Webマーケティングの成果を高めるための施策は数多くありますが、なかでもCRO(コンバージョン率最適化)は取り組みやすく成果にもつながりやすい施策の一つです。
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ウェブ分析の第一人者 小川卓氏によるコンバージョン率改善の資料と動画のセットです。運営側の主観だけでなく、ユーザー視点で取り組むCROについて学びませんか?
本誌記事では、CROの意味や目的、重要性といった基礎知識から、具体的な施策例やCROの進め方まで解説しています。
「Webマーケティングの成果を向上させたい」と、お考えのマーケティング担当者の方は、ぜひお役立てください。
CRO(コンバージョン率最適化)とは?
まずは、CROの意味や目的といった基礎知識を確認していきましょう。
CROの意味
CRO(コンバージョン率最適化)とは、Conversion Rate Optimizationの略で、コンバージョン率の増加や目標値に対して最適化するために行う施策を指します。対象となるコンバージョンは企業やチームごとで異なり、資料請求、資料のダウンロード、お問い合わせ、広告のクリックなどが挙げられます。
EFO(エントリーフォーム最適化)やLPO(ランディングページ最適化)という言葉もよくWebマーケティングでは用いられますが、これらはCROの施策の一つです。つまりCROは、コンバージョン率を向上させるための施策をまとめた言葉といえます。
CROの目的・重要性
CROを行う目的は、現状のクリック数やコンバージョン達成にかかるコストはそのままに、コンバージョン率をアップさせることです。例えば、CROによってコンバージョン率を2倍にできれば、同じ広告費で成果を2倍にできることになります。
自社サイトへの流入数が多くても、コンバージョンにつながっていなければ意味を持ちません。そのため、ユーザーの流入経路やサイト内導線などの分析を行ったうえで、改善することが必要です。
現状では、どの施策がコンバージョンにつながりやすいのかを把握し、それをもとにした改善を行いましょう。CROを行うことは、Webマーケティングの目標を達成するために重要な施策です。
CROの本質は「顧客体験の最適化」
CROは「コンバージョン率最適化」を指しますが、その本質は顧客体験の最適化であることを理解する必要があります。
例えば、CTAボタンの配置場所を考える際にも、「たくさんあった方がクリックされやすいから」といった企業側の都合に寄った目線ではなく、あくまでユーザー視点に立って改善策を考えることが大切です。
「ユーザーが購入・申し込みをしたいタイミングで、スクロールの手間をかけず、CTAボタンを押せるように最適な場所に配置する」というように、ユーザー視点の施策を行いましょう。
CROというと、「見込み客を創出できれば良い」「申し込みや購入につながれば良い」というように、数字だけにこだわりがちです。しかし、それでは顧客体験を届けられたとはいえません。短期的に見て成果が上がっても、長期的な信頼関係は築けない可能性があります。「顧客にどう円滑に価値を提供するか」という意識を忘れないことが大事です。
費用対効果を高めるCROの具体的な施策例
CROにはさまざまな種類の施策がありますが、ここでは効果的で取り組みやすい6つの施策を紹介します。
- CTAの見直し
- サイト内導線の改善
- サイトスピードの改善
- EFO(入力フォーム最適化)
- LPO(ランディングページ最適化)
- Web接客ツールの導入
1. CTAの見直し
CTAとはCall to Action(コールトゥーアクション)の略で、Webサイト上でユーザーに何かしらのアクションを起こしてもらうためのボタンやリンクのことです。例えば、「今すぐ購入」「無料ダウンロード」「お問い合わせはこちら」などのボタンやバナーがCTAにあたります。
CTAの最適化とは、CTAの設置位置や数、CTA自体の色や形、文言などを変更して、ユーザーのクリック率やコンバージョン率を高めることです。CTAの最適化にはさまざまな方法がありますが、一概に効果があるといえるものはありません。サイトの目的やターゲットに合わせて、ユーザーの心理や行動を考慮したCTAの設計が重要です。
また、CTAの効果を測定するためには、ABテストなどの実験を行うことが必要です。ABテストとは、特定の要素を変更したものを複数用意し、どれが1番効果的な施策なのかを判断するテストのことです。コンバージョンに影響を与える要素を、客観的に判断できるようになります。
