営業日報を用いて担当者の稼働や案件のステータスを管理・分析することで、営業成果の改善につなげることができます。しかし、日報には記入の手間がともなうため、目的を十分に認識していないと、メンバーのモチベーション低下をまねく恐れもあります。
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営業日報を活用して成果を上げるには、次の3つが重要です。
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チーム全体で営業日報の目的について共通認識を持つ
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担当者による内容のばらつきを無くす
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日報作成そのものを効率化する
本記事では3つのポイントを理解して成果につながる営業日報を運用できるようになるために、日報を運用する目的や成果につながる書き方を紹介します。
営業日報の目的とは?
営業日報は、1日の営業活動の内容を社内へ共有するための報告書です。営業担当者が、誰に・いつ・どこで・何を・どのように行ったかなどを具体的に記入することで、営業活動の成果を定量的・定性的に把握できるようにするのが主な目的です。
目的を正しく理解して書いていれば、営業活動の効率化やよりよい成果を得るためのアイデアにつながります。しかし、営業パーソンは商談準備や提案資料の作成などで忙しく、営業日報を重要度の低い業務と感じてしまっているケースも多いでしょう。
本章では営業日報を書く目的を、マネージャー目線と営業パーソン目線で解説します。「営業日報が社内に定着しない」「何を書けばいいかわからない」という方は、あらためて「何のために営業日報を書くのか」を確認しましょう。
マネージャーにとっての目的
マネージャーの役目は営業組織のメンバーの稼働や案件を管理し、営業目標を達成することです。そのために、営業日報を以下のように活用することが求められます。
営業メンバーのサポート
営業日報からメンバーの稼働状況やモチベーションを読み取り、変化があれば、 1on1ミーティングや声がけを行ってフォローします。例えば「目標に対して大幅に進捗が悪い」「最近契約が取れなくなっている」といった傾向が見られれば、モチベーションが下がっていたり、スランプに陥っていたりといった可能性があります。
調子の良くない状態が長期化すると、離職を招いてしまうことがあるので、営業日報を通して早めに気づくことが重要です。
顧客や市場動向の把握
営業日報に記載された、顧客の声や商談履歴を確認し、顧客や市場動向の把握に努めましょう。
例えば、複数の担当者から同じような失注理由が寄せられていれば、商品やサービスの改善、セールストークの切り口の変更などのアイデアにつながることがあります。全体を俯瞰できるマネージャーだからこそ、営業メンバーたちから集めたデータを参考に、戦略を考えていく役割を担う必要があります。
営業パーソンにとっての目的
営業パーソンは自身に与えられた営業目標を達成するため、営業日報を下記の目的で利用するといいでしょう。
自身の稼働状況の振り返り
営業パーソンは日報を通して「自分がどのような業務に時間を使っているか」を振り返りましょう。提案資料の準備や情報収集に一日の大半を費やしていたとしたら、資料のテンプレートや各業界ごとに汎用的に使えるセールストークを整理することで、時間を短縮できる可能性があります。
日報を見直すこと自身の時間を有効活用するためのヒントが見えてくるでしょう。
目標に対しての行動の見直し
営業目標が設定された際に、達成するためにどのような行動が必要か、アクションプランまで考えている状態が理想です。アクションプランは「営業目標を達成するためには契約が5件必要。契約を5件取るためには商談が30回必要。商談を30回獲得するには...」といったイメージで目標を行動レベルまで落とし込んで立てていきます。
目標の行動量に対しての行動進捗を、営業日報を通して確認しましょう。想定よりも進捗が良い場合は良い理由、悪い場合は悪い理由を考え、改善に活かすことができます。
営業日報のメリット・デメリット
営業日報のメリットは、1日の業務経過や成果をチーム全体で共有できる点です。営業日報を見ればスタッフ一人ひとりがどのような工夫や努力をして結果を出しているのかが明確になるため、メンバーが他のメンバーの優れた点を学び、参考にできます。
これにより、組織全体の知識とスキルが向上し、全員が互いの成果から吸収し合える環境を実現できるでしょう。
一方、デメリットとして挙げられるのが、日報を記録するために一定の時間を割かれることです。通常業務と並行して日報を作成することは、担当者にとって負担になりかねません。業務時間における日報作成の割合が増えると、本来の業務に影響を与えてしまうことも考えられます。
