CMS(コンテンツ管理システム)とは、HTMLやCSSといったプログラミング言語やコーディングの知識がなくても、Webサイトのデザイン設定・ページ追加・SEO対策が行えるようになるシステムのことです。
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本記事では、CMSの構築方法を、「オープンソース型」と「独自開発型」に分けて解説します。運営開始後の保守管理まで見据えたうえで、自社に合った構築方法を選択しましょう。
CMSとは?
CMSとは、Webサイト運用に必要な機能がパッケージ化されているシステムです。デザイン設定やページ追加、SEO対策などをデザイン・プログラミングの知識なしに実行できるため、現在自社のWebサイトを持ちたいと思ったらCMSはほぼ必須といえるでしょう。
また、現在運用中のWebサイトをCMS上へ移行することもできます。
実際には、Webサイトのデザインから構築までは制作会社に依頼してCMS上で動作するようにしてもらうケースが多いでしょう。その後の更新は、自社で内製化することもできます。
CMSの基本については、以下コラムをあわせてご覧ください。
CMSを構築するメリット・デメリット
まずは、CMSを構築するメリットとデメリットを紹介します。
CMS構築のメリット1:豊富なテンプレートから選べる
CMSを使ってWebサイトを構築する場合、CMS内に用意されている豊富なテンプレート(テーマ)からデザインのベースを選択できます。
CMSにもよりますが、テンプレートの数は多く、おしゃれなデザインのものも多いため自社にあったテンプレートを選択できるでしょう。
CMS構築のメリット2:HTMLやCSSの知識は必要ない
本来Webサイトの構築には見た目を作るためのデザインスキル、それをWeb上で見られるようにするための実装のスキルが必要となりますが、CMS上で構築すればこれらのスキルは必要ありません。
多くのCMSはテンプレートをベースに直感的な操作でデザインでき、実装はそのままCMSが行ってくれます。
CMS構築のメリット3:IT部門以外のスタッフも更新できる
CMSでは、コンテンツの更新も専門的な知識なく行えます。
例えばブログ機能を搭載すれば、本来は1ページずつ構築しなければならないところ、画像やテキストの装飾などを見たまま編集できるエディターにより簡単に更新を行えます。
そのため、制作会社への依頼やIT部門の手を借りる必要はなく、自社のマーケティング部門だけで更新することも可能です。
CMS構築のデメリット1:画一的なデザインになりがち
テンプレートを使用することから、CMSでデザインを行うと画一的なデザインになる可能性があります。
豊富なテンプレートを利用できることはメリットですが、自社の求めるデザインを細部まで突き詰めることは難しいでしょう。
CMS構築のデメリット2:細かいカスタマイズは難しい
テンプレートを使用することはさらに、細かいカスタマイズが難しく、機能面でも制限を受けることにもつながります。
CMS構築のデメリット3:既存Webサイトのデータ移行は手間がかかる
CMSでは新規でWebサイトを構築することが一般的ですが、CMSなしで制作したサイトをCMSに移行することもあります。
ただしこれには専門的なスキルが必要であり、制作会社に依頼して一定の手間を必要とします。
CMSの構築方法は2種類
CMSの構築方法は、「オープンソース型」と「独自開発型」の2つに分かれます。
オープンソース型は、ソースコード(プログラミング言語で記述された文字列)が一般公開されており、ライセンス費用なしで導入できるCMSです。
オープンソース型CMSの代表的なものには、ブログシステムとしてよく知られているWordPressがあります。オープンソース型はソースコードが公開されていることから、テンプレートや拡張機能が多くの開発者によって開発されており、WordPressでは12,000を超えるテーマと55,000を超えるプラグインを利用できます(2024年4月時点)。
一方の独自開発型は、Web制作会社をはじめとするベンダーが、クライアントの要望に合わせて開発するCMSです。
申し込み企業が自社サーバーを持ち、そのサーバー内で独自のCMSを開発するものをオンプレミス、ベンダーがサーバーごと提供しSaaSとして利用できるものをクラウド型と呼びます。
現在はクラウド型の提供・利用が一般的であり、オープンソース型ほどカスタマイズの自由度は高くないものの、サーバー管理やセキュリティ対策などをベンダーに任せられます。
