「案件が増えてきたので、管理をする必要性を感じている。でも、何から手をつけていいか、わからない」
このような悩みを抱える方は、少なくありません。
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事業が軌道に乗り、案件の数や関わるスタッフの人数が増えてくると、“今までの管理方法の限界”を感じる瞬間がやってきます。
ここで、将来性を見据えた的確な案件管理にシフトできるか否かは、ひとつの分かれ道といえるかもしれません。
この記事では、初めて本格的な案件管理に取り組む方にもわかりやすく、その概要や重要性、具体的な手段について解説します。
1. 案件管理の基礎知識
案件管理は、営業の効率化と成果の最大化を目指すうえで欠かせないプロセスです。
まずは管理対象となる「案件」は何を指すのか?といった基本事項から、確認していきましょう。
1-1. 「案件」とは?
「案件」とは、ビジネスの文脈では、“現在取り組んでいる事案”を指す用語です。
この言葉は、さまざまなビジネスシーンで用いられますが、とくに営業活動においては頻出となります。
営業分野での「案件」とは、成約や受注を目指し、現在フォローアップ中の顧客ケースのことです。
例を挙げると、営業電話を受けた潜在顧客が、その提案に興味を示し、具体的な購入意向を見せたケースを「案件」と呼ぶ、という具合です。
ただし、どの状態を案件と見なすのかは、組織によって違いがあります。たとえば「商談化」と「案件化」を区別している企業があります。
1-2. 商談化と案件化
「商談化」とは、リスト獲得(潜在顧客の連絡先情報を獲得)してから、実際に商談までたどり着くことをいいます。
一方、「案件化」とは、商談が具体的な取引の可能性へと、進展した状態を指します。
たとえば、展示会にブースを出展し、立ち寄った企業担当者と名刺交換をしたとしましょう。この段階はリスト獲得です。
後日、担当者とアポを取り、相手方企業を訪ねて商談をしたら「商談化」となります。
商談で、担当者が関心を持ち、その後のやり取り(例:提案書や見積書の提出など)につながれば、「案件化」です。
1-3. 案件管理では案件を創出し最大化することが重要
本記事では、見込み客の商談化から案件化までを含む、プロセス全体をマネジメントすることを、案件管理と定義して解説を進めていきます。
案件管理において重要なのは、案件の創出とそのポテンシャルの最大化です。
できるだけ多くのリード(見込み客)を案件化に持ち込み、さらにその案件の受注金額や受注数を最大限まで引き出すことが、案件管理のミッションです。
具体的には、次の要素を実践します。
- 商談機会やビジネスチャンスを特定する:見込み客が直面している具体的な問題やニーズを見つけ出すことがスタートラインです。その顧客専用にカスタマイズした提案を準備するための出発点となります。
- 案件の進展を促進する:案件を効果的に進めるためには、的確なコミュニケーションと期待を超える提案が不可欠です。相手の要求に柔軟に応える対応力とスピード感で、案件進行を促進します。
- 案件の質を高める:提案内容のパーソナライズ(個別化)や顧客への付加価値の提供により、案件の価値を高めます。より高額な契約や拡張性のある受注へつなげていきます。
- 長期的な関係を構築する:単発の取引ではなく、顧客との長期的な関係を築くことで、持続可能なビジネス成果を目指します。取引完了後のフォローアップにより、新たなニーズの発掘や継続的な関係強化を図ります。
具体的な手法については、以下に続きます。
2. 案件管理の具体的な3つの手法
案件管理を効果的に行うためには、単に情報をドキュメントにまとめるのでは不十分です。
ここでは3つの重要な手法について掘り下げます。
- パイプライン管理:営業プロセスの可視化
- オポチュニティ管理:商談の最適化・可能性の最大化
- 顧客関係管理(CRM):長期的な関係構築
これらは、どれか1つを採用するのではなく、組み合わせることで高レベルな案件管理が実現します。それぞれ、以下で見ていきましょう。
2-1. パイプライン管理:営業プロセスの可視化
1つめの手法は「パイプライン管理」です。
パイプライン管理は、各営業担当者が持つ案件を、段階別に整理し、各案件がどのステージにあるかを可視化する手法です。
パイプライン(pipeline)とは、水や原油などを運ぶ輸送管路のことです。営業用語では、顧客を段階的に醸成して、成約などのゴールに導く流れをパイプラインと表現します。
たとえば、以下は[ヒアリング完了]⇒[アポ取得]⇒[見積提示]⇒[意思決定]⇒[成約]…というパイプラインを可視化した一例です。
出典:取引パイプライン
案件の現状をリアルタイムに可視化することで、進捗状況を一目で把握できます。これにより、営業チームは、どの案件に注力すべきか、またどの案件が停滞しているかを、素早く判断できます。
