オウンドメディアとは、自社サイトやブログといった、企業が保有する独自のメディアを指します。
HubSpot編集長が解説! トラフィックを1年で倍増させた、読者に寄り添いながら成長し続けるブログの作り方
ウェビナー動画付き!HubSpot Japanのブログ編集長がトピックの選び方から日々のブログ運用方法まで徹底解説。
- ブログ・オウンドメディアの方針を決める5ステップ
- 成果が出る記事に必要な4つの要素
- トラフィックを増強し成果を出すための施策
- リード創出のための3つの施策
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オウンドメディアでは、商品やサービスの存在を知らない潜在客や、すでに比較・検討段階に入っている顕在層まで、幅広いターゲットへのアプローチが可能です。そのため、マーケティングプロセスが長期化しやすいBtoBビジネスとの相性が良いといえます。
本記事では、BtoB企業がオウンドメディアを運用するメリットや、運用のコツを解説します。また、業種や業態の異なる10社の成功事例も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
BtoB企業がオウンドメディアを運用する目的
BtoB企業は、さまざまな目的を持ってオウンドメディアを運営しています。ここで紹介する目的設定の例を参考に、自社にとって適切なゴールを設定してください。
リード創出やナーチャリングを通じた売上への貢献
オウンドメディアでターゲットに対して価値あるコンテンツを提供することで、新たな接点が生まれ、リード創出やナーチャリング(購買意欲の醸成)のきっかけとなります。有望な見込み客(ホットリード)へと発展すれば、成約へと至る可能性が高まり、売上への貢献が期待できるでしょう。
例えば、HubSpotでは、次のような流れでコンバージョンへの道筋を構成しています。
- 「インサイドセールス テレマーケティング」のキーワードで、検索エンジンからブログへとユーザーが流入
- 該当するページをユーザーが閲覧
- ページ内に掲載された無料eBookに興味を持ったユーザーが資料をダウンロード
- 氏名や会社名、担当部署、メールアドレスといったユーザーの情報を取得すると同時に、見込み客としてリスト化
- リスト化した見込み客に対して、架電やメールなどを通じて関係性を強化
ユーザーは自身の悩みを解消でき、企業にとっては顧客創出のきっかけを生み出すことになるため、双方にとってWin-Winの関係が構築されます。
企業メッセージの流布
企業やブランドが持つメッセージを外部に向けて発信する際にも、オウンドメディアが役立ちます。直接的な売上につながるわけではありませんが、自社の理念やカルチャーに触れた求職者が企業に興味を持った結果、採用効率の向上やミスマッチの減少につながる可能性があります。
また、企業やブランドのイメージが世の中に浸透し、ブランディングに結び付くのも利点です。
メディア自体の事業化
既存事業のマーケティングに活用するのではなく、オウンドメディアから収益を発生させて事業化することも可能です。収益化の手段としては、広告枠販売やアフィリエイトなどがあります。
- 広告枠販売:
オウンドメディア内の広告枠を広告主に販売 - アフィリエイト:
広告主が提供する広告を掲載し、商品・サービスの購入やクリックなどで報酬を得る
ただし、事業を継続できるだけの収益を得るには、数多くのトラフィックが必要です。環境を構築するまでに時間がかかるため、中長期的な視点が求められます。
BtoB企業がオウンドメディアを運用するメリット
BtoB企業がオウンドメディアを運用するメリットは次の通りです。
- ユーザーとの接点を継続的に維持できる
- 集客効果を高めて不要な広告費を削減できる
- 潜在層や顕在層にアプローチできBtoBビジネスと相性が良い
ユーザーとの接点を継続的に維持できる
オウンドメディアでは、主にSEO(検索エンジン最適化)を用いてサイトへの流入を図ります。
検索エンジンの検索結果で上位を獲得し続ければ、Webサイトへの継続的なアクセスが期待できるため、ユーザーと良好な関係を維持するうえで最適な施策だといえます。
クリック率で比較すると、SEOにおける検索順位の1位が約14%といわれているのに対して、リスティング広告のクリック率は3~6%程度(英語)とされています。業種によってクリック率が異なるため、あくまで目安にはなりますが、SEOで上位を獲得することがいかに重要かがわかります。
