BtoB広告は、一般消費者をターゲットにするBtoC広告と異なり、ビジネスパーソンが対象となります。そのため、広告配信の目的や、認知から購買までの期間などに大きな違いがあります。
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BtoC広告とBtoB広告の違いを意識したうえで、BtoB広告に向いている手法やそれぞれの特徴を理解しておくことが大切です。
本記事では、BtoB広告の16の手法を取り上げながら、概要やBtoC広告との違いを解説します。運用時のポイントも解説していますので、ぜひ参考にしてください。
BtoB広告とは
まずは、BtoB広告の基礎知識を解説します。BtoC広告との違いを意識しつつ、BtoB広告特有の性質を理解しましょう。
BtoB広告の特徴
BtoB広告とは、企業間取引を行う際に出稿する広告のことです。ビジネスチャットツールや産業用機械など、対企業向けの製品をアピールするために活用されます。
ターゲットは一般消費者ではなく、企業の経営者や購買担当者、決裁者、個人事業主などのビジネスパーソンが中心です。広告媒体は、テレビやラジオなどのマス広告から、インターネットやデジタルサイネージなどのデジタル広告まで、多岐にわたります。
広告を通じて商品・サービスの認知度を高め、問い合わせや購入の機会を増やすことを目的としています。
BtoC広告との違い
BtoC広告とは、一般消費者をターゲットにした広告のことです。対個人向けの商材をアピールするために活用されます。
BtoC広告とBtoB広告の主な違いは、次の通りです。
BtoB広告の目的には、リードの創出や購買意欲の醸成、商談のアポイント獲得などがあり、施策の内容も目的に合わせて変更する必要があります。
また、「好き嫌い」や話題性など、個人の主観が意思決定に影響しやすいBtoC広告とは異なり、BtoB広告では費用対効果が重視される傾向にあります。そのため、特定の商品やサービスを購入することで、顧客にどの程度の利益がもたらされるのかといった、よりビジネスライクな視点が求められるでしょう。
加えて、購買担当者以外に経営者やマネージャーなどの複数人が意思決定にかかわるのも、BtoB広告の特徴です。稟議や調整に時間を要するため、おのずと購買プロセスが長期に及びます。
BtoB広告の種類
BtoB広告には、次のようにさまざまな手法が存在します。各手法は大きくオンライン広告とオフライン広告に分けられ、それぞれメリット・デメリットがあります。
ここでは、BtoB広告をオンラインとオフラインで計16種類の手法に分類し、それぞれの特徴を解説します。
オンラインの代表的な手法
まずは、オンラインのBtoB広告の代表的な手法を紹介します。
- 検索連動型広告(リスティング広告)
- ディスプレイ広告
- SNS広告
- 動画広告
- 記事広告
- リターゲティング広告
- 純広告
- メルマガ広告
1. 検索連動型広告(リスティング広告)
検索連動型広告とは、検索エンジンの検索結果の最上部や、コンテンツとコンテンツの間に表示される広告です。検索キーワードごとに広告を出稿できるのが特徴です。
検索ニーズに合うクリエイティブを用意することで、高いアクセス促進効果が見込めます。入札単価や広告の品質によっては、通常のコンテンツより上位に表示されるため、ユーザーの視認性が一層高まります。
検索連動型広告とディスプレイ広告を総称して、「リスティング広告」と呼ぶこともあります。
2. ディスプレイ広告
ディスプレイ広告とは、Webサイト上に用意された広告枠に、テキスト・画像・動画などの形式で表示される広告です。
Webサイトのコンテンツと広告の内容が一致するように表示されるため、「コンテンツ連動型広告」とも呼ばれます。そのコンテンツに興味があるユーザーは、自社の広告にも興味を示す可能性が高いといえるでしょう。
ディスプレイ広告は検索連動型広告と同様、入札単価や広告の品質をもとに掲載順位が決まります。
3. SNS広告
SNS広告は、FacebookやInstagram、X(旧Twitter)などの広告枠に表示される広告です。
広告枠はプラットフォームによって異なりますが、タイムラインやおすすめアカウント、ストーリーズなどが代表的です。テキスト・画像・動画だけでなく、画像や動画を横並びに表示する「カルーセル形式」と呼ばれるフォーマットにも対応しています。
対象となるユーザーが、SNSに登録されたアカウント情報と紐付くため、ターゲティング精度の高さに特徴があります。年齢や性別、勤務先などの属性データや、SNS上の行動履歴データなどを条件に、細かくターゲットを指定できるのがメリットです。
