物質的に豊かになり、毎年のように新しい商品が生み出される一方で、少子高齢化を迎えてマーケットが縮小しつつある日本では、企業は顧客からより愛されることが求められています。

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商品を購入して終わりではなく、その後も継続的に購入してもらうために何をすべきか。より真剣に考え抜く必要があります。

このような背景もあり、「顧客ロイヤルティ」は企業経営に欠かせない重要な指標となっています。

「商品の満足度は高いけれど、リピーターが少ない」という悩みも、顧客ロイヤルティを調査すると、改善すべきポイントが見えてくるでしょう。

この記事では、顧客ロイヤルティを重要視すべき理由をデータに基づいて解説しながら、顧客ロイヤルティを定量評価する方法、顧客ロイヤルティを高めるための手順をご紹介していきます。

カスタマーサクセス部門を成功に導くKPIテンプレート

顧客ロイヤルティの定義とは?

顧客ロイヤルティの「ロイヤルティ」は、「忠誠心」を意味する英語「Loyalty」に由来しており、顧客ロイヤルティとは顧客が企業やブランド・商品に対して感じている信頼や愛着のことを表しています。

また顧客ロイヤルティは、NPS®(Net Promoter Score:顧客ロイヤルティ指標)などの指標を使って定量的に測定できます。収益との連動も確認されているため、多くの企業で用いられています。
 

なぜ、顧客ロイヤルティが重要視されるのか?

なぜ、顧客ロイヤルティが重要視されるのか?

新規顧客開拓は企業経営において欠かせない活動であり、新規顧客への販売活動と既存顧客への販売活動は、その両立が不可欠です。

しかし、既存顧客に対する販売活動は、新規顧客開拓に比べて投資対効果が高い傾向にあります。

たとえば、フレデリック・F・ライクヘルドの提唱する 「1:5の法則」(英語) により、以下の事実が立証されています。

  • 解約率を5%改善すれば、利益は25%改善する
  • 新規顧客への販売コストに比べ、既存顧客への販売コストは5分の1で済む

つまり、より効率的に収益をあげる経営を実現するためにも、既存顧客への注力は欠かせません

このような背景から顧客ロイヤルティを定量的に示すNPS®などは、既存顧客との関係を維持するために重要な指標として重宝されているのです。
 

顧客ロイヤルティの改善により期待できる4つの効果

顧客ロイヤルティの改善により期待できる4つの効果

顧客ロイヤルティが顧客との関係構築において重視されている理由は、次の4つの効果があるからです。

  1. リピート率向上
  2. 顧客単価向上
  3. 口コミの発生
  4. 解約率の低下

具体的な事例をもとに、その効果をみていきましょう。
 

1. リピート率向上

顧客ロイヤルティの高さは、リピート率に関係すると示唆されています。

たとえば、EmotionTechが2015年に行った調査では、顧客ロイヤルティの高さによってECサイトの年間利用回数に2倍近い差が出ています。

  • ECサイトの年間利用回数:ロイヤルティが高い顧客=約17回、ロイヤルティが低い顧客=約9回

このように顧客ロイヤルティは、リピート率と関係しており、顧客ロイヤルティを高めることでリピート率を改善できる可能性があります。
 

2. 顧客単価向上

顧客ロイヤルティの高さは、顧客単価と連動しています。

チューリッヒ保険のケーススタディ(英語)では、顧客ロイヤルティが高い顧客は、低い顧客に比べて顧客単価が27%高いと判明しました。

また、 EmotionTechが2016年に行った調査において「アパレルブランドにおける1回あたりの購入単価は、ロイヤルティの高い顧客はロイヤルティの低い顧客の1.3倍」になりました。
 

