営業業務は多岐にわたるため、各プロセスをできるだけ効率化したいものです。しかし、無計画に業務の削減や時短に取り組んでしまうと、営業のコア業務である顧客とのコミュニケーションの質を落としかねないため注意が必要です。
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営業業務の効率化は、あくまでも顧客体験の向上につなげるための施策であると認識し、適切なステップで効率化を目指していくことをおすすめします。
本記事では、営業業務を効率化するための10のアイデアと、営業の効率化に成功した事例をご紹介します。
「営業業務を効率化する」とは?
業務効率化とは、既存の業務を見直して、ムダやムラをなくすことを指します。したがって「営業業務の効率化」は、営業の業務のうち、ムダやムラをなくすことです。
既存の業務の中には、「以前から慣例として行っていたが、現在の組織にはマッチしない業務だった」「必要業務ではあるが、あまりにも工程が多すぎる」など、見直すことで課題が見つかることもあります。
当たり前となっている業務内容を一度見直すことで、コスト削減や労働時間の短縮などの効率化が見込めるでしょう。
ここで注意したいのが、業務効率化は、生産性を向上させる手段の一つにすぎないという点です。
業務効率化を行った先にある目的は、組織がより効果的に成果を出せるような生産性向上を図ること。
あくまでも、生産性向上の目的を達成するための手段が業務効率化であるため、業務を見直す際に「その業務を見直したことで、どのように営業組織の生産性が上がるのか」という観点を持つようにしましょう。
日本の営業組織における課題|効率化が求められる理由
営業に限ったことではありませんが、日本企業の労働生産性が低いことは調査でも明らかになっています。
日本生産性本部が発表した「労働生産性の国際比較2022」によると、日本の時間当たり労働生産性は、49.9ドルでOECD加盟38カ国中27位です。データが取得可能な1970年以降、最も低い順位になっています。
大手コンサルティング会社マッキンゼー・アンド・カンパニーは、営業組織にフォーカスして日本企業の課題を以下のように分析しています。
- 社内向けの業務が多い:社内の会議参加や資料作成によって時間を割かれてしまうことで、本来の営業活動に注力できていない
- デジタル化の遅れ:顧客情報の管理や販売方法のデジタル化など、諸外国と比較すると大幅な遅れが見られる
- 営業チーム内での役割分担が不透明である:全ての顧客対応に全員で対応するために、一人当たりでの顧客数や案件数が低くなってしまう
営業の効率化を図るにあたっては、目先の業務を楽にする視点だけではなく、組織改革の意識も持ちながら進める必要があります。
営業業務が非効率になりやすいポイント
非効率になりやすいポイントは、主に以下の5つです。
- 訪問の時間・コストが多い
見込み客へ直接訪問する場合、オンラインでの商談よりも時間がかかります。また、交通費も発生するでしょう。受注の可能性が高い、もしくは決まれば大きな売上が見込める場合以外は、オンラインでの商談がおすすめです。 - 受注可能性が高い顧客を見分けられない
受注の見込みが低い顧客ばかりに時間を使っていては非効率的です。まずは、顧客の現在の温度感を適切に見極めるようにしましょう。
興味や関心はあるのか、他社との比較検討はしているかを顧客へのヒアリングから判定し、受注可能性を検討するのがおすすめです。 - 商談前の準備に時間がかかる
商談前は、提案の内容を整理する時間が必要です。毎回ゼロから提案資料を作っていては時間が取られてしまうため、テンプレート化して共有フォルダに保存し、誰でも同じ資料を使える仕組みを構築しておきましょう。 - 属人化してしまう
案件状況を担当者しか把握していないと、担当者が不在の場合にはプロジェクトが一時的に停止してしまいます。普段から案件の状況を共有する文化を作ることで、不在時でもプロジェクトが進むような体制を作りましょう。 - 顧客対応に時間がかかる
