営業の役割は、見込み客や顧客に対して直接的な販売活動を行うことです。一方のマーケティングは、市場の状況を踏まえたうえで「売れるための環境」を整える活動全般を指します。
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最終的に目指すところは、どちらも顧客体験の向上であり、その先に売上や利益の増加があります。しかし、目的や活動の対象範囲が異なるため、区別しづらいと感じている方もいるでしょう。実際の現場では、営業とマーケティングの担当領域が重なることもあります。
そこでこの記事では、営業とマーケティングの立場の違いや、連携する際のポイントなどについて詳しくご紹介します。営業とマーケティングがうまく連携できるよう、違いを正しく理解しましょう。
営業とマーケティングの違いとは?
まずは営業とマーケティングの違いを、次の5つの観点から解説します。
対象の違い
営業とマーケティングの違いとして、対象とする範囲が異なることがあげられます。営業は個々の見込み客や顧客に焦点を当てて、直接的な販売活動を行います。営業が重視することは、顧客との直接的なコミュニケーションを通じて、信頼関係を築くことです。
一方のマーケティングは、市場全体を視野に入れ、商品が売れる環境を整えます。市場データを分析し、戦略を立案するのもマーケティング部門の役割です。
目的の違い
営業とマーケティングは、どちらも顧客体験を向上させるための活動であり、結果的に売上や利益を増加させることを目的としています。しかし、そのための短期的な目的は大きく異なります。
営業の目的は、顧客との直接的な関係を通じて、商品やサービスを1つでも多く販売することです。見込み客や既存の顧客に対して、直接的な提案や交渉を行い、商品やサービスの販売を通じて利益を得ることを目指します。
マーケティングの目的は、自社の商品・サービスを販売するための市場を創造することです。顧客のニーズや競合他社といった市場の状況を理解したうえで、適切なポジショニングや価格設定、プロモーションを検討します。必要に応じて新商品やサービスの開発を行うこともあります。
戦略期間の違い
戦略期間も、営業とマーケティングで大きく異なります。営業は短期的な目標を設定し、商品やサービスを販売することを目指します。成果は四半期や半年単位などで評価されるケースが多いでしょう。
マーケティングは、長期的な視点で戦略を立て、顧客と良好な関係性を築くことやブランドイメージの強化、市場シェアの拡大などを目指します。広告運用など短期的な成果を目指す取り組みもありますが、企業が成長し続けるために必要なことに対して、中長期的な視点で取り組むのが営業とマーケティングの大きな違いです。
求められるスキルの違い
営業とマーケティングでは、それぞれの部門で求められる能力や資質があります。
営業部門で求められるのは、顧客のニーズを理解し、それに対応する能力です。営業は顧客と直接対話し、商品やサービスを提供する役割があります。そのため、目の前の顧客と直接的な信頼関係を築いていくことが重要です。
マーケティング部門では新しい仮説を創造し、市場の動向を予測する能力が求められます。顧客のニーズを理解する必要がある点は営業と同じです。しかし、マーケティング部門では個々の顧客のニーズを理解したうえで全体の傾向をつかみ、戦略に反映していく視点が求められます。顧客との信頼関係の築き方も営業に比べて中長期的で、まだ自社の商品やサービスを認知していない潜在客との接点を生み出すことも必要です。
KPIの違い
役割の違いからKPIの違いも生じます。営業は売上を伸ばすのが主な役割であるため、KPIは売上に直結する商談数・成約数・成約金額が設定されるケースが多くなります。マーケティング部門は見込み客の創出が主な役割で、KPIは見込み客の創出数やQL数が設定されるケースが多いでしょう。
営業とマーケティングは対立しやすい?
