【徹底解説】コンテンツマーケティングとは?実践方法や事例を解説

執筆者 水落 絵理香(みずおち えりか)
コンテンツマーケティング入門ガイド2021

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見込み客を惹きつけるコンテンツとは?

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【徹底解説】コンテンツマーケティングとは?実践方法や事例を解説

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潜在顧客や見込み客に購買活動を促すには、売り手との間に一定の信頼関係が必要です。売り手が買い手との間に信頼関係を築く有効な手段が、「コンテンツマーケティング」です。さまざまなコンテンツを通じて自社やブランド、商品・サービスについて知ってもらうことを目指します。

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〜効果的なコンテンツ戦略の立て方を大公開〜

  • コンテンツマーケティングの基本
  • マーケティング戦略の立案方法
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    本記事では、コンテンツマーケティングの定義と概要、具体的なやり方、事例などを解説します。成果を出すポイントも解説しているので、ぜひ参考にしてください。

    コンテンツマーケティングとは

    コンテンツマーケティングとは

    コンテンツマーケティングとは、買い手(潜在顧客・見込み客・顧客)の求める「コンテンツ(=情報)」を提供して相手との信頼関係を構築し、自社の商品・サービスやブランドの価値を知ってもらう一連のマーケティング手法です。

    たとえ魅力的な商品であっても、企業が買い手のニーズに寄り添わず一方的に情報を発信していたり、信頼関係がなかったりする場合、買い手が購買に至ることはないでしょう。一方で、悩みや課題解決をサポートしてくれて、信頼できる相手であれば、何らかの商品・サービスを勧められたときに興味を抱きやすくなります。

    例えば、自社のビジネスに課題を抱えている場合に有益な情報を提供している企業には、おのずと信頼を寄せ、より情報を得ようとするでしょう。価値ある情報の提供はユーザーに好印象を与え、将来の買い手を創出するきっかけとなります

    このように、コンテンツマーケティングは、買い手との信頼関係の構築や購買意欲の醸成、さらには企業のブランディングに至るまで、さまざまなメリットをもたらします。
     

    コンテンツマーケティングにおける「コンテンツ」とは

    コンテンツマーケティングにおける「コンテンツ」とは、テキストや画像、図解、動画、音声などで提供される価値ある情報のことです。Web上で何かのキーワードを入力すると求める情報が返ってくるジェネレータのようなツールを指す場合もあります。

    コンテンツマーケティングでは、次の方法でアプローチを実施します。

    コンテンツ

     

    コンテンツSEOとの違い

    コンテンツマーケティングと混同されやすい言葉に「コンテンツSEO」があります。

    SEOとは「Search Engine Optimization(検索エンジン最適化)」の略語です。特定のキーワードでの検索結果で上位表示することで、より多くの検索ユーザーにWebページやコンテンツを閲覧してもらうための施策を指します。「コンテンツSEO」とは、検索結果での上位表示を目指すコンテンツを作ることです。

    買い手とコンテンツが出会う場所(Where)はさまざまに異なります。次の図のように、コンテンツSEOは、あくまでも検索結果での接点を創出するためのコンテンツマーケティングの施策であるといえるでしょう。

    コンテンツSEO

    コンテンツSEOは、コンテンツマーケティングを成功させるうえで重要な役割を担います。コンテンツSEOを意識して検索ユーザーの悩み(ニーズ)や願望(ウォンツ)を把握できれば、買い手にとって必要なコンテンツを提供しやすくなります。

     

    コンテンツマーケティングの役割

    コンテンツマーケティングには、買い手の態度変容を促す役割があります。

    買い手の購買行動は、まず商品やサービスを認知し、情報を調べて興味・関心を持ち、比較・検討を行ったうえで購入に至る、一定のプロセスを形成します。このような購買行動プロセスにおいて代表的なモデルが、AISASやAISCEASです。

