皆さんは、「コンテンツマーケティング」という言葉を聞いたことがありますか?これまでの企業のマーケティング手法といえば、有料広告などを展開することによって企業側から潜在顧客にアプローチするアウトバウンドマーケティングが一般的でしたが、アウトバウンドマーケティングでは新規顧客の獲得が難しくなってきています。
そこで注目を集めているのが、コンテンツマーケティングを含むインバウンドマーケティングです。 多くの企業がコンテンツマーケティングによって、以前よりも多くのトラフィックや見込み客を獲得しています。コンテンツマーケティングに取り組むことは、「画期的な集客システムを構築すること」と言えるのです。
今回は、コンテンツマーケティングという言葉は知っているけれど、そもそもコンテンツって何? とりあえずブログを始めればいいの? という方のために、コンテンツとは何か? という基礎知識から、コンテンツマーケティングの活用法について、事例を交えて分かりやすく解説します。
コンテンツとは?
コンテンツマーケティング入門ガイド
〜効果的なコンテンツ戦略の立て方を大公開〜
コンテンツの種類
「コンテンツ」と聞くと、ブログやSNS投稿が真っ先に思い浮かぶかもしれませんが、コンテンツには次のように様々な種類があります。
- ソーシャルメディア投稿
- ブログ投稿
- ニュースレター
- ポッドキャスト
- プレゼンテーション
- ラウンドアップ(情報の総括)
- インフォグラフィック
- ランディングページ
- ウェブページ
- プレスリリース
- 動画
- ウェビナー
- インタビュー
- リサーチ
- ホワイトペーパー
- 事例
- 紙媒体の書籍
- 電子書籍
コンテンツの種類を図にまとめるとこのようになります。
出典:Content Repurposing Ideas: The Periodic Table of Content
こちらの図は、縦軸が寿命を表し、下に行くほどコンテンツの寿命が長いことを表します。そのため、一番上のソーシャルメディア投稿(Sp)とブログ投稿(Bp)は寿命が短く、一番下の紙媒体の書籍(Bk)と電子書籍(Eb)は制作に時間がかかるが寿命は長いことがわかります。
一方、横軸は見かける頻度を表し、左側にあるソーシャルメディア投稿(Sp)やニュースレター(Ne)はあらゆる場所で見かけ、右側にあるブログ投稿(Bp)やウェブページは(Wp)主にオンライン上で見かけることがわかります。
それぞれのコンテンツの種類の特徴と活用方法についてはこちらに詳しくまとめてあります。
コンテンツマーケティングとは
コンテンツマーケティングとは、ターゲットとなる潜在顧客に関連があり、価値のあるコンテンツを発信することによって新規顧客を惹き付け、最終的には商品やサービスを購入してもらうための戦略的なマーケティングアプローチです。
例えば、「最近、20代の頃とは肌の質が変わってお手入れ方法に悩んでいる30代前半の女性」がいるとします。その女性はインターネットで肌の悩みについて検索します。すると、コスメブランドが運営しているブログがヒットします。そのブログには女性が悩んでいたことについての解決策が書かれていて、女性はそのブログのファンになり、定期的に記事を読むようになります。さらに、その情報を同じ悩みを持つ自分の友人にも教えたいと思い、SNSで記事のリンクを拡散します。
この女性はブログを通じて企業のファンになり、いずれは優良な顧客になる可能性があります。 このように、コンテンツマーケティングはブログなどのコンテンツを発信することによって潜在顧客を惹きつけ、最終的には商品やサービスを購入してもらうための施策です。
コンテンツマーケティングが必要となった背景
コンテンツマーケティングは新規顧客獲得に効果的なマーケティング手法として注目されていますが、そもそもなぜコンテンツマーケティングが必要になったのでしょうか。そこには、従来のマーケティングの定番手法だったアウトバウンドマーケティングの問題点が背景にあります。