4. 動画広告
動画広告は、映像で商品やサービスを訴求する広告です。静止画のバナー広告よりも情報量が多いため、短い時間で効率良く商品やサービスを訴求できます。また、映像による動きが加わることで、ユーザーの興味を引きやすくなります。
動画広告には次のような種類があります。
- インストリーム型:動画コンテンツの再生直後や再生中に流れる広告
- インバナー型:動画配信プラットフォームの広告枠に表示される広告
- インリード型:記事コンテンツをスクロールすると画面内に表示される広告
5. 記事広告
記事広告とは、Webメディアや雑誌などに、一般的な記事と同様の体裁で掲載する広告です。外部メディアに掲載を依頼することも多いため、「タイアップ広告」とも呼ばれます。
「広告」や「PR」などの表示は必要ですが、見た目は一般的な記事と変わらないため、メディアコンテンツを目的とするユーザーに対しても自然なアプローチが可能です。さらに、テキストを中心としたコンテンツであることから、商品やサービスに対する理解を促進するための情報を豊富に提供できるという特徴もあります。
6. リターゲティング広告
リターゲティング広告は、自社サイトへの訪問履歴があるユーザーに配信する広告です。すでに商品やサービスを認知している可能性が高いユーザーにアプローチできるため、CVRの向上が期待できます。
リターゲティング広告の仕組みは、次の通りです。
- 何らかの製品を探してユーザーが自社サイトを訪問
- 他製品と比較するため、いったん自社サイトを離脱
- 後日、ほかのWebサイトで自社製品が掲載された広告を閲覧
- その広告をきっかけに再び自社サイトを訪問
- 再検討した結果、自社サイトの製品を購入
7. 純広告
純広告とは、Webサイトに用意されている特定の広告枠を買い取って掲載する広告です。
純広告には、次のような契約形態があります。
- 期間保証型:掲載される期間が設定されている広告
- インプレッション保証型:一定のインプレッション数を確約して配信する広告
- クリック保証型:一定のクリック数を確約して配信する広告
例えば、期間保証型の純広告は、その期間中、広告枠への掲載が保証されるため、必ずユーザーが広告を視認します。ただし、インプレッション数やクリック数は保証されないため、Webサイトの集客力に成果が依存する点に注意が必要です。
8. メルマガ広告
メルマガ広告は、自社が保有していないメールアドレスに向けて、広告付きのメールを送信する手法です。自社のハウスリスト宛てにメールを一斉送信するメールマガジンとは仕組みが異なります。
利用する媒体に合わせて、次のようなプランが用意されています。
- 号外広告プラン:配信媒体が保有するハウスリストにメールを一斉送信
- ヘッダー掲載プラン:メールの上部にテキストのみを掲載
- バナー掲載プラン:メール内部にバナー画像を掲載
メルマガ広告は、配信媒体によって、ある程度ターゲットを絞り込めるのがメリットです。例えば、ハウスリストに多数のマーケティング担当者が掲載された媒体を選ぶことで、マーケティング向けの商材を効率良くアピールできます。
オフラインの代表的な手法
次に、オフラインのBtoB広告の代表的な手法を紹介します。
- テレビ広告
- ラジオ広告
- 通広告
- 雑誌広告
- 新聞広告
- オフィス・ビル広告
- イベント・スポンサーシップ
- デジタルサイネージ
1. テレビ広告
テレビ広告(テレビCM)は、一度に多くの視聴者に商品やサービスの魅力を訴求できるのが魅力です。
テレビ広告は主に、「タイムCM」と「スポットCM」の2つに分類されます。
- タイムCM:
番組の放映時間中に設定してある広告枠を購入し、広告を配信する方法。番組の視聴者をターゲティングできるのが特徴。 - スポットCM:
特定の番組ではなく、テレビ局が定める時間帯に広告を配信する方法。番組を指定できないものの、配信する時間帯や期間、予算などを柔軟に設定できる。
2. ラジオ広告
ラジオ広告は、ラジオ番組内や、番組と番組との間に流れる広告です。テレビ広告と同じく、「タイムCM」と「スポットCM」の2種類があります。音声を使って商品やサービスの訴求を行うことから、「ながら聞き」でも特徴を理解できる商材に向いています。
BtoC向けのイメージが強いラジオ広告ですが、BtoB向けの商材を訴求する場としても活用できます。
例えば、オフィスや作業現場などでは、勤務中にラジオを流している企業も存在します。あらかじめターゲットの視聴傾向を把握し、適切な媒体を選ぶことで、自社の商品・サービスに対する関心を高められます。
