ホワイトペーパーとは、もともとは「白書」という、政府や公的機関が発行する年次報告書を指していました。最近ではビジネスの分野でも活用されており、企業が提供する有益な情報やコンテンツを盛り込んだ資料を意味します。
ホワイトペーパーを見込み客がダウンロードする際にメールアドレスなどの情報を取得できるだけでなく、その情報をもとに継続的な関係を構築できるのがメリットです。
ホワイトペーパーの成果を高めるには、ダウンロードした読者にとって価値のある情報を的確に提供する必要があります。そのためにも、まずは基本の作り方を理解しておくことが大切です。そのうえで、読者の課題解決に向けたトピック選定や可読性を高めるページ構成、統一感を意識したデザインなど、ホワイトペーパーのクオリティを向上させるための工夫をします。
本記事では、ホワイトペーパーの作り方や作成時のコツを詳しく解説します。作り方のポイントを押さえ、見込み客との関係構築のきっかけを作りましょう。
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ホワイトペーパーの作り方
ホワイトペーパーの基本的な作り方は次の通りです。
- 目的の明確化
- ペルソナの設定
- 課題の特定
- トピックを決定
- 執筆内容のリサーチ
- 構成(アウトライン)作成
- 執筆(ライティング)
- デザイン
手順に沿って具体的な作成方法を解説します。
手順1. 目的の明確化
まずは、ホワイトペーパーを通じてどのようなことを達成したいのか、目的を明確にしましょう。
あらかじめ目的を定めておく理由は、作成すべきホワイトペーパーの種類を明らかにするためです。ホワイトペーパーにはノウハウ型やレポート型、事例紹介型などの種類があり、目的に合わせて選ぶ必要があります。
目的を明確にして適切なホワイトペーパーの種類を選択するためには、自社が抱えている課題をもとにすると良いでしょう。製品やサービスの認知度が低い場合は、多数の読者にアプローチできるレポート型のホワイトペーパーを選択するといった形です。
手順2. ペルソナの設定
ホワイトペーパーを作成する目的を設定した後は、ターゲットを明確にします。
「20代女性」といった曖昧なターゲットにとどまらず、詳細な顧客像をイメージしたペルソナを設定することが大切です。想定読者のイメージが明確になるほど、相手が抱えている悩みや課題を特定しやすくなり、ホワイトペーパーによる訴求が相手の心を捉えられるようになります。
ペルソナとして設定できる項目には次のような種類があります。
- 氏名・性別・年齢
- 居住地
- 職業・年収・勤続年数
- 趣味・興味関心
- 保有しているデバイス
- 情報収集の方法
- 自社商品やサービスに対する認知度
ペルソナの設定方法や活用方法を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
手順3. 課題の特定
ペルソナが抱えている課題は、言い換えれば「読者がどのようなコンテンツを求めているか」ということになります。ホワイトペーパーを作成する前にペルソナの課題を特定することで、提供すべきコンテンツの方向性や内容を明確にできるでしょう。
課題を特定する方法は次の二通りに分かれます。
購買プロセスや業務プロセスから課題を特定
1つ目は、ペルソナの購買プロセスや業務プロセスから課題を特定する方法です。
BtoB企業のマーケティング担当者をペルソナに設定するなら、認知拡大・集客・購買意欲の醸成・商談といった一般的なマーケティングプロセスを可視化してみましょう。
ペルソナが集客のフェーズに課題を抱えて自社サイトにアクセスしたとすると仮定すると、この段階でありがちな「WebサイトのPVが少ない」「Web広告の費用対効果が低い」といった課題が浮かび上がってきます。この課題に対してWeb集客のノウハウを提供することで、ペルソナの悩みにピンポイントでアプローチできます。
検索ニーズから課題を特定
2つ目は、検索ニーズからペルソナの課題を特定する方法です。検索連動型広告のLP(ランディングページ)や、オウンドメディアの記事コンテンツ内でホワイトペーパーのダウンロードの訴求を行う場合に向いています。
例えば、「マーケティング 集客」というキーワードで自社サイトに流入した場合、読者はマーケティングにおける集客方法に悩みや課題を抱えている可能性が高いといえるでしょう。この情報をホワイトペーパーに応用します。
ホワイトペーパーはダウンロードをする手間がかかるため、読者は、コラムなどのWebコンテンツやLPよりも価値の高い情報を求めています。そのためホワイトペーパーでは、トピックをさらに深掘りしたうえで情報を提供する必要があります。
手順4. トピックを決定
次に、ペルソナがどのような情報を優先的に知りたいかを見極め、見込み客の創出につながるようなトピックを決定しましょう。
ホワイトペーパーのダウンロードは、見込み客とコミュニケーションを開始するきっかけになります。そのため、トピックを選定する際は、その後もトピックをめぐって継続的にコミュニケーションを取れるようなものを選ぶことが大切です。
トピックの一例は次の通りです。