TVのCMやオンライン上のポップアップ広告などの有料広告などを展開することによって企業の方から潜在顧客にアプローチする手法を「アウトバウンドマーケティング」と呼びます。
アウトバウンドマーケティングでは、「企業が伝えたい情報 = 商品やサービスの紹介」を配信するのが一般的ですが、アウトバウンドマーケティングでは新たな顧客の獲得が難しくなっています。その大きな理由の一つが、「消費者の企業広告疲れ」です。
Forbesによると、一般的な消費者が1日に触れる企業広告の数は4,000~10,000だといいます。
出展:Finding Brand Success In The Digital World
その膨大な数の広告から消費者の関心を引き、商品やサービスを知ってもらって売上に繋げるのは至難の業と言えます。
「企業からの情報発信」という意味では、コンテンツマーケティングを含むインバウンドマーケティングもアウトバウンドマーケティングと同じですが、両者はアプローチの方法が全く異なります。
コンテンツマーケティングは、「企業が伝えたいこと」ではなく、「潜在顧客が知りたい情報」を発信するマーケティング手法です。
コンテンツを通じて潜在顧客の悩みや不安を解決する、潜在顧客が興味を持っている分野について新しい情報を伝えるなど、潜在顧客にとって価値がある情報を発信することによって潜在顧客を惹きつけて企業のファンになってもらいます。そうすることによって、最終的に商品やサービスの購入に繋がります。
消費者の都合を無視して日常生活に介入するアウトバウンドマーケティングに対して、コンテンツマーケティングは企業に興味を持ってもらう仕掛け作りと言えるのです。
さらに、消費者の情報収集の場は、テレビやラジオ、新聞などの企業が運営するメディアから、SNSやブログなどのオンラインを主体とした消費者自身が情報を発信する民主的なメディアに移行しています。そのため、従来のメディアでの広告展開では消費者の潜在意識にリーチできなくなってきています。
インターネットが普及した現代では、消費者の主な情報収集の場がオンラインになっていますが、オンライン上でのアウトバウンドマーケティングを取り巻く環境は厳しくなる一方です。
コンテンツマーケティングを含むインバウンドマーケティングは、オンラインの特性を活かし、効果的に集客を行うための施策なのです。
コンテンツマーケティングの歴史
1895年にコンテンツマーケティングの原点ともいえる雑誌「The Furrow」が登場します。The Furrowは、農機具メーカーが農作物の育て方など、農家向けの情報をまとめた雑誌で、現在でも40ヶ国で発行されています。
その後、インターネットの普及を経て、紙媒体が主だったコンテンツマーケティングの舞台はオンラインへ移行します。Googleなどの検索エンジンの登場によって、ユーザー自ら情報を求めることが可能になり、コンテンツマーケティングという言葉が使われるようになるのが2001年頃のことです。
さらに、2005年から2006年にかけて、YouTube・Facebook・Twitterを始めとするソーシャルメディアサービスが登場すると、コンテンツマーケティングは潜在顧客を惹きつける力を増していきます。
コンテンツマーケティングとコンテンツSEOの違い
皆さんは、コンテンツSEOという言葉を聞いたことがありますか?
コンテンツマーケティングとコンテンツSEOはよく似ている言葉ですが、コンテンツマーケティングは「コンテンツを発信することで見込み客を惹きつける」という広義の概念で、コンテンツSEOは、Googleなどの検索エンジンの検索結果に自社コンテンツが上位表示させるようにする手法のことです。
コンテンツSEOは、コンテンツマーケティングを実施する上での戦略の一つと考えると分かりやすいと思います。
コンテンツSEOを詳しく解説したガイドも下記でご用意していますので、ぜひご活用ください。
コンテンツマーケティングとSEOの違いを混同するとどうなるか?