    買い手は商品・サービスに関する情報を取得するたびに、興味関心や購買意欲は変容していきます。このアップデートに対応し、購買行動を起こしてもらうために、企業はユーザーニーズを把握してコンテンツを提供する必要があります。

    例えば、認知ステージにいる買い手に、商品・サービスの価値やベネフィットを訴求するコンテンツを提供すると、次の興味・関心ステージへと移行する可能性が高まります。コンテンツマーケティングにより購買行動プロセスの各ステージで適切なコンテンツを提供できれば、購買や資料請求などのアクションを促せるでしょう。

     

    コンテンツマーケティングの進め方

    コンテンツマーケティングの施策は、次の流れで進めます。

    1. 解決したい自社の「課題」と「目的」を明確にする
    2. ペルソナを設計する
    3. コンテンツを設計する
    4. KGIとKPIを設定する
    5. コンテンツを作成する
    6. 効果測定をする

    手順ごとの進め方やポイントを解説します。
     

    1. 解決したい自社の「課題」と「目的」を明確にする

    コンテンツマーケティングに取り組む際は、まず解決したい自社の課題を明確にしましょう。自社の課題とリソースの状況によって、今すぐコンテンツマーケティングに取り組むべきかが異なります。

    例えば、短期間で多くの見込み客と接点を持ったり、売上を創出したりする必要がある場合には、コンテンツマーケティングは不向きです。また、時間的な余裕があっても社内リソースの確保が困難な場合は、現在の施策を改善して取り組み続けたほうが良い場合もあります。

    このように、自社の課題と社内リソース、成果を出したいタイミングを踏まえ、コンテンツマーケティングに取り組む目的を明確にすることが大切です。
     

    2. ペルソナを設計する

    コンテンツマーケティングは、買い手にとって価値のある情報を届ける取り組みであるため、買い手のニーズへの理解が欠かせません。

    ニーズの理解に有益なのが、ペルソナの設計です。ペルソナとは、自社の商品やサービスの価値を必要としている、自社にとって理想的な顧客像です。

    例えば、「35歳、IT企業勤務、チームリーダー、休日は息子が参加するサッカーチームのコーチ」のように、鮮明にイメージできる特定の人物像を設定します。ペルソナを具体的に決めると、買い手のニーズや必要としている情報を明確にイメージでき、発信する情報がブレにくくなるでしょう。

    ペルソナの具体的な設計方法は、次の記事で解説しています。ペルソナ設計に使えるテンプレートも用意しているので、ぜひご活用ください。

    また、ペルソナを簡単に作成できるツールもあるので、ペルソナ作成のイメージをつかみたい方はぜひお試しください。

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    3. コンテンツを設計する

    2で設定したペルソナには、本記事でお伝えしてきたように購買意欲の段階が異なるケースがあります。購買ステージに応じて、ペルソナが求める情報や情報収集の経路が異なるため、発信する情報の内容やアプローチ方法を変える必要があります。

    コンテンツの設計には、ペルソナが求める情報や行動経路を可視化できるカスタマージャーニーマップの活用がおすすめです。カスタマージャーニーマップとは、見込み客が自社の業界や商品・サービスを認知する段階から購買に至るまでの行動の流れを示した図です。

    カスタマージャーニーマップを作成すると、ペルソナの思考や行動を可視化できるため「どのタイミングで」「どんな情報を」「どんな方法で届けるべきか」を考えやすくなります

    カスタマージャーニーマップを作成

    上の図は、見込み客の商品購入前までの購買行動プロセスを示したカスタマージャーニーマップの一例です。実際には、商品購入後の行動もあわせて考えると、各ステージで発信するコンテンツの内容がより明確になります。

    また、各ステージで提供する情報や情報提供に用いるメディアなどもあわせて記載すると、ペルソナの行動に応じてどのようなコンテンツを届けると良いのかを考えやすくなります。

    カスタマージャーニーマップテンプレート ダウンロードする→

     

