採用マーケティングとは?注目される背景やメリット、手順などを詳しく解説

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水落 絵理香(みずおち えりか)
水落 絵理香(みずおち えりか)

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採用市場の急速な変化により、従来通りの採用フローだけでは、求める人材との出会いが困難になりつつあります。採用マーケティングを取り入れることで、求職者の志向・価値観の変化や、採用手法の多様化に対応し、採用ターゲットへの深い理解をもとに施策を考えることが可能となるでしょう。

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本記事では、採用マーケティングの基礎知識やメリット、取り入れたいフレームワークについて解説します。進め方や成功させるためのポイントもご紹介しますので、「現在の採用活動では十分な効果が得られていない」と、採用活動にお悩みの人事担当者は、ぜひ参考にしてください。

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採用マーケティングとは

採用マーケティングとは

採用マーケティングとは、採用活動においてマーケティングの手法やフレームワークを組み込んだ戦略や活動全般を指します

ここでは、採用マーケティングがどういう意味をもつのか、基本的な考え方と、従来の採用活動や採用ブランディングとの違いについて解説します。
 

採用マーケティングの考え方

マーケティングを「商品やサービスが売れる仕組みづくり」と定義する場合、採用マーケティングは「企業認知度の向上や自社への志望度を高める仕組みづくり」と表現できます

マーケティングでは、はじめに商品やサービスに関する「ファネル」を作成します。ファネルとは、認知から購入までのプロセスを図式化したフレームワークです。ファネルによって顧客のニーズを理解したうえで、各プロセスに適した施策を立案します。なお、マーケティングのファネルは、大きく「認知・興味・比較検討・購入・継続・紹介・発信」のステップに分けられます。

マーケティングのファネル

一方で、採用ターゲットを「見込み客」から「求職者」に置き換え、「認知・興味・応募・選考・内定・入社・活躍・愛着・発信/紹介」の段階に区分するのが採用マーケティングの考え方です。理想の人材が入社し、愛着を持って活躍できるようになるまでの戦略を、各ステップで設定することが基本の流れです。

採用マーケティングの考え方

 

従来の採用活動との違い

採用マーケティングと従来の採用活動では、アプローチを行う対象者と採用活動の範囲が異なります

採用マーケティングと従来の採用活動

従来の採用では、主に転職を考えている人を対象に、応募から採用までのプロセスのみに注力していました。

採用マーケティングでは、今すぐの転職は考えていない「転職潜在層」や、退職した元社員、過去に不採用とした候補者や内定辞退者までアプローチ対象に含むこともあります

そのため、採用マーケティング戦略の策定における採用活動の範囲は、「認知」段階から入社後の活躍まで、広い領域が対象となります。
 

採用ブランディングとの違い

採用マーケティングと似た言葉に「採用ブランディング」がありますが、両者には明確な違いがあります。

採用ブランディングは、採用マーケティングの施策・手法の一つであり、採用プロセスの「認知」や「興味」の段階にいる人が採用ターゲットです。自社が求める人材を採用するために、企業のブランドイメージや自社の魅力を継続的に発信し、興味関心を高めて採用につなげることを目的としています。
 

採用マーケティングが注目される理由

採用マーケティングへが注目されるようになった背景には、人口問題や転職市場の変化があります。

2023年現在、採用マーケティングが注目されている4つの理由について解説します。
 

労働力不足の深刻化

総務省発表の「令和4年版 情報通信白書」によると、2021年から2050年までの生産年齢人口(15歳以上65歳未満)は約30%減少する見込みであり、労働力不足の深刻化が懸念されています。

2023年7月時点での全国の有効求人倍率の平均は、1.29倍でした。トラック運転手など一部の職種では有効求人倍率が2倍を超えており、求人数が求職者数を上回る状況です。

このように企業間での人材採用競争が激化するなかで、自社が求める人材を採用するためには、「自社を選んでもらうこと」に重点を置いた採用活動が求められます。採用マーケティングは、企業側から転職顕在層・転職潜在層へ積極的にアプローチを行う手法であるため、時勢に適しているといえるでしょう。

参考:令和4年版 情報通信白書|生産年齢人口の減少|総務省
職業紹介-都道府県別有効求人倍率:主要労働統計指標
統計からみるトラック運転者の仕事|厚生労働省
 

求職者の志向・価値観の変化

求職者側の志向や価値観の変化も採用マーケティングが注目される理由の一つです。

厚生労働省の「経済社会と働き方の変化等について」の調査によると、「会社の発展のために尽くす」という意識は年々減少傾向にあり、反対に「ワークライフバランス」への意識が高まっていることがわかります。

経済社会と働き方の変化等について

出典:経済社会と働き方の変化等について

また、近年は転職者数も増加しており、「転職は当たり前」といわれる時代になりました。

こうした状況下では、待遇や企業の知名度だけでは求職者の心を掴むことは困難であるため、求職者の志向や価値観を理解し、寄り添った施策を講じていくことが不可欠です。そのため、求職者のニーズ理解をもとに施策を進める採用マーケティングに期待が寄せられています。
 