オープンソース型と独自開発型のメリット・デメリットは次の通りです。
それぞれの特徴や具体的なサービス名を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
ここからは、オープンソース型CMSを構築する手順と、独自開発型CMSを構築する手順を別々に解説します。
オープンソース型CMSを構築する手順
オープンソース型CMSを構築する手順は次の通りです。
- レンタルサーバーや独自ドメインを契約
- CMSのインストール
- テンプレートからテーマを選択
- 初期設定
本章でご紹介する手順は、Webサイトを新規で構築することを前提としています。
既存のWebサイトからのデータ移行が自社対応できない場合は、CMSを構築する前にWeb制作会社に相談すると良いでしょう。
1. レンタルサーバーや独自ドメインを契約
まずは、CMSの構築に必要なサーバーやドメインを用意しましょう。
サーバー
サーバーとは、データを保管・管理するための設備のことで、さまざまな役割があります。身近なものでは、スマホのデータのバックアップなどができるGドライブやiCloudなどのオンラインストレージサービスはサーバーを利用しており、バックアップデータはGoogle やAppleのサーバーに保存されています。
Webサイトの仕組みにおいては、Webサイトを構成するデータをサーバーに保存し、閲覧ユーザーのリクエストに応じてデータを送信することでブラウザに表示します。
自社専用のサーバーを立ち上げてCMSを構築することも可能ですが、ある程度の知識や技術が求められ、コストもかかってしまいます。サーバー運用のノウハウがなく、コストを抑えたい場合は、レンタルサーバーを契約するのも方法のひとつです。
国内シェアトップクラスの「エックスサーバー」や「ロリポップ!レンタルサーバー」には、簡単な手続きだけでCMSをインストールできる機能が用意されています。
レンタルサーバーの月額料金は1,000円前後が目安で、通信量にあわせて料金が変動していきます。
サーバーについて詳しくは、以下コラムにて解説しています。
ドメイン
ドメインとは、Webサイトにアクセスするために必要となる住所のような要素です。
「https://www.○○○.com」などのように表示されるURLのうち、「○○○.com」の部分がドメインにあたります。
ドメインは、無料でWebページを作成する際にホスティングサービスが提供するサブドメインと、自分の好きなように名称を変更できる独自ドメインの2種類に分かれます。
ホスティングサービスのサブドメインとは、例えばAmebaブログなどのサービスを利用したとき、必ずドメインに「ameblo」が含まれるため、自社のWebサイトだとは認識されにくいものです。SEOの効果も低く、ユーザーや顧客からの信頼性も得にくいため、特にコーポレートサイトを作る場合は必ず独自ドメインを取得します。
独自ドメインの利用料は、「.com」や「.jp」といった種類や、ドメイン取扱業者によって異なります。
登録時は100~2,000円程度、更新時には1,000~4,000円程度かかるので、予算を確認しておきましょう。
ドメインについては、以下コラムでも解説しています。
2. CMSのインストール
構築したサーバーにCMSをインストールします。
レンタルサーバーによっては、CMSのインストールからSSL設定、ドメイン設定までの作業を自動的に行うサービスを提供しています。
例えば、エックスサーバーは、オープンソース型CMSとして最も有名なWordPressに対応しています。申し込み時に「WordPressクイックスタート」にチェックを入れるとインストールが自動で行われるので、初心者でも簡単にCMSを構築できるでしょう。
ただし、どのCMSに対応しているかはレンタルサーバーによって異なります。自社の予定しているCMSが使えるかどうかを、あらかじめ確認しておいてください。
3. テンプレートからテーマを選択
多くのオープンソース型CMSには、豊富なテンプレートが用意されています。例えば、WordPressは9,000種類以上の無料テンプレートを公開しています。
テンプレートを使えば、プロのWebデザイナーによる洗練されたデザインを簡単に導入でき、テキストやボタンなどの細かい仕様変更も可能です。コーディングができるなら、独自のデザインにすることもできます。
WordPressについて、より詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
