カスタマーサクセスとカスタマーサポートは、どちらも顧客を支援するための活動です。しかし、意味が混同されやすい言葉であるため、効果的に施策を展開して成果を出すには、両者の領域を正しく理解することが大切です。
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本記事では、目的やKPI、業務内容など8つの観点から、カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いを解説します。具体的な施策例もご紹介しますので、顧客サポートを拡充してロイヤルティやLTVを向上させたい方は参考にしてください。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートは異なる概念
まずは、カスタマーサクセスとカスタマーサポートの意味や概要の違いについて解説します。
カスタマーサクセスの意味
カスタマーサクセスとは、自社の製品・サービスによって顧客が成功できるよう、企業側から能動的にサポートする取り組みです。
例えば、BtoBビジネスでSFA(営業支援システム)を導入した顧客がシステム運用に明るくない場合はほとんどのケースでサポートが必要になります。そこで、ベンダーである自社が導入・運用サポートや定着化支援などを行うことで、顧客のシステムに対する理解が深まり、より効果的にSFAを使いこなせるようになるでしょう。
顧客企業に製品やサービスの利用が定着すれば、利用期間が長くなり、クロスセルやアップセルの提案率の向上や良い口コミの獲得が期待でき、結果としてLTVの向上や新規顧客の創出コスト削減が可能になります。企業の持続的な成長という観点からも、カスタマーサクセスは欠かせない機能だといえるでしょう。
カスタマーサポートの意味
カスタマーサポートとは、顧客が自社製品・サービスに関する問題点を見つけた際に、解決できるようサポートすることです。電話・メールによる問い合わせ窓口やチャットボットなどはカスタマーサポートの一種です。
このような窓口がなければ、顧客は利用した製品・サービスに対して不満を抱えたままの状態となり、競合他社に乗り換える可能性が高まってしまいます。また、窓口があっても対応が遅いなど、品質が低いようでは、顧客はフラストレーションを溜めてしまうでしょう。
そのため、カスタマーサポートは顧客の悩みや不満を解消するだけでなく、満足度を高める役割も果たします。自社製品・サービスに対する信頼感が醸成されるとリピート率が高まるため、企業にとっても収益の増加につながります。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違い
カスタマーサクセスとカスタマーサポートは、顧客を支援する取り組みであることは同じです。しかし、目的やKPIなど、多くの点で異なります。ここでは、次の9つの観点から両者の違いを解説します。
- 目的・ミッション
- KPI
- 業務内容
- 業務の性質
- 品質基準
- 主な施策
- スキルセット
- 必要な企業
1. 目的・ミッション
カスタマーサクセス
カスタマーサクセスの主な目的は顧客満足度の向上に加え、顧客体験の充実や長期で見た顧客の利益最大化です。
カスタマーサクセスでは、顧客が製品やサービスを通して成功体験を積み上げられるように支援します。顧客の課題を理解したうえで、どのような状態になれば成功しているといえるのか定義のすり合わせを行い、課題を解決しながら成功できるよう伴走します。
課題を解決し、成功に近づければ、顧客との長期的かつ良好な関係を築けるため、LTV(顧客生涯価値)の最大化につながります。また、アップセル・クロスセルにつなげるのもカスタマーサクセスの役割です。
カスタマーサポート
カスタマーサポートもカスタマーサクセスと同様、顧客満足度の向上を目指して活動を行うことが目的です。ただし、カスタマーサクセスに比べて、より短期的な顧客の問題解決に焦点をあてている点で異なります。
短期的な問題とは、例えば電話やメールの問い合わせで解決できるようなものを指します。スピーディな対応で顧客が抱えている不満や疑問を取り除き、発生した問題を収束させることがカスタマーサポートの主な目的です。
2. KPI
カスタマーサクセス
カスタマーサクセスでは、製品やサービスに対して顧客からどの程度の価値を感じてもらい、結果的に継続的な契約や購入からどれだけの利益を得られたかが成果指標になります。LTVの向上に紐づく、次の項目がKPIに設定されます。
- チャーンレート(解約率)
- アップセル・クロスセル(追加発注の回数や金額)
- 総リテンション率(GRR ※定着や継続を表す指標)
- 純リテンション率(NRR ※定着や継続を表す指標)
カスタマーサポート
カスタマーサポートでは、顧客が抱える問題や疑問、不満をどれだけスムーズに解決できたかが成果指標となります。例えば、次の項目がKPIに設定されます。
- 解決数
- 問い合わせ対応数
- メールの返信速度
- 解決までにかかった時間や対応回数
- NPS(ネットプロモータースコア ※顧客満足度調査)
3. 業務内容
カスタマーサクセス
カスタマーサクセスの業務内容は、製品・サービスを使用したビジネスの成功支援であり、顧客の課題に先回りして、伴走しながら製品・サービスの導入(オンボーディング)や運用を支援することです。次のような働きかけも業務内容となります。
- 製品・サービスの利用頻度をモニタリングし、利用率が低下している顧客へのヒアリングや活用例の提案
- FAQの利用が活発な顧客に対する、製品やサービスの理解度向上のためのアプローチ
- 課題や事例を共有できるユーザーコミュニティの運営
カスタマーサポート
