BtoBブランディングとは?効果や進め方、成功事例を解説

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水落 絵理香(みずおち えりか)
水落 絵理香(みずおち えりか)

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BtoBブランディングとは、企業間取引において良好なブランドイメージを醸成させるための取り組みを指します。ブランディングを効果的に活用すると、認知度の向上やイメージアップ、見込み客への転換率アップなどが期待できます。

BtoBブランディングとは?効果や進め方、成功事例を解説

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    BtoBビジネスでは、意思決定に複数人が関与したり、購買プロセスが長期化したりといった特徴があるため、ブランディングにおけるBtoB特有の勝ちパターンを形成することが大切です。

    本記事では、BtoB企業がブランディングを実施するメリットやポイントなどを解説します。ブランディングによって見込み客を創出したいとお考えのご担当者様は、ぜひ本記事の内容を参考にしてください。

    BtoBブランディングとは

    まずは、BtoBブランディングの意味や重視される理由、BtoCブランディングとの違いなど、基礎知識を解説します。
     

    BtoBブランディングの意味

    BtoBブランディングとは、ターゲットとなる企業に対して自社のブランド価値を認知してもらうための取り組み全般のことです。

    ポジティブなブランドイメージが形成されると、複数の選択肢から商品やサービスを比較する際に自社製品の優先度が高まり、指名買いにつながりやすくなります

    ブランディングは、訴求する対象や発信する相手によって手法が複数に分かれます。

    【何を対象としたブランディングか】

    • 商品ブランディング: 主に商品やサービスの価値を訴求する手法
    • 企業ブランディング: 企業そのものの強みや社会的貢献度を訴えかける手法

    【誰に向けたブランディングか】

    • アウターブランディング: 顧客や潜在顧客、メディア、求職者などの社外に向けた手法
    • インナーブランディング: 企業文化形成を目的に組織内の従業員に向けた手法
       

    BtoBブランディングが重要視される理由

    多くの分野でコモディティ化が進むなか、技術や機能性のみで他社よりも優位に立つことは、難易度が高まっているといえます。設計・製造技術のデジタル化が進んだことで、各社の商品やサービスが標準化されつつあることが理由のひとつです。

    似たような商品が増えることは、価格競争が激化する要因になりかねません。発注元の視点に立つと、技術や機能に差がなければ、企業そのものの信頼性やシェアなどのブランドイメージが、商品選定の重要なウェイトを占めるようになります。

    BtoBブランディングによって発注元の期待感を高めることで、受注率の向上が期待できます
     

    BtoCブランディングとの違い

    BtoBは企業間、BtoCは企業対消費者といったように、対象となるターゲットが異なります。

    【BtoBビジネスの傾向】

    • 意思決定への関与者:複数人
    • 検討期間:長い
    • 意思決定の基準:課題解決を見据えた製品導入の合理性

    【BtoCビジネスの傾向】

    • 意思決定への関与者:1人または少数
    • 検討期間:短い
    • 意思決定の基準:合理性や感情などのさまざまな意思が反映

    ターゲットが異なると意思決定方法や購買プロセスにも違いが現れるため、ブランディング施策の内容にも変化が生じます。

    BtoCの場合は、ターゲットのライフスタイルや個人的な価値観に合致するようなブランディングを意識し、共感してもらうことが大切です。一方のBtoBでは、信頼性や専門性、論理性を重視したブランディングの設計が重要だといえます。
     

    ブランディングがBtoB企業にもたらす効果

    BtoBビジネスの傾向を理解したうえでブランディングを行うと、次のような効果があります。

    1. 認知度向上・イメージアップ
    2. リード創出・アポイント率の向上
    3. 価格競争からの脱却
    4. 仕入れコストの削減・スムーズな資金調達
       

    1. 認知度向上・イメージアップ

    ブランドイメージ確立のために、さまざまな情報を発信することで、結果的に自社商品・サービスの存在を知らない潜在客と新たなつながりが生まれる可能性があります。

    BtoBビジネスでは複数社の製品を比較・検討するのが一般的ですが、自社の存在を認知してもらわない限り、候補にあがることはありません。購買担当者や決裁者の記憶に社名やブランド名が少しでも残っていれば、選択肢に入る可能性も十分に考えられるでしょう。

    ブランディングによって、すでに自社商品・サービスの存在を認知している見込み客が持つ自社のイメージアップも期待できます。
     

    2. リード創出・アポイント率の向上

    BtoB向けの製品は、BtoCのような「衝動買い」が少なく、感情よりも合理性にもとづいて選定されるイメージがあります。しかしBtoB領域でも、購買担当者や意思決定者の感情面が製品選定に大きく影響を与えるという事実があります

    デジタルマーケティング会社の株式会社ニュートラルワークスが実施した、BtoB向けサービスの選定における情報収集の実態調査によると、製品比較時に知名度やブランドを重視している人が多いことが明らかとなりました。