2. サイト内導線の改善
導線とは、Webサイトに訪問したユーザーにどのような流れで動いてほしいかを、サイト運営者が設定することです。サイト内の導線を改善することでゴールまでの道筋を適切に設定できるため、ユーザーの離脱率を減らし、コンバージョン率を上げることが期待できます。
例えば、パンくずリストや内部リンク、CTAの位置やテキストを見直し、コンバージョンにたどり着くまでにサイト内を、迷いなく進むことができるかを見直します。
3. サイトスピードの改善
サイトスピードとは、Webサイトが表示されるまでにかかる時間のことです。サイトスピードが遅いとユーザーの離脱につながるため、コンバージョンにつなげるためには改善が必要です。
実際に、ページの読み込み時間が1秒から10秒に増えたことで、モバイルサイトの訪問者の直帰率が123%増加した、というGoogle の調査データもあります。また同調査では、ページ上の要素(テキストや画像など)の数が400から6,000に増加したことでコンバージョン数が95%低下したというデータが出ています。
参考:Find out how you stack up to new industry benchmarks for mobile page speed
まずは、Google PageSpeed Insightsなどのツールで読み込み速度をチェックしてみてください。問題があるようならば画像や動画などのファイルサイズを小さくしたり、キャッシュや圧縮などの技術を利用したりして、ユーザーの滞在時間やエンゲージメントを向上させましょう。
4. EFO(入力フォーム最適化)
EFO(入力フォーム最適化)とは、資料請求や会員登録のために個人情報を入力する入力フォームを最適化する施策を意味します。EFOを行うことで、ユーザーの手間や不安を減らし、離脱を防ぐことができます。
EFOの主な具体例としては、「郵便番号を入力すると自動で住所が入力できるようにする」「入力漏れやエラーをわかりやすく表示する」「完了までの残り項目数を表示させる」などさまざまな方法があります。
5. LPO(ランディングページ最適化)
LPO(ランディングページ最適化)とは、ランディングページの内容やデザインなどを改善してコンバージョン率を高める施策です。LPOを行うことで、ユーザーの興味や関心を引き、コンバージョンにつながる行動を促せます。
具体的な改善例としては、キャッチコピーやアイキャッチ画像、CTAボタンのデザインや配置が挙げられます。また、ファーストビューのデザインを変えたLPや、訴求ポイントを変更したLPを複数パターン作ってABテストを繰り返すなども、有効な施策です。
6. Web接客ツールの導入
Web接客ツールはサイトを訪れたユーザーの行動を分析し、一人ひとりに最適な接客を提供するツールのことです。サイト訪問者の属性や行動履歴などのデータをもとに、コンテンツの出し分けが可能です。
例えば、サイト訪問履歴がありながら資料請求に至っていないユーザーに、ポップアップで資料請求を訴求するバナーを表示させることができます。訪問者ごとにコンテンツを最適化できるため、コンバージョン率を高めることにつながります。
CROの改善事例
CRO改善により大きな成果をあげたHubSpotの例を紹介します。HubSpotには、現在ブログ記事が約900記事あり、記事を作成する際にCRO改善の施策を行いました。
具体的に行ったことは、受け皿となるオファー(ダウンロード用コンテンツ)をセットで作るなどの工夫です。この施策により、2020年5月から2021年3月末までの約1年間で、ブログ経由の見込み客数は約3倍になり、コンバージョン率は1.5倍まで増えました。
オファーのダウウンロードページ改善の際には、成果に結びつくパターンを抽出するために、Webアナリストの小川卓氏の提唱する「DMAIC」プロセスを活用しています。
- Define(目標・KPI設計)
- Measure(ツール選定/仮説立案)
- Analysis(全体分析/施策提案)
- Improve(実行施策・振り返り)
- Control(改善文化の継続)
このフレームワークを使った調査により、ダウンロードボタンやオファーの中身を確認できるカルーセルなどの位置に問題があることがわかり、LPデザインの改善を進めました。
CROを効果的に行うためのポイント
CROを効果的に行うためには、次のようなポイントを意識することが大切です。