パイプライン管理は、専用ツールを使うと効率的です。詳しくは、下記の記事をご確認ください。
2-2. オポチュニティ管理:商談の最適化・可能性の最大化
2つめの手法は「オポチュニティ管理」です。
オポチュニティ(opportunity)は、単に“機会”と訳されがちですが、言葉のニュアンスとしては、日本語の“機会”よりも広い意味を持ちます。
ビジネスチャンス・時機・適時・可能性・見込みなども、オポチュニティに含まれます。
オポチュニティ管理とは、商談のアプローチをかけるベストな営業機会や、売上につながる大きな可能性を、予見して追跡し、管理するプロセスを指します。
具体例を挙げると、前出のパイプラインを見込み客が進んでいく過程で、優先順位の高い案件を見つけ出したり、最適なアプローチ方法を判断したりします。
「オポチュニティ=成約の見込みが高い案件」とイメージすると、わかりやすいでしょう。
たとえば、以下はツール(Sales Hub)を使って、オポチュニティ管理をしている様子です。リードの状況把握を自動化しています。
メール返信や、次のステップの計画、過去の打ち合わせ結果の更新などのリマインダーも、確度の高い案件を進展させるうえで有効です。
オポチュニティ管理において重要なのは、すべての案件が同じ価値を持つわけではないという視点です。
成約確度や潜在的な収益性を考慮して、案件に優先順位をつけ、リソースを適切に配分するために、オポチュニティ管理を行います。
2-3. 顧客関係管理(CRM):長期的な関係構築
3つめの手法は「顧客関係管理(CRM)」です。
顧客関係管理(CRM)は、顧客情報を一元的に管理し、顧客との長期的な関係を築くための手法やツールを指します。
CRMツールを活用することで、顧客の詳細なプロファイル、コミュニケーションの記録、過去の取引履歴などをデータベースとして管理できます。
CRMは、営業部門だけでなく、マーケティング部門やカスタマー部門などを含む、全社的に導入するものです。
たとえば、サイトへの初訪問からサイト内での行動、カスタマーセンターへの問い合わせ、提案書を開いた正確な時間や閲覧時間まで、あらゆるデータの一元管理を行います。
参考:How to Use a CRM: The Ultimate Guide(英語)
CRMは案件を直接的に管理するものではありませんが、CRMがあることで、案件管理の精度や質を高めることができます。
以上が、案件管理の手法の概要です。次のセクションでは、実践について解説します。
3. 案件管理の実践(1)専用ツールを使う場合の2ステップ
案件管理を実践する際には、
(1)専用ツールを使う
(2)Excelで管理する
の2つの方法があります。
まずは専用ツールを使う場合、どのようなプロセスで実行するとよいか、見ていきましょう。
以下の2ステップに分けて解説します。
- ベースの顧客管理として「CRM」を導入する
- 営業支援に特化した「SFA」を連携する
3-1. ベースの顧客管理として「CRM」を導入する
1つめのステップは「ベースの顧客管理として『CRM』を導入する」です。
出典:CRMとは?基本の意味からツールの必要性・事例までわかりやすく解説
CRM(顧客関係管理)ツールを導入すると、顧客情報をデータベース化して蓄積し、案件管理やその他の営業活動に活用しやすい形態で一元管理できるようになります。
3-1-1. CRMツールの選定
CRMツールは、さまざまなベンダー(提供元)から提供されており、自社に合うものを選定する必要があります。
以下は選択肢の一例です。
出典:【2023年版】CRM比較15選|特徴別に国内主要ツールを徹底比較
CRMツールの選定について詳しくは、下記の記事ををご覧ください。
3-1-2. CRMツールを導入した後の使い方
CRMを導入した後の使い方の流れを簡単にお伝えすると、以下のとおりです。
- 営業担当者の追加:CRMツールにチームのメンバー全員を登録します。この際、メンバーにCRMの利用価値を説明して、賛同を得ることが重要です。成果を出している営業担当者をCRMの推進役にすると、他のメンバーも自然と追随しやすくなります。
- 設定のカスタマイズ:自社の営業プロセスを反映するように、ツールの設定をカスタマイズします。
- 連絡先・企業・取引情報のインポート:Excel(スプレッドシート)や他のシステムから、データをCSVファイルでアップロードすることで、情報をCRMツールへインポートします。
- 他のツールとの統合:マーケティング部門・営業部門・カスタマーサポート部門などが保有する情報をCRMに集約して、データ入力の手間を省き、効率化します。
- ダッシュボードの設定:営業チームのパフォーマンスを一目で把握できるダッシュボードを設定します。
