営業フローとは、営業活動の流れのなかで各営業担当者が実施すべきタスクを整理する手法です。営業フローを作成し、プロセスを可視化するにあたって、一連の工程における問題点や成功法則を見出せます。また、一元的なタスクマネジメントにつながるのもメリットのひとつです。
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営業活動を最適化するには、まず現状を把握する必要があるため、進捗状況が一目でわかる営業フローの存在が欠かせません。ただし、営業フローにもさまざまな捉え方があることから、まずは基本を理解することが重要です。
本記事では、営業フローの定義や導入メリット、効果的に作成するコツなどを解説します。
営業フローとは
まずは営業フローの基本的な考え方や、営業フローと営業プロセスの違いなどの基礎知識を解説します。
営業フローの基本的な考え方
営業フローとは、営業活動の一連の流れを可視化したうえで、各営業担当者が行うべきタスクを整理する手法です。
営業活動は、商談の事前準備から見込み客に対するヒアリング、商材の提案など、行程が細かく分かれています。
営業フローでは各々のタスクを工程ごとに管理できるため、「いま進めているタスクに滞りがないか」、「タスクを進めるうえで問題が発生していないか」などが明らかになるのが利点です。問題点を特定し、改善を図ることで、業務効率化や成果の向上といった効果が見込めるでしょう。
営業フローと営業プロセスの違い
営業プロセスも営業フローと同様、営業活動の流れを可視化する手法を指します。
ただし、営業プロセスの場合は細かいタスクまでは扱いません。あくまで、営業活動における目標を達成するための一連のプロセスのみを可視化する点に特徴があります。
営業活動の流れを見直して効率化を目指す場合は、営業フローが特に重要です。
営業プロセスのみを基準に営業活動を進めた場合、担当者ごとにアプローチの仕方や商談方法に違いが現れるため、業務の属人化が発生する可能性があります。営業フローを基にした営業活動に切り替えると、工程全体を通して「何をどうすべきか」という点が標準化されるため、業務の均質化につながります。
営業フローを作成するメリット
営業フローを作成することで、属人化の抑制や適切なフォロー体制の構築など、さまざまなメリットが生まれます。ここでは、メリットを4つに分けて詳しく解説します。
属人化の抑制につながる
業務の属人化とは、担当者ごとに業務の進め方や対応方法が異なる状態を指します。営業担当者のタスクが適切に管理されていなければ、各々の判断で業務を進めることとなり、業務品質にバラつきが生まれてしまいます。
このような問題は、営業フローを作成することで解消が可能です。
営業フローには各工程におけるタスクの詳細が可視化されるため、「次に何をやるべきか」「本フェーズにおける最適な行動パターンは何か」といった点がわかりやすくなります。また、可視化した営業フローを参考に業務を進めることで、業務に慣れない従業員でも、スムーズにタスクを処理できるでしょう。
適切なフォロー体制を築ける
営業フローによって営業活動の流れを可視化すると、タスクの進捗状況や、工程のなかで問題が発生している箇所を即座に把握できます。それにより、マネジメント層がタスクの滞っている箇所へ人員を追加したり、配置換えを行ったりといった対応をスムーズに行えます。また、営業担当者から作業が遅れている原因を聞き出し、適切なアドバイスを行うことも可能です。
このようなフォロー体制を築くことで組織全体のパフォーマンス向上が見込めます。
PDCAサイクルを回しやすい
営業フローの見直しによって営業活動の課題が明らかになることは、PDCAサイクルの好循環にもつながります。
例えば、商材の提案後に見込み客数が大幅に減るようであれば、見込み客の課題やニーズをつかみ切れておらず、最適な解決策を提示できていない可能性が考えられます。このように、フェーズごとの活動内容を振り返り、目標と実績との差を比較することで、現状の課題を発見しやすくなります。
ヒューマンエラーを防げる
ヒューマンエラーが発生する原因はさまざまですが、その一因として実施すべきタスクが整理されていない点があげられます。ビジネスシーンではマルチタスクの実行が求められることが多いため、個々のタスクの内容が明確になっていないと、入力ミスや対応漏れを招きます。
営業フローで担当者の個別タスクを可視化し、「次に何をやるべきか」を明確にすることが、ヒューマンエラーの防止へとつながります。
営業活動の基本的なフロー