商談前のリマインドメールや商談後のお礼メール、事例の共有など顧客への連絡業務は意外と時間がかかる業務です。また、リマインドメールは対応が漏れやすい業務のため、SFAツールなどを使って自動通知を送るなど効率化するのがいいでしょう。
営業業務を効率化する3つのステップ
複雑化している営業業務を効率化するには、課題を整理しながら業務改善を図ることが大切です。3つのステップをご紹介しますので、手順に沿って進めてみてください。
すぐに具体的な改善方法を知りたい方は、「営業業務を効率化する10のアイデア」をご覧ください。
1. 現状の業務を洗い出す
営業業務を効率化するための方法は数多くありますが、売上が下がるリスクが低く、改善インパクトが大きい業務から優先的に着手することが望ましいです。
まずは現状を正確に把握するためにも、現場の意見をもとに業務の洗い出しからはじめることをおすすめします。
具体的には、営業担当者から、「どのような業務に」「どのくらい時間がかかっているのか」をヒアリングして細分化してみることです。
これにより、営業活動のどこで問題が発生しているかというボトルネックを把握できるようになります。各プロセスを洗い出し、細かい業務も検証するのがポイントです。
2. ノンコア業務を見直す
効率化の余地がありそうな業務を発見できたら、続いてノンコア業務とコア業務に分類してみましょう。
ノンコア業務とは、コア業務をサポートするための事務処理など、比較的難易度が低く、高度な判断を必要としない業務です。提案書・見積書・日報の作成など、簡略化しやすいものがノンコア業務に該当します。
ノンコア業務は顧客体験の質に直接影響を与えにくいことから、改善が比較的容易と考えられます。まずはノンコア業務を見直すことからはじめると良いでしょう。特に時間や労力を費やしているものから取りかかると効率的です。
3. コア業務を改善する
ノンコア業務の効率化によって生まれた社内リソースをコア業務の改善へまわすことで、商談化率や成約率が向上し、営業効率全体の改善が期待できます。
コア業務とは、売上や利益を生み出すための業務です。比較的難易度が高く、個々の能力の差に影響されやすい業務であり、専門的な知識や経験、高度な判断を要するものです。コア業務には、顧客と直接商談を進めることやコミュニケーション、契約などが含まれます。
ノンコア業務を効率化すると、営業担当は顧客対応へ注力できるようになり、結果的にサービス品質向上や営業個人のスキルアップにもつながるでしょう。
営業業務を効率化する10のアイデア
営業業務の効率化を図る際には、ノンコア業務の業務負荷を軽くし、余剰分のリソースをコア業務の質を上げるための施策へまわすことが大切です。2つのアプローチの効果を最大化することで、生産性の高い組織を目指しましょう。
HubSpotが2023年2月に発表した「日本の営業に関する意識・実態調査2023」では、「社内会議」や「社内報告業務」などで無駄な時間が発生していると捉えられ、業務時間のうち22.37%が無駄だと感じられているという結果が出ています。ノンコア業務の負荷を軽くすることがいかに重要であるかがわかります。
それでは、営業業務の効率化を実現するための10のアイデアを、「ノンコア業務の業務負荷を下げる」「コア業務の質を上げる」という2つの観点に分けて解説します。
ノンコア業務(事務業務)の業務負荷を下げる
まずは、事務処理のようなノンコア業務のムダを洗い出し、時間的削減を図りましょう。ノンコア業務の負荷を下げるための5つのアイデアをご紹介します。
1. 書類をテンプレート化する
見積書や契約書、業務報告書、営業日報などの書類は、その都度最初から作成するのではなく、ある程度テンプレート化しておくと良いでしょう。
テンプレート化することで作成スピードがアップするほか、記載もれの防止や、見やすさ・整理しやすさの改善も期待できます。
2. 業務のマニュアルを整備する
現状、業務のマニュアルがない場合は、マニュアルを整備すると効率化につながります。例えば、商談における会話の進め方、商品のアピールポイント、システムの使い方、経費の申請方法などの業務のマニュアル化です。
マニュアル化するメリットは、業務の引継ぎや新人教育の時間・労力・コストを軽減できることです。また、各教育担当者の教育レベルのばらつきを減らし、全員の目指す方向を統一しやすくなります。