    4. KGIとKPIを設定する

    コンテンツを提供する対象と内容が決定したら、目的に応じたKGIとKPIを設定します。

    • KGI(Key Goal Indicator)
      マーケティングの目的を達成するための最終ゴール 例)商談数を●件増加、売上を●%向上
    • KPI(Key Performance Indicators)
      KGIを達成するために必要な中間目標(KGIの達成度を測る指標) 例)コンテンツ閲覧数、資料ダウンロード数、問い合わせ数

    例えば、次のケースでのKGIは最終目標である「新規成約数」です。

    • 最終目標:新規成約数の増加
    • 課題:見込み客は十分に創出できているが、商談につながる見込み客が少ない
    • コンテンツマーケティングの目的:創出した見込み客の購買意欲を高める

    KPIは、コンテンツマーケティングの目的とゴール(KGI)を考慮したうえで、ペルソナ(買い手)のおかれた購買ステージと購買意欲に応じて設定します

    例えば、課題をある程度認識しているものの、解決策を把握していない潜在顧客に対し、商品・サービスの認知を目的にSNSでコンテンツを発信するケースでは、いかに多くの人に閲覧してもらえるかが重要です。そのため、SNS投稿のPV数、シェア数、リアクション数をKPIに設定します。

    一方、課題解決策として具体的な商品やサービスを探している買い手に自社の商品・サービスを候補にしてもらうには、コンテンツを通してその概要やメリットを理解してもらわなければなりません。よって、サービス概要資料のダウンロード数やWebページの滞在時間、離脱率などをKPIに設定します。

    HubSpotでは、見込み客の購買ステージごとに、次の指標をKPIに定めています。

    見込み客の購買ステージ

    ただし、コンテンツの内容によっては、ステージごとに使えるKPIは異なります。KPIの一例にこのような指標があることを理解したうえで、発信するコンテンツの内容や自社の目的に合ったKPIを設定してください。

    また、KPIを設定する際はSMARTの法則にもとづいて考えるのもおすすめです。SMARTは、目的設定に必要な要素の頭文字から成り立っています。

    • Specific(具体的であること):実際の数字、具体的な期限
    • Measurable(測定可能であること):アクセス解析ツールなどで測定可能な数値
    • Attainable(達成可能であること):挑戦的でありつつ、無謀な目標は立てない
    • Relevant(経営目標と適合していること):その施策が企業の大きな経営目標から逸れていないかを確認する
    • Time-bound(期限があること):期限を設けて成果を確認できる目標を設定

     

    5. コンテンツを作成する

    カスタマージャーニーマップやKGI・KPIに沿ってコンテンツを作成します。作成計画を管理するためのカレンダーを作ると、配信予定日やコンテンツ作成に着手するタイミングについて社内で共通認識を持てるため、計画通りに進めやすくなります。
     

    6. 効果測定をする

    コンテンツの配信後はステップ4で定めたKPIを達成できているかどうかを分析して効果測定を行い、良かった点や改善点を洗い出しましょう

    例えば、Web記事の効果測定では、分析ツールを用いるのがおすすめです。

    代表的な無料の分析ツールに、Google アナリティクスやGoogle Search Console などがあります。これらのツールを用いれば、PV数やCV数、ユーザーの属性などのデータを可視化できます。Google スプレッドシートなどにエクスポートすれば、KPIの達成状況を容易に評価できるでしょう。

    記事数が多い場合は、データ分析を効率化できるツールを導入するのがおすすめです。HubSpotのContent Hubでは、Google アナリティクスとの連携や創出したリードの確認が行えます。

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    コンテンツマーケティングに役立つコンテンツ作成のポイント

    ここからは、コンテンツマーケティングにおけるコンテンツ作成のポイントを4つご紹介します。
     

    誰にどこで伝えるかを意識する

    ユーザーにとって有益なコンテンツを作ったとしても、閲覧してもらわなければ意味がありません。YouTubeを視聴する頻度が高いターゲットに対して、ブログ記事を中心にコンテンツを提供しても情報を届けることは難しいでしょう。