- ペルソナ・カスタマージャーニーマップを作成してユーザーの行動を可視化する
- データ分析によって課題や仮説を特定する
- ABテストなどで改善策の効果を検証する
ペルソナ・カスタマージャーニーを作成してユーザーの行動を可視化する
CROでは、カスタマージャーニーを作成して、ユーザーの流れを可視化することが重要です。カスタマージャーニーとは、見込み客が購買に至るまでのタッチポイントや感情・思考の変化などをマップ化したものです。
カスタマージャーニーマップの作成によって、ユーザーがどんな情報を求めているか、どこで離脱しているか、どうすればコンバージョンに至るかなどを明確にできます。
マーケティング施策設計時や、Webサイト立ち上げ時に作成することが多いですが、CRO施策の見直しでも重要な役割を持ちます。すでに作成したものがあるのならば、実態に則しているかどうかの再評価や改善を行いましょう。
また、カスタマージャーニーとあわせてペルソナの作成も重要です。ペルソナとは、性別や年齢、居住地、職業、休日の過ごし方などの詳細を設定したユーザー像のことです。ペルソナの詳細については、次の記事で紹介しています。
CROでは、「誰に」「いつ」「何を伝えるか」を考えることが重要であり、そのためにもペルソナとカスタマージャーニーの設計は重要です。
データ分析を用いながら改善目標や計画を策定する
データ分析によって、自社の課題や改善すべき点を明らかにします。コンバージョン率が高くない原因はサイトによって異なるため、改善すべき点を知ることからはじめなくてはなりません。
- LPに至らず離脱しているケースが多い:サイト内の動線の見直しが必要
- LPが最後まで読まれていない:コンテンツ内容の見直しが必要
- LPが最後まで読まれているのに成約しない:CTAの最適化が必要
- フォームからの離脱率が高い:フォームの改善が必要
以上のように、アクセス解析ツールやヒートマップツールを活用して、サイト内のどこに問題があるのかを導き、改善策を検討します。
改善すべき内容が決まったら、具体的な指標・数値目標を決定してCROの計画を進めましょう。
効果検証と改善を繰り返す
CROを成功させるために重要なのは、改善策をやりっぱなしのまま放置しないことです。定点的な効果検証とさらなる改善策の立案、実行というサイクルを回しましょう。
具体的には、アクセス解析ツールでのデータ分析や、ABテストなどで改善策の効果を検証します。検証を進めていくごとにデータが集まるため、どの施策が最適なのかが明らかになります。
CROを実施する際に注意すべき点
CRO施策を実施する際に注意すべき点は、次の3つです。
- CROは長期的な取り組みであることを念頭に置く
- ユーザーの視点に立って分析する
- 仮説検証型で行う
CROは長期的な取り組みであることを念頭に置く
CROは一度やって終わりではなく、常にデータを収集・分析・改善を繰り返す必要があるものです。 また、CROの効果はすぐに現れるものではなく、時間がかかる場合もあります。 そのため、CROは長期的な視点での計画・実行が重要です。 短期的な成果に惑わされず、目標やKPIを明確に設定し、定期的に評価しましょう。
ユーザーの視点に立って分析する
CRO施策を行う際には、自分の主観や先入観にとらわれず、ユーザーのニーズや行動を分析し、それに応えるような改善策を考えることが大切です。 ユーザーの声やフィードバックを聞くことも有効です。
仮説検証型で行う
CROを行う際には、根拠のない改善策を行っても効果が出ない場合があります。 そのため、CROは仮説検証型で行うことが必要です。 仮説検証型とは、データ分析に基づいて仮説を立て、ABテストなどで改善策の効果を検証することです。 仮説検証型で行うことで、客観的かつ効率的にCRO施策を進めることができます。
CROで顧客体験を最適化しよう
CROは、「コンバージョン率最適化」のことを指しますが、根源にあるのは「顧客体験の最適化」であることを忘れないようにしましょう。読者が購入や申し込みへたどり着くまでの不安や負担をなくし、安心してサービスを受けられるよう導線を構築することがCROの役目です。
もちろん、マイクロコピーの改善やバナーの色の変更などは大事です。しかし、これらはあくまでもユーザーが安心して、購入に踏み切るための導線作りの一環にすぎません。短期的な成果だけを追うのではなく、ユーザー視点を忘れず真摯に取り組むことで、信頼関係の構築にもつながります。常にこうした視点を忘れず、CROで顧客体験の最適化を目指しましょう。