コンテンツマーケティングのメリット・デメリット
ここまで、アウトバウンドマーケティングと、コンテンツマーケティングを含むインバウンドマーケティングの違いについて説明してきましたが、コンテンツマーケティングにはどのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
コンテンツマーケティングは少しずつコンテンツを作り続けなければならないので、忍耐力と大きな投資が必要なマーケティング手法ではありますが、オンラインで集客をする手法としては相対的にメリットの方が大きいと言えます。次で詳しく見ていきましょう。
コンテンツマーケティングのメリット
①潜在顧客との接点が広がる
上図は、コンテンツマーケティングとWeb広告の得意領域を可視化したものです。
縦軸を「市場に存在する見込み客の数」、横軸を「課題の深刻度」として、見込み客のニーズを「潜在層、純顕在層、顕在層」の3段階に分割しています。
Web広告は、主に「今すぐ製品/サービスを購入したい!」と思っている顕在層や「商品Aか商品Bのどっちの方が、実際に良いのだろう?」と比較などをしている純顕在層に対して有効です。これらの顧客層は、商品やサービスを購入することによって解決したい緊急の課題を抱えている場合が多く、購入を真剣に検討している顧客層です。
一方、コンテンツマーケティングでは、上記のような顕在層や純顕在層に加えて、Web広告ではリーチしにくい潜在層にアプローチすることができます。潜在層は、課題の深刻度はそれほど高くありませんが、市場に存在する数が非常に多いのが特徴です。
コンテンツを発信することによって顧客自身も気づいていないニーズを掘り起こし、商品やサービスに興味を持ってもらうキッカケを作ることができます。
Googleで何かを検索した際に出てくるWeb広告を例に、Web広告とコンテンツマーケティングがアプローチできる顧客層の違いについて比較してみましょう。
例えば、「マーケティングオートメーション 比較」とGoogle検索をしてみると、たくさんの広告が表示されると思います。このキーワードでGoogle検索をする人々は、マーケティングオートメーションのサービスを利用することによって解決したい課題を抱えている「顕在層」もしくは「純顕在層」と考えられます。
企業はこの層に向けてWeb広告を打つことによってリーチを獲得することができます。
では、「ブログ 書き方」と検索するとどうでしょうか?先ほどの場合と比較して広告の表示は少なくなると思います。その理由は、このキーワードでGoogle検索をする人々は何かしらの商品やサービスを購入しようと考えてGoogle検索をしている訳ではないからです。
課題の緊急度が高くない潜在層に行動喚起を促す広告を表示しても購買には至りません(認知は獲得できます)。この層に対して広告費用を投下しても十分なリターンが得られないため、「ブログ 書き方」というキーワードでGoogle検索をした人々に対して広告を打つ企業は少ないのです。
この潜在層に対して有効なのがコンテンツマーケティングです。「ブログ 書き方」と検索すると、「天才アフィリエイターが伝授!ブログ書き方の完全ガイド」というようなタイトルのブログがたくさんヒットしますよね。これは、自社ビジネスの見込み客が興味が高いであろうトピックに対して、ブログ、SNS、メルマガなどで情報発信していき、見込み客にとって有益なコンテンツを通して、自社を少しずつ知ってもらう事が狙いです。
Web広告とコンテンツマーケティングではアプローチできる顧客層が異なるということをご理解いただけたでしょうか?