- 課題解決につながるベストプラクティス
- 業界に関する入門ガイド
- 商品やサービスについてよく寄せられる質問と回答
- 意思決定に役立つ[業界またはトピック]についての統計データ
- エキスパートによる今後の展望
手順5. 執筆内容のリサーチ
トピックを決定した後は執筆内容のリサーチを行います。
最初にリサーチ方法を決めましょう。執筆に必要な情報は次のような手段で集められます。
- 独自の研究や調査、アンケート、インタビューなどで情報収集
- ユニークな事例を集めて独自の分析を行う
- 自社製品の開発プロセスや実績データなどを活用する
次に、競合他社から同様のトピックが発信されていないことをチェックします。調査した情報やデータがすでに他社から公表されていると、コンテンツとしての価値や鮮度が低下してしまうからです。
最後にリサーチした内容を資料にまとめましょう。情報を整理しておくと、よりスムーズに構成を作成できます。
手順6. 構成(アウトライン)作成
構成とは、ホワイトペーパーに書くべき内容をまとめた設計図のようなものです。執筆前に構成を考えておくと、メッセージの方向性が統一できます。
構成を考える際は、タイトルや見出し(記事内の章にあたる部分)だけでなく、イラストや図表の配置なども一緒に検討します。
コンテンツ内にテキストがパンパンに詰まっていると可読性が下がるため、イラストや図表などのビジュアル要素と文章、余白のバランスを意識することが大切です。ビジュアル要素を入れ込むスペースが少ない場合は、ページを分割したり、ビジュアル要素を減らしたりといった工夫が必要です。
また、この時点でホワイトペーパー全体のボリュームを決めておくと良いでしょう。ホワイトペーパーは、4ページから20ページくらいの間で制作するのが一般的です。
構成の作成方法やタイトルの設定方法を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
手順7. 執筆(ライティング)
6つ目の手順で作成した構成をもとに文章を執筆します。構成作成の段階で見出しを設定しておくと、後はその内容に沿って本文を書き込むだけで済みます。
執筆に活用できるツールをいくつかご紹介しますので、ぜひ気になったものを試してみてください。なお、商品や料金に関する情報は2023年1月時点のものです。
Google ドキュメント
Google ドキュメントは、Microsoft Wordによく似た無料の文書作成ツールです。ソフトのインストールは必要なく、クラウド上で利用できるため、リアルタイムでの共同編集も可能です。また、コメント機能や提案モードを活用して修正点やフィードバックを共有できるのも特徴です。
- 料金プラン:
無料 - 主な機能:
文書作成
コメント添付・共有
提案(添削)モード
WordやPDFへの出力
権限設定 - 公式サイト:
Google ドキュメント
文賢(ぶんけん)
文賢(ぶんけん)は、登録した文章の可読性を評価できる文章作成アドバイスツールです。句読点の位置や改行のバランス、誤読しやすい表現の有無などを瞬時に評価してくれます。執筆後の記事をチェックするエディターやディレクターが少ない場合に役立ちます。
- 料金プラン(税込):
初期費用:11,880円
更新費用:2,178円/4ライセンス - 主な機能:
文章の可読性評価・フィードバック
共同編集
音声読み上げ
辞書の共有
Google Chrome拡張機能 - 公式サイト:
文賢(ぶんけん)
Enno(エンノ)
Enno(エンノ)は文章の校正・校閲ツールです。文章を登録するだけで誤字脱字や変換ミス、文字化けなどをチェックできます。文章のミスを完璧に見つけられるわけではありませんが、目視によるチェックと同時に行うことで校正時の抜け漏れを防げます。
- 料金プラン:
無料 - 主な機能:
文章の校正・校閲
エラーに対するカテゴリ表示 - 公式サイト:
Enno(エンノ)
執筆に活用できるツールのご紹介は以上です。
初めてホワイトペーパーを作成する場合は、テンプレートの活用もおすすめです。型が決まっているため、執筆に慣れていない方でも比較的容易に進められます。
また、記事の執筆後は、ダブルチェックを行いましょう。ライターが初稿を執筆し、エディターやディレクターなど、経験豊富な第三者がチェックして何度も推敲を重ねることで、コンテンツの質が高まります。
手順8. デザイン
最後に、ホワイトペーパーの表紙やフォント・ページ番号・目次などのデザインを整えます。統一性を高めるためにブランドカラーをデザインに活かすのも良いでしょう。
また、全体のレイアウトを考える際は、「CRAP」というフレームワークを意識することが大切です。CRAPは、レイアウトに重要な4つの要素の頭文字を並べたフレームワークです。
- Contrast:要素が異なる場合は違いを際立たせる
- Repetition:全体のカラーや罫線などの同じ要素を統一する
- Alignment:全体的な配列を整える
- Proximity:近い要素のものは近付け、異なる要素のものは遠ざける
どうしてもデザイン案が思い浮かばない場合は、他社のホワイトペーパーを参考にするのもひとつの方法です。