    コンテンツを考える際は、「誰に(Whom)」「どんな情報を(What)」「いつ(When)」「どこで(Where)」「どのように(How)」伝えるのかを意識することが重要です。

    誰にどこで伝えるかを意識する

    • 誰に(Whom):潜在顧客、見込み客、顧客
    • どのような情報を(What):相手が求める情報(相手の悩みを解決したり、願望をかなえる情報)
    • いつ(When):相手がコンテンツと接点をもつタイミング
    • どこで(Where):相手が情報を収集している場所
    • どう伝えるか(How):相手がコンテンツの価値を享受できる形式(記事、画像、動画、音声など)

    上記のプロセスにおけるWhereとHowは、買い手が日常的に情報収集している場所を把握することが大切です。

    情報収集している場所

     

    買い手の段階に合わせたコンテンツを作成する

    買い手の購買意欲は、商品のニーズ(必要性)とウォンツ(欲求)の高さに合わせて、次の4段階に分けられます。
     

    買い手の購買意欲の4段階

    1. 今すぐ客
      購買意欲の高い買い手(見込み客)。商品・サービスの必要性を強く感じており、すぐにでも商品が欲しいと思っている。「この商品が欲しい」という顕在層や「AとBのどちらが良いか迷っている」準顕在層にあたる。
    2. お悩み客
      課題や悩みを解決する必要性を日常的に感じているが、どんな商品・サービスを導入すれば解決するのかをわかっていない。
    3. そのうち客
      気になっている商品・サービスはあるが、導入する必要性を強く感じていない。
    4. まだまだ客
      課題や悩みをある程度認識しているが、解決の必要性を感じていない。または、何となく気になる商品・サービスはあるが、手に入れたいとは思っていない。

    次の図は4段階の購買意欲を表したもので、5つの矢印は購買意欲の変化(醸成)を表します。コンテンツ作成は1から5の順で進めることが重要です。

    4段階の購買意欲

    買い手の購買意欲を醸成するには、基本的には買い手が「今すぐ客」に近づくためのアプローチを考えることが大切です。

    例えば、1の「お悩み客→今すぐ客」や2の「そのうち客→今すぐ客」の矢印を意識したコンテンツを作り、購買意欲を醸成します。また、3の「まだまだ客→今すぐ客」の矢印も、コンテンツ次第では購買意欲の向上が期待できます。

    4の「まだまだ客→お悩み客」は、まずは買い手のニーズ(必要性)を高めるアプローチであり、5の「まだまだ客→そのうち客」は、まずは買い手のウォンツ(欲求)を高めるアプローチです。