採用手法の多様化

従来の採用手法は、人材紹介や転職サイトなどが主流でした。しかし、HR総研の調査によると、今後はリファラル採用(従業員からの紹介)やオウンドメディアの活用など、採用手法の多様化が進む見込みです。

採用手法ごとに特徴は異なるため、自社にあった採用手法の見直しや選定を行う目的でも、採用マーケティングが役立つと考えられています。

 

新卒の採用時期の早期化・長期化

新卒採用では、採用時期の早期化・長期化の傾向が進んでいます。株式会社リクルートの「就職白書2023」のデータでは、活動開始時期の前倒し傾向が見られ、卒業年次前年の6月以前に就職活動をスタートしていることが明らかになりました。

2023年卒の平均的な就職活動期間は約8.3か月であり、2020年卒と比較すると、2か月ほど長くなっています

新卒採用時期の早期化・長期化へ対応するためにも、戦略的な採用計画が求められています。
 

採用マーケティングを取り入れるメリット

採用マーケティングを取り入れるメリット

企業として採用マーケティングを取り入れるメリットは多くありますが、その中から3つのメリットをご紹介します。
 

採用ターゲット層からの応募増加が期待できる

採用マーケティングでは、採用のターゲットの課題・ニーズ・行動特性について徹底的に分析し、深い理解にもとづいた施策がとられます。採用ターゲットへの理解を深めることで、求職者のニーズに沿った訴求ポイントを見つけやすくなり、自社の魅力を効果的に発信できるようになるからです。

採用マーケティングを取り入れると採用ターゲットの詳細なニーズを把握したうえで企業情報を発信できるため、採用ターゲット層からの応募数の増加が期待できます。
 

ミスマッチを防ぎやすい

採用マーケティングを進める際には、理想の人物像を設定し、採用ロードマップの最適化を行います。設定した理想の人物像をもとに、接点を持つための採用手法やチャネルを選定するため、自社に適した人材に絞って効率的にアプローチできます

また、自社の魅力を明確に伝えることで求職者は自身にあった会社を見極めやすくなるため、入社後のミスマッチによる早期離職の防止や、離職率の低減にもつながります
 

採用コストの抑制につながる

採用マーケティングへの取り組みによって自社の認知が広がり、興味を持つ層が増えると、転職・就職サイトへの出稿や広告媒体へ依存する必要がなくなります

これにより、広告費の最適化や採用コスト・研修コストの削減が期待できます。採用活動に関するナレッジの蓄積と改善を繰り返すことで、長期的なコストパフォーマンスの向上にもつながるでしょう。
 

採用マーケティングの進め方

採用マーケティングの進め方

採用マーケティングは、適切な手順で進めることで効果につながりやすくなります。効率的・効果的な採用マーケティングの進め方は、次の5ステップです。

  1. 自社の魅力・特徴の分析
  2. 採用ターゲットの選定とペルソナ設定
  3. キャンディデートジャーニーマップの設計
  4. アプローチ手法の選定
  5. 施策の実施と効果測定・改善
     

1. 自社の魅力・特徴の分析

採用マーケティングの本質は、会社の魅力を誰に向けてどのような形で発信するかを考えることです。求職者の共感と興味を喚起するために、自社の魅力・特徴を明確にする必要があります

具体的には、企業を構成する次の要素についてコンセプトを言語化すると良いでしょう。

  • ターゲット:自社が提供する価値の対象となる層
  • ビジネスモデル:ターゲットに価値を届ける手段や方法
  • 業務内容:ビジネスモデルを実行するための具体的な仕事内容
  • 人材要件:業務遂行に必要なスキルや特性を持つ人材の特徴
  • 組織文化:組織が持つ共通の価値観や社内風土
  • 制度と環境:組織文化を支えるための制度や環境の整備

自社の分析には、マーケティングで用いられる「3C分析」「4C分析」「SWOT分析」のフレームワークが役立ちます。

  • 3C分析:市場・顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)を分析する手法
  • 4C分析:顧客価値(Customer Value)、コスト(Cost)、利便性(Convenience)、コミュニケーション(Communication)を評価する手法
  • SWOT分析:強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)を分析する手法

3C分析は、自社を取り巻く環境を客観的に分析するものです。求職者のニーズを把握し、自社独自の価値を考える際に役立ちます。

対して4C分析はターゲット主体、SWOT分析は自社主体で戦略策定するためのフレームワークです。どの手法を用いたとしても、求職者の視点から戦略を立て、企業価値を創出することが重要です。

 

2. 採用ターゲットの選定とペルソナ設定

分析した自社の魅力・特徴の情報をもとに採用ターゲットを選定し、どのような人材を採用したいのかを明確にします。続いて、採用ターゲットを掘り下げ理想の人物像を表す「ペルソナ像」を設定しましょう。ペルソナを具体的に設定できれば採用ターゲットへの理解が深まります。採用ターゲットとペルソナを社内で共有することで、認識の齟齬をなくすことにもつながるはずです