3. 口コミの発生

また顧客ロイヤルティは口コミの発生とも関連しています。

たとえば、ソニー損害保険株式会社が行った調査では、NPSの数値と口コミの回数に正の相関関係が確認されています。

NPSの数値と継続率、また好意的な口コミの回数とも正の相関関係があることが確認できたのです。

引用:マーケの教科書「NPSは収益に直結する指標だ」ソニー損保の顧客ロイヤルティ戦略の秘密 第1回 より

 

4. 解約率の低下

顧客ロイヤルティの改善は、解約率の低下にも繋がります。

たとえば、クレジットカード会社のアメリカン・エキスプレス・インターナショナルでは、 顧客ロイヤルティの改善によって、顧客の解約を4分の1まで減少させることに成功しています。
 

顧客ロイヤルティの測定方法

顧客ロイヤルティを高めるために、やらなければいけないことは「顧客ロイヤルティの継続的な調査」と「データに基づいた定量評価」の2点です。

口コミなど定性的な評価だけにとらわれず、定量的なデータも踏まえて評価することで、顧客ロイヤルティをより正確に把握できるでしょう。

定量化する方法は、NPSをはじめ独自で設計するアンケートや再利用意向の調査、感動指標の調査などの手法も存在します。

顧客の立場に立った問題解決については、以下のページからテンプレートをダウンロードできます。ご興味のある方はぜひご活用ください。

NPSとは

指標の種類は複数ありますが、定量的な分析に用いる際はNPSを用いるのが一般的です。

NPSとは「顧客が企業の商品やサービス、企業そのものをどのように感じているか?」「今後も取引を続けるつもりかどうか?」を示す指標です。

その他の指標と異なり収益との相関が確認されているため、顧客ロイヤルティの測定ではNPSが重宝されます。

たとえば、日経BPコンサルティングとEmotion Techが共同で行った以下の調査結果 では、「NPSが売上に直結する」ことが立証されました。

  • 12社の自動車メーカーを調査対象に、2012年~2016年の年間販売台数平均成長率とNPSとの相関係数が「0.88」と非常に高い数値を示しました。
  • この数字は、自動車業界において「NPSスコアが高いほど、販売台数が多くなる」ことを示しています。

それでは、どのように顧客ロイヤルティを数値化するのが良いでしょうか。

ここからはNPSを使った顧客ロイヤルティの具体的な測定方法を見ていきましょう。
 

NPSを計測する手順

NPSでは最初に「X社を友人や同僚に薦める可能性はどのくらいありますか?」という質問に対して、0~10までの11段階で評価してもらいます。

顧客ロイヤルティの測定方法1

次に質問結果を、回答によって3つのセグメントに分類します。

顧客ロイヤルティの測定方法2

そして、回答者全体の推奨者の割合(%)から、批判者の割合(%)を引いた数値がNPSです。

たとえば、100人のうち30人が推奨者で、批判者が20人だった場合、NPSの数値は「30 - 20 = 10pt(ポイント)」です。

つまり推奨者が多く、批判者が少ないほど顧客ロイヤルティは高いと言えます。

このようにNPSの調査項目が比較的シンプルなことも、NPSが良く利用される要因の1つとなっています。

なお、HubSpot社でも、カスタマーサポート部門のKPI(重要業績評価指標)をNPSに設定しており、カスタマーサポート部門の役割は「顧客ロイヤルティを高める部署である」と定義しています。
 

「LTV=顧客ロイヤルティ」ではないことに注意する

顧客ロイヤルティと混同されがちな指標に「LTV(ライフタイムバリュー)」があります。

LTVとは、一人の顧客が「企業やブランドとの取引を始めてから、取引を終えるまでにどれだけの利益をもたらすか」を算出する指標です。

顧客ロイヤルティが高い顧客ほど、企業に利益をもたらす傾向があります。しかし、「LTVの高さ=顧客ロイヤルティの高さ」とは限らないため注意が必要です。

購入単価が高い顧客の中には「切り替えるのが面倒だから仕方なく使っている」顧客も一定数存在しますし、継続期間が長い顧客の中には「別のサービスが見当たらないから、仕方なく使っている」顧客もいます。

