セールスプロセスとは?
「セールスプロセス」とは、初期段階のプロスペクト(潜在見込み客)を顧客にするまでにセールス担当者が実施する各段階をまとめたものです。適切なセールスプロセスが作成されていれば、それに沿ってセールス活動を進めることで、どの担当者も着実に成果を上げることができます。
だれもが利用でき、必要に応じて拡張できるセールスプロセスを作成するのは、簡単なことではありません。しかし、作成の助けになる図表や方法論は数多くあり、適切な方法をアドバイスしてくれるエキスパートもいます。
となると、セールス担当者はまず何から始めればよいのでしょうか?その答えはここにあります。この記事をお読みになり、「セールスプロセス」に含まれる重要な要素を1つずつ紐解き、あなたの企業が理想とするセールスプロセスを探っていきましょう。
セールスプロセスにはどんな段階があるのか?
- 発掘する
- 関係を築く
- リサーチする
- デモをする
- クローズする
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全てのフィールドが必須です。
一般的なセールスプロセスに含まれる段階は以下のとおりです。
1. 発掘する
セールスプロセスを行う初期段階のリード(見込み客)を発掘します。これはセールスプロセスの最初のステップです。オンライン調査を行ったり、カンファレンスや業界イベントなどに参加することもあります。また、既存のクライアントや同僚などに、自社の商品に興味を示しそうな人を紹介してもらう方法もあります。
発掘は、セールスプロセスになくてはならない段階で、ほとんどのセールス担当者が日々の業務として行っています。
2. 関係を築く
発掘した初期段階のリードに初めて接触し、今後も情報収集やセールスプロセスを進める価値があるかどうか判断を行う段階です。この段階は一般的にコネクトコールやディスカバリーコールを通じて行われます。
セールス担当者がある程度時間をかけてヒアリングを行い、プロスペクトが抱えている悩み、課題、ビジネス目標などを探ります。たとえば、「普段どのような業務を担当されていますか?」、「解決が必要な問題はありますか?」、「なぜそれに優先的に取り組んでいるのですか?」といった質問をします。
3. リサーチする
セールスプロセスを進めながら、プロスペクトとその企業についてさらに細かくリサーチをする段階です。リサーチすることで、そのプロスペクトにさらに適切なエクスペリエンスを提示できるようになり、成約の可能性を高めることができます。
その企業の全体像や短期的な達成目標を把握するためには、プロスペクトとは別の部署の人に話を聞く必要もあります。ベテランのセールス担当者は、よくこのように言います。「セールス担当者は、プロスペクト本人よりもその企業のことを知っているべき」。
4. デモをする
商品のプレゼンテーションやデモンストレーションを行う段階です。この段階は時間を要するため、通常はセールスプロセスがかなり進んだ時点で行うか、有望なプロスペクトのみに対して行います。
デモの内容は、プロスペクトのユースケースに合ったものや、課題を克服できると示せるものにカスタマイズします。また、プレゼンテーションの場に自社のエンジニアや経営幹部を同行させれば、プロスペクトにさらにどのようなサービスを提供できるのかその場で説明したり、技術的な質問にも即答できるといったメリットがあります。
5. クローズする
成約間近のプロスペクトを対象とした最終的な段階です。この段階で行う内容は企業によって異なりますが、通常は、見積書や提案書の提出、折衝、意思決定者の賛同獲得などです。
クローズは、セールス担当者の最終目標です。クローズにより、プロスペクトと販売側の双方にとって有益な契約的合意が成立します。
取引がクローズすると、双方が合意した価格をベースにセールス担当者はコミッションを受け取り、その後、アカウントマネージャーまたはカスタマーサクセス担当者にそのアカウントが引き継がれます。
「セールスプロセス」と「セールス手法」はどう違うのか?