    ここからは、1~5のそれぞれの矢印で、どのようなコンテンツを提供すれば良いかを解説します。
     

    買い手の購買意欲を醸成するコンテンツの5パターン

    1. 「お悩み客→今すぐ客」
      「お悩み客→今すぐ客」 課題や悩みを解決する必要性を日常的に感じているものの、どんな商品・サービスを導入すれば解決するのかをわかっていない。このようなお悩み客には、課題や悩みの原因、解決策についてわかりやすく解説したコンテンツを作り、解決策の一つとして商品・サービスを紹介するのが有効です。
      解説したコンテンツ
    2. 「そのうち客今ますぐ客」
      そのうち客今ますぐ客 気になっている商品・サービスはあるものの、導入する必要性を強く感じていない。このような、そのうち客には、その商品・サービスがどんな課題を解決し、どんなベネフィットを生み出すのかという気付きにつながるコンテンツを作るのが有効です。
      その商品・サービスがどんな課題を解決
    3. 「まだまだ客→今すぐ客」
      まだまだ客→今すぐ客 課題や悩みをある程度認識しているものの、解決の必要性を感じていない。または、何となく気になる商品はあるが、手に入れたいとは思っていない。このような、まだまだ客には、相手が課題や悩みを感じたタイミングで、その本質を明示し、解決策についてわかりやすく解説したコンテンツを届けることが有効です。 まだまだ客が今すぐ客になる場合は、突発的な出来事がきっかけとなるケースが多くなります。そのタイミングで届けられる、もしくは発見してもらえるコンテンツを準備しておくことが大切です。
      解決策についてわかりやすく解説
    4. 「まだまだ客→お悩み客」
      まだまだ客→お悩み客 まだまだ客は潜在的な悩みや願望に気付くことでニーズをもったお悩み客になるため、悩みや願望に気付くきっかけとなるコンテンツを提供するのが有効です。
      きっかけとなるコンテンツには、感情を揺さぶる情緒的なコンテンツや物事の理(ことわり)に触れられる理性的なコンテンツなどさまざまな種類があります。例えば、「自分もこうなりたい」といった変身願望を刺激するコンテンツもおすすめです。
      悩みや願望に気付くきっかけとなるコンテンツを提供
    5. 「まだまだ客→そのうち客」
      まだまだ客→そのうち客 まだまだ客は自分の興味・関心を引く商品やサービスに出会うと、ウォンツを持ったそのうち客になるため、商品・サービスを魅力的に紹介するコンテンツを提供するのが効果的です。また、憧れの芸能人やインフルエンサーなどがその商品・サービスを使用している場合もウォンツが醸成されます。
      商品・サービスを魅力的に紹介するコンテンツを提供

    ここまで、顧客を多く創出することをゴールに解説してきました。しかし、買い手の態度変容は簡単に起きるものではありません。たった一つのコンテンツや一回の出会いに態度変容を期待するのではなく、コンテンツを通して買い手との接点を何度も創出することで信頼関係を醸成し、結果としての変化を期待すると良いでしょう。

    買い手を自分たちの都合に合わせて動かそうとするのではなく、買い手が納得して自ら動きたくなるような買い手に寄り添うアプローチを意識することが重要です。
     

    商品の機能的価値と情緒的価値を伝える

    すべての商品には、スペックや性能に関する「機能的価値」と、心地良さや安心感に関する「情緒的価値」が存在します。

    • 機能的価値:商品のスペックや性能といった、技術的な価値
    • 情緒的価値:商品から受ける印象や、体験・体感により得られる精神的な価値

    これら2つの価値を伝えるには、次の情報を提供します。

    商品の機能的価値と情緒的価値を伝える

    商品の情報を届ける際は、これらの情報を可能な限り伝えましょう。ただし、一方的な情報提供にならないように注意が必要です。買い手が求める商品情報を理解し、優先的に提供しましょう

    また、機能的価値と情緒的価値は、コンテンツにも含まれる根源的な価値です。作成したコンテンツにおける機能的価値と情緒的価値を考えることも、コンテンツマーケティングにおいては重要です。
     

    複数のアプローチ方法で届ける

    コンテンツマーケティングのアプローチ方法には、記事や画像、図解、動画、音声、リアルイベントなどさまざまなものがあり、一つのコンテンツを拡張利用できます。

    次の図は、コンテンツの拡張利用の一例です。

    コンテンツの拡張利用の一例

    例えば、作成したブログ記事をもとに動画を制作したり、セミナーやイベントで取り上げたりできます。さらに、動画から音声を取り出して音声メディアで配信するのも有効です。

    コンテンツを提供するうえで重要なのは、コンテンツを届けたい相手がどのような動線にいるか、すなわち日常的に何に触れているかを知り、動線上にある場所でコンテンツを露出させることです。

    露出場所を変えることで、コンテンツが再び注目されるケースもあります。

    YouTubeに投稿したものの、再生数が伸びなかった動画から音声を抜き出してPodcastで配信したところ、人気が出たケースがあげられます。また、同様の動画を文字起こしして記事にしたところ、SNSで話題を呼び、結果として検索結果の上位表示につながったケースも少なくありません。

