュニケーションやイベントの企画、課題に対する提案などの対応が必要です。そのため、担当者にはマーケティングだけではなく、カスタマーサクセスにも精通したスキルが求められます。

また、コミュニティが成熟しない限り、顧客がほかの参加者に商品を勧める可能性は低いといえます。リファラルの効果を期待できるまでコミュニティを成長させるには、高度なノウハウが必要です。

コミュニティマーケティングに必要な人材を育成するには、顧客と密接なかかわりがあるカスタマーサポートやカスタマーサクセスなどの部署に意見を求めると良いでしょう。
 

将来的な資産となるコミュニティを形成しよう

従来のマーケティング手法と異なり、コミュニティマーケティングでは、既存顧客を軸として見込み客や潜在客にアプローチを行います。形成されたコミュニティで活発的なコミュニケーションが行われることで、顧客同士のつながりが強化され、ファンの醸成につながります

また、企業と顧客が双方向的なコミュニケーションを行えるのもメリットです。顧客から直接得た意見やフィードバックは、商品開発やカスタマーサクセスにも活かせます。

コミュニティを形成し成果を出すまでの間には長い時間が必要なので、中長期的な視点で取り組みましょう。コミュニティマーケティングによって顧客ロイヤルティの向上やエンゲージメント強化につながれば、コミュニティという存在が貴重な資産となります。

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