顕在層や純顕在層よりも母数が圧倒的に多い潜在層が興味を持ちそうなコンテンツをフックにすることで顧客との接点を広げ、ビジネスチャンスを拡大することができるのです。
②潜在顧客のインサイトが得られる
コンテンツマーケティングは、潜在顧客の課題に対して情報を発信していきます。実際にコンテンツに接触した履歴などを、CRMなどのデータベースに蓄積しておけば、潜在顧客の現在の関心に合わせたマーケティングメッセージを出し分けるなどが可能になります。
このようなマーケティング手法は、単にオンライン広告などだけでターゲティングをしていた場合では実現できません。
③業界のソートリーダー的な存在になれる
発信する情報がオンライン上に少ないほど、業界においてのプレゼンスを確立できる可能性があります。つまり、 ニッチな業界ほど有利ということです。
実際に、私がHubSpotのカスタマーサクセス時代に担当していたお客さんの中でも、発信した情報を見て、問い合わせに繋がったり、登壇依頼などがきたりしたと言っていました。
④中長期的な潜在顧客集客システムを構築できる
コンテンツマーケティングは少しずつコンテンツを作り続けることによって効果を発揮するマーケティング手法です。
上図は、コンテンツの数と問い合わせ件数の相関性を表したものです。
黒い部分がその月に制作したコンテンツから生じた問い合わせの件数で、オレンジ色の部分は問い合わせがあった月よりも前に制作されたコンテンツから生じた問い合わせの件数です。つまり、質の良いコンテンツは繰り返し潜在顧客からの問い合わせを獲得し、それが積み重なっていくことで中長期的に集客ができるようになっていきます。
コンテンツマーケティングを実施し続けることで、広告に頼らない、蓄積型の集客システムを構築することが可能になるのです。
⑤顧客ロイヤリティが高まる
コンテンツマーケティングで継続的に情報発信を行い、企業と潜在顧客の間にコミュニケーションが発生することで、商品やサービスを購入するまでの間に関係性を築くことができます。
企業が発信したコンテンツを目撃した潜在顧客は、企業に良いイメージを抱いてより身近に感じます。その結果、すでに企業や商品、サービスに関心がある質の高い潜在顧客を集めることができるので、ロイヤルカスタマーの形成に繋がるのです。これは、コンテンツマーケティングが従来のアウトバウンドマーケティングとは大きく異なる点です。
参考:Why is Content Marketing Important? Learn the Importance of Content Marketing for Your Business
コンテンツマーケティングのデメリット
①時間と手間がかかる
コンテンツマーケティングを始めたばかりの頃は、Googleのクローラーが公開したブログをインデックスするまでに時間がかかるほか、Webサイトが被リンクなどを受けていないため、ウェブページが上位表示されにくい状態が続きます。地道に記事を増やし、SEO対策を行っていかなければならないので時間と手間がかかります。
②短期的な効果は得られにくい
前途の通り、良質なコンテンツは繰り返し潜在顧客を集めることができます。そして、コンテンツが蓄積されていくことによって集められる潜在顧客の数も増えていくことになります。そのため、Web広告などのダイレクトにレスポンスがあるマーケティング施策と対比した場合、コンテンツマーケティングは短期的な効果は得にくいといえるでしょう。
③効果測定が困難
Web広告であれば、広告を展開した直後に問い合わせが増えた場合はそれが広告による効果だということがすぐに分かります。
一方、コンテンツマーケティングは、潜在顧客がコンテンツを閲覧した事がどれだけ問い合わせや商品の購入に繋がっているのかを測定するのは困難です。
ただし、コンテンツの効果測定は不可能ではありません。「コンテンツマーケティング実施における効果測定・KPI」で詳しく説明していきます。
コンテンツマーケティング実施における効果測定・KPI
コンテンツマーケティングは「コンテンツを作って終わり」ではありません。コンテンツごとの効果を測定し、改善しながら進めていくことによって始めて結果が出るようになります。
解析方法は?
コンテンツマーケティングを実施するのであれば、CMSの導入は必須です。無料で構築するのであれば、WordPress + Google Anaylticsの組み合わせがおすすめです。改善を繰り返していくのであれば、Google AnaylticsからGoogleスプレッドシートへデータをエクスポートして、転換率が悪いブログを特定してWord Pressにログインして編集するというやり方が良いでしょう。
ただし、この方法はコンテンツの数が増えてくるとかなり時間がかかります。HubSpotであれば、CMSにアナリティクス機能を搭載することができて、獲得したリードがCRM上で確認できるので便利です。
ちなみに、米国の大手ITレビューサイトG2 Crowdでは、ユーザーからのレビューで、HubSpotがCMSで一番高い評価を受けることができました。
※2019年10月4日調べ
参考:Best Web Content Management Software in 2019 | G2
測定期間は?(数ヶ月?1年?複数年?)
最低でも1年間は効果が出るまで時間がかかります。また、トラフィックは伸びたとしても、リード数を増やすためには、ホワイトペーパーなどのダウンロードできる資料を作成する必要があります。
測定指標は?