    コンテンツマーケティングを成功させるには、コンテンツの発信方法にこだわらず、適宜形を変えながら露出に最適な場所を見つけ出すことが大切です。
     

    コンテンツマーケティングのメリット・デメリット

     

    コンテンツマーケティングのメリット

    コンテンツマーケティングを実施する主なメリットは次の通りです。

    • 潜在顧客との接点が増える
    • 広告出稿費を抑えられる
    • 業界での存在感(プレゼンス)が高まる
    • コンテンツを資産として蓄積できる

    潜在顧客にとって価値のあるコンテンツを提供し続ければ、潜在顧客が自社のファンとなり、将来の顧客となる可能性が高まります。また、専門性の高いコンテンツを発信することで業界内での権威性が向上し、消費者が関連するニーズやウォンツを抱いた際に、第一想起されやすいブランドに成長できるでしょう。

    さらに、一度作成したコンテンツはブログ記事やSNS投稿、電子書籍など多様な形で活用でき、資産として長期的に活用できる点もメリットです。また、SEO対策を施した記事や動画は、広告と比べて継続的な流入を生み出しやすく、広告出稿費の削減にもつながります。

     

    コンテンツマーケティングのデメリット・注意点

    コンテンツマーケティングには、以下のようなデメリットもあります。

    • ニーズ分析やコンテンツ制作に手間がかかる
    • 成果が出るまでに時間がかかりやすい

    買い手に価値を感じてもらうコンテンツを作成するには、ターゲットのニーズ分析や検索意図の調査などが不可欠であり、記事作成や動画編集にはある程度の時間がかかります。外部委託する場合には発注のコストがかかり、社内で制作する場合は専門的なスキルの習得が求められ、社内体制の構築に時間がかかるでしょう。

    また、コンテンツマーケティングは短期間で即効性のある施策ではなく、検索エンジンで上位表示されるまでに数か月、場合によっては1年以上かかることもあります。そのため、継続的な取り組みと長期的な視点を持つことが成功の鍵となります。

     

    コンテンツマーケティングの具体例

    他社の事例を参考にすると、コンテンツマーケティングの具体的な施策をイメージしやすくなります。HubSpotとサイボウズ株式会社の2社の事例をご紹介します。
     

    HubSpot

    HubSpot

    HubSpotでは、ユーザーから価値を得るより先に価値を提供することで、ユーザーと良好な関係を築くという「インバウンドの思想」を提唱しています。

    インバウンドの思想を体現するために重視しているのが、「顧客の成功を支援するために自社は何をできるか」との考えです。この考えは、オウンドメディア「HubSpotブログ」の記事内容やダウンロード資料へのこだわり、ブログトピックの選び方にも及んでいます。

    HubSpotが提供する資料の数は200以上あり、読み物資料だけでなく、営業案件の進捗管理ができるExcelシートや、SNS投稿のスケジュール管理用カレンダーなど、実務ですぐに活用できるテンプレートも豊富に用意しています。

    HubSpotが提供する資料の数は200以上

    また、記事制作において実践しているのが、ユーザーのニーズを軸にトピックを作成する「トピッククラスター戦略」です。トピッククラスター戦略とは、メインのトピックに関する概要的な内容をまとめた記事(ピラーコンテンツ)と、同トピックをより具体的に掘り下げた内容を扱う記事(クラスターコンテンツ)をハイパーリンクでつなぎ、コンテンツ群を作成する考え方です。

    トピッククラスター戦略

    SEOコンテンツを作成する際は「検索ボリュームが見込めるか」「成果が得られそうか」などを重視し、記事で上位表示を目指すキーワードを選ぶのが一般的です。しかし、この方法では同じブログ内で記事の内容が重複して自社の記事同士でトラフィックを奪い合う、ユーザーが知りたい情報を提供できずブログに価値を感じてもらえない、などの問題が生じる可能性があります。