営業部門とマーケティング部門は対立しやすいといわれますが、その背景には、視点と手法の違いがあります。顧客に価値を提供し、企業を持続的に成長させるという目的は営業もマーケティングも同じです。ただ、営業は短期的な視点で売上を積み上げていくことが求められます。
一方のマーケティングは、中長期的な視点で市場を創造し、顧客体験を向上させることで、結果的に企業の成長につなげるという違いがあります。そのため、営業部門はマーケティング部門が現場の状況を理解していないと感じ、マーケティング部門は営業部門の施策を中長期的な視点が欠けていると感じることもあるでしょう。
営業の短期的な視点と、マーケティングの中長期的な視点は、どちらも重要です。営業部門が目の前の顧客に満足してもらうことで売上が積み上がり、マーケティング部門はリサーチや商品開発などの活動を通じて見込み客の潜在ニーズを深掘りします。
また、それぞれの部門で異なるKPIを設定すること自体は問題ありませんが、整合性の取れた設計になっていないと対立を生みやすくなるので注意が必要です。
例えば、マーケティング部門側で見込み客の創出数・QL数を達成しても、営業部門で売上が未達だった場合、原因はどこにあるのかで議論が起きやすくなります。
営業部門では、マーケティング部門が創出した見込み客が適切ではなかったことが成約に至らなかった原因と考えるかもしれません。一方のマーケティング部門は、営業側の見込み客への対応に問題があったと捉える可能性があります。このような対立は、企業に不利益をもたらします。
営業とマーケティングは、両方がうまく機能することが欠かせません。それにより、顧客への持続的な価値提供が可能になり、企業も成長できます。役割の違いを理解したうえで、うまく連携することを目指しましょう。
営業とマーケティングの連携の必要性
ここでは、営業部門とマーケティング部門が連携することの必要性を解説します。
- 効果的な戦略の策定
- 効率的なリソースの活用
- 企業成長の促進
効果的な戦略の策定
営業部門とマーケティング部門が連携して戦略を策定し、それぞれの役割を遂行することで、効果的な見込み客の醸成と売上増加につながるプロセスが構築されます。
営業部門は顧客と直接関わるため、商品・サービスに関するフィードバックを受けることが可能です。それをマーケティング部門に共有することで、顧客のニーズを施策に反映できます。
マーケティング部門は、市場動向を分析して戦略を練り、営業活動に役立ててもらうことが可能です。営業が現場で得た個々の顧客の声と、マーケティング活動で得た市場の全体的な傾向を組み合わせることで、戦略の精度が高まります。
効率的なリソースの活用
営業部門が持つ現場知識と、マーケティング部門のデータ分析力を組み合わせることで、業務の効率化が可能です。
無駄な作業が排除され、生産性が高まるだけでなく、組織内のコミュニケーションがスムーズになります。その結果、顧客への対応にも一貫性が生まれ、企業の信頼性を高めることにつながるでしょう。
さらに、営業部門が得た顧客のニーズをマーケティング部門と情報共有することで、より効果的な施策の立案が可能です。このように、営業とマーケティングの連携を強化すると、社内の人材や情報といったリソースを効果的に活用できます。
企業成長の促進
企業の成長を促進するには、最新の市場のニーズや動向を素早くキャッチすることが大切です。それにより、競合他社との差異化がしやすくなります。
営業部門とマーケティング部門の間で情報の流れをスムーズにすることで、ニーズをしっかりと反映した新しいサービスや商品を迅速に市場へと投入することが可能です。両部門がそれぞれ異なる視点で市場や顧客のトレンドを敏感に捉え、情報交換を行えることもメリットです。
営業とマーケティングの連携を進めるためのポイント
ここでは、営業とマーケティングの連携を進めるためのポイントを解説します。次の7点を押さえることで、効果的に連携を進めることができるでしょう。
- 相互理解
- 共通の目標設定
- コミュニケーションの強化
- 顧客理解の共有
- 相互のフィードバック
- ツールの導入
- 成果・活動状況の可視化
相互理解
営業部門とマーケティング部門の連携を円滑にするためには、自社の営業活動を見直し、顧客情報やデータを共有するためにシステムを連携させることが重要です。そのためには、部門間での理解と協力が欠かせません。定期的に両部門の責任者や現場担当者が意見交換するミーティングを開催するなどの方法で、お互いの動きを理解することが大切です。
なるべく鮮度の高い情報を共有することで、戦略の適切な見直しや調整が可能になります。また、それぞれの役割の違いを明確にすることも必要です。各部門がどの業務を担当するのかを明文化し、顧客をどの段階で引き継ぐかを決定していきましょう。
共通の目標設定
全社的な視野で共有の目標を設け、それに向けた協調行動を促進することは重要です。各部門の役割と責任が明確化され、対立を避けつつ効率的に業務を進めることが可能となります。