ペルソナ設定では、次のような項目を検討すると良いでしょう。

  • デモグラフィック属性(年齢・性別・居住地・現在の職業や所得・家族構成など)
  • 転職理由
  • 転職先に求める要素
  • 情報収集に使用するチャネル

ペルソナを設定する際には、アンケート調査など外部の視点を取り入れ、ニーズを客観的に把握することも重要です。

 

3. キャンディデートジャーニーマップの設計

続いて、アプローチ手法を選定するためのキャンディデートジャーニーマップを設計します。

キャンディデートジャーニーマップとは、マーケティングで用いられるカスタマージャーニーを採用向けにアレンジしたフレームワークです。なお、カスタマージャーニーは、商品やサービスの販売プロセスを時系列で分析したもので、購入者の行動・思考・感情を理解するための手法です。

キャンディデートジャーニーマップの設計では、求職者が入社に至るまでの行動や感情を、ストーリーに沿った図式にまとめます

ここまでの調査や分析をもとに、「認知・興味・応募・選考・内定・入社・活躍・愛着」のフェーズごとの求職者の行動や理想、候補者との接点(タッチポイント)・実施者・訴求内容などを決めていきましょう。

 

4. アプローチ手法の選定

キャンディデートジャーニーマップで設定した項目に沿って、それぞれのフェーズごとの最適なアプローチ手法を選定していきます

採用マーケティングと相性の良いアプローチ手法の一例と各手法のメリットは、次の通りです。

<ダイレクトリクルーティング>

  • 詳細:企業から求職者に直接スカウトを行う手法
  • メリット:自社が求める人材を採用しやすい/採用コストを削減できる

<リファラル採用>

  • 詳細:自社で働いている社員に、家族や友達・知り合いなどを紹介してもらう手法
  • メリット:自社に適した候補者を紹介してもらうためミスマッチが起こりにくい

<アルムナイ採用>

  • 詳細:自社を退職した人を雇用する手法
  • メリット:自社の仕事内容や雰囲気を知っているためミスマッチが起こりにくい/即戦力として期待できる

<オウンドメディアの運用>

  • 詳細:自社で保有するメディア(オウンドメディア)のなかで採用に関する情報を発信する手法
  • メリット:デザイン面や記載できる情報の自由度が高いため、より深く濃い企業情報の発信が可能になり、入社後のミスマッチを防止できる

<SNSでの情報発信>

  • 詳細:InstagramやTwitterなどのSNSを用いて採用に関する情報を発信する手法
  • メリット:拡散力が高く、より多くの人に情報を届けることができる

求職者のニーズや行動特性を考慮し、アプローチ手法を選定しましょう。

 

5. 施策の実施と効果測定・改善

一般的なマーケティングと同様、採用マーケティングでもデータの管理と分析・改善は欠かせません。

Webサイトのアクセス数・説明会への参加率・応募数・選考通過率・面接の実施率・定着率など、さまざまなデータを数値化して分析し、改善に活かしましょう

なお、採用マーケティングは業務工数が多く、すべてを手動で行うと時間がかかってしまいます。効率的な施策の実施には、採用管理システム(ATS)の導入がおすすめです。

HubSpotが提供するCRM(無料)は、オウンドメディアで収集した応募者情報の一元管理や、求人ページ・応募フォームの作成など、ATSのように活用することも可能です。
 

採用マーケティングの導入を成功させるためのポイント

採用マーケティングを導入する際には、次の2つのポイントを意識することで成功に導きやすくなります。
 

採用ターゲットの選定とペルソナ設定に重きを置く

採用マーケティングにおいて重要なのは、採用ターゲットをどれだけ深く理解できるかです。採用ターゲットやペルソナの理解が浅いままでは、採用ターゲット選定にミスが生じてしまい、どれだけ有益な企業情報を発信しても、企業の求める採用ターゲットには届かないでしょう。

採用ターゲットの思考・行動をよく理解し、戦略を構築することが、成功への近道となります。
 

採用担当者がマーケティングの理解を深める

採用マーケティングの推進には、データの活用やコンテンツの企画力といったマーケティング力が求められます

採用担当者がマーケティングへの理解を深めるためには、社内教育や研修の機会を設けたり専門的なマーケターを採用チームに配置したりするなど、人事部門とマーケティング部門との連携も効果的です。
 

採用マーケティングで効果的な採用活動を実現し、選ばれる企業へ

採用マーケティングは、採用プロセスにマーケティングの手法やフレームワークを組み込んだ活動や戦略です。労働力の減少や、求職者の志向・価値観の変化など、採用市場の急速な変化に対応するために、採用マーケティングは注目されています。

採用マーケティングを導入することで、応募数の増加や効率的な採用活動といったメリットを享受できます。ただし、採用マーケティングの進め方を間違えると、効果につながりにくくなるため、5つのステップを順に進めることが大切です。

特に、採用ターゲットの選定とペルソナ設定に重きを置き、採用担当者がマーケティングの理解を深めることが成功のポイントです

これらの要点を押さえ、採用マーケティングで効果的な採用活動を実現し、選ばれる企業を目指しましょう。

HubSpotではこの他にもマーケティングやセールスに役立つ資料を無料で公開していますので、ぜひこちらからご覧ください。

 

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トピック: 採用管理

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