「セールスプロセス」という言葉を知っている方は、「セールス手法」にも聞き覚えがあるでしょう。この2つは別物であり、それを理解しておく必要があります。
- 「セールスプロセス」は、セールスチームがプロスペクトを新規顧客としてクローズするまでの各段階の活動をまとめたもの。
- 「セールス手法」は、セールスプロセスの各段階の活動を実際にどう進めるべきかを示した方法論のこと。
「どちらが重要なの?」という声が聞こえてきそうですが、正解は「どちらも」です。セールスプロセスは、セールス担当者が進めていく各段階をまとめたものです。一方、セールス手法は、そのセールスプロセスの各段階を実際にどのように進めるべきか導いてくれる方法論であり、セールス担当者はさまざまな方法論があることを知っておく必要があります。
知名度の高いセールス手法
あなたのセールスチームは、日々どのようなセールス活動を行っていますか?その活動を細かく見直すことで、さらに見えてくることがあります。まずは、チームのセールス活動のベースにするセールス手法を選びましょう。
チャレンジャーセールス
「チャレンジャーセールス」は、Matthew Dixon氏とBrent Adamson氏の共著「チャレンジャー・セールス・モデル」で一躍有名になったセールス手法です。「チャレンジャー」とは、そのセールスプロセスの中で、顧客のビジネスを理解しようと努力すると同時に、顧客の先入観に積極的に働きかけようとする意欲的なセールス担当者のことです。
ソリューションセールス
ソリューションセールスは、1970年代末から1980年代初めにかけて広まったセールス手法で、顧客の商品ではなく、顧客の課題に着目して売り込みを行うものです。商品をソリューションとして位置付け、提供する解決策に合意を得ることを目標とします。
サンドラーのセールス手法
サンドラーのセールス手法では、「売る側と買う側が等しくセールスプロセスに関わるもの」として扱われます(英語の参考情報はこちら)。顧客の反論を早期に解決できるようにセールス担当者がトレーニングを積み、売る側と買う側の双方が時間を無駄にせずに済むようにします。売る側が「商品を買ってほしい」と訴えるのではなく、買う側が「商品を売ってほしい」と訴える、というような考え方です。
コンサルティングセールス
コンサルティングセールスは、ソリューションセールスの派生形として1980年代に普及したセールス手法です。コンサルティングセールスでは、セールス担当者が顧客の「信頼できるアドバイザー」になることを重視し、時間をかけてオーソリティ(権威性)と信頼性を獲得することを目標とします。
インバウンドセールス
インバウンドセールスは、バイヤー(買う側)に合わせて適切なコンテンツを送り、アトラクトする(惹き付ける)ことを目的としたセールス手法です。メッセージや広告を手当たりしだいに送って購入に至るのを待つのとは異なります。
インバウンドセールス手法
選択肢にあふれる今日の市場では、セールス担当者の都合よりも、バイヤーのニーズを優先することが重要になります。このように考える背景は以下のとおりです。
- セールス担当者が接触する前から、バイヤーは欲しい商品のほとんどの情報を手に入れられる。
- 最近のバイヤーは、面識のない相手からの突然の連絡や売り込み(コールドコールやコールドメールなど)を巧みに排除する術を身につけている。
- バイヤーの購入時の期待が高まっている。購入エクスペリエンスの主導権をバイヤーが握り、セールスプロセスのほとんどがバイヤーの都合で進むようになっている。
これらはすべて、今まではセールス担当者側にあったセールスプロセスの主導権がバイヤー側に移ったことを示しており、セールスチームはこの変化を考慮して、バイヤーが求めている人間味のあるセールスに努める必要があります。それが、ハブスポットが考えるインバウンドセールスの本質です。
セールスプロセスを組み立てる
1. 自分のセールス活動を振り返る
最近クローズさせた5~10件の取引を見直します。そのプロセスの中で大きな転機となった段階は何だったのか、顧客とのタッチポイントは何だったのかを確認しましょう。
プロセスに要した期間全体と、ある段階から次の段階に移るまでにかかった期間を大まかに把握します。自分が担当した取引(とチームの他の担当者の取引)の中から、できるだけ多くのサンプルを集めて調べましょう。
各段階に要した期間を特定したら、次はそれをベースに、各セールス担当者が目安にできる期間を把握します。以下の例をご覧ください。
約6週間で10件中6件の取引がクローズした場合、クローズまでに平均でいくつの段階が必要だったかを調べます。そこから次のようなことがわかります。
- 契約成立までに、1週間の検討期間を要した