3. 交通広告
交通広告とは、電車・バス・タクシー・駅といった交通関係の媒体に出稿できる広告です。掲載方法は看板やステッカー、ポスターなど、幅広い種類が存在します。
公共交通機関は一般消費者のほか、ビジネスパーソンも日常的に利用します。その分、広告に対する接触頻度が高いため、認知拡大に有効な手段だといえるでしょう。タクシー広告で経営者や役員向けの広告を訴求するなど、媒体によってターゲットをある程度絞り込めるのもメリットです。
4. 雑誌広告
雑誌広告は、雑誌の表紙や誌面などに掲載される広告です。写真やイラストに加えて、テキストで商品やサービスの詳細な内容を訴求できます。雑誌ごとにターゲットの年代や嗜好を絞り込めるのもポイントです。
雑誌広告は掲載方法により、特定の広告枠に出稿する「純広告」と、詳細な文章が掲載される「記事広告」に分かれます。ブランディングを強化したい場合は視認性の高い純広告を、商品やサービスを細かくアピールしたい場合は、記事広告を選ぶと良いでしょう。
5. 新聞広告
新聞広告は、新聞の紙面に掲載される広告です。公共性の高い新聞に広告を掲載することで信頼感を高めることが可能で、企業のブランドイメージ向上などの成果が期待できます。
広告を出稿する際は、掲載サイズに合わせて「段」を決めます。
新聞は一般的に、紙面の縦を15分割し、それぞれ「1段」として数えます。1段のすべてのスペースに広告を掲載する場合は「全1段」、半分のスペースを占める場合は「半1段」と表します。新聞広告の適切なサイズ感は、広告代理店と相談して決めると良いでしょう。
6. オフィス・ビル広告
オフィス内やビル内に広告を展開する手法です。オフィス勤務のビジネスパーソンに直接訴求できるほか、媒体の選び方次第で特定の企業にアプローチできます。
また、近年では、チラシ以外にデジタルサイネージでの訴求が一般化しつつあります。具体的には、次のような場所に広告を掲載できます。
- トイレ・喫煙スペース内のサイネージスペース
- オフィスに設置されているシュレッダーの上部
- オフィス内の冷蔵庫スペース
- 無人販売サービスのラックや冷蔵ケース
7. イベント・スポンサーシップ
展示会をはじめとするイベントに出展したり、イベントの運営企業とスポンサーシップ契約を結んだりする方法です。
イベントに出展する場合、商品やサービスの見せ方を自由にアレンジでき、さらに来場客との直接的な関係を築けます。興味を抱いた来場客とその場で商談できるため、リード創出に効果的です。
スポンサーシップ契約を結ぶ場合は、会場での看板広告掲載やネーミングライツなどで、ブランディング効果を高められます。ブランドイメージや認知度の向上に効果を発揮する手法です。
8. デジタルサイネージ
デジタルサイネージとは、ディスプレイやタブレットをはじめとする電子表示媒体に掲載する広告です。オフラインでコンテンツを表示する「スタンドアロン型」と、インターネットに接続してオンライン上のデータを読み込む「ネットワーク型」の2種類に分かれます。
表示画面が固定された従来の看板と異なり、ターゲットや時間帯などに応じて表示内容を柔軟に変更できるのが特徴です。
デジタルサイネージは、商業施設や金融機関、大学、公共交通施設など、屋内外を問わず幅広い場所に設置されています。
BtoB広告を運用する際のポイント
BtoB広告の成果を高めるには、運用時のポイントを理解することが重要です。ここでは、ポイントを4つに分けて詳しく解説します。
- 広告単体ではなくマーケティング施策全体の最適化を意識する
- ターゲットを明確化して戦略や手法を検討する
- KPIツリーを使って目標達成に向けたルートを構築する
- デマンドジェネレーションにもとづき部門間連携を図る
広告単体ではなくマーケティング施策全体の最適化を意識する
広告はあくまでマーケティング施策の一環でしかありません。見込み客や潜在顧客が自社の商品・サービスを認知してから購買に至るまでの流れには、メール配信やSNS、オウンドメディアなど、広告以外にもさまざまな施策が存在します。マーケティングの視点を広く持つことが大切です。
広告という単独の施策にこだわりすぎると、一部の見込み客にしかアプローチできない状態に陥る可能性があります。例えば、CPAを下げることばかりに注力したり、広告媒体を次々と変更したりといった具合です。
広告以外の施策との組み合わせで、マーケティング施策全体の最適化を目指し、顧客体験を向上させるための方法を考えてみましょう。
ターゲットを明確化して戦略や手法を検討する
