経済産業省が公表したデータによると、日本のECサイトの市場規模は、2018年から2022年にかけて、BtoBが344兆円から420兆円、BtoCが17.9兆円から22.7兆円へと拡大しています。


コンテンツマーケティング入門ガイド
〜効果的なコンテンツ戦略の立て方を大公開〜
- コンテンツマーケティングの基本
- マーケティング戦略の立案方法
- ブログ作成のポイント
- 成功事例と書籍のご紹介
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ECサイトの数が増え、競争力が高まっている昨今、サイトを開設して顧客を待っているだけでは売上につながりません。企業側から有益な情報を提供し、見込み客とのタッチポイントを創出する手段として注目されているのが、コンテンツマーケティングです。
しかし、「とりあえずブログを書いてみる」「SNSのアカウントを作って投稿してみる」といった取り組み方では成果が上がりづらいでしょう。目的を定めて中長期的なプランを立案し、コツコツと施策を進めることが重要です。
本記事では、ECサイトのコンテンツマーケティングの概要や行うべき理由を解説します。記事後半では、施策例や成功例、注意点もあわせて解説しますので、ぜひ参考にしてください。
ECサイトのコンテンツマーケティングとは
ECサイトのコンテンツマーケティングとは、ブログやSNS、動画などのコンテンツを通じて潜在顧客や見込み客に自社ECサイトを知ってもらい、集客に役立てる手法のことです。既存顧客と良好な関係を構築し、ロイヤルティを高める効果もあります。
例えば、家具を販売するECサイトなら、インテリアのコーディネート方法や収納術などのコンテンツを発信して見込み客との接点を増やし、購入につなげます。
ECサイトのコンテンツマーケティングへの理解を深めるために、コンテンツマーケティングの基本的な概念と、ECマーケティングとの違いを見ていきましょう。
そもそもコンテンツマーケティングとは?
コンテンツマーケティングとは、主に潜在顧客や見込み客を対象としてコンテンツを発信する手法のことです。コンテンツに価値を感じてもらうことでブランドイメージを高めたり、ナーチャリングをしたりする目的で行われます。
コンテンツマーケティングには次のような種類があり、それぞれ特徴や活用方法が異なります。
- ブログ
- ホワイトペーパー
- ウェビナー
- SNS
- LP(ランディングページ)
- メールマガジン
- 動画
- プレスリリース
ECマーケティングとの違い
「ECサイトのコンテンツマーケティング」と「ECマーケティング」は、どちらも見込み客に商品・サービスの魅力をアピールし、購買につなげることを目的としています。しかし、両者には明確な違いがあります。
まずあげられるのが、焦点の違いです。ECサイトのコンテンツマーケティングは、必ずしも商品・サービスの購入につなげることを目的としているわけではありません。企業側から先に顧客へ価値のある情報を提供し、ブランド認知度の拡大や信頼性向上につなげることを重視します。
一方のECマーケティングは、ECサイト自体の売上向上やコンバージョン数の増加などに焦点を当てています。リスティング広告やデザイン改善、オフラインでの取り組みなど幅広い施策が含まれているのが特徴です。
ECサイトのコンテンツマーケティングは、ECサイトマーケティングに含まれる概念といえます。
ECサイトのコンテンツマーケティングを行うべき理由
ここでは、ECサイトのコンテンツマーケティングを行うべき理由を解説します。
- 集客力の強化
- ブランドイメージの向上
- 見込み客の購買意欲の醸成
集客力の強化
ECサイトでコンテンツマーケティングに注力すると、集客力の強化が期待できます。
例えば、質の高いブログ記事を継続的に投稿すると、検索エンジンのユーザーから評価されるようになります。同時に、検索エンジンからの評価も高まり、検索結果の上位に表示されるようになります。その結果、検索エンジンのユーザーが特定のキーワードで検索した際にクリックされやすくなり、自然流入からのアクセスが見込めるでしょう。
SNSも同様に、有益でトレンドを押さえたコンテンツは共有されやすく、新たな客層へのアプローチにつながります。
ブランドイメージの向上
ブランドイメージの向上につながることも、ECサイトのコンテンツマーケティングに取り組むメリットのひとつです。
潜在顧客や見込み客にとって価値がある良質なコンテンツを提供することで、「専門性のあるメディア」や「信頼できる情報源」として認識してもらえるためです。
ブランドイメージが高まると、ファンになった顧客がコンテンツを紹介してくれることもあります。また、ほかのメディアで取り上げる機会も増え、さらに認知度が高まる効果が期待できるでしょう。
見込み客の購買意欲の醸成