カスタマーサポートの主な業務内容は、販売後のアフターケアであり、製品やサービスを購入した顧客が不備なく利用できるようにすることです。例えば、「ツールの使い方がわからない」「契約内容が正しく実施されていない」といった、顧客の問題や不満を解決します。電話やチャット、メール、SNSを通して、問い合わせのあった顧客に事後的に対応するのが一般的です。
4. 業務の性質
カスタマーサクセス
カスタマーサクセスの目的は、自社の製品やサービスを通して顧客がビジネスで成功している状態に導くことです。そのため、顧客が製品やサービスを導入した段階で業務が発生し、利用が継続する限り伴走して支援します。課題やニーズを先回りして提案を行うため、能動的な動きをするのが特徴です。
カスタマーサポート
カスタマーサポートの目的は顧客の一時的・短期的な課題解決であるため、製品やサービスに関する課題を感じた顧客からの問い合わせが起点となり業務が発生します。問い合わせへの対応が業務となるため、基本的には受動的な動きをします。
5. 品質基準
カスタマーサクセス
カスタマーサクセスでは、顧客の長期的な課題の解決・貢献度が求められます。
例えば、自社製品・サービスを使って売上高を10%増にするのが目的の場合、最終的に15%まで増加幅を増やしたり、売上高とともに組織の業務効率を高めたりなど、長期的に取り組む必要のある課題に対しての成果をあげることが重要です。
カスタマーサポート
カスタマーサポートでは、顧客がスピーディな解決を求める課題に対していかに適切に、早く対応できるかが重要です。
顧客からの問合せに迅速かつ的確に回答するのはもちろん、相手を長時間待たせたり、コミュニケーション不足でフラストレーションを蓄積させたりするのも避けましょう。
6. 主な施策
カスタマーサクセス
カスタマーサクセスの主な施策は次の通りです。
- オンボーディング:製品・サービスの定着支援。導入直後に生じる悩み(基本的な使い方やシステムの設定方法など)を解決し、自立できるまでのサポートを行う
- ロードマップ・KPI策定支援:導入事例などを参考に、顧客とともに製品・サービス導入後の運用スケジュールやKPIを決定する取り組み
- 勉強会・セミナー:製品・サービスの操作方法や活用方法などを理解してもらうための取り組み
- 定期フォロー:顧客の使用状況を定期的に確認し、必要に応じてアドバイスや提案を行う
- コミュニティ運営:顧客同士でコミュニケーションを取り合えるコミュニティサイトやコミュニティフォーラムなどを提供する
カスタマーサポート
カスタマーサポートの主な施策は次の通りです。
- 電話やメールによる問い合わせ窓口:オペレーターにつながる電話やメールの窓口の設置
- テクニカルサポート:専門知識が求められる高度な問い合わせに対応できる窓口の設置
- チャットボット:顧客の質問に対して自動回答し、自己解決を促すプログラムの公式サイトなどへの設置
- FAQサイト:顧客からのよくある質問と回答をまとめたWebサイトの設置
- 会員専用ページ:製品・サービスの使用状況や料金などを顧客自身で確認できる会員専用のWebページ
7. スキルセット
カスタマーサクセス
カスタマーサクセスでは、顧客の成功体験を創出するための広範囲に及ぶスキルが必要です。顧客の潜在的な課題まで紐解き、伴走して支援するために、次のスキルが求められます。
- ヒアリング力:会話のなかで相手のニーズや感情をキャッチし、先回りの提案ができる。長期的な関係構築のためのコミュニケーション能力
- 製品やビジネスへの理解力:製品やサービスに関する豊富な知識量と顧客の事業に役立てるためのビジネスへの知見
- データ分析力:データ分析を通じて顧客の状態を把握し、改善できる能力。分析結果をもとに製品・サービスの利用に関する提案ができる能力
- 潜在的な範囲を含む課題の定義・解決能力:顧客がビジネスで抱えている課題を定義し、先回りして解決策を導き出せる能力
カスタマーサポート
カスタマーサポートでは、製品・サービスに関する課題の素早い解決に特化したスキルを要します。製品・サービスに関する課題や不満を解決するために、次のスキルが必要です。
- ヒアリング力:共感や課題を引き出す力、クレームに対する忍耐力など、顧客からの信頼獲得のためのコミュニケーション能力
- 製品知識:顧客の問い合わせに対して迅速かつ的確に応えるための知識量
- メールやチャットの処理速度:顧客満足度の向上に直結する迅速な対応力
8. 必要な企業
カスタマーサクセス
顧客の成功体験を支援して長期的な関係を作る意味では、カスタマーサクセスはあらゆる企業にとって必要です。利用継続が重要なビジネスモデルであるサブスクリプションやSaaS企業との相性が良く、必要性は高まっています。
カスタマーサポート
カスタマーサポートは、顧客の存在によってビジネスが成り立つあらゆる企業で必要です。課題解決に特化した担当者が動くことで顧客満足度が向上し、解約リスクの軽減にもつながります。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いを理解して導入を検討しよう
カスタマーサクセスとカスタマーサポートは、どちらも顧客満足度を高めるのが目的です。ただし、目的やKPI、業務内容などが大きく異なるため、それぞれの違いを理解して使い分けることが重要です。
カスタマーサポートは顧客からの問い合わせが起点となり、受動的な施策が中心となります。一方のカスタマーサクセスはより能動的で、顧客が抱えるであろう悩みや疑問を企業自らが発見し、積極的に支援を行います。それぞれの役割は異なるため、顧客満足度を高めるには両方の機能が欠かせません。
顧客満足度が向上すれば、ロイヤルティやLTVにも好影響を与えます。カスタマーサクセスとカスタマーサポートの役割を正しく見極め、施策を拡充しましょう。
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