前述の通り、BtoB広告の手法は種類が多く、媒体の選択肢も幅広く存在します。そこから適切な媒体を選ぶには、あらかじめ明確なターゲットを設定する必要があります。
SNS広告を例にあげると、FacebookやInstagramといった媒体ごとに、少しずつ利用者の属性が異なります。性別や年齢、居住地、行動傾向などのペルソナ情報と、媒体の特性を見比べつつ、それぞれの相性を判断すると良いでしょう。
KPIツリーを使って目標達成に向けたルートを構築する
KPIを設定する際は、部分最適化ではなく全体最適化を意識することが重要です。
「とにかくCPAを下げること」といった個別の指標ばかりを重視すると、個別の施策が最終的なゴールに向かっているのかどうかがわかりにくくなります。そのため、最終的なゴールであるKGIから逆算する形で、正しいKPI構造を設計する必要があります。
そこで、次のようなKPIツリーを活用しましょう。
KPIツリーを構築する手順は、次の通りです。あくまで一例として参考にしてください。
- 「問い合わせ数」のKGIを設定
- KGIの構成要素である、「フォームへのアクセス数」と「フォームの入力完了率」の2つのKPIを洗い出す
- 個別のKPIをさらに下位の構成要素に細分化し、下層へとツリーを枝分かれさせる
正しい形でKPIからKGIまでのルートが可視化されると、目標未達の際に問題が発生している箇所を特定できます。問題点の発見・解決というプロセスを何度も繰り返すことで、マーケティング施策全体での最適化につながります。
デマンドジェネレーションにもとづき部門間連携を図る
BtoC広告の場合、商品やサービスの利用者自身の直感や嗜好が、購買の意思決定に大きく影響するため、広告を見て即座に購入に至るケースも珍しくありません。
一方のBtoB広告では、商品やサービスの単価がBtoCよりも高額になることが多いため、何度も稟議や調整を繰り返して購買へと至る流れが一般的です。そのため、マーケティングのみで成約につながる可能性は低いといえます。
広告などの施策でリードを創出した後は、見込み客の情報が営業部門へと引き継がれます。このリード創出から成約までの流れは、「デマンドジェネレーション」と呼ばれています。デマンドジェネレーションを構成するフェーズは、次の通りです。
BtoB広告の出稿は、マーケティング対象者の氏名や会社名、所属部署、メールアドレスといった、ハウスリストを作成するための情報を取得できる貴重な機会です。そのなかから質の高いリードを特定したうえで、営業部門へと引き継ぐことで、商談化率や成約率の向上に寄与します。
BtoB広告の成功事例
BtoB広告を効果的に運用するためには、他社の成功事例を参考にするのも一案です。ここでは、株式会社SmartHRとサイボウズ株式会社の事例を紹介します。
株式会社SmartHR
出典:株式会社SmartHR
クラウド型の労務管理システムを提供する株式会社SmartHRは、ディスプレイ広告やメルマガ広告、イベント集客など、オンライン・オフラインを問わず幅広い広告手法を展開しています。
電車内や駅の構内に設置された同社の交通広告は、株式会社ジェイアール東日本企画主催の「交通広告グランプリ2021」で最優秀部門賞(企画・プロモーション部門)を受賞しました。当時、パンデミックの影響で鉄道乗車率が7~8割減になるなか、電車通勤中のビジネスパーソンに効果的なキャッチコピーを提示したことで、高い評価を獲得しています。
サイボウズ株式会社
出典:サイボウズ
グループウェア「kintone」を提供するサイボウズ株式会社は、2022年度に「BET!」をスローガンに掲げ、徹底した先行投資の姿勢を明らかにしました。これにより、テレビCMを中心に広告宣伝費を大幅に拡大。2022年度の広告宣伝費は約64億円と、2020年比で2.4倍の規模を誇ります。
その結果、2020年度から2022年度までの3年間で、kintoneの認知度が19%から28%にまで上昇しています。また、展示会やセミナーでも、製品を認知した多数の来場者が集い、大きな相乗効果をもたらしたのも特徴的です。
自社に合ったBtoB広告を選択しマーケティングの全体最適化を図ろう
BtoB広告には数多くの手法が存在し、性質もそれぞれ異なるため、特徴をよく理解して自社に合ったBtoB広告を選択することが大切です。
広告は短期的な成果に直結しやすいマーケティング手法ですが、広告だけにこだわらず、マーケティング全体のプロセスを視野に入れて施策を検討しましょう。そのためには、デマンドジェネレーションへの理解やKPIツリーの構築など、全体を可視化するステップが必要です。
広告以外にも複数の施策を組み合わせて、全体最適化を図りましょう。