AI(人工知能) はすでに私たちの生活のさまざまな領域に浸透しています。毎日利用する検索エンジンや、通販で好みの新商品を紹介してくれる「おすすめ」機能、家電製品やカーナビ、コールセンターの応対など、AIの登場によって、生活は根底から変化を遂げています。

→ダウンロード:AI (人工知能) を活用したマーケティング強化無料ガイド

しかしAIの本質やその意味についてなかなか理解されていないのが現状です。実際、「AIに仕事を奪われる」といった不安を煽るメディアの論調もあり、AIが何か得体のしれない存在のように捉えられることもあります。

本稿では、そもそもAIは何ができる技術なのか、最新の技術トレンドやビジネスでの活用事例をご紹介しながら、今知っておくべき「AI」について解説します。

AI導入ガイド - AI (Artificial Intelligence) でマーケティングを強化

AI(人工知能)とは?

AIとは「Artificial Intelligence(アーティフィシャル・インテリジェンス)」の略で、日本語にすると「人工知能」と訳されます。一般的には、「コンピュータ上に人間のような知能を再現する技術」と定義されており、単純な計算ではなく、人間の脳のように創造的なアウトプットができる技術やシステムを指す場合がほとんどです。

ただ、どこからが「創造的」であるかといったAIの定義には明確な基準がありません。開発、提供している企業や組織がAIか否かの判断を行っており、そのことがより一層AIの実態をあいまいにする要因となっています。
 

AIで人の仕事は本当に奪われるのか?

ここ数年、頻繁に話題に上がるのが「AIによって人の仕事が奪われる」というテーマです。不安を煽るような論調が多い表現ですが、すべての仕事がが置き換えられることはないでしょう。AIにはまだまだ不得意な分野があり、人の仕事とうまく補完しあっていくことが大事です。
 

AI化の進展で得られる5つのメリット

AI化の進展で得られる5つのメリット

AIは大量のデータからパターンや判定技術を弾き出し、新しいデータを「分類」することに長けている技術であるため、物事をより効率化できるメリットがあります。その主なメリットを紹介します。
 

労働力不足の解消

パーソル総合研究所「労働市場の未来推計 2030」によると、少子高齢化が進む日本では、2030年にはサービス業、医療・福祉業などを中心に、人手が644万人不足すると推計されています。そこで、AIを導入して業務の効率化を図り、労働力不足の解消が期待されます。
 

生産性の向上

AIの活用によって、工数やリソースを最適化できます。例えば少量多品種生産での検査工程にAIを導入することで、検査による作業負荷の低減・過検出の抑制などにより、全体の生産性向上を図ることができます。
 

コスト削減

定型業務をAIに置き換えて業務効率化を進めることで、全体のリソースを最適化できます。またAI活用して、市場の動向を予測し生産調整を行うことで、在庫管理の適正化も期待できます。
 

顧客提供価値の向上

AIを活用することで、顧客により高い価値が提供可能です。AIスピーカーやレコメンド機能を活用すると購買プロセスの利便性が高められます。また、カスタマーサポートもAIの導入によって24時間対応が可能です。
 

自社に適した人材の採用

AIを活用して過去のデータをもとに、自社とマッチングした志望者の選別が可能です。1次選考をAIに任せ、採用担当者は重要な面接に集中できます。
 

AI化の進展で起こりうる3つのリスク

AIの導入によって、短期的・長期的に起こりうるリスクも押さえておきましょう。
 

雇用の減少

アメリカのIT企業Cognizantが2017年に出版した「What to do when machines do everything(機械がすべてを行うとき、人間は何をすべきか)」によると、 「今後10年から15年で、アメリカの仕事の12%が機械に取って代わられるだろう」と予測されています。現在、日本でも一部の工場やオフィス、また小売店のレジなどの単純作業はAIに置き換わりはじめています。
 