経験者や精通している人の意見を取り入れてマニュアルを作成し、担当者全員で情報共有することで、全体の知識レベル向上にもつながるでしょう。
3. 社内向けの資料や会議を見直す
当社HubSpotが実施した日本の営業組織を対象とした意識・実態調査で、社内会議や社内報告業務がムダであると感じている担当者が多いことがわかっています。
書類の提出を求める場合や会議を開催する際は、必ず目的を明確化して実施し、チャットやメールで完結するものや、1つの会議に集約できるものは見直すべきでしょう。
特に、日報は毎日記入するものであることから、作業すること自体が目的化しやすいので注意が必要です。
4. 業務の一部を外部へ委託する
ノンコア業務は、可能な範囲で外部へ委託することも検討すると良いでしょう。
アウトソーシングサービスがある業務の例としては、プレゼンの資料作成、企画書の作成、データの入力、DMの発送、オンライン秘書などがあげられます。
外部へ委託することで、社内のリソースを軽減できることはもちろんのこと、特定の業務に特化したサービスであれば、社内で行うよりも業務のスピードや質を改善できる可能性があります。
5. 日程調整を自動化する
社内会議や取引先との商談などの際の日程調整は、欠かせない業務のひとつです。
日程調整ツールなどを利用し、社内外ともに自動的に空き日程を提示できるようにする方法があります。
日程調整のために、メールで何往復もやり取りをする時間や手間を減らして効率化を図りましょう。
当社HubSpotは、無料で利用できる日程調整ツールを提供しているので、気軽に利用してみてください。
コア業務(顧客とのコミュニケーション)の質を上げる
ノンコア業務の効率化で余剰が発生した社内リソースを、コア業務(顧客とのコミュニケーション)の質を上げるための施策へまわしましょう。
戦略的な営業活動を行い、商談化率や成約率などを向上させることで、同じ時間で、より多くの売上を生み出せるようになります。
コア業務(顧客とのコミュニケーション)の質を上げる5つのアイデアは、次の通りです。
1. 顧客の課題を事前に把握する
顧客が抱える課題が「予算」なのか、それとも「検討中の商品がニーズに一致するかどうかが気になっている」といった情報を事前に把握しておくことは、営業活動の基本です。
なぜなら、顧客が気になっていることや、商談を受けた背景となっている課題にフォーカスすると、最適な提案ができるからです。
顧客にとっても、商談時に的確な提案を受けられるため、製品やサービス導入を検討しやすくなります。
顧客の課題を事前に把握するための具体的な方法は、問い合わせフォームに入力項目を設ける、アポイントメントの日程調整の際に、用意したヒアリング項目を聞くといった方法です。
提案や商談をスムーズに運べると、契約完了までの期間の短縮にもつながるでしょう。
2. 優先順位を明確化する
過去に成約に至った顧客の動向を踏まえて、ホットリードと呼ばれる受注見込みの高い顧客を見極め、優先順位をつけてアプローチしていくことも大切です。
見込み客がどの程度の検討具合なのか、購買・導入の意欲に応じたユーザー分析やフェーズ分けを行いましょう。
受注見込みの低い顧客へアプローチする時間をなくすことで、時間や労力の削減につながります。
3. 決裁権を持つキーマンを見極める
B2Bにおける営業活動の場合、商談窓口となっている担当者は導入に前向きであっても、上司や経営陣が承認者であるケースが多いです。
誰を納得させれば承認が下りるのか、どのような提案が受け入れられやすいかを考慮し、決裁権を持つキーマンを見極めたうえでアプローチを進めていきましょう。
4. 適切な目標設定で営業担当者のモチベーションを保つ
上記でもご紹介したHubSpotの調査では、営業組織における社員教育やマネジメントにおいては、営業組織における社員教育やマネジメントにおいて「従業員のモチベーション維持」が課題視されていることもわかっています。
メンタルヘルスケアを含む「従業員のモチベーション維持」を課題として捉えている営業組織は多く、前回調査と今回調査の両方で最も重要な課題であるとの結果になっています。