    BtoB向けサービスの選定における情報収集の実態調査

    出典:BtoB向けサービスの認知獲得と導入時に重要視される要素とは?【調査レポート】|PR TIMES

    最も重視されているのは口コミや価格の優位性ですが、機能性やサポートの充実度を押さえ、知名度・ブランドが上位にランクインしています。その点から知名度やブランドは、製品選定時の期待感を醸成する大きな要因だといえるでしょう。

    期待感が高まると、その製品に関する詳細な情報を取得したり、現状の課題を営業担当者に打ち明けたりと、購買担当者の積極的なアクションにつながりやすくなります。結果として、リード創出やアポイント率の向上が期待できます。
     

    3. 価格競争からの脱却

    特定の分野でコモディティ化が進むと市場が成熟し、価格競争が加速します。そのような市場でシェアを獲得するために値下げをした結果、財務状況が悪化する可能性も考えられるでしょう。

    強固なブランドイメージが確立されていると指名買いが増え、値上げに対する許容度が高まりやすくなります

    ブランディングは価格競争から脱却するうえでも効果的な施策です。
     

    4. 仕入れコストの削減・スムーズな資金調達

    BtoBブランディングは新たな顧客の創出だけでなく、仕入れや資金調達の際にも効果を発揮します。

    例えば、ブランド力のある企業は、仕入先にとっても大きな実績を生み出す魅力を備えているため、よりスムーズに価格交渉を進められます。また、資金調達時には、投資家に向けてビジョンやミッションなどを訴求することで、自社に共感する人が増え、投資額の向上が期待できるでしょう。

    社外に向けて情報発信を行う際は、新規顧客の創出を目的とするのか、それとも仕入先や投資家をターゲットにするのか、対象範囲を明確にすることが重要です。
     

    BtoB企業におけるブランディングの進め方

    ここでは、次の手順に沿って、BtoBブランディングの進め方を解説します。

    1. ブランドの軸となるポイントを決める
    2. 目的やペルソナを明確にする
    3. ブランディングの施策を検討する
    4. 効果測定を行う
       

    1. ブランドの軸となるポイントを決める

    自社の正しいブランドイメージを訴求するには、まずその軸を固めなければなりません。商品・サービスの機能性や効果だけでなく、事業を立ち上げたきっかけや現在の事業、将来的なビジョンといった根本的な部分に立ち返って考えることが重要です。

    特に、次の3点は、相手からの共感や理解を得るための重要な要素です。

    • 事業運営の根本的な動機
    • 市場での立ち位置
    • 目指している社会

    このようなブランドの軸が明確になると、ブランディングを実施する目的や、それに応じた具体的な施策を考えやすくなります。
     

    2. 目的やペルソナを明確にする

    ブランディングの目的やペルソナの設定は、具体的な施策を考えるうえで重要な意味を持ちます。目的が不明瞭なままでは、「誰に・何を・どのように伝えるか」が定まらないため、先に目的から設定することが大切です。

    目的を決める際は、価格・機能・ブランドといった自社の課題を洗い出すところから始めます。ブランドを確立した結果、自社のどのような課題が解決されるのかをイメージしましょう。

    また、ペルソナは、「企業」と「担当者」の2つの軸をもとに設計します。企業ペルソナは主に企業名や組織規模、担当者ペルソナは氏名や性別、所属部署などによって構成されます。PEST分析や3C分析などを活用しつつ、実態に沿った顧客像をペルソナとして設定しましょう。

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    3. ブランディングの施策を検討する

    ブランディングの施策は種類が多く、目的に合わせて最適なものを組み合わせる必要があります。自社の市場における立ち位置やビジョンといった要素との相性を考えることも大切です。

    BtoBブランディングの代表的な施策は次の通りです。

    【ブランディング施策の一例】

    • 広告:テレビCMや動画広告を活用してブランドの世界観をアピール
    • オウンドメディア・SNS:ブランド価値向上につながるコンテンツを展開
    • 広報活動:外部メディアの影響力を駆使して企業メッセージを発信
    • イベント・セミナー:参加者に対して自社の専門性を訴求

    このように、見込み客や顧客とコミュニケーションを取りながらブランド価値を高めます。

    一方で、自社独自の価値を発揮できる製品になっているか、製品開発の段階からブランディングを意識することも重要です。例えば、想定ターゲットと実際の利用者に乖離が生まれていないか、あるいはパッケージを見るだけでブランドイメージが想起できるかといった点は、ブランディングを考えるうえで重要な要素となります。

     

    4. 効果測定を行う

    施策を実施した後は定期的に軌道修正を行うことが大切です。KPIを設定して効果測定を行い、ブラッシュアップしながら最適解を見つけると良いでしょう。

    BtoBブランディングの代表的なKPIは次の通りです。

    【認知度を測るKPI】

    • 新規接触率:商品やサービスを初めて認知した人の割合を示す指標
    • ブランド想起率:自社ブランドの認知度や、製品選定時の想起具合を示す指標

    【満足度やロイヤルティを測るKPI】

    • NPS:ブランドに対する推奨者や批判者の割合を測定する指標
    • DWB:商品やサービスの購入意向を測定する指標

     