共通の目標を設定することで、営業部門とマーケティング部門で一体感が強化されます。そのうえで、各部門のKPIを設定すると、共通の目標達成に向けた取り組みを促進することが可能です。
ちなみに当社HubSpotでは、営業とマーケティングで共通の目線を持てるよう、両者の業績が連動するKPI設定を行っています。営業部門は多くのSaaS企業と同じく当月のMRR(月次経常収益)をKPIとしています。マーケティング部門では見込み客の創出数・QL数など主要KPIはいくつかありますが、最も重視しているのが「QL経由で創出された当月のMRR」です。
見込み客やQLの創出だけを目標とし、もし商談率や成約率を蔑ろにしてしまうと、そもそも自社製品を必要としていない企業にもリーチしてしまう可能性があります。ニーズがないのにマーケティングや営業からアプローチしてしまうのは、買い手・売り手双方にとって良くない状況です。
営業・マーケティング双方がMRRを意識するKPIを設定するのは、「自社製品を必要としているのは誰なのか」をより深く理解したうえで業務に取り組める状態にするための有効な手段でしょう。
コミュニケーションの強化
営業部門とマーケティング部門の間で情報を適切に共有することは、両部門の連携を強化するうえで重要です。情報共有のためには、双方が気軽にコミュニケーションを取れる環境を整備することが必要です。また、部門間のコミュニケーションを強化するために、意見や考え方を明確に伝えましょう。
例えば、連携プロジェクトチームを発足させることで、部門間のコミュニケーションが活発化し、連帯感が生まれます。心理的安全性を確保することで、意見交換が活発に行われ、生産的なアイデアの創出が可能です。
心理的安全性を高めるためには、リーダーが積極的に意見を求め、担当者からのアイデアを積極的に受け入れる態度を示すことが重要です。これらの取り組みにより、営業部門とマーケティング部門の連携が進み、組織全体のパフォーマンスが向上します。
顧客理解の共有
共通の顧客理解をもとに、営業とマーケティングがそれぞれ活動することも必要です。CRMシステムを共有して両部門が同じ顧客データを見られる状態にしておく、営業部門が商談を通じて取得した直近の顧客の共通課題をマーケティング部門と共有するなど、両部門で顧客に関する情報格差ができる限り生まれないような環境を整備できると良いでしょう。
また、カスタマージャーニーマップを共同で作成すると、顧客理解がさらに深まります。カスタマージャーニーマップは、顧客の購買行動を可視化したものです。HubSpotでは、このマップを簡単に作成できる無料のテンプレートを提供しています。無料のテンプレートは、次のページからダウンロードできます。
相互のフィードバック
マーケティング部門のメンバーは、顧客と直接会って話を聞く機会が少ないため、営業部門からのフィードバックが非常に重要です。営業部門が見込み客や顧客から得た情報をマーケティング部門に共有することで、プロモーションの質の向上につながります。
一方で、マーケティングから市場調査の結果や景気の動向などを営業へフィードバックすると、自社の商品やサービスのセールスポイントを効果的に伝えられます。これらのフィードバックを通じて、営業部門とマーケティング部門の連携を深め、ビジネスの成功につなげることができます。
成果・活動状況の可視化
営業部門とマーケティング部門の活動状況や顧客に関する情報は、部門を越えて可視化できるようにすることが大切です。例えば、マーケティングが創出した見込み客やQLが営業に共有されたあと、どれだけ商談・成約につながったのかを一連で確認できる環境を構築します。
未達の要因を分析する際も、各チームの何がボトルネックになっていたのかを特定するためには定量的なデータが必要です。QLから商談への転換率は低くないか、営業チームのコール数は十分だったのかなど、データを収集して分析しましょう。さらに、顧客との一連のコミュニケーションが蓄積されていると、案件単位の情報を深掘りできます。
ツールの導入
営業部門とマーケティング部門を連携させるためには、共通の顧客理解をベースにする必要があります。そのうえで役立つのが、CRM(顧客関係管理)ツールです。部門を越えてリアルタイムの顧客情報を共有すると、アプローチや戦略の最適化につながります。
無料で使用できるHubSpotのCRMは、MAやSFAとの連動にも対応しています。連携しやすいツールを導入することは、営業部門とマーケティング部門の連携の強化につながります。詳しくは、HubSpotの製品ページをご覧ください。
営業とマーケティング、顧客へ価値提供する役割は同じ
営業部門とマーケティング部門は役割に違いがあるものの、最終的に目指すところは同じです。両部門がうまく連携することで、顧客へのさらなる価値提供が可能になり、結果的に企業の成長につながります。
また、営業部門とマーケティング部門が持つ情報を共有することで顧客理解が深まり、より適切な施策の立案が可能になるでしょう。CRMなどのツールを活用しながら、顧客理解を深めて施策に反映させることが大切です。