画像引用元:日本の営業に関する意識・実態調査2022の結果をHubSpotが発表
営業担当者のモチベーションを保つためには、まずは何に対してモチベーションを持っているのかを当人にヒアリングしたうえで、本人の意向と組織の目的が一致するような仕事の進め方をできるようマネジメント側が調整すると良いでしょう。
5. オンライン商談を取り入れる
同調査では、訪問型営業と非訪問型営業のどちらが好ましいかという質問で、買い手の回答のうち「どちらでもよい」が2021年から増加していることが示されています。
画像引用元:日本の営業に関する意識・実態調査2022の結果をHubSpotが発表
オンライン商談は、移動の時間が不要で日程調整も容易であるため、顧客が興味を抱いてから速やかにアポイントメントへつなげられるメリットがあります。
顧客の意向を考慮しつつも、オンライン商談を柔軟に取り入れることを検討すると良いでしょう。
営業の効率化・生産性向上にはSFA
業務改善において最もインパクトが大きいのは、ムダな業務があればやめてしまうことです。業務プロセスを見直した上で、残った業務を効率化するためにSFA(営業支援システム)が活用できます。
SFAは顧客情報や案件、商談履歴などを管理し、蓄積されたデータを分析できるツールです。煩雑化した紙やExcelでの顧客管理をデータベース化できるため、案件ごとの営業成果やハイパフォーマーの稼働内容を分析し、受注または失注した案件の共通項を分析できます。
自社の営業における勝ちパターンが出来れば、営業組織全体のスキルの底上げにもなるでしょう。
Excelと異なり、SFAは営業支援のために作られたツールであるため、営業成果を最大化できるように機能や仕様が設計されています。使用に慣れるまでに時間を要しますが、SFAに合わせて業務フローを整えることで、さらなる業務の効率化が期待できます。
無料トライアルができるツールから、まずは試してみることをおすすめします。
SFAで営業の効率化に成功した事例
実際にSFAを導入して営業組織の生産性を向上させた事例を2つ紹介します。
オペレーションの効率化と最適化を実現|株式会社マネーフォワード
クラウド会計ソフトを提供している株式会社マネーフォワードでは、取扱商品の増加にともない、複雑な料金体系に応じた営業・売上の管理が課題視されていました。
具体的には、新規購入や追加購入は別々のスプレッドシートで管理するなど、顧客ごとの取引記録を紐づけできていなかったといいます。
同社では、HubSpotの「Operations Hub」を導入したことで、売上データの一元管理が可能になり、オペレーションの効率化と最適化を実現することに成功しています。
手動で管理した場合のヒューマンエラーが減り、リアルタイムで売上や運用状況の確認ができるようになり、効率化だけでなく営業活動全体の質の向上につながった事例です。
マーケから営業、ヘルプセンターまでの顧客情報を一元化|イベントレジスト株式会社
オンラインのイベントプラットフォームを運営するイベントレジスト株式会社では、顧客管理の一元化の目的で、「Sales Hub」と「Service Hub」の導入を決定しました。
導入前は、見積もり用のツールと請求書作成ツールとして別々のサービスを利用していたため、マーケティングチームと営業との連携も不十分でした。
また、案件の進捗状況が掴めないことや、営業担当者しか把握していない情報があったことも課題だったといいます。また、カスタマーサポートでは、限られたスタッフが問い合わせベースで対応していたため、サービスの質に課題を感じていました。
同社では、マーケティングからカスタマーサポートまでの顧客管理を一元化したことにより、業務の効率化と顧客満足度向上を実現できました。
ノンコア業務・コア業務を切り分けて営業業務を効率化
営業活動にはノンコア業務・コア業務があり、それぞれ切り分けて業務の効率化を目指すことで、顧客体験の向上にもつながります。
営業業務の効率化を図る際には、社内に向けた視点のみではなく、その先に顧客満足度向上という形で顧客へ還元することを視野に入れて進めていきましょう。