    これに対し、トピッククラスター戦略では、「ユーザーの知りたい情報は何か」を重視して各記事のトピックを決めます

    例えば、「アクセス解析」のクラスターコンテンツを作成する場合に、多くの検索ボリュームを期待できるトピックが、「アクセス解析 無料」だったとししょう。しかし、ユーザーの興味・関心が「直帰率」に関する情報であるならば、「アクセス解析 無料」ではなく「直帰率」について解説する記事を作成します。

    このようにトピックを決めると、ピラーコンテンツを中心としたコンテンツ群によってユーザーの知りたい情報を網羅できます。その結果、ユーザーにブログ内の記事を回遊してもらいやすくなり、各記事へのトラフィック増加が見込めるのです。また、同じブログ内の記事同士でトラフィックを奪い合う問題も解消できます。

    HubSpotではこの戦略に取り組むことで、ブログ全体でPV数や順位の向上を実感できるようになりました。

     

    サイボウズ株式会社

    サイボウズ株式会社

    出典:https://cybozushiki.cybozu.co.jp/

    グループウェアを手がけるサイボウズ株式会社では、「サイボウズ式」というオウンドメディアを展開しています。「競合他社と同じ記事を書かない、編集長は企画書のみで採否を判断しない、KPIやKGIなどの数値目標を追わない」など、独自の方針で運営しているのが特徴です。

    この方針のもと、認知拡大や広報を目的に独自性の高いコンテンツを制作し続けました。その結果、1か月の平均PV数は約20万、公開記事数は10~15本とメディア規模は大きくないにも関わらず、テレビ番組で紹介されるほど影響力の強いメディアに成長しました。

    コンテンツマーケティングのその他の事例は、こちらの記事で詳しく解説しています。

     

    コンテンツマーケティングで成果を出すポイント

    コンテンツマーケティングを成功させるには、次の考え方を意識しましょう。

    • 目的を明確にする
    • 買い手に対して価値の高い情報を提供する
    • 成果が出るまでに最短1~2年かかる前提で取り組む
    • 継続してコンテンツを作成できる体制を構築する
    • MAやCMSなどのITツールを活用する
       

    目的を明確にする

    あらゆるビジネス施策において当てはまりますが、コンテンツマーケティングにおいても目的を明確にすることが重要です。目的なしに施策を進めても、たどり着くべきゴールがわからず、期待するような成果は得られないでしょう。また、チーム内で目的を共有できないと、価値の薄いコンテンツ作成により疲弊を招くこともあります。

    コンテンツマーケティングでは「何を目的にコンテンツを届けるのか」「誰にどうなって欲しいのか」「自社はどういった観点で成長したいのか」などを明確にすることが大切です。短期的な成果は出にくい施策ですが、細かいマイルストーンであるKPIを明確に定め、コンテンツを作成することが中長期的な成果につながります。
     

    買い手に対して価値の高い情報を提供する

    自身の悩みが解決されるようなコンテンツを受け取ってはじめて、買い手は企業を信頼します。

    買い手の悩みや課題を解決するコンテンツを提供するには、相手への理解が欠かせません。コンテンツの届け先である買い手のニーズを明確にしないと、次の状態に陥る可能性があります。

    • 自社が伝えたい情報ばかり伝えている
    • 買い手が求めている情報と提供している情報がズレている
    • 自社や商品・サービスとの関連性の低いコンテンツを提供してしまう

    コンテンツの内容が買い手のニーズに沿わなければ、買い手からの信頼を十分に得られず、自社のコンテンツを受け取ってもらいにくくなります。

    また、SEOの観点からは、検索ユーザーのニーズに沿っていないコンテンツは検索エンジンからも評価されにくいため、上位に表示されにくくなります。結果的に、期待した見込み客の創出数や自社サイトへの流入数も得られないでしょう。