営業活動における一般的なフローは次の通りです。
- リード創出
- 見込み客へのアプローチ
- ヒアリング
- 課題解決に向けた提案
- クロージング
このような一連の流れを押さえておくと、よりスムーズに自社独自の営業フローを作成できます。ここでは、それぞれのフェーズの特徴を解説します。
1. リード創出
リード創出とは、新たな見込み客を生み出す取り組みや施策を指します。リード創出で対象となるのは、まだ自社の商品・サービスの存在を知らない潜在客ではなく、ある程度興味や関心を抱いている層です。
例えば、Webサイト上に設置されたフォームから資料請求を行えるようにしたり、イベントを開催したりして、見込み客の連絡先を取得します。相手の氏名や担当部署、会社名、メールアドレスなどの情報を取得できると、営業活動のきっかけが生まれます。
営業部門とマーケティング部門が分かれている場合は、マーケティング部門がリードを創出し、ホットリード(確度の高い見込み客)を特定した後に営業部門へとバトンタッチするケースもあります。
2. 見込み客へのアプローチ
自社に興味を持った見込み客と商談を行えるようにアプローチを行います。
見込み客は自社の商品やサービスにある程度関心を示していても、まだ検討段階であったり、たまたま認知しただけで興味度合いが低かったりと、購買意欲が十分に醸成されていないケースも考えられます。そのため、何度かアプローチをかけて見込み客との関係を構築することが重要です。
アプローチ方法は、訪問営業を主体とする「フィールドセールス」と、遠隔手段でコミュニケーションを行う「インサイドセールス」に分かれます。インサイドセールスには、テレアポやメール、DMといった複数の施策が存在します。
3. ヒアリング
見込み客と良好な関係を構築し、自社の商品・サービスに強い興味を持ってもらえたら、商談へと発展します。商談は、相手の要望や現状の課題を聞き取るヒアリングから始めるのが一般的です。
たとえ価格が安く、優れた品質の商品・サービスであっても、相手のニーズに合ったものでなければ成約にはつながりません。「自社の商品・サービスを通じて、見込み客のどのような課題を解決できるのか」という点を明らかにできるよう、相手の意見を十分に聞き取ることが重要です。
ヒアリングの際、見込み客とともに要件定義を行うのも良いでしょう。それにより、商品やサービスに求められる機能や価格帯が明確になります。見込み客は、ツールを選ぶ基準が設定できるようになり、商品やサービスを提供する側は、相手のニーズに合った提案を行いやすくなるのがメリットです。
4. 課題解決に向けた提案
ヒアリングによって見込み客のニーズが明確になったら、それに合わせて商品やサービスを提案します。
その際にポイントとなるのが、「相手にとって自社の商品・サービスがどのような価値を生み出すのか」というベネフィットを明確に提示することです。
例えば、名刺情報を一元管理できるツールの特徴は、社内に散らばる顧客情報を一か所にまとめられることです。それによって生み出されるベネフィットの例として、部門を越えた情報共有によって営業の機会を拡大できることがあげられます。
自社の商品・サービスの特徴をベネフィットまで落とし込むには、見込み客のニーズを深く理解することが欠かせません。
5. クロージング
クロージングは営業フローの単なる締めではなく、相手の意思決定を後押しする重要なフェーズです。
クロージングまでたどり着いた見込み客であっても、何かしらの不安や疑問を抱えていることで、購入に踏み切れないことはよくあります。購買を後押しするには、「より安価な商品がほかにもあるのではないか」、「目の前の営業担当者を信じても良いのだろうか」など、さまざまな不安を抱えた見込み客の不安を丁寧に解消するのがポイントです。他社製品と比較したうえでの自社の強みや、既存顧客の導入事例など、客観的な事実をもとにすると相手が納得しやすくなります。
そのほか、相手の思考時間を遮らない「ゴールデンサイレンス」や、相手がイエスと答えやすい簡単な質問を繰り返し行い、成約を得やすくする「イエスセット話法」といったテクニックを活用するのも良いでしょう。ただし、心理的なテクニックは、相手が不快になるような使い方をしないように注意が必要です。
パターン別の営業フロー
ここまで一般的な営業活動の流れを紹介してきましたが、営業フローは営業活動の目的によっても異なります。そのため、ここで紹介するパターン別の営業フローも参考にしてください。
新規開拓時の営業フロー