HubSpotでは、マーケティングチーム、インサイドセールス、フィールドセールス(内勤)が、リード獲得から顧客化までの一連の測定指標を横断的に見ています。
- セッション数/UU数
- リード獲得数 ・転換率(リード数/セッション数)
- MQLs (Marketing Qualified leads) ※デモ予約、問い合わせなど
- SQLs(Sales Qualified leads) ※営業担当者が営業フォローの価値があると認めたリード
- Opportunities(商談)
- Customers(顧客)
- 受注平均単価
- 受注率(QLから顧客への転換率)
日本でのマーケティング組織におけるKGI(ゴール)は、リード獲得数、またはMQLの数である場合が多いと思います。
しかし、単純にリードの数などでマーケティングチームの成果を評価してしまうと、全く受注には繋がる見込みがないリード数などが増えてしまい、セールスチームとリードの質に関して議論になってしまいがちです。
そこで、HubSpotのマーケティングチームでは、Service Level Agreement (SLA)という測定指標をKGIとして用いています。
算出には、以下の計算式を使います。 SLA = MQLの数 × 受注率 × 受注単価
つまり、「月内にマーケティング活動から生成されたMQLが生み出す想定売上高」が目標数値になるということです。
もちろん、MQLに寄与するリード数やトラフィック数なども指標として設定していますが、これらの数値はすべてKPIです。
もし、コンテンツマーケティングを実施する上でのKGI/KPI設定にお悩みの方は、是非とも参考にしてみてください。
コンテンツマーケティングの成功事例【国内・海外】
ここからは、国内・海外におけるコンテンツマーケティングの成功事例を紹介していきます。
国内BtoCの事例
-北欧、暮らしの道具店
『北欧、暮らしの道具店』は、コンテンツマーケティングでECビジネスを変えたと言われています。
同社がコンテンツで成し遂げたいと思っているのは、「自分を分かってくれて大事にされている」という感覚になる、満足度の高い美容師やマッサージ師のようなサービスです。
コンテンツもそれと同じで、「何か新しいことを教えてくれた」というよりは、読んだ人が「自分のためのコンテンツ」と感じられるものが理想です。そのようなコンテンツを発信し続けていくことで、いずれ顧客が欲しいと思ったものが見つかった時に、「あのサイトで買おう」と、思い出してもらえる存在になります。
同社がコンテンツで重視していることは、読了率と、「過去20回以上サイトを訪問した人の割合が50%前後をキープしたまま、絶対数が毎月純増しているか」という独自のKPIです。コンテンツの読者が自分にフィットしていると感じているかどうか = 読了率、サイトの常連客 = ロイヤルカスタマーという2つの指標が、『北欧、暮らしの道具店』のコンテンツマーケティングを支えています。
参考:『MilK』『北欧、暮らしの道具店』が語る、成功するコンテンツ
-ニキペディア
『ニキペディア』は、ニキビケア商品の「プロアクティブ」を提供しているガシー・レンカー・ジャパン社のオウンドメディアです。ニキペディアは公開1年余りで月間40万UUを獲得しているコンテンツマーケティングのお手本のような事例です。
プロアクティブといえば、タレントを起用したTVのCMが印象的です。ところが、2011年以降、それまで対になって成長を続けていた「ニキビ」と「プロアクティブ」というワードの検索ボリュームが、「ニキビ」は伸びているけども「プロアクティブ」は伸びない、という流れに変わってきました。
「ユーザーがニキビ自体に興味を失ったわけではない。これからは潜在的な顧客層に対してアプローチするWebプロモーションが必要だ」と考えた同社は、ニキビについて情報発信するサイト『ニキペディア』を立ち上げました。
ニキペディアには次のような特徴があります。
- 競合商品を中立的な立場で紹介している
- ハウツー記事の比率が高い
- ペルソナを詳細に設定している
- 書籍や専門家の意見などの信頼性が高い情報を用いている
徹底的にユーザーの目線に立ち、ユーザーが本当に求めている情報を発信していくことがニキペディアの成功に繋がっています。
参考:公開から1年で40万UUを獲得した「ニキペディア」のコンテンツマーケティング戦略とは?