そのため顧客ロイヤルティを計測する指標は、その定義を押さえて適切に選びましょう。
 

顧客ロイヤルティを高める4ステップ

顧客ロイヤルティを高める4ステップ

NPSを使って顧客ロイヤルティ向上を実現させるためにはどのような手順を踏めば良いのでしょうか。

ここでは、その手順を以下の4ステップに分けて見ていきましょう。

  1. 顧客ロイヤルティを定量化する
  2. データを参考に現状分析を行う
  3. 顧客ロイヤルティの改善目標を設定する
  4. 改善策を検討する
     

ステップ1. 顧客ロイヤルティを定量化する

まずはNPSを使って顧客ロイヤルティを算出します。

データの取得時に大切なのは、「サンプル数」と「データのノイズ除去」です。

サンプルは、400以上集めましょう。 サンプル数が少ないと、結果に誤差が生じやすくなってしまいます。

またノイズの除去も欠かせません。ノイズとは、「顧客ロイヤルティとは直接関係のない顧客の思想によって結果に影響を及ぼす要因」を指します。

たとえば 野村研究所が2019年に行った調査 によると、金融業界では「そもそも金融商品は他人に勧めるべきではない」という顧客の考えが、NPSに影響を与えることが明らかになりました。

このように顧客の考えによって顧客ロイヤルティが正しく計測できないケースがあるため、ノイズの除去は丁寧に行う必要があります。
 

ステップ2. データを参考に現状分析を行う

データの取得が完了したらNPSを定量化し、現状把握と分析を行います。とくに大切なのは、カスタマー・エクスペリエンスの分析です。
 

カスタマー・エクスペリエンスの分析

カスタマー・エクスペリエンスとは、顧客がブランドや商品と接触する一連の流れを図式化したものを指します。

商品の利用時に限らず、WEBや口コミなどから受けるイメージや、導入前の営業や導入後のサポートから受けるイメージも含めて、顧客の体験を一連の流れで捉えるものです。

全ての顧客体験を洗い出し、NPSを始めとするロイヤルティの数値が悪かった箇所に対して最も影響を与えているであろうプロセスを特定し、優先的に対策を考えることが重要です。

それらを1つずつ改善することで、顧客ロイヤルティは徐々に向上します。
 

「購買直後」こそ、顧客の期待を超えるべきタイミング

カスタマー・エクスペリエンスの各プロセスの中で、顧客ロイヤルティに影響を与えやすいと言われるプロセスは購買直後です。

購買直後は不安や慣れない面もあり、顧客は企業から提供される情報に対して、より注意深くなっています。そのタイミングで提供された情報は、顧客の印象に残りやすく、良いイメージも悪いイメージもインパクトが強くなります。

反対に、サービスの利用期間が長くなればなるほど、顧客は企業が発信する情報を注視しなくなっていきます。

当然、ブランドや商品によって力の入れどころは変わってきますが、一般的には「購買直後に顧客の期待を超えるアクションを起こすこと」が、顧客ロイヤルティを高める上で最も効率的な施策であると言えるでしょう。

そのため購買直後の分析はとくに丁寧に行いましょう。また、カスタマー・エクスペリエンスの分析を綿密に行うためにも、データの取得時に各プロセスにおける満足度を質問項目に加えておくと良いでしょう。
 

ステップ3. 顧客ロイヤルティの改善目標を設定する

現状分析で課題を特定したら、改善目標を設定しましょう。NPSは業界によって、平均値が異なります。そのため、NPS業界別ランキング&アワードなどを参考に、目標を設定すると良いでしょう。

また心理面と行動面を考慮して、注力すべきセグメントを決定することも大切です。
 

心理面ロイヤルティと行動面ロイヤルティによる4つのセグメント

顧客ロイヤルティは、大きく「心理面ロイヤルティ」と「行動面ロイヤルティ」の2つに分けられます。この2つをしっかり切り分けて捉えないと、顧客ロイヤルティを的確に企業経営に活かせません。