4. 初期設定
最後に、Webサイトのタイトルやロゴの設定、背景・トップ画像の挿入、パーマリンク設定などの初期設定を行います。
必要に応じて機能を追加できるプラグインも活用しましょう。例えば、「コンテンツの検索順位を上昇させたい」と考えている場合、SEO対策用のプラグインを導入すると、SEOコンテンツの自動採点や被リンク情報の確認といった機能を使えるようになります。
初期設定では、会社概要や問い合わせページなどの固定ページの作成も忘れずに行いましょう。
独自開発型CMSを構築する手順
独自開発型CMSを構築する手順は次の通りです。
- 要件定義
- 仕様書や見積書を確認
- 開発
- テスト・公開
既存のWebサイトからデータを移行する場合は、そのプロセスも含めて要件定義が必要です。データ移行のための料金が追加されることもあるので、事前に確認しましょう。
1. 要件定義
独自開発型CMSの構築は、Web制作会社に企画から設計・開発、導入までの作業を依頼します。このとき、最初に実施するのが要件定義です。
要件定義とは、制作会社とクライアントが打ち合わせを重ね、どのようなシステムや機能が必要なのかを明確にする作業です。
この工程においては、「機能面での要件定義」と「反映部分での要件定義」の2つの要素を明らかにします。
機能面での要件定義
機能面での要件定義では、主に次の要素を洗い出します。
- CMSに求める機能
- CMSを管理するチーム構成
- 編集・管理画面のレイアウト
- データを格納するサーバーに求めるスペック
まずは、Webサイトを運営するために必要な編集・管理機能を洗い出してください。続いて、担当者の知識やスキルレベルを考慮して優先順位を付けましょう。
CMSの主要な機能には、次のような種類があります。
- 見たまま編集:実際に表示されるページの状態のまま直感的に編集できる機能
- ファイルマネージャー:画像や動画などをアップロードして一元管理できる機能
- テンプレート:ページやブロックを追加する際に汎用性のある型を使用できる機能
- ブログ配信:ブログ記事を作成・更新・管理できる機能
- ニュース配信:ニュースを作成・更新・管理できる機能
- SEO対策:メタ情報の更新や被リンク情報の確認などが簡単にできる機能
- 複数人編集:アカウントごとに編集権限を付与できる機能
- レスポンシブデザイン:画面の大きさに合わせてレイアウトを自動調整する機能
編集・管理画面のレイアウトは使いやすさに直結します。CMSの操作に不慣れなメンバーが多いようなら、操作性の高さやメニューのわかりやすさなどを重視しましょう。
反映部分での要件定義
反映部分での要件定義では、次のような要素を洗い出します。
- データ編集時の、サイトへの反映の正確性
- ページャ(一覧ページ)に表示させるコンテンツ量
- ページャにコンテンツ掲載する際のルール
- 過去に作成したコンテンツの保持期間
この工程では、特に細かい要望をまとめる必要があります。
例えば、「1行に25文字を表示させる」「行間は2mmに固定する」といったように、ユーザーの視認性や可読性に直接影響を与えるような部分ほど、細かい配慮が必要です。
ほかにも、1ページに30行まで入るページャがあったとして、「31行目の情報が現れたらどうなるか」といった想定外の事態まで考えておくのも良いでしょう。
2. 仕様書や見積書を確認
Web制作会社から提示される仕様書や見積書を入念に確認します。この段階では、一社に絞らず、複数の会社へ相見積もりを依頼しましょう。
要件定義で自社の課題や要望が固まると、自社独自のRFP(提案依頼書)を作成できるようになります。
RFPを複数のWeb制作会社に提出することで、自社の要望に近い仕様書と見積書を効率良く集めることが可能です。
3. 設計・開発
独自開発型CMSを設計・開発する際は、フロント側とサーバー側に分けて作業を行います。
フロント側はWebサイトの外観にあたる部分で、主にHTMLやCSSを使ったサイトのデザインが主業務です。配色やフォントサイズ、行間などのデザイン面が自社の希望に合っているかを確認し、異なる場合は早めに担当者にその旨を伝えるようにしましょう。
一方のサーバー側では、入力情報の処理やデータの格納方法などを構築します。工数を減らしてコストを抑えるには、事前にコンテンツの階層構造をしっかりと整理し、担当者に伝えておくことが大切です。
4. テスト・公開