国内BtoBの事例
-経営ハッカー(freee)
『経営ハッカー』は、クラウド会計ソフト「freee」が運営しているメディアです。freeeは個人事業主や中小企業向けの経理支援ツールで、2013年3月に発売開始、2014年7月には10万ユーザーを突破しています。
経営ハッカーは2012年に公開され、現在の記事数は約640にも及びます。経理のような専門性の高い情報を扱うサイトは他のサイトとコンテンツが類似しやすくなるため、長く運営されているサイトの方が有利になります。そこで、経営ハッカーは、経理ではなく「経営の効率化」にコンテンツの内容を広げることにしました。
さらに、ピラーページを作ってバラバラになっていた過去記事をまとめることによって自然リンクを獲得し、自然検索訪問も着実に増やしつつあります。
すでに同業他社の多くが参入している中でコンテンツマーケティングに取り組もうとしている企業にとって、経営ハッカーの事例は非常に参考になります。
ピラーページについてはピラーページとは? そしてなぜSEO戦略において重要なのか?を参考にしてください。
-サイボウズ式(サイボウズ)
グループウェアの国内シェアNo1のサイボウズが運営する「サイボウズ式」は、2012年に開設されました。その2年後には月間20万PV(14年6月)のサイトに成長しています。
グループウェア市場は成熟段階にあり、積極的に情報収集するアーリーアダプター層には広く普及しています。今後、更なる成長を目指すためには、ITに関心のないマジョリティ層の顧客に認知してもらわなければなりません。
ITに関心のない消費者層にアプローチするためには、製品の機能ではなく、それによって顧客が得られる価値に焦点を当てる必要がありました。サイボウズ式が生まれたのにはこのような背景がありました。
また、サイボウズ式は、自然検索が増えるのを待つのではなく、ハフィントンポストやBLOGOSなどのネット媒体へ積極的にコンテンツを提供してソーシャルからのアクセスを狙い、アクセス全体の45%がソーシャルから来ています。
その他にも、外部ブロガーの寄稿や、読み手に伝わりやすい表現にするなどの工夫を凝らしています。
海外BtoCの事例
- Red Bull
エナジードリンクで有名なRed Bullは、スポーツに打ち込む若者を紹介するオウンドメディアを運営しています。自らが主催するスポーツイベントを通してユーザーとの接点を作り出し、感動を共有しています。
コンテンツには「Red Bull」という商品は登場しません。Red Bullのメディアの主役はアスリートです。アスリート達が真剣勝負をする姿を表現したコンテンツが多くのスポーツファンの心を掴んでいます。
参考:How Red Bull Takes Content Marketing to the Extreme
海外BtoBの事例
- HubSpot
HubSpotも自らが提唱するインバウンドマーケティングを実践し、有効性を証明しています。ブログやホワイトペーパー、ウェビナーなどのコンテンツを配信することによって、創業から2年で月間訪問者数30万人を突破するWebサイトに成長しました。
HubSpotのブログはマーケティングブログ、営業ブログ、サービスブログに分けられ、ペルソナごとにコンテンツを分けて配信しています。また、現場で働く人が思わずクリックしたくなるタイトルで興味を惹き、コンテンツも親しみやすい語り口で書かれているのが特徴です。
オウンドメディアの運用により、現在では販売するソフトウェアが全世界で顧客6万社以上、という導入者数を誇っています。
- Unbounce
Unbounceはカナダのバンクーバーに拠点を置く、ランディングページ作成やA/Bテストツールを提供する企業です。
同社は「Page Fight」というマイクロサイトを持ち、Conversion XLというブログサイトと協働で、ランディングページの批評をライブストリーミングで配信するという変わったコンテンツマーケティングに取り組みました。「ブログ = 文字ベースのもの」という概念を超えた同社のアイデアによって潜在顧客を増やすことに成功しました。