  • 心理面ロイヤルティ…企業・ブランド・商品に対して抱くプラスの感情
  • 行動面ロイヤルティ…企業の商品を繰り返し購入する行動

重要なのは「心理面ロイヤルティが高ければ行動面ロイヤルティも高い」「行動面ロイヤルティが高ければ心理面ロイヤルティも高い」と考えてしまいがちですが、必ずしもそうとは限りません。

消費者の購買活動は、以下の4象限のマトリクスに枝分かれしていきます。

顧客ロイヤルティを高める4ステップ2

各々のマトリクスには以下のような消費者の購買活動に分けられます。

  1. 行動面ロイヤルティ、心理面ロイヤルティともに高い消費者
    企業やブランドにとって最重要顧客となる層で、最も手厚い対応を進めるべき相手です。
  2. 行動面ロイヤルティは低いが、心理面ロイヤルティは高い消費者
    例えば「憧れの高級車」などが、このケースによく当てはまります。対象となるブランドや商品に愛着があり、手に入れたいけれども、何らかの理由(金銭面など)により購入できない状態にある消費者です。
  3. 行動面ロイヤルティは高いが、心理面ロイヤルティは低い消費者
    例えば「家から最も近いコンビニ」などが、このケースによく当てはまります。そのコンビニに対する愛着は全くないが、家から一番近いという理由だけで毎日買い物をする。このケースでは、コンビニに対する好意的なクチコミの発生は期待できません。また、家からさらに近い場所に別のコンビニが出店すれば、そちらのコンビニに通うことになるであろう消費者です。
  4. 行動面ロイヤルティ、心理面ロイヤルティともに低い消費者
    他社のブランドにロイヤルティを感じている、自社のブランドを認知していない、などの状況にある消費者です。

顧客ロイヤルティを高めようと検討する際、闇雲に全ての顧客のロイヤルティを高めようとするのではなく、顧客をしっかりとセグメントし、投資対効果の高い層から優先的にアプローチをしていくことが、企業経営の効率を高める上で重要となるのです。
 

改善策を検討する

改善目標と注力すべきセグメントを決定したら、具体的な改善策を検討しましょう。

会社が抱える課題によって、顧客ロイヤルティの改善に必要な対策は異なります。しかし、顧客ロイヤルティを高める共有のポイントは「顧客の期待を超えること」であると言えます。

そのため各プロセスで顧客が期待するレベルを把握し、そのレベルを超えていくことが大切です。顧客の期待を超えられれらば、顧客は貴社のファンになる可能性がより高くなります。

また顧客ロイヤルティはユーザーとの信頼関係に基づくため、定点的に計測し、改善し続けることが大切です。
 

顧客ロイヤルティに関するおすすめ書籍のご紹介

最後に、顧客ロイヤルティに関するおすすめの書籍3冊をご紹介いたします。

カスタマー・エクスペリエンスを充実させて、顧客ロイヤルティを高めよう

顧客ロイヤルティは、「顧客からどれだけ信頼されているか」を表しています。

またNPSなど顧客ロイヤルティの定量化指標を活用すれば、顧客が自社に対して抱いている感情や真に改善すべきポイントを明らかにできます。

顧客ロイヤルティの向上には、カスタマー・エクスペリエンス全体を通して、顧客の期待を超えることが欠かせません。一方、一度失った顧客ロイヤルティを後から取り戻すのは困難です。

「顧客ロイヤルティの重要性に気づいているものの、まだ実践に移すことができていない」という企業様は、顧客ロイヤルティを向上できるようなカスタマーサポート体制を早急に構築することをおすすめします。

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カスタマーサクセス部門を成功に導くKPIテンプレート

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元記事発行日: 2019年9月09日、最終更新日: 2022年5月12日

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