CMS(コンテンツマネジメントシステム)とは、Webサイトの構築や編集を行えるシステムです。プログラミングなどの専門知識が無くても、直感的な操作でWebサイトの構築や更新ができます。ただし、CMSを使ってWebサイトを作成・編集するには、システムを運用するための環境を構築しなければなりません。

本記事では、CMS構築の概要とメリット・デメリットを解説します。構築手順やポイントもご紹介しますので、自社でのCMS構築にお役立てください。
CMSの構築とは?
CMSの構築とは、Webサイトを効率的に管理・運営するためのコンテンツ管理システム(CMS)を導入して運用可能な状態にすることです。
CMSにはデザインやプログラミングなどの専門的な知識がなくてもWebサイトの作成・運用ができるよう、デザイン設定やページ追加、SEO設定などの必要な機能がパッケージ化されています。
Webサイトを一から制作するだけでなく、現在運用しているWebサイトを既存のCMSから新しいCMSへと移行することもできます。
CMSには、オープンソース型と独自開発型の2種類があります。
オープンソース型は、ソースコードが一般公開されており、自由に利用したりカスタマイズしたりできるCMSです。一方、独自開発型は、企業やベンダーが利用者のニーズに合わせて開発するCMSです。
CMSを構築するメリット・デメリット
まずは、CMS構築のメリットとデメリットをご紹介します。
メリット
CMS構築のメリットは、次の7つです。
- 専門知識がなくてもWebサイトを構築できる
- 自社でコンテンツやデザインを容易に更新できる
- Webサイトの運用費用を抑えられる
- Webサイト運営の分業化・アカウント権限管理を行える
- 効果的なSEOを行える
- リンク切れや404エラーを防止できる
- SNSとの連携を容易に行える
CMSのメリットは、こちらの記事で詳しく解説しているので、あわせてご覧ください。
デメリット
CMS構築のデメリットは、次の4つです。
- テンプレートを使うとデザインが画一的になりがち
- 細かいカスタマイズは難しい
- CMSなしで制作した既存サイトの移行には手間がかかる
- プラグインが多いと表示速度が遅くなることがある
CMSではテンプレートを活用するため、機能やデザインに制限が生じます。また、機能追加のためのプラグインを多用すると、読み込みに時間がかかりWebページの表示速度が遅くなる可能性があることもデメリットです。
CMS構築の準備
ここでは、どのようなケースでも必要になる基本の準備に加え、既存のCMSから移行する際に行う準備を解説します。
基本的な構築準備
必要な事前準備は、次の3つです。
- 目的・成果の明確化
- 要件定義
- CMSの選定
目的の明確化
まずは、CMSの構築目的と期待する成果を明確にし、必要な機能を洗い出します。
Webサイトのユーザーとなるターゲットを明確にするのも有効です。ペルソナ(理想の顧客像)を設定することで、ターゲットの課題やニーズを把握でき、コンテンツ制作の方向性やWebサイトに必要な機能、設計が定まります。結果として、CMSの選定にも役立ちます。
要件定義
CMSに求める機能やデザインを検討します。代表的なCMSの機能は次の通りです。
- コンテンツ作成・編集
- メディア管理
- SEO
- 問い合わせフォーム作成
- アクセス解析
CMSの選定
先の工程で洗い出した目的や必要とする機能を判断基準として、自社に最適なCMSを選定します。製品ごとにコストや機能、サポート体制、カスタマイズ性などが異なるため、複数の製品を比較検討して総合的に判断しましょう。
既存のCMSから移行する場合
既存のCMSから移行する場合の準備工程は、次の4つです。
- コンテンツの整理
- バックアップを行う
- リンク切れの確認
- 移行時のセキュリティ対策
コンテンツの整理
Webサイトのデータを既存のCMSから移行する場合、コンテンツを整理することで作業をスムーズに行えます。古いデータの更新・削除を行うなど、すべてのコンテンツを整理しましょう。
さらに、管理を容易にするために各記事コンテンツのリストを作成し、次の項目を明記します。
- タイトル
- URL
- 担当者
- 公開日
- カテゴリ
- タグ