    BtoB企業におけるブランディング戦略の成功事例

    ここでは、BtoB企業におけるブランディング戦略の成功事例を紹介します。自社の施策を検討する際の参考にしてください。
     

    株式会社アマダ

    株式会社アマダ

    出典:アマダ|金属加工機械のグローバルメーカー

    株式会社アマダは、金属加工機械の製造や保守点検を行うメーカーです。

    同社は2023年2月に、生産技術向上を目的とした施設「アマダ・ソリューションセンター」を刷新し、「アマダ・グローバルイノベーションセンター」を開設しました。

    新たな施設では「お客さまとともに金属加工の未来を共創する空間」をコンセプトに、単なる研究開発にとどまらず、同社の最新技術や機器を一般公開しており、誰でも体験が可能です。技術展示・ブランド訴求エリアに加えて、コミュニケーションスペースや販売商談スペースも充実しています。

    技術志向型の機械メーカーというブランドイメージや、顧客と自社の発展を願うメッセージを肌身で感じられるのがポイントです。
     

    ノバセル株式会社

    ノバセル株式会社

    出典:ノバセル | 今の広告代理店に満足していますか?

    ノバセル株式会社は、テレビCMの広告代理事業や独自の分析ツールを提供する企業です。

    「マーケティングの民主化」をミッションに掲げ、大手広告代理店とは異なる土俵で立ち向かうことを志向していた同社は、3C分析の結果、テレビCMの分野にその活路を見出します。大手広告代理店の主な顧客となるスタートアップやベンチャー企業の多くが、テレビCMを活用していなかったためです。

    競合他社が参入しにくく、なおかつ自社の強みを最大限に活かせる領域を特定したのは大きなポイントだといえます

    同社はその後、テレビCMにおけるプロモーションで急成長を遂げています。ブランディングにおけるポジショニングを明確にして成功した好事例だといえるでしょう。
     

    BtoBブランディングを成功させるためのポイント

    BtoBブランディングを成功させるための主なポイントは次の通りです。

    • 意思決定プロセスに応じてペルソナを細分化する
    • 組織内での意識を統一する
    • ブランドマネージャーの設置を検討する

    それぞれのポイントについて詳しく解説します。
     

    意思決定プロセスに応じてペルソナを細分化する

    ペルソナの設定時は、対象者を細かく絞り込みましょう。

    BtoBはBtoCと異なり、意思決定に複数人が関与し、稟議によって決裁されるのが一般的です。そのため、ブランディングの対象となるターゲットも、次のように細分化されます。

    • 製品の選定や情報収集を行う購買担当者
    • 課長や部長などの承認者
    • 最終的な決裁を行うプロジェクトリーダー

    また、条件によって複数の決裁者に分かれるケースも考えられるでしょう。通常は部門マネージャーが決裁し、高額な製品の場合は社長が決裁するといったパターンです。複数の顧客像が浮かぶ場合は、2つ以上のペルソナを設定する方法もおすすめです。
     

    組織内での意識を統一する

    BtoBブランディングを実施する際は、ブランドの軸やペルソナなどの要素を社内で周知徹底することが重要です。

    組織内の従業員に共通認識がなければ、「キャッチコピーに記載されていた内容と、担当者の案内に差がある」といった印象を抱かせ、かえってイメージが悪化する可能性があります。営業活動に限らず、広告やカスタマーサポートなど、すべての顧客接点において統一されたメッセージを発信することが重要です。

    加えて、組織内で情報が正確に共有されない可能性も考えられます。情報共有が阻害されるのは、その情報の重要性が十分に理解されていないことが主な原因です。そのため、ブランディングを行うことで得られるであろう成果や、従業員に対する恩恵などについても丁寧に説明することが求められます。
     

    ブランドマネージャーの設置を検討する

    ブランドマネージャーとは、ブランド戦略立案から施策の実行、評価までの流れを一貫して担当し、ブランドの浸透状況を一元管理する責任者です。ブランディングの推進役を選出することで、ガイドラインに則った適切な内部統制や、社内外でのブランドイメージの統一化が図れます

    事業計画や製品開発・投入などの幅広い領域に関与するため、ブランドマネージャーにはコミュニケーションスキルや洞察力、マーケティング知識といった体系的な能力が求められます。

    一方で、ブランドマネージャーが各部門を動かす権限を持たず、具体的な施策の実行に移すのが困難なケースもあります。状況に応じて、製品開発やマーケティング予算策定などの権限をブランドマネージャーに付与するのも一案です。
     

    ブランディングで期待感を醸成しBtoBビジネスに好循環を生み出そう

    BtoB企業が受注を獲得するためには、さまざまなハードルがありますが、見込み客の期待感を醸成することも重要です。

    ブランディングによって期待感を醸成し、商品やサービスの提供を通じて「信頼」という形で応えることで、長期的で持続可能な関係構築へとつながります

    まずはブランドとしての軸を設計し、目的やペルソナを明確にする必要があります。施策実施後の効果測定も忘れずに行い、ブランディングの成果を高めましょう。

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