そのため営業日報の運用を行う際は、スタッフの負担を最小限に減らすための工夫が必要です。本記事では営業日報を効率化できるツールについても後述していますので、参考にしてください。
営業日報の基本の書き方【例文・テンプレートあり】
本章では、意味のある営業日報を作るために日報を書くタイミングや内容について、4ステップで解説します。以下は日報作成の流れの一例です。
本章では例文を紹介していきますが、Excelやスプレッドシートの活用を考えている方は、下記の営業日報テンプレートをぜひご活用ください。
STEP1.1日の目標を設定する
▼ポイント
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達成可否が明確な数値や行動で設定する
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1日の始まりに記入する
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担当者に対して適切なレベルか確認する
日報は担当者だけのものではなく、マネージャーやチームで共有するものなので、目標を記入する際は「◯件のアポイントメント獲得」といったように、達成可否が明確な数値や行動で設定してもらうことが重要です。
▼目標の例
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テレアポ60件→アポイントメント獲得3件
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B社の来期予算とネックを把握
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A社のクレーム対応、午前中に担当者へ連絡
運用の目的にもよりますが、日報の記入時間が終業間際だったとしても、目標は一日の始まりに記入するように定めるべきでしょう。担当者の業務への取り組み方や振り返り方を評価するためには、目標に対して適切かどうかが大きな要素となるためです。前日の日報振り返り時に翌日の目標も設定しておけば、朝の記入の時間が少なくて済みます。
併せて、各担当者のレベルに合った目標が設定されているかどうかを確認しましょう。担当者にとって目標が低すぎたり高すぎたりする場合は、パフォーマンスの向上や育成につながらないため、コメントでフィードバックを行い調整しましょう。
STEP2.当日の業務実績を記入する
▼ポイント
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事実ベースで、なるべく数字を使って簡潔に記入する
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事実と分けて、担当者個人のコメントを記入する
1日の営業活動の完了後、その日に行った業務の内容を記載します。目標と同様に、チームで共有することを前提に、まずは事実ベースで、なるべく数字を使って簡潔に書くように指導しましょう。商談の場合は、日時や担当者、打ち合わせ内容などの詳細を記載します。
事実と分けて、担当者個人が感じた印象や意見も記載してもらうとなお良いでしょう。振り返りを記入する際やノウハウ化するときにも役立ちます。
例えば担当者が「データ付きで再提案すれば受注できそう」と感じたのであれば、そのとおりにコメントしてもらうようにします。その後フィードバックでそう思った根拠や、必要だと思うデータをすり合わせる時間を作れれば、チームにノウハウを蓄積でき、担当者個人のスキルも磨かれます。
▼業務実績の例
時間 |
業務 |
内容 |
---|---|---|
9:00~10:00 |
クレーム対応 |
A社へ電話対応 |
11:00~12:00 |
商談 |
|
13:00~16:30 |
テレアポ |
架電63件・アポイントメント獲得2件
D社
|
17:00~18:00 |
プレゼン資料作成 |
E社の解約抑止に向けた提案 |
STEP3.1日の振り返りをする
▼ポイント
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目標に照らして結果を振り返る
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ネガティブに感じられる事柄でも率直に記入してもらえる関係性をつくる
目標と照らし合わせて、1日の実績や取り組み方を振り返ります。このとき、商談で気になった点や気付きなどは具体的に掘り下げ、事実と所感は区別して書くのがポイントです。うまくいかなかったことの原因を深掘りすることで、翌日以降の業務改善につながります。