集客効果を高めて不要な広告費を削減できる
前述したSEOを活用すると、広告と同じようにオウンドメディアにも集客効果が生まれます。オウンドメディアで多数のユーザーを集客すれば、費用対効果の低い広告を整理できるため、大幅なコストカットにつながります。
ただし、オウンドメディアにも次のような費用が必要です。
- オウンドメディア構築時のデザイン・プログラミング費用
- サーバーの維持コストやドメイン代
- ライターやディレクターの外注費といったコンテンツ制作費
広告費が発生しない点はオウンドメディアの大きな利点ですが、オウンドメディアの運営にかかるコストも踏まえて中長期的な費用対効果を検証しましょう。
潜在層や顕在層にアプローチできBtoBビジネスと相性が良い
BtoBの購買決定には、経営者やマネージャー、購買担当者など複数の人が介在し、長い期間を経て導入に至るのが一般的です。そのため、潜在客から見込み客への転換、見込み客の購買意欲醸成、確度の高い見込み客の特定といったプロセスを経由し、少しずつ顧客への転換を図るケースが多くなります。
オウンドメディアでは、商品やサービスの存在を知らない潜在客や、すでに比較・検討段階に入っている顕在層まで、幅広いターゲットにアプローチできます。マーケティングプロセスが長期化しやすいBtoBビジネスでも、柔軟にターゲットを特定してコンテンツを提供できるのが利点です。
BtoB企業が運営するオウンドメディアの事例10選
オウンドメディアの運営方法に正解はなく、目的や自社のリソースなどによっても取るべき施策が異なります。他社の事例を参考にしながら、自社に合った施策を検討しましょう。
ここでは、10種類の事例を紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
1. リードプラス株式会社
出典:リードプラス株式会社
リードプラス株式会社は、コンテンツ制作やコンサルティングなどのマーケティングサービスを提供している企業です。
同社は、クライアントごとに異なるCMS(コンテンツ管理システム)を運用しており、煩雑なコンテンツ管理に悩まされていました。さらに、管理手法が複雑になった結果、マーケティングサービスの品質にも影響があったといいます。
そこで、HubSpotが提供する「CMS Hub」(現Content Hub)を導入し、トラフィック獲得およびリード創出のために独自のブログを構築します。
CMS Hubでは、管理画面トップページのレポートで、獲得トラフィックやリード数などの成果を確認することが可能で、そこから得たノウハウを自社のマーケティングサービスに反映しました。その後はマーケティングファネルを拡大しつつ、いままで実現したかったマーケティングサービスの質向上にも貢献しています。
2. 株式会社LIG
出典:Blog Top | 株式会社LIG(リグ)|DX支援・システム開発・Web制作
株式会社LIGは、システム開発やマーケティング支援を行うWeb制作会社です。「LIGブログ」という名称でオウンドメディアを運営しています。
LIGブログは、掲載コンテンツのジャンルの多様性が強みです。Web制作にかかわる基礎知識から、最先端テクノロジーのトレンド情報、マーケターへのインタビュー、ユーザーの導入事例など、幅広いユーザーを取り込める興味深いコンテンツを提供しています。
また、解説系のまじめなコンテンツのなかに、ときおり従業員の人となりがわかるユニークなコンテンツが紛れ込んでいるのも特徴です。バラエティーに富んでおり、情報収集だけでなく読み物として楽しめるのも、LIGブログの魅力だといえるでしょう。
3. 株式会社ブイキューブ
株式会社ブイキューブは、Web会議システムやライブ配信プラットフォームなどを提供する企業です。「ブイキューブのはたらく研究部」と呼ばれるオウンドメディアを運営しています。
同メディアのコンテンツは、企業における働き方の変化に関するトレンド情報や、制度改革のノウハウなどが中心です。働き方改革の普及によって法律や制度が変化しやすい環境下で、素早く最新情報を取得できるメリットがあります。
コンバージョン先は、より詳細なコンテンツがまとめられたホワイトペーパーが主軸で、見込み客へと転換する効率的な仕組みが整っています。
4. 弥生株式会社
出典:弥報Online
弥生株式会社は、クラウド会計ソフト「弥生会計」を提供する企業です。主に、経営者向けの「弥報Online(やっほーオンライン)」と呼ばれるオウンドメディアを運営しています。