- ID
バックアップを行う
移行時のトラブル発生に備えて、既存のCMSからの移行前にデータのバックアップを行います。万が一、データが失われると、コンテンツ制作を再度一から行う必要があるためです。
なお、一般的に利用されているWordPressでは、プラグインを活用することでバックアップ作業が行えます。
リンク切れの確認
各Webページに設定されているリンク切れの有無を確認します。URLの貼り間違えや接続先のページ削除などによるリンク切れを放置すると、ユーザビリティや検索順位の低下につながるためです。
移行時のセキュリティ対策
データ移行中にデータが外部に漏洩しないように、アクセス権限の厳格化や不要なユーザーの削除などのセキュリティ対策を行います。移行時のセキュリティ対策を行うことで、移行後のデータとサイトの安全性も確保できます。
なお、HubSpotのContent Hubは、再構築も移行も不要で、WordPressとの連携が可能です。無料プランからお試しいただけますので、マーケティング機能の強化などを目的にCSMの移行を検討されている方はぜひご活用ください。
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CMS構築手順
ここからは、先に説明したオープンソース型と独自開発型に分けて、CMSの構築手順を解説します。
オープンソース型の構築手順
オープンソース型CMSの構築手順は、次の通りです。
- レンタルサーバーや独自ドメインを契約
- CMSのインストール
- テンプレートからテーマを選択
- 初期設定
なお、ここではWebサイトを新規で構築することを前提に解説します。
1. レンタルサーバーや独自ドメインを契約
まずは、CMSの構築に必要となるレンタルサーバーと独自ドメインを契約します。サーバーは、データを管理・保管する設備です。自社専用のサーバーを立ち上げる場合、運用知識や技術が求められコストもかかります。サーバーの運用ノウハウがなくコストを抑えたい場合は、レンタルサーバーを利用すると良いでしょう。
なお、レンタルサーバーの月額料金は1,000円前後が目安で、通信量に応じて料金が変動するのが一般的です。
ドメインは、Webサイトのアドレスにあたるものです。ドメインには、レンタルサーバーなどを運営するホスティングサービスが提供するサブドメインと、自分の好きな文字列を指定できる独自ドメインの2種類があります。SEO効果を高め、ユーザーや顧客からの信頼性を得るには、必ず独自ドメインを取得します。
独自ドメインの利用には、登録時に100~2,000円程度、更新時に1,000~4,000円程度かかるため、予算を確認したうえで取得しましょう。
2. CMSのインストール
続いて、サーバーにCMSをインストールします。レンタルサーバーによっては、CMSのインストールからSSL設定、ドメイン設定までの作業を自動的に行うサービスを提供しています。
ただし、どのCMSに対応しているかはレンタルサーバーによって異なります。自社で導入を予定しているCMSが使えるかどうかを、あらかじめ確認しておきましょう。
3. テンプレートからテーマを選択
CMSに用意されているテンプレートから、イメージに合ったものを選択します。テンプレートを活用すると、洗練されたデザインを容易に導入でき、テキストやボタンなどの細かい仕様変更も行えます。
テンプレートを選ぶ際は、デザイン面だけでなく、ページ構成や必要機能の有無なども確認することが重要です。
4. 初期設定
最後に、Webサイトのタイトルやロゴ、背景・トップ画像の挿入、パーマリンク設定などの初期設定を行います。必要に応じて、機能を追加できるプラグインをCMSにインストールします。また、会社概要や問い合わせページなどの固定ページも忘れずに作成してください。
同時に、GA4やGoogle Search Consoleなどの分析ツールも初期設定の段階で入れておくと良いでしょう。
独自開発型の構築手順
独自開発型CMSの構築手順は、次の通りです。
- 要件定義
- 仕様書や見積書を確認
- 設計・開発
- テスト・公開
1. 要件定義
独自開発型CMSの構築は、Web制作会社に企画から設計・開発、導入までの作業を依頼します。このとき、最初に実施するのが要件定義です。