目標の振り返りというと何か良い事柄を書くべきで、ネガティブな事柄は書きたくないと考えている営業担当者も多いかもしれません。
しかし、ネガティブな内容といっても、「予算の関係で受注が難しそう」「決裁権者にアプローチできなさそう」といった営業担当者なら誰でもぶつかるような問題もあるでしょう。
課題を言語化し、それに対して対応策を考えることはむしろパフォーマンス向上につながるチャレンジであり、チームとして推奨するべきです。
率直な意見やコメントを書けずに取り繕った内容を記載されてしまうと、振り返りの意味が無くなってしまいます。マネージャーは、社内全体で率直な意見を書きやすい雰囲気を作るように努めましょう。
▼振り返りの例文
目標 |
結果と振り返り |
---|---|
テレアポ |
|
B社の来期予算とネックを把握 |
|
A社のクレーム対応、午前中に担当者へ連絡 |
|
STEP4.翌日の目標を立てる
▼ポイント
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振り返りをもとに、達成がイメージできるギリギリのラインの目標を設定してもらう
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チームとしての達成目標のために適切な目標になっているかチェックする
振り返りによる反省点を活かして、翌日はどのようなことに気をつけて業務に取り組むのかを決めます。目標を立てるとなると、達成できるものをと考えてつい小さい目標にとどめてしまいがちですが、育成という観点で見れば、達成がイメージできるギリギリのラインの目標を設定してもらうことがベストです。
チームとして必要な数値目標を達成するために適切な目標になっているかどうかも併せてチェックし、調整を行いましょう。
▼翌日の目標の例文
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B社見積もりの割引率を相談し、他社にも応用できる内容で稟議書を作成
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アポイントメント獲得数増加のために、訪問先で紹介できる会社がないかヒアリングする
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テレアポ60件、アポイントメント獲得3件。隙間時間を有効活用してテレアポの時間を確保する
営業日報が機能しない失敗例と解決策
1日の流れの中に営業日報の記入フローを組み込み、内容をもとに営業活動を改善していくことが理想ですが、実際には以下のように活用に失敗してしまうケースも少なくありません。
各失敗例と解決策を見ていきましょう。
記入が定着しない
営業日報の作成を営業パーソンに義務付けているものの、書いていない日があったり、内容が不十分だったり、期待しているような質で日報が上がってこない失敗例です。このような事態に陥っている場合は、以下4点をチェックしましょう。
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営業日報は最低限の項目に絞られているか
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どこでも記入できる仕様になっているか
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記入する時間帯が決まっているか
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営業日報を書く意義を営業パーソンが理解できているか
営業パーソンは顧客対応がコア業務であるため、営業日報の負担が高いと記入がおろそかになりがちです。項目は最低限にし、スマートフォンでも入力できる負担の少ないツールを利用するのが理想です。
記入する時間やタイミングも「時間のあるときに」ではなく、あらかじめ決めておくとよいでしょう。
また、そもそも営業日報を書く意味について共通認識を持てているかも重要です。日報はマネージャーのために書くだけでなく、営業パーソン自身の振り返りに役立つものであることを意識しましょう。
正直に書いてもらえない
数字で記載された成果は確認できても、思考や気持ちの部分までは書いてもらえないことがあります。営業担当者からすれば、ネガティブな気持ちや失敗したことなどは書きにくく、マイナス評価につながるのではないかと不安を感じるためです。
営業日報へ思考や気持ちについての記入を期待する場合は、評価に関係するものではないことを伝えましょう。日報を通してコミュニケーションを取るために、悩みごとを書くような欄を作成するのも方法の一つです。常日頃から担当者が悩みを言っても大丈夫だと感じられる関係性を築くことも大切です。