情報漏えい・セキュリティリスクが伴う

AIの活用が増すにつれ、AIへのサイバー攻撃に対するセキュリティリスクは高まります。情報漏えいなどに備えて、社内のセキュリティ体制の確立が求められます。
 

思考プロセスのブラックボックス化

ディープラーニングの手法では、AIのアウトプットに対して判断の根拠が明確化されません。複雑な処理を高速で行う場合、判断理由がわからないことが障がいになる場合があります。
 

実用化が進む5種類のAI技術

機械学習などの応用によって、さまざまなことができるようになりました。現在すでに実用化されている5種類のAI技術を紹介します。
 

画像認識

画像認識システムの中でも、画像や映像から顔を検出し、個人を認識する顔認証システムの実用化や、医療分野での画像診断の導入が進んでいます。その他、自動運転技術などの分野でも活用されています。
 

音声認識

コールセンター、チャットボット、Siri、Google アシスタントなどで実用化されています。また、ディープラーニングの技術を用いた音声認識は、従来の4段階で行われていた音声認識技術を1つのニューラルネットワークで処理するため、音声認識が著しく向上しました。
 

自然言語処理

普段使っている言語をコンピュータで処理できるようにするのが自然言語処理です。自然言語処理によって翻訳を行ったり、記事を作成したりできるほか、音声処理と自然言語処理を組み合わせて自動応答システムなどに活用されています。
 

機械制御

製造業の分野で期待されているのがAIによる機械制御です。センサーや産業用ロボット、自動車、建設機械などでデータをもとに状況判断して作業内容を変えたり、最適な制御を行ったりします。
 

予測分析

過去のデータに見られるパターンに基づいて予測を行う機能です。金融や医療などの分野や渋滞予測・信号制御シミュレーション、インフラの劣化予測などにも用いられています。
 

AIの活用事例

AIの活用事例

AI技術の実用化は各業界で進んでいます。AIを活用した新しいビジネスモデルの実践例をいくつかご紹介します。
 

製造における事例:株式会社MUJIN

産業向けモーションプランニングAI技術をもとに、知能ロボットコントローラ「MUJINコントローラ」を中心とする高付加価値自動化ソリューションを提供している会社が、株式会社MUJINです。プログラミングを必要としない自律動作を可能にし、人力で行なっていた複雑な工程の自動化を実現しています。
 

小売における事例:株式会社エアークローゼット

『airCloset』とは、女性向けの普段着に特化した提案型のファッションレンタルサービスです。

パーソナルスタイリングサービスの運営で蓄積した2000万以上の実績データをもとに、独自のデータ活用を推進。『airCloset Data Sciense Collection(エアークローゼットデータサイエンスコレクション)』を開設し、当社独自のデータ解析・AI開発について公開しています。
 

医療における事例:メドメイン株式会社

同社が提供する「PidPort」は、独自のディープラーニング技術により病理画像データから短時間でAIが解析し、超高精度に病変の検出を行うというものです。

病理組織・細胞のガラス標本をデジタル化し、AIによるデータ解析を行っています。

AIの活用事例は以下の記事でも詳しく紹介しています。興味のある方はぜひご覧ください。
 

押さえておきたいトレンドと国内AIベンチャー

IT調査・コンサルティング会社ITRによると、国内におけるAI市場は2020年〜2025年にかけて年間平均成長率は18.7%、市場規模は2025年には1,200億円に達すると予測されています。この成長をけん引するであろう新しいAIトレンドと、注目のAIベンチャーを紹介します。

今後のトレンドの中からビジネスと関連の深い3点を紹介します。
 

トレンドはビジネスに役立つ道具としてのAI

2020年、AI市場の中で最も成長したのは、AI環境の自作を支援する機械学習プラットフォーム市場でした。AI技術が一部の技術者のものから広くビジネスユーザーのための道具へと推移していることが見て取れます。
 