    このような状況に陥らないよう、コンテンツマーケティングに取り組む際は、対象となる顧客像(ペルソナ)を明確にし、買い手が求めている価値を明確にすることが大切です。
     

    成果が出るまでに最短1~2年かかる前提で取り組む

    コンテンツマーケティングで成果を得るには、一定数以上のコンテンツを作成する必要があります。

    実際に、BtoBサイトにおけるSEO記事の場合、サイト内の記事数が60を超えると、コンテンツ経由でのサイト訪問数が指数関数的に増加するという調査結果もあります(参考:BtoBサイトにおけるコンテンツマーケティングのあるべき姿についての提言|WACUL TECHNOLOGY & MARKETING LAB | 株式会社WACUL)。

    60記事分のコンテンツを公開しようとしても、そこまでのリソースをかけられない企業も多いでしょう。そのため、成果を得られるだけのコンテンツを蓄積するまでには、長い時間がかかることを念頭に置いておく必要があります。

    長期的な施策となるコンテンツマーケティングに取り組むには、事前に上層部や社内の他部署にも、これらの前提を理解してもらうことが重要です。コンテンツマーケティングの目的と必要性を社内で共有し、時間をかけて取り組むだけのメリットがあることを示しましょう。

    なお、短期間で一定の成果をあげたい場合は、今すぐ客へのアプローチを検討しましょう。今すぐ客は、自身の課題を解決する必要性を強く感じていたり、すでに比較・検討段階に入っていたりする状態です。後押しができるコンテンツが何かを考え、導線と合わせて設計すると良いでしょう。
     

    継続してコンテンツを作成できる体制を構築する

    前述の通り、コンテンツマーケティングで成果を出すには、ある程度のコンテンツ数が必要です。継続してコンテンツを出すことで買い手との接点を保てるため、信頼関係の構築にもつながります。

    コンテンツを継続的に提供するには、企画から効果測定までを一貫して続けられる体制が欠かせません

    そこで、おすすめしたいのが、コンテンツマーケティングの運用チームの構築です。コンテンツマーケティングを進めるには、企画やコンテンツ作成、編集、効果測定のすべてを漏れなく行う必要があり、これらの作業をチームで分担することで、各担当者は担当業務を確実に進められます。

    なお、コンテンツの効果がわからなければコンテンツマーケティングに長期的に取り組むのが難しくなるため、少人数でコンテンツ作成に取り組む場合でも、効果測定の人員は必ず確保しましょう。
     

    MAやCMSなどのITツールを活用する

    MAやCMSなどのITツールを活用すれば、効率的にコンテンツマーケティングを実施できます。代表的なITツールは次の通りです。

    HubSpotでは、MAツールの「Marketing Hub」や、CMS機能を備えた「Content Hub」を提供しています。

    顧客情報管理の機能がベースとなっており、MAやCMSなどの各種ツールと連携できるのがメリットです。顧客ニーズを正確に把握したうえで、買い手にとって価値のあるコンテンツを効率良く作成できます。

     

    買い手第一主義でコンテンツマーケティングを推進しよう

    コンテンツマーケティングを実践する際は、買い手第一主義での情報発信が大切です。自社が発信したいコンテンツではなく、買い手が求めるコンテンツを発信し続けましょう。

    そのためには、買い手の気持ちに寄り添い、あらゆる買い手にとって価値あるコンテンツとは何かを常に考え抜く必要があります。まずは始めやすいSNSから施策を展開したり、作成する記事数を最小限に絞ったりと、無理なく進められる方法を検討しましょう。

    コンテンツマーケティングは、企業側の都合でアプローチするアウトバウンドなマーケティングから、買い手に合わせてアプローチをするインバウンドなマーケティングへシフトするきっかけにもなります。コンテンツマーケティングに取り組み、多くの買い手との良好なコミュニケーションを実現してください。

    HubSpotではこの他にもマーケティングやセールスに役立つ資料を無料で公開していますので、ぜひこちらからご覧ください。

     

    コンテンツマーケティング入門ガイド

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