フィードバックできていない
まとまった時間が割けず、一人ひとりの営業日報を細かく見る余裕がないマネージャーは少なくありません。レポートにまとめるにはさらに工数がかかるので、分析まで行う時間が取れないケースも多いでしょう。
マネージャーが営業日報に目を通していないと、営業活動の改善に活かせないだけでなく、営業パーソンから「書いても意味がない」と思われてしまうことにつながります。
その結果、営業日報の質が下がる悪循環に陥ってしまう可能性があるので、分析やフィードバックは重要です。
始業後すぐに前日分を確認する、管理が容易なツールを利用するなど、会社全体で取り組み方を考える必要があります。
営業日報の運用を効率化・改善する方法3選
営業日報の運用における悩みの多くは、日報の作成や管理に労力がかかることから生じています。煩雑さを解消し、少ない労力で効果を出していくためには、ツールの導入が効果的です。
3種類のツールを紹介するので、自社の抱える課題に適切な解決策を見つけるためにも、それぞれの特徴を把握して選択肢を増やしていきましょう。
1.Excelのテンプレート
Excelのテンプレートをカスタマイズして、営業日報として活用する方法です。Microsoft Officeを導入していれば、追加費用は発生しません。使い慣れた人が多いので、教育コストがかかりにくい点も魅力です。
また、以下のように自由度が高い強みもあります。
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サイズやレイアウトを簡単に変更できる
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文字サイズや色などを変更して視認性の調整ができる
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関数を活用すれば表計算や進捗管理を組み込める
Excelのテンプレートは導入のハードルが比較的低いので、紙からデータ管理に切り替えたい場合によく検討されるツールです。
2.日報アプリ
日報アプリとは、営業日報の作成や管理ができるアプリです。利用すれば、スマートフォンやタブレットで場所を問わず簡単に作業ができます。
日報アプリの中には気軽にコメントやリアクションができるものも多く、日報の共有を通じて社内のコミュニケーションを活発にできます。
小規模での運用であれば、無料アプリでも対応可能です。ただし、機能はSFAよりコンパクトになりやすいため、データの分析から活用までを目指すのであれば、SFA連動型の有料アプリを推奨します。
3.SFA(営業支援システム)
SFAとは、営業担当者の稼働や案件の状況を可視化し、営業チームのパフォーマンス向上を目指すツールです。営業支援システムとも呼ばれます。
日報のように行動実績や商談情報を入力することで、活動状況や進行中の案件内容を可視化できます。紙やExcel等での管理とは異なり、システム上にデータが蓄積されていくため、時期や条件ごとにデータを分類・グラフ化することができるのがメリットです。
▼営業チームの稼働管理
▼案件別の進捗状況
画面を操作するだけでさまざまな角度から営業チームのパフォーマンスを評価できるため、営業戦略の精度を高めることができます。また次のような点から、運用の効率化にもつながります。
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入力フォームが決まっているため、入力の負担が少ない
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ワークフローが決まっているので、新人教育がしやすい
営業チームの成果を向上させることが目的なのであれば、必ずしも「日報」という形式が重要なわけではありません。誰でも簡単に見られる形で振り返るのが重要なので、記入や管理が煩雑化している際は導入を検討してみることをおすすめします。
営業日報の運用を最適化し、進捗管理を徹底しよう
日報は、担当者から意見や情報を吸い上げ、チームのコミュニケーションの質を高めるだけでなく、ノウハウの言語化や評価材料、育成という観点からも重要度の高い方法です。
しかし、各担当者の書き方にズレがあったり、目的を周知しきれない状態で運用手法だけが一人歩きしたりすると、入力・管理コストのほうが高くついてしまうという側面もあります。
自社にとっての目的の優先順位を整理し、目的に沿った書き方をチームに周知して、担当者とマネージャーの業務を効率化しましょう。ツールを導入するなど、入力・管理方法自体を抜本的に見直すことも有効です。
日報は営業に関わる業務を効率化するだけでなく、担当者を成長させチームの質を上げることもできる方法です。顧客に最適な提案を行うためにも、自社にとって最適な日報の運用方法を見つけましょう。