ECサイトのコンテンツマーケティングには、見込み客の購買意欲を高める効果もあります。
化粧品を販売している企業であれば、商品の使用感や効果を示すコンテンツを提供すると、商品に対する理解が深まり、購入の後押しになります。
また、商品やサービスの開発過程をコンテンツとして発信することで、より興味を持ってもらいやすくなります。開発者の想いや発売までの苦難などをストーリーとして共有すると、共感を得やすくなるでしょう。
ECサイトに適したコンテンツマーケティング施策例
ここでは、ECサイトに適したコンテンツマーケティングの施策例を、媒体別に分けて紹介します。
- ブログ
- SNS
- 動画
- メールマガジン
ブログ
ECサイトで販売している商品・サービスに関するブログ記事を作成すると、ブランドイメージや認知度の向上につながります。
具体的には、次のようなテーマが考えられます。
- ハウツーや使い方ガイド
- トレンドやシーズンに合わせた特集
- 商品の比較やランキング記事
- 顧客の商品レビュー
- 商品開発の裏側やストーリー
BtoCの場合は、シーズンやそのときのトレンドに合わせて、見込み客のニーズに合ったコンテンツを作っていくことが重要です。BtoBの場合は、見込み客の課題や悩みを深掘りすることを意識しましょう。そのうえで、自社の商品・サービスが見込み客の課題や悩みの解決に役立つことが伝わると、より興味を持ってもらいやすくなります。
SNS
SNSは、リアルタイムの情報発信に適したプラットフォームで、次のような種類があります。
- X
- TikTok
- LINE
SNSを活用する際に意識したいのが、UGC(User Generated Content:ユーザー生成コンテンツ)を増やすことです。UGCとは、ユーザーが自発的に発信するコンテンツのことで、実際に商品・サービスを利用したユーザーの口コミなどがUGCにあたります。
企業が発信する情報は「宣伝」と思われることがある一方で、一般ユーザーの主体的な意見は信頼性が高いと感じてもらえます。UGCはユーザー参加型のイベントやハッシュタグキャンペーンなどの方法で、戦略的に増やすことが可能です。
その他、最新のブログ記事や新商品の紹介、インフルエンサーとのコラボなど、SNSは、さまざまな面で活用できます。
動画
株式会社サイバーエージェントの調査によると、動画広告の市場規模は2023年で6,253億円、2027年には1兆円を突破する見込みです。
視覚と聴覚に訴えかける動画は、ユーザーの興味関心をより強く惹きつけることができます。情報量が多く、テキストだけでは伝わらない魅力をアピールできるでしょう。
次のようなテーマは、動画コンテンツと相性が良いといえます。
- ハウツーや使い方動画
- 顧客の商品レビュー
- 商品開発の裏側やストーリー
- ライブ配信
動画コンテンツは、ブログやSNS、メールマガジンにも組み込むことができ、汎用性が高い点も特徴です。コンテンツを横展開することで、複数のメディアのユーザー層にアプローチできます。
メールマガジン
見込み客や既存顧客にメールを通じて情報やコンテンツを届けるメールマガジンも、ECサイトのコンテンツマーケティングで多くの効果が期待できます。
メールマガジンは登録者に直接配信され、ストーリー仕立てでノウハウや最新情報を送るなどの施策が実施しやすい点が特徴です。また、新商品の発売や期間限定の割引キャンペーンなど、購買を促進したいタイミングにも活用できます。
MA(マーケティング・オートメーション)ツールを活用すると、ECサイトでの購入履歴や閲覧データに基づき、個別にカスタマイズしたメールを送信することが可能です。過去に購入した商品に関連するコンテンツを提供したり、年齢・性別といったセグメントに分けてコンテンツの内容を変更したりすることで、購買意欲を効果的に高められるでしょう。
ECサイトのコンテンツマーケティングの成功事例
ここでは、ECサイトのコンテンツマーケティングの成功事例を紹介します。
- 北欧、暮らしの道具店
- かごしまぐるり
- 谷治新太郎商店
北欧、暮らしの道具店
出典:北欧、暮らしの道具店
「北欧、暮らしの道具店」は、北欧をはじめとしたさまざまな国のインテリア商品や雑貨などを扱うECサイトで、株式会社クラシコムが運営しています。スマホアプリを活用したコンテンツマーケティングに力を入れており、売上の65%はアプリからの購入によるものです。
同社のスマホアプリには、「暮らし」をテーマにしたWeb記事や動画、音声などのコンテンツが掲載されています。コーディネートの提案や旬の料理レシピなど、顧客視点で作成された魅力的なコンテンツを、アプリ1つで楽しむことができます。
気に入ったコンテンツをブックマークしておき、あとからじっくりと商品の購入を検討できるのも特徴のひとつです。ECサイトのスマホアプリは商品の検索や購入が主な用途ですが、コンテンツマーケティングに活用することで顧客体験が向上し、売上につながっている好例といえるでしょう。