ノーコードの機械学習が進展する

機械学習の分野では、従来のようにコードを使うのではなく、ドラッグアンドドロップで利用できるビジュアルインターフェースを利用して機械学習アプリケーションを構築する手法が広がりつつあります。高速かつ低コストで開発できること、直感的に操作できることなどから、小規模な企業でも機械学習の導入が容易になります。
 

セキュリティ分野でAIの活用が進展する

セキュリティ分野でのAI活用が一層進展するでしょう。すでにAIテクノロジーは顔認証の分野で導入が進んでいますが、今後は動作に焦点を当てた監視システムによって、脅威となる行動を未然に把握できるようになります。
 

チャットボットがさらなる進化を遂げる

自然言語処理の進化によって、今日のAIは高品質なテキストを作成できるようになっています。

自然言語処理とAIツールを組み合わせたチャットボットは、あらかじめ決められたコマンドを実施するのではなく、発話者の意図を汲み取り、人間に近いコミュニケーションが可能になるでしょう。ヘルスケアや金融、マーケティングなどの分野で活用され、チャットボット市場はBusiness Insiderの予測によると、2024年に94億ドルに達すると予想されています。
 

代表的な国内のAIベンチャー企業

今日、AI開発は大手IT企業だけでなく、多くのベンチャー企業が手がけています。目覚ましい成長を見せるAIベンチャー企業を業界別に紹介します。
 

AI開発:株式会社 PKSHA Technology

PKSHA Technology(パークシャ・テクノロジー)は、機械学習・ディープラーニングや画像認識、自然言語処理技術を活用したアルゴリズム開発の企業です。中でも画像解析技術ににディープラーニングを加えた同社のHRUSは、動画像データを解析するアルゴリズムソフトウェアとしてさまざまな端末に活用されています。
 

データ解析:株式会社 ブレインパッド

ビッグデータ分析という言葉がまだ日本で一般的ではなかった2004年に、日本初のデータマイニング専門企業としてスタートしました。今日ではビッグデータ活用サービスとデジタルマーケティングサービスを中心に事業を展開し、データ分析を活用して、ビジネス課題の解決を行っています。
 

画像認識: フィーチャ株式会社

Ficha(フィーチャ)はディープラーニングを活用した画像認識ソフトウェアを開発する企業です。画像認識技術を活かした先進運転システムやドライバーシステムに同社の技術は活用されています。またオフィスの業務効率化を助けるAI-OCR エンジンは、手書き文字を正確に認識したり、帳票など多様なフォーマットに対応した文字の検出に強みを発揮しています。
 

マーケティング支援:株式会社 ユーザーローカル

ユーザーローカルはヒートマップやSNS口コミ分析などの解析ツール、チャットボット、AIテキストマイニングなど、マーケティング活動をサポートするツールを多数開発・提供している企業です。膨大なテキストデータをもとに対話するチャットボットは、バリエーション豊かな対話ができることが高く評価されています。

AI企業については以下の記事でも詳しく説明しています。興味のある方はぜひご覧ください。
 

AIを活用し、自社の提供価値を高めよう

AIの発展に伴い、私たちの多くはすでにその恩恵を受け始めており、今後さらにその分野は広がっていくことが予測されます。

これまでAIを活用してこなかった業界や業種でも、今後、AIはさまざまな形で関わってくるでしょう。その際に大事なことは、AIを正しく理解し、正しく活用することです。AIは人間の仕事を奪う敵でもなければ、何でも解決できる魔法の杖でもありません。自社のサービスをよりよい形で顧客に届けるための1つの手段と認識しましょう。

AIを活用し、さらに顧客に寄り添える企業へと転換を図ってみてはいかがでしょうか。

HubSpotではこの他にもマーケティングやセールスに役立つ資料を無料で公開していますので、ぜひこちらからご覧ください。

 

AI導入ガイド - AI (Artificial Intelligence) でマーケティングを強化

 AI導入ガイド - AI (Artificial Intelligence) でマーケティングを強化

元記事発行日: 2020年8月03日、最終更新日: 2023年1月19日