最後に、運営を想定したテストを実施します。単体テストや結合テスト、データ移行テストなどを実施しましょう。検証時はクライアント側も参加し、Webサイトの動作状況やバグの有無などを含め、細部まで確認してください。
問題がないようであれば、CMSを公開します。記事コンテンツを拡充させるほか、運用中の効果検証も忘れずに行いましょう。
あらかじめKPI(数値化された目標)を決めておき、継続的にコンテンツを改善することが大切です。
CMSの構築を社外へ依頼する場合
CMSの構築作業をWeb制作会社に外注した場合、必要な工程のみを依頼して残りの作業を内製化するのか、すべての工程を依頼するかによって費用が異なります。
各工程にかかる価格相場は次の通りです。
外注時の費用や価格相場について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
オープンソース型・独自開発型のおすすめCMS
ここからは、オープンソース型・独自開発型のおすすめCMSについてご紹介します。
オープンソース型CMSのおすすめ3選
WordPress
WordPressは、上記でもご紹介したオープンソース型を代表するCMSです。世界中のWebサイトの43%がWordPressを使っており、個人のブログはもちろん、大規模なニュースサイトまで運用されています。
膨大な数のテーマやプラグインを利用できる点は前述のとおりですが、主要なレンタルサーバーではインストールを簡単に行えること、利用数が多いことから基本的な使い方やTipsに多くアクセスできることなど、利用のしやすさにも優れています。
EC-CUBE
EC-CUBEは、国産のECサイト向けCMSです。プラグインにて決済機能を簡単に加えることができ、独自のセキュリティ対策によりセキュアな環境作りも行えます。
オープンソース型のためプラグインを組み合わせて独自に拡張していくことも可能ですが、ベンダーや制作会社に依頼して大規模ECサイトの開発をすることもできます。
Drupal
Drupalは、大規模サイトや公的機関サイトにも多く採用されているオープンソース型CMSです。
100以上の多数の言語に対応しており、自動翻訳機能を備えているため海外向けサイトを整備することもできます。
独自開発型CMSのおすすめ3選
Wix
Wixは、世界でも多くのシェアを持つクラウド型のCMSです。すばやく直感的にデザインできるインターフェースを備え、大企業のリクエストにも答えられるプレミアムクラスのホスティングを利用できます。
また、テンプレートは900以上あり(2024年4月時点)、あらゆる業界に合ったテンプレートがそろっています。高速表示やSEO対策の機能も備えており、ビジネスの成長を加速させられるでしょう。
ジンドゥー
ジンドゥーは、ドラッグ&ドロップだけでWebサイトの制作ができるクラウド型のCMSです。
初心者でもおしゃれなWebサイトを簡単に作れるように設計されており、「ジンドゥーAIビルダー」のプランではナビに従うだけでAIによりデザインが作成されます。
また、海外製のCMSですが日本語によるサポートがしっかりしているところもポイントです。
Content Hub
当社HubSpotが提供している、AIによるコンテンツ作成機能を備えたコンテンツマーケティングソフトウェアです。
Content Hubは無料から利用でき、HubSpotが提供している無料のCMSも利用できます。
CMSではWebサイトの公開後もビジネスの成長をサポートするアナリティクスなどの機能が利用でき、Content Hubにて短時間で作成したブログ記事をすばやく公開できます。
以下コラムにて、無料から利用できるCMSについてご紹介しています。
目的を明確にしたうえでCMSを構築しよう
CMSがあれば、専門知識がなくてもWebサイトの構築や運用が簡単に行えるようになります。ただし、CMSの構築方法は、どのような手段でWebサイトを制作するかによって手順が大きく異なります。
オープンソース型なのか独自開発型なのか、また、自社対応するのかWeb制作会社に依頼するのかを検討してください。どの方法でも、適切な手順に沿ってCMSを構築するとイメージに近い理想的なWebサイトを完成させることができます。
また、CMSを構築する際は目的を明確にすることが大切です。目的がないとコンテンツ制作の方向性が定まらず、集客やコンバージョンといった成果が予想よりも低くなる可能性があるためです。
まずは、自社における課題を明らかにし、その課題に対してCMSでどのようなアプローチができるのかを考えましょう。