要件定義は、制作会社とクライアントが打ち合わせを重ねて、必要なシステムや機能を明確にする作業です。ここでは、「機能面」と「反映部分」の要素を明らかにします。
機能面では、CMSに求める機能やチーム構成、編集・管理画面のレイアウト、サーバーに求めるスペックを考えます。また、反映部分では、データ編集時におけるサイトへの反映の正確性、一覧ページに表示させるコンテンツの量、コンテンツ掲載のルール、過去に作成したコンテンツの保持期間などを細かく洗い出すことが重要です。
なお、既存のWebサイトのデータを移行する場合は、そのプロセスも含めた要件定義が必要です。データ移行のための料金が追加されることもあるので、事前に確認しましょう。
2. 仕様書や見積書を確認
次に、Web制作会社から提示された仕様書や見積書を確認します。この段階では複数社に相見積もりを依頼することが大切です。
要件定義における自社の課題や要望を固めたうえでRFP(提案依頼書)を作成し、複数のWeb制作会社に提出することで、自社の要望に近い仕様書と見積書を効率良く集められます。
RFPの概要や書き方は次の記事で解説していますので、あわせて参考にしてください。
3. 設計・開発
独自開発型CMSを設計・開発する際は、フロント側とサーバー側に分けて作業を行います。
フロント側は、Webサイトの外観にあたる部分です。HTMLやCSSを使用したデザインがメインとなるため、配色やフォントサイズ、行間などが希望に合っているかを確認します。また、サーバー側では、入力情報の処理やデータ格納方法の最適化を行います。
4. テスト・公開
最後に、運用を想定して単体テストや結合テスト、データ移行テストなどを実施します。クライアントも含めて、動作状況やバグの有無などの詳細を検討し、問題がなければCMSを公開してください。
Webサイトは運用中も効果検証を行うことが重要です。あらかじめ、KPIを決定しておき、継続的にコンテンツを改善していきましょう。
CMS構築のポイント
ここからは、CMS構築のポイントを3つ解説します。
- 運用ルールを策定する
- セキュリティ対策を行う
- 適切なスペックのサーバーを選ぶ
運用ルールを策定する
属人化を防ぎ、コンテンツの質を保つためには、CMSの構築時に運用ルールを定めておくことが大切です。Webサイトの運営担当者の役割、コンテンツ制作のガイドライン、CMSの操作方法などを、マニュアル化してまとめます。
セキュリティ対策を行う
情報漏洩や不正アクセスなどを防ぐには、セキュリティ対策が欠かせません。セキュリティ対策が整ったCMSを用いたうえで、システムやプラグインを常に最新の状態に保つことが重要です。
社内で保守管理が必要な場合は、構築時点で更新の担当者やタイミングを決めておきましょう。クラウド型CMSでは、ベンダー側で対応してくれるケースもあります。
セキュリティ対策には、強力なパスワードの設定やユーザーの権限管理も有効です。管理者権限は最低限の担当者のみに付与し、一般ユーザーの操作範囲は限定するなど、役割に応じて権限を設定しましょう。
セキュリティ対策はWebサイトの安全性を確保し、顧客の個人情報や企業の機密情報を守るだけでなく、社会的信用の向上にもつながります。
適切なスペックのサーバーを選ぶ
サーバーによっては、将来的にコンテンツが増えると処理が重くなる、CMSの機能追加ができなくなる、などの問題が発生する可能性があります。閲覧しにくいWebページは、ユーザーの離脱可能性が高まるため、CMS構築では十分なスペックを備えたサーバーを選ぶことが重要です。
目的を明確にしたうえでCMSを構築しよう
CMSがあれば、専門知識がなくてもWebサイトの構築や運用を容易に行えるようになります。
また、CMSの構築は、目的を明確にしたうえで取り組むことが大切です。目的を明らかにするとコンテンツ制作の方向性やWebサイトに必要な機能、設計が定まり、集客やコンバージョンなどの成果を得やすくなるためです。まずは、自社における課題を明らかにし、その課題に対してCMSでどのようなアプローチができるのかを考えましょう。
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