同社の取り組みはそれだけではありません。ランディングページ作成などのサービスを開始する前から需要喚起のためにコンテンツを制作し、オウンドメディアで発信していました。今では「ランディングページと言えばUnbounce」という確固たる地位を築いています。
さらに詳しい事例を読まれたい方は、以下の記事を参考にしてみてください。
コンテンツを広めるための手法
コンテンツを広めるための手法には次のようなものがあります。
*SEO
SEO対策(検索エンジン最適化)によって検索エンジンでオウンドメディアを上位表示させることで、多くの潜在顧客に見てもらえるようになります。
*SNSマーケティング
若年層を中心としたユーザーが多数存在するSNSでのマーケティングに取り組むことによって、コンテンツを知ってもらうキッカケができるだけではなく、周囲に拡散する効果も期待できます。
*Web広告
商品やサービスを広めるためだけのWeb広告は潜在顧客にスルーされてしまいます。「企業ファースト」ではなく、「潜在顧客ファースト」の姿勢を持ち、潜在顧客に「価値がある」と感じてもらえるようなWeb広告を制作できればベストです。コンテンツマーケティングは、Web広告と共存する姿勢が大切です。
-リード獲得広告
リード獲得広告とは、ユーザーがワンクリックするだけで資料請求やメルマガ登録などができる仕組みのことです。ダイレクトに商品やサービスを購入してもらうのではなく、まずは潜在顧客にコンテンツを届けるための仕組みを作ることによって効果的にリードが獲得できます。
-リターゲティング広告
リターゲティング広告とは、企業のWebサイトに訪れたことがあるユーザーを追跡し、他のウェブサイトを閲覧している最中に広告枠に企業の広告を表示させ、再びウェブサイトへの訪問を促す手法です。それにより、最初の訪問で取りこぼしたリードを再度獲得することが可能になります。
*メールマーケティング
メールマーケティングの代表的な手法がメールマガジンです。コミュニケーションツールとしてはメールよりもSNSが主流になっているように感じますが、総務省の「平成28年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」によると、1日当たりのインターネット利用時間の内訳は、平日はメールが最も長く(30.1分)、次いでソーシャルメディア(25.0分)。休日はソーシャルメディアが最も長い(32.7分)という結果になっています。このことから、メールはまだまだ優秀なコンテンツであると言えます。
出典:総務省
*プレスリリース
プレスリリースは潜在顧客に信頼のおける情報ソースとして認識されているため、プレスリリースを活用してコンテンツを広めるのも一つの方法です。
コンテンツマーケティングを『効率的に』実現するために
いかがでしたでしょうか? コンテンツマーケティングがもたらす効果や具体的な実践手法など、少しはイメージを持っていただけましたでしょうか?
ご覧頂いたように、コンテンツマーケティングに本気で取り組むには、時間・費用・人材のコストを忍耐強く投資し続ける必要があります。コンテンツマーケティングに失敗してしまう企業の多くが、短期的な結果ばかりに目が向いてしまい、結果1年足らずで投資を辞めてしまっています。
筆者がおすすめする実践方法としては、いきなり費用をかけてブログ制作やホワイトペーパーなどを外注したりするのではなく、社内に眠っている資産がないか? 知識を総動員して考えてみてください。
社内にコンサルタントがいるのであれば、その人物がブログを執筆できるかもしれませんし、そもそも毎月お客さんに提出している調査レポートなどが、意外にもWeb上にアップロードしただけで反響を生むこともあります。
コンテンツマーケティングを手法として理解するのは重要ですが、潜在顧客に対して付加価値が高い情報を社内リソースの中から提供できるのか? を考え、成果を先に追い求めるのではなく、与える姿勢が最も重要です。
更に、コンテンツマーケティングに関して興味がある方は、以下から無料Ebookをダウンロードできますので、ぜひ参考にしてみてください。
元記事発行日: 2019年10月18日、最終更新日: 2019年10月29日
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