- レポートの有効化:営業担当者が営業活動に専念できるよう、レポートを自動的に生成するように設定します。日次、週次、月次、四半期ごとのメールレポートを設定して、営業活動の進捗を追跡します。
出典:How to Use a CRM: The Ultimate Guide(英語)
なお、ここでは概要のみ触れましたが、詳しくは[動画付き]初めてのCRM導入ポイント解説をご覧いただくのがおすすめです。HubSpotが2023年1月19日に開催したウェビナーの動画とeBookを公開しています。
【無料】HubSpot CRM導入の完全ガイド
顧客管理の課題を解決したいBtoB事業者様向けCRM導入のポイント
※こちらの資料内容はHubSpotが2023年1月19日に開催したウェビナーの動画とeBookです。
3-2. 営業支援に特化した「SFA」を連携する
2つめのステップは「営業支援に特化した『SFA』を連携する」です。
SFAとは、Sales Force Automation(セールス フォース オートメーション)の略語で、日本語では「営業支援システム」と呼ばれています。
SFAを導入すると、案件管理を含めた営業部門の業務を、高度化・オートマ化(自動化)できます。
前出のCRMとの違いは、CRMは全部門を横断する基幹システムとして機能するのに対し、SFAは営業部門に特化していることです。
出典:HubSpotより作成
CRMで管理している顧客情報を、営業部門にとって利便性の高い形で活用しやすくするのが、SFAです。
本記事の前半で解説した「パイプライン管理」や「オポチュニティ管理」は、SFAを導入することで、ほぼ自動的に実現できます。
SFAを使わず、Excelで案件管理する方法も後述しますが、本来はできる限り、SFAの導入をおすすめします。
手作業の手間が省けるだけでなく、案件管理の精度と質が向上することで、成果に直結するからです。
参考までに、Sales Hub(HubSpotのSFA)の場合、《導入後6ヶ月で成約率が78%向上》しています。
詳しくは、下記の記事をご確認ください。
4. 案件管理の実践(2)専用ツールを使わない場合(Excel管理)
続いて、専用ツールを使用せずに案件管理を行う方法を見ていきましょう。
Excel(スプレッドシート)を使うやり方があります。
4-1. テンプレートの例
以下は、実際に案件管理を行っているテンプレートの例です。
【無料】営業案件と進捗管理が一元化できるExcelテンプレート
このテンプレートには、ダッシュボード、営業進捗管理、ToDo管理の3つのテンプレートがあり、営業管理をすぐに開始できます。
進捗状況と担当者別の目標を一元管理して、営業業務の効率化を実現させましょう。
ファイルは、5つのシートから構成されています。
- ダッシュボード
- 営業進捗管理
- ToDo管理
- 取引先マスタ
- 担当者マスタ
以下はダッシュボードのイメージです。
前述のとおり、本来はCRMおよびSFA導入が理想ですが、費用などの兼ね合いでなかなか難しい方向けにご提供しているのが、上記のテンプレートになります。ぜひご活用ください。
4-2. 必要な入力項目
Excelにて案件管理をする場合、シートに入力するべき項目は、以下のとおりです。;
- 担当者:案件ごとに、その案件を誰が担当しているのかを記録します。担当者を明確にすることで、見込み客を放置して適切なタイミングを逃してしまうリスクを回避できます。
- 進捗状況:案件がカスタマージャーニーのどのフェーズにあるのか記録します。案件ごとに進捗を常に記録しておくことで、営業マネジャーが進捗を管理できるようになるだけでなく、進捗の遅れが生じていないかを担当者自身も把握できます。
- 受注予定日:過去の受注にかかった期間から、案件の受注予定日を算出します。この予定日から逆算して営業活動のスケジュールを組みましょう。予定日を決めることで、先方に対して適切なタイミングで適切な提案ができるようになります。
- 見積金額(予想売上額):案件ごとに見積金額(予想売上額)を記録します。案件ごとの見込み受注額と受注率を掛け合わせることで、期待値としての予想売上額を立てられます。この予想売上額と実際の売上とのギャップを比較し、差が発生した要因を振り返りながら、営業部門でのPDCAを回します。また、経営陣はこの見積金額をもとに、業拡大のためにどれだけ事投資を増やせばよいのか、事業戦略を立てていきます。
- 失注理由:失注した場合(受注に至らなかった場合)は、その理由を案件ごとに明記します。「価格/機能/競合/その他」といった形で、Excelのドロップダウンリスト機能を活用すると良いでしょう。失注の要因には潜在的な課題が隠されている場合があるため、丁寧に分析すると、商品・サービスの弱みや各担当者のボトルネックの発見につながります。