- Eメールと電話で3~5回フォローアップを実施した
- デモを1回実施した
- 電話を1回かけ、Eメールを2~3件送った
- ディスカバリーコールを1回行った
- プロスペクトにウォームメールを2件送り、電話を3回かけた
自分のセールスプロセスを把握できたら、そこからさらに深く掘り下げていきます。そうすることで、各取引がクローズに至ったちょっとしたきっかけや課題が何だったのか見えてきます。
2. 自分の調査結果と一般のセールスプロセスをマッピングする
セールスプロセスは1つとして同じものがありませんが、自分が取った段階が一般的に行われている段階と部分的に一致していることがあります。一般的な段階を起点として考えると、自分が取った段階の数が少ないとか、自分が考えつかなかった段階があるなどと気づくことができます。
3. プロスペクトが次の段階に進むきっかけが何だったのかを特定する
自分が定義した各段階において、プロスペクトは何をきっかけに次の段階に進むことにしたのかはっきりさせます。単に自分が感じた印象ではなく、プロスペクトの実際の行動を根拠にするのが理想的です。セールス担当者に以下のような質問をしてください。
- 「ディスカバリーコールをすることになったきっかけは、最初のウォームコール中にプロスペクトが抱えている課題をたまたま特定できたことですか?」
- 「デモ中に、取引が滞るような反論をされましたか? あるいは、反論がきっかけで次の段階に進むことになったのですか?」
- 「セールストークをした後、相手はすぐに購入を決めたのですか? 何が決め手だったかわかりますか? どんな進め方をしたのですか?」
4. 何度も検討する
セールスプロセスを組み立てる作業には終わりがありません。特に、最初に調査を行った後、数週間から数か月経っている場合は、チームからフィードバックを募ってプロセスを再び検討しましょう。
こうすることでさらに効率的な進め方やプロスペクトをより早くクローズに近づける方法を見つけ、プロセスをさらに改善できる可能性があります。
セールスプロセスを測定する
セールスプロセスを長期的に定義し発展させていくには、各段階を評価する基準となる主な測定指標を検討する必要があります。
たとえば、ある一定期間に各段階から次の段階に何人のプロスペクトが移行したかを測定する場合、次のように簡単に行います。「7月初めには『デモ待ち段階』にプロスペクトが75人いて、そのうち28人が7月末に次の段階に移行した。しかし、『デモ待ち段階』に新たに19人が加わったので、66人になった」。他にも各段階で使える次のような測定指標があります。
- 各段階にプロスペクトが留まる平均期間
- 多くのプロスペクトが長く留まり、なかなか次に進もうとしない段階はあるか?
- デモの後にクローズしたプロスペクトの割合(%)
- ディスカバリーコールの後にデモを依頼したプロスペクトの割合(%)
- チャーンレート(解約率)。成約後すぐに解約してしまう顧客がいる場合、その可能性が高いプロスペクトをどうすればセールスプロセスの初期段階で特定できるか?
これらの測定指標はほとんどのセールスチームが有効に利用できるごく基本的なものです。自社のビジネスに合う指標を考えておけば、特定の段階の達成状況や改善の必要性を把握できるようになります。
よくある失敗と成功の秘訣
セールスプロセスの段階をあいまいにしない
プロスペクトがある段階から次の段階に移るきっかけ(トリガー)は、明確に定義しておくことが重要です。トリガーが定義されていないと、何がうまくいっていて何がうまくいっていないのかセールスチームが正確に把握できず、セールスプロセスの各段階が誤って運用される原因となります。
セールスプロセスを定義し終わったら、それを文書化してチーム内で共有し、実践します。各段階で実施が必要なステップをしっかり理解するために、ロールプレイ形式で練習してみましょう。
「このセールス手法なら大丈夫」と過剰に信じ込まない
1つのセールス手法を徹底的に活用するチームもあれば、有名なセールス手法をいくつか選び、役立ちそうな部分だけを利用するチームもあります。
どちらのアプローチを取るにしても、重要なのは、最新の情報があればそれをすぐに取り入れ、状況に応じて変化させていくことです。バイヤーのニーズが変われば、効果のあるアプローチ、セールス手法、対応方法も変わります。
セールスプロセスが「完成」することはない
セールスプロセスが完成することは決してなく、継続的に見直しを続ける必要があります。4~6か月おきにチーム内で話し合い、セールスプロセスの内容を見直すことを決め事にすることをおすすめします。また、セールスの測定指標は毎日確認する習慣を付けましょう。