「顧客獲得・売上アップ」「事業成長・経営力アップ」「経営ノウハウ&トレンド」といった形で、各コンテンツのカテゴリーが綺麗に整理されていて、必要な情報を探しやすいのが特徴です。単なる解説系のコンテンツではなく、専門家へのインタビューにもとづいた独自性の高いコンテンツもあります。
コンテンツ内に動画を掲載し、公式YouTubeチャンネルと上手く連動させているのもポイントです。また、各コンテンツにアンケートページへのリンクが掲載されており、読者の声をコンテンツに反映させる仕組みが整っています。
5. 株式会社i-plug
出典:人事ZINE | 新卒採用で困った時に寄り添い解決に導くメディア
株式会社i-plugは、転職サイトやダイレクトリクルーティングサービスを提供する企業です。企業の人事担当者向けに「人事ZINE」と呼ばれるオウンドメディアを運営しています。
人事ZINEのコンテンツは、「採用する・募集する・選考する」といった形で、読者のアクションごとにカテゴリーが細分化されています。いまどのような行動を取りたいかによって、効率良くコンテンツを探せるのが利点です。
専門家へのインタビューやイベントレポートなど、人事領域における最新トレンドを把握できるのもポイントです。
6. 株式会社ソフトクリエイト
出典:情報システム部の悩みや課題を解決する、情シスサポートメディア | 情シスレスキュー隊
株式会社ソフトクリエイトは、IT基盤の設計や構築、コンサルティングなどを担うシステムインテグレータです。
同社は、情報システム部門向けのオウンドメディア「情シスレスキュー隊」を運営しています。情報システム部門でよくある悩みや疑問が即座に解決でき、IT関連の最新トレンドも把握しやすいメリットがあります。
メディアプラットフォームのnoteと上手く連携しているのも特徴的です。noteでは、情報システム部門の初歩的な疑問を解決できる「情シスの窓口」や、システムインテグレータとしてのシステム導入体験記「情シス SHOWROOM」などのコンテンツを発信しています。ユーザーとの接点を増やして効率良くアクセス数を向上させている好事例です。
7. オムロン株式会社
出典:オムロン | EDGE&LINK 切り拓く、未来を創る。
オムロン株式会社は、産業用制御機器や電子部品などを取り扱うメーカーです。オウンドメディアの名称は「EDGE&LINK」で、オムロン株式会社の取り組みや企業としてのビジョンなどを中心に情報を発信しています。
より広い範囲へと企業メッセージを流布することで、効果的なブランディングにつなげています。
また、世界中の従業員へ、企業理念を実現するための取り組みを伝えているのも特徴です。他拠点や他部門の取り組み内容を即座に知れるため、グローバルベースでの情報共有に効果を発揮するだけでなく、従業員のエンゲージメント向上に寄与しています。
8. 株式会社キーエンス
株式会社キーエンスは、大阪市に拠点を構える自動制御機器や計測機器のメーカーです。
同社は、特定の分野ごとに幅広い種類のオウンドメディアを展開しています。安全機器に関する「安全知識.com」や測定機器の「測定器ナビ」、熱処理の基礎知識を解説している「熱処理入門」などが代表的です。
自社の取り組みや理念を紹介するのではなく、顧客の課題解決につながる参考情報を提供するホワイトペーパー型のオウンドメディアが中心です。
各コンテンツページにはホワイトペーパーのダウンロードリンクが掲載されています。ダウンロードするには属性情報や連絡先を入力する必要があり、それぞれのオウンドメディアから効率良くリード創出を行っていることがわかります。
9. 富士通株式会社
富士通株式会社は、ビジネスアプリケーションやネットワーク、インフラ運用などの幅広いITサービスを提供する企業です。「フジトラニュース」と呼ばれるオウンドメディアを運営しています。
フジトラニュースの掲載情報は、AI・IoTなどのトレンド情報や取引先企業の導入例などが中心です。また、サステナブルな世界の実現に貢献する事業「Fujitsu Uvance」に関するコンテンツも多く、地球環境や社会の課題解決を意識するビジネスパーソンも想定読者に含まれています。
アンケートや問い合わせなどのコンバージョンリンクが目立たない箇所に配置されている点から、リード創出よりもブランディングに重きを置いていることがわかります。
10. ブラザー販売株式会社