出典:案件管理で成果を出すのに必要なこと・コツ・ツールの活用について紹介より再編
4-3. Excel管理のポイント
Excel(スプレッドシート)による管理の成功は、情報が常に更新され、正確であることに依存します。
チームメンバー全員が、責任を持ってシートの更新を継続することが必要です。
関わるメンバーや案件数が少ないうちは、メンバーのコミットメント(責任)と、適切に設計されたテンプレートがあれば、Excel管理も不可能ではありません。
ただし、事業が軌道に乗って拡大すれば、やがてExcel管理の限界がくることは、念頭においておきましょう。
Excel管理は、“当面のその場しのぎ”と捉えて、将来を見据えた準備も進めておくことが大切です。
なお、費用面で専用ツール(CRM・SFA)の導入が難しい場合は、HubSpotの無料ツールの導入をご検討ください。
5. 案件管理に取り組むうえでの注意点
最後に、案件管理に取り組むうえでの注意点を4つ、お伝えします。
- 管理業務に時間をかけない
- リアルタイム性を重視する
- データ駆動型の意思決定を推進する
- 全員が使いやすい仕組みを目指す
5-1. 管理業務に時間をかけない
1つめは「管理業務に時間をかけない」です。
案件管理においては、過度に時間を費やすことなく、効率的に業務を進めることが大切です。
管理業務は、それがたとえ何の利益も生み出していなくても、「仕事をした気分」になってしまうのがやっかいなところです。
専用ツールを導入されない方も、既成の案件管理シートを活用して、できるだけ時間をかけないことをテーマに取り組んでみてください。
管理の結果、生み出される成果に集中しましょう。
5-2. リアルタイム性を重視する
2つめは「リアルタイム性を重視する」です。
市場や顧客の状況は常に変化しています。そのため、案件管理では情報のリアルタイム性が非常に重要となります。
チーム内で共有する情報は、常に最新でなければなりません。最新情報を入手した営業チームは、即座にに対応し、機会を逃さずに成功を重ねます。
具体的には、クラウドベースのCRMやSFAを導入する、Excel管理ならクラウドに保存する、といった工夫をしましょう。営業担当者が、いつでも・どこでも、最新の情報にアクセスできる状態を作ります。
営業担当者のデータ入力を早くするルール決めも効果的です。たとえば、「顧客との接触後、24時間以内に情報を更新する」といったルールが考えられます。
5-3. データ駆動型の意思決定を推進する
3つめは「データ駆動型の意思決定を推進する」です。
直感に頼るのではなく、データに基づいた意思決定を行うことが、案件管理の質向上には不可欠です。
さまざまな情報源から得られるデータを分析し、それらをもとに案件の優先順位付けや営業戦略を立てることを、チームの習慣として根付かせましょう。
案件管理を、単なる備忘録やToDoリストとして扱っていると、業務効率化はできても成果向上は実現しません。
データや分析結果を起点とする意思決定を推進することで、直感に頼るよりも精度の高い判断が可能になり、組織全体の成果向上に貢献します。
5-4. 全員が使いやすい仕組みを目指す
4つめは「全員が使いやすい仕組みを目指す」です。
案件管理の仕組みは、チーム内の全員が簡単に理解し、利用できるように設計する必要があります。
一部のITスキルが高いメンバーや、営業力に優れたメンバーの基準で仕組みを作らないようにご注意ください。
複雑すぎる手順や、細かすぎるプロセスは、実際の営業活動の障壁となります。シンプルで、直感的な操作が可能なシステムの構築を心掛けましょう。
6. 的確な案件管理で成果を最大化しよう
本記事では「案件管理」をテーマに解説しました。要点をまとめておきましょう。
案件管理の具体的な3つの手法として、次の3つがあります。
- パイプライン管理:営業プロセスの可視化
- オポチュニティ管理:商談の最適化・可能性の最大化
- 顧客関係管理(CRM):長期的な関係構築
案件管理の実践(専用ツールを使う場合)の2ステップは、以下のとおりです。
- ベースの顧客管理として「CRM」を導入する
- 営業支援に特化した「SFA」を連携する
専用ツールを使わずにExcelで管理される場合は、案件管理シートをご活用ください。
案件管理に取り組むうえでの注意点として、以下をお伝えしました。
- 管理業務に時間をかけない
- リアルタイム性を重視する
- データ駆動型の意思決定を推進する
- 全員が使いやすい仕組みを目指す
案件管理を最適化することで、商談の機会を逃さず、より多くの成約を実現できます。
本記事を管理手法の見直しのきっかけとしていただき、さらなる発展にお役立ていただければ幸いです。