新規の見込み客に対応する際は、見込み客によって抱えている課題や製品導入時の目的が大きく異なるため、あらゆるパターンが想定されます。そのため、複数のケースを念頭に、営業フローのパターンを構築する必要があります。
例えば、テレアポが断られた場合を想定し、電話からメールへと営業フローのなかでアプローチ手段を切り替えるような方法が考えられます。その際には、電話でのトークスクリプトだけでなく、メールのテンプレートを用意しておく必要があるでしょう。
リード情報(見込み客の情報)を取得する際に、電話番号だけでなくメールアドレスも取得しておくと、異なる手段によるアプローチが可能です。ただし、取得する情報が増えると見込み客の負担も増えてしまうため、営業フローを基に必要な情報を厳選するのがポイントです。
営業リスト掘り起こし時の営業フロー
既存の営業リストを活用する場合は、まずリストの精査から始めましょう。営業リストには、失注した見込み客や、自社の商品・サービスが自社の課題に合わなかった見込み客も含まれます。自社の商品・サービスを必要とする見込み客に絞ってアプローチするためにも、訪問履歴や商談履歴から導き出した受注確度にもとづいた見込み客のスコア付け(スコアリング)のフローを加えましょう。
問い合わせ対応時の営業フロー
見込み客や顧客からの問い合わせは、商品・サービスに関する質問から資料請求まで、さまざまです。問い合わせの手段も、電話や問い合わせフォームの利用、WebサイトのFAQ(よくある質問)の利用など多岐にわたるため、複数のパターンを想定して施策を講じることが大切です。
見込み客や顧客と接点ができたら、その関係性を継続できるようコミュニケーションを行える環境づくりも必要です。
営業フロー作成のポイント
ここでは、営業フロー作成のポイントを紹介します。
工程ごとの定義付けを行う
営業フローでは、初回訪問や商材提案といった形で一連の流れを図式化しますが、その前に各工程の定義を決めることが重要です。行程ごとの定義は、人によって異なるためです。
例えば、「初回のアプローチ」を、見込み客からの問い合わせと捉える人もいれば、客先への初めての訪問と捉える人もいます。過去の成功パターンを参考に、各工程に含まれる業務の種類や範囲、具体的な進め方などを定義しましょう。
営業フロー作成に役立つツールを活用する
営業フローを可視化するだけであれば、紙やエクセルでも対応できます。しかし、紙やエクセルは共同編集を行いづらく、作成後の変更にも手間がかかります。営業フローの構築には、フロー作成の工数を削減でき、なおかつ情報共有も容易なツールを活用するのがおすすめです。
一連の営業活動を管理するオンラインツールとして知られているSFA(営業支援システム)は、システム内に活動管理機能が組み込まれています。既存のフォーマットに沿って営業フローを構築できるため、作業の効率化が可能です。また、端末や場所を問わずに共同編集を行えます。
さらに、案件管理やタスク管理、見込み客・顧客との接触履歴などを記録する機能も搭載されており、ルーティンワークを自動化するワークフローも活用できます。SFA内でよく複数の情報を一画面にまとめられるダッシュボードなど、業務効率化につながる機能も豊富なので、スムーズなフロー作成が可能です。
HubSpotのSFA「Sales Hub」には、カスタマイズ可能で営業フローを自由に構築できる「プレイブック機能」が搭載されています。入力ルールも決められるため属人化の防止につながり、品質の均一化や業務効率化といった効果が見込めます。また、担当者ごとのパフォーマンスレベルを定量的に分析することも可能で、パフォーマンスの良い営業担当者の活動内容を参考に質の改善につなげられるのもポイントです。
営業フローを構築して営業活動を最適化しよう
営業フローは、営業活動を可視化できるだけでなく、タスクマネジメントも同時に行えるのが大きな特徴です。営業プロセスにおけるボトルネックの特定や属人化の抑制、適切なフォロー体制の構築など、さまざまなメリットがあります。
効果的な営業フローの構築には、現状の営業活動の棚卸しが必要です。営業プロセスや組織全体のスケジュールを見直したうえで工程ごとに定義付けを行い、誰が見てもフローやタスクが明確になるようにしましょう。
SFAを導入した営業フローの構築もおすすめです。活動管理機能を活用すると短時間で営業フローを作成できるだけでなく、案件管理やタスク管理などの機能を活かして業務効率化にも結び付けられます。
SFAのデータを定期的に分析し、営業フローを改善していくことで最適化を目指しましょう。