次で、ホワイトペーパーをデザインする際に役立つツールを3つご紹介します。
Adobe Spark(スパーク)
Adobe Spark(スパーク)は、スライドショーやWebページ用のデザインテンプレートをダウンロードできるツールです。ホワイトペーパーに向くテンプレートもあるため、ダウンロードするだけで簡単にデザインを作成できます。利用するためには、Adobe Expressのプレミアムプランに加入する必要があります。
- 料金プラン(税込):
Adobe Expressプレミアムプラン加入:月額1,078円 - 主な機能:
デザインテンプレートダウンロード
デザイン編集
Adobe Fonts連携
Adobe Stock連携
モバイルアプリ対応 - 公式サイト:
Adobe Spark(スパーク)
Adobe InDesign(インデザイン)
Adobe InDesign(インデザイン)は、インポートしたデザインファイルを自由にレイアウトできるツールです。Google ドキュメントとも連携でき、文章をコピー&ペーストするだけでホワイトペーパーを作成できます。また、目次の作成やフォントの設定に必要な機能も搭載しています。
- 料金プラン(税込):
単体プラン:2,728円
Creative Cloudコンプリートプラン:6,480円 - 主な機能:
画像・テキスト・図形の配置
目次作成 ページ番号やインデックスの自動挿入
デザインスタイルの共通化 - 公式サイト:
Adobe InDesign(インデザイン)
Canva(キャンバ)
Canva(キャンバ)は、無料で利用できるオンラインデザインツールです。多種多様なテンプレートのなかから好きなデザインを選び、レイアウトを自由に変更できます。サイズやロゴ、タイトルなどの細かい調整も可能です。作成したデザインは画像やPDFとして出力できます。
- 料金プラン:
Canva Free:無料
Canva Pro:年額12,000円/1名
Canva for Teams:年額18,000円/5名 - 主な機能:
デザインテンプレート
画像編集
動画編集
PDF編集 - 公式サイト:
Canva(キャンバ)
ホワイトペーパーを作成するコツ
ホワイトペーパーの基本的な作り方がわかったら、次に作成するコツを押さえておきましょう。それによって、よりユーザーの満足度が高いコンテンツが完成します。
情報提供に徹する
ホワイトペーパーの目的は、あくまで見込み客とコミュニケーションを行うきっかけを生み出し、継続的な関係を築くことにあります。そのため、自社商品やサービスを大々的にアピールしないよう注意が必要です。
ユーザーが、自分にとって価値ある情報を求めてダウンロードした資料に、商品・サービスのメリットや機能しか書かれていなかったら、どう思うでしょうか。ホワイトペーパーを作成する際は、読者が課題解決できるよう価値のある情報提供に徹しましょう。
商品やサービスの紹介をする場合は、全体の1割程度に抑えるのがポイントです。
文章とビジュアル要素のバランスを意識する
ホワイトペーパーを作成する際は、文章とビジュアル要素のバランスを意識することが大切です。テキスト中心の資料になると読者の負担が増え、途中で読むのを止めてしまう可能性があります。
全体的にテキストの使用量が多いと感じたら、イラストや図表を増やしてみましょう。また、デザインやサイズ、カラーに統一感を持たせることで、全体的な視認性が高まります。
リードナーチャリングを念頭に置く
リードナーチャリングとは、創出した見込み客の購買意欲を醸成し、成約率を高めるための手法です。
ホワイトペーパーをダウンロードしてもらったからといって、即座に商品やサービスの購入に結び付くわけではありません。読者が商品やサービスを認知していない場合は、継続的なコミュニケーションを通じて商品やサービスへの理解を深めてもらう必要があります。
ペルソナを設定する段階で、ターゲットを潜在層と顕在層に分け、必要に応じてリードナーチャリングで購買意欲を醸成することが大切です。
常に最新情報へと更新する
ホワイトペーパーの情報は常に最新の状態に更新しましょう。
例えば、比較コンテンツで紹介している商品の価格が改定されたにもかかわらず、古い価格のままになっていると、読者は古い情報をもとに意思決定を行ってしまうかもしれません。その結果、クレームやトラブルに発展する可能性があります。
読者からの信頼が低下しないよう、ホワイトペーパーの内容は定期的に見直すことが大切です。
ホワイトペーパーの作り方を理解して効果を高めよう
ホワイトペーパーの作り方には基本となる8つの手順があり、それぞれ意識すべきポイントが異なります。ホワイトペーパーの適切な作り方が理解できれば、読者の心をつかむコンテンツの提供が可能になり、見込み客と継続的なコミュニケーションを行うきっかけが生まれるでしょう。
そのためにも、手順だけではなく作成時のコツを理解しておくことも重要です。特に、自社商品・サービスの紹介に終始しない点や、文章とビジュアル要素とのバランスなどを意識すると良いでしょう。
適切な作成方法を用いてホワイトペーパーの効果を最大限に高めましょう。