ブラザー販売株式会社は、プリンターやFAX、ミシンなどのメーカーであるブラザー工業株式会社の子会社にあたる企業です。主にbrother製品のプロモーションや修理サービスを展開しています。
同社が運営しているのは、「ビジネスNAVI」と呼ばれる業界最前線の情報を提供するオウンドメディアです。
具体的なコンテンツは、物流業界におけるEDIの基礎知識や、食品業界での食品表示制度への対応方法などが中心です。そのほか、brother製品の活用方法や導入事例なども紹介されています。メーカーや販売店が持つ専門的な情報が含まれており、独自性の高いコンテンツが多い傾向にあります。
コンバージョンは問い合わせ獲得で、「製品選定に関する問い合わせ」「購入・見積もりに関する問い合わせ」と、読者のニーズに合わせてコンバージョン先が分かれているのが特徴的です。
BtoB企業で効果的にオウンドメディアを運用するポイント
BtoBにおけるオウンドメディアで成果をおさめるには、いくつか押さえておくべきポイントが存在します。ここでは、4つのポイントに分けてその秘訣を解説します。
課題・目的・目標の順に指標を設定する
オウンドメディアを運営するには、適切な目的や目標の設定が欠かせません。
目的や目標が明確になれば、各コンテンツに適切なコンバージョン先を設定できます。例えば、リード創出が目的の場合、問い合わせや資料請求、ホワイトペーパーダウンロードなどがコンバージョンとして適切です。
適切な指標を設定するには、課題・目的・目標の順に要素を洗い出すと良いでしょう。
マーケティングや営業の領域において、現状抱えている課題を特定し、オウンドメディアによってどのように解決を図るのかを定義します。その解決手段が目的、すなわちビジネスのゴール(KGI)になるので、さらにKGIから逆算する形で複数のKPI(中間目標)をピックアップしましょう。
コンテンツの制作体制を整備する
オウンドメディアを運営するには、ディレクションスキルやSEOの知識など、専門的な知見が必要です。そのため、さまざまなスキルをまかなえる人員を招集し、現実的に運用可能な体制を整えましょう。
目的とするオウンドメディアの規模によっても異なりますが、一般的には次のような人員が必要です。
- GM(ジェネラルマネージャー)
- PM(プロジェクトマネージャー)
- ディレクター・エディター
- ライター
- イラストレーター
- プログラマー
コンテンツ制作の内製化が難しい場合は、部分的にアウトソーシングを活用するのも方法のひとつです。
ユーザーへとコンテンツを届ける手段を検討しておく
いくら質の高いコンテンツを作成したとしても、ユーザーにその情報が届かなければ意味がありません。コンテンツを制作したは良いものの、なかなかアクセスにつながらないのはオウンドメディアでよくある失敗のパターンです。
そのため、コンテンツの企画や制作手段を検討するとともに、ユーザーにコンテンツを届ける方法を考えておくことも重要です。
具体的には、SEO(検索エンジン最適化)やSNSによる情報発信、広告出稿、外部メディアへの露出といった方法が考えられます。自社に合った選択肢を模索したり、複数を組み合わせたりしながら、適切な手段を見極めましょう。
既存コンテンツの効果検証と改善を繰り返す
オウンドメディアに投稿したコンテンツは定期的なメンテナンスが必須です。コンテンツの鮮度が低くなると、検索エンジンにおける検索順位が下がる、あるいは既存コンテンツに埋もれてアクセス数が減少する可能性があるためです。
そこで、あらかじめ設定したKPIをもとに効果検証を行い、繰り返しコンテンツの内容を改善しましょう。
改善方法は、集客方法や重視するKPIによって大きく異なります。例えば、集客方法がSEOで、重要なKPIである検索順位が低い場合、検索意図を深掘りし、読者が知りたがっている情報を足したり、不要な情報を削ったりといった工夫が求められます。
また、オウンドメディアの運営では、成果が出るまでにある程度の時間がかかります。すぐに成果が出ないからといって諦めず、中長期的な視点で改善を繰り返しましょう。
オウンドメディアを活用してBtoBビジネスの接点を生み出そう
BtoB企業がオウンドメディア運営に取り組むことで、継続的なユーザーとの接点を生み出せます。また、集客効果を高めた結果、広告費の削減につながるのもメリットです。
オウンドメディアを効果的に運用するには、適切な目的や目標の設定に加え、既存コンテンツの効果検証や改善を行うことが欠かせません。今回紹介した事例を参考にしながら、さっそくオウンドメディアを立ち上げてみてはいかがでしょうか。