かごしまぐるり
出典:かごしまぐるり
「かごしまぐるり」は、鹿児島の地元産品を扱うECサイトで、株式会社オービジョンが運営しています。マーケティング戦略の一環として、InstagramやFacebook、XなどのSNSを通じて、商品や鹿児島県の情報を届けており、サイトへの訪問者も順調に伸びていました。
しかし、SNSでは長尺の動画や長文の投稿が難しく、ユーザーに十分な情報を届けられていないと感じたため、記事コンテンツの発信を開始します。
紹介する商品に関連があるコンテンツをあわせて公開することで、商品の裏側にある生産者の想いを読者に伝えています。商品の歴史を掘り下げた内容やスタッフが感じたリアルな視点や想いを盛り込んだ文章で、読者の心に響くコンテンツ作りを意識しているのが特徴です。
サイトのUIを改善したこともあり、コンテンツ発信を開始してから2か月でサイトへの訪問者数が20%近くアップしました。それに比例してECの売上も伸びているといいます。
卒塔婆屋さん
出典:卒塔婆屋さん
谷治新太郎商店は、墓の後ろに立てる搭状の木札「卒塔婆(そとうば)」を製造する企業です。1882年の創業以来、対面での営業で新規顧客創出を行っていましたが、市場規模の縮小や飛び込み営業の限界を感じ、ECサイト「卒塔婆屋さん」を設立しました。
ECサイト設立後に年商1億円、EC化率40%を達成した背景には、さまざまな理由がありますが、そのひとつにコンテンツSEOに注力した点があげられます。卒塔婆に関するコンテンツを作成し、ECサイトのトップページや商品ページに掲載しました。ECサイトのほかにWordPressも立ち上げ、ブログを公開しています。
同社の主な顧客は寺院や神社などです。サイト構造や記事のタイトルといった基本的なSEOのテクニックは意識しながらも、顧客が知りたいことや役に立つ情報の発信に注力したことが成功につながりました。結果的に、検索エンジンからのオーガニック流入がECサイトの流入元として最も多くなっています。
さらに広告も展開するなど、複数のデジタルマーケティング施策を平行して横展開したことが、成果につながった要因だと考えられるでしょう。
ECサイトでコンテンツマーケティングを行う注意点
ECサイトでコンテンツマーケティングを行う際は、次の点に注意してください。
- 成果が出るまでには一定期間を要する
- 商品とコンテンツには相性がある
- コンテンツは量よりも質にこだわる
成果が出るまでには一定期間を要する
ECサイトに限らず、コンテンツマーケティングは中長期的に取り組む施策です。
例えば、ブログを立ち上げる場合、商品情報やトレンドをまとめた記事を投稿しても、検索エンジンに評価され、ユーザーに記事を読んでもらえるようになるまでには時間がかかります。SNSも同様で、初期段階ではフォロワーが少なく、投稿への反応も少ない可能性が考えられるでしょう。
短期的な成果を求めず、継続的な取り組みこそが顧客への価値提供、ひいては企業の利益につながることを認識することが重要です。
商品とコンテンツには相性がある
コンテンツには次のようにさまざまな種類があるため、自社の商品と相性の良いものを選ぶことも重要です。
カテゴリごとにおすすめのコンテンツの種類や内容をまとめました。
コンテンツの種類を選ぶ際のポイントは、ターゲット層の使用頻度が高い媒体を見極めることです。顧客が購入に至るまでの「カスタマージャーニー」も意識して、複数の媒体で戦略的にコンテンツマーケティングを展開しましょう。
コンテンツは量よりも質にこだわる
コンテンツマーケティングでは、継続的に質の高いコンテンツを提供していくことが最も重要です。コンテンツの量を重視して価値の低い情報を発信しても、メディアのファンを増やすことは難しいでしょう。
それだけでなく、質の低いコンテンツはアルゴリズム上、検索エンジンやSNSプラットフォームからの評価が落ちるため、ユーザーに届きづらくなります。
コンテンツ制作をサポートするツールを導入すると、SEOやターゲット層のニーズを踏まえた質の高いコンテンツを制作できます。
継続的な集客のためにECサイトのコンテンツマーケティングに取り組もう
ECサイトのコンテンツマーケティングに取り組む最大のメリットは、集客力を高められることです。コンテンツを通じて潜在顧客や見込み客との接点が生まれることで、競合サイトとの差異化につながります。
ECサイトと相性の良いコンテンツには、ブログやSNS、動画、メールマガジンなどがあげられます。ターゲット層がよく利用しているプラットフォームを見極め、ニーズを深掘りして価値のあるコンテンツを提供しましょう。質の高いコンテンツを効率的に制作するには、適切なツールの導入も有効です。
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