顧客ロイヤリティの「ロイヤリティ」は、「忠誠心」を意味する英語「Loyalty」に由来しており、顧客ロイヤリティとは顧客が企業やブランド・商品に対して感じている信頼や愛着のことを表しています。

サブスクリプションモデルやSaaSモデルの台頭もあり、「商品を買って終わり」から「商品を買ってからが始まり」へと、消費者の購買活動は大きく変化してきました。

また、インターネットの浸透により、消費者の口コミが購買行動に対してより大きな影響力を持つようにもなってきました。

このような背景もあり、「顧客ロイヤリティ」は企業経営に欠かせない重要な指標となってきています。

この記事では、顧客ロイヤリティを重要視すべき理由をデータに基づいて解説しながら、顧客ロイヤリティを定量評価する方法、顧客ロイヤリティを高めるための手順をご紹介していきます。

 

なぜ、顧客ロイヤリティが重要視されるのか?

 

顧客ロイヤリティ

顧客ロイヤリティはブランドおよびプロダクトにおける以下3点に多大な影響を及ぼすことが、EmotionTechの2015年調査結果により判明しています。

  1. 購入頻度
  2. 購入単価
  3. 口コミの発生率

顧客ロイヤリティが高まるに従って1〜3の数値が向上することが、以下のデータから読み取れます。

  • ECサイトの年間利用回数:ロイヤリティが高い顧客=17回、ロイヤリティが低い顧客=9回
  • アパレルブランドにおける1回あたりの購入単価:ロイヤリティの高い顧客はロイヤリティの低い顧客の1.3倍
  • スポーツメーカーにおける紹介発生回数:ロイヤリティの高い顧客の85%が知人や他社にその商品を薦めている

参考:【ブランド戦略】顧客ロイヤルティとは?顧客を引き付けるマーケティング手法 | 株式会社Emotion Tech(エモーションテック)

また、フレデリック・F・ライクヘルドの提唱する「1:5の法則」(英語)により、以下の事実が立証されています。

  • 新規顧客への販売コストに比べ、既存顧客への販売コストは5分の1で済む
  • 解約率を5%改善すれば、利益は25%改善する

もちろん、新規顧客開拓は企業経営において欠かせない活動であり、新規顧客への販売活動と既存顧客への販売活動は、その両立が必須です。

しかし、既存顧客に対する販売活動の投資対効果がこれほどまでに高いものであるということは、世の中にまだあまり知られていない事実なのではないでしょうか。

この「顧客ロイヤリティ」という考え方を、貴社の経営にご活用いただけるよう、まずは「顧客ロイヤリティとは具体的に何なのか?」という点に対する理解を進めていきましょう。

 

心理面ロイヤリティと行動面ロイヤリティ

顧客ロイヤリティ 意味

顧客ロイヤリティは、大きく「心理面ロイヤリティ」と「行動面ロイヤリティ」の2つに分けることができます。この2つをしっかり切り分けて捉えないと、顧客ロイヤリティを的確に企業経営に活かしていくことができません。

  • 心理面ロイヤリティ…企業・ブランド・商品に対して抱くプラスの感情
  • 行動面ロイヤリティ…企業の商品を繰り返し購入する行動

重要なのは「心理面ロイヤリティが高ければ行動面ロイヤリティも高い」「行動面ロイヤリティが高ければ心理面ロイヤリティも高い」と考えてしまいがちですが、実はそうではないという事実です。

消費者の購買活動は、以下の4象限のマトリクスに枝分かれしていきます。

  1. 行動面ロイヤリティ、心理面ロイヤリティともに高い消費者
    企業やブランドにとって最重要顧客となる層で、最も手厚い対応を進めるべき相手です。
  2. 行動面ロイヤリティは高いが、心理面ロイヤリティは低い消費者
    例えば「家から最も近いコンビニ」などが、このケースによく当てはまります。そのコンビニに対する愛着は全くないが、家から一番近いという理由だけで毎日買い物をする。このケースでは、コンビニに対する好意的なクチコミの発生は期待できません。また、家からさらに近い場所に別のコンビニが出店すれば、そちらのコンビニに通うことになるであろう消費者です。
  3. 行動面ロイヤリティは低いが、心理面ロイヤリティは高い消費者
    例えば「憧れの高級車」などが、このケースによく当てはまります。対象となるブランドや商品に愛着があり、手に入れたいけれども、何らかの理由(金銭面など)により購入することができない状態にある消費者です。
  4. 行動面ロイヤリティ、心理面ロイヤリティともに低い消費者
    他社のブランドにロイヤリティを感じている、自社のブランドを認知していない、などの状況にある消費者です。

顧客ロイヤリティを高めようと検討する際、闇雲に全ての顧客のロイヤリティを高めようとするのではなく、顧客をしっかりとセグメントし、投資対効果の高い層から優先的にアプローチをしていくことが、企業経営の効率を高める上で重要となるのです。

 

顧客ロイヤリティをはかる指標「NPS」

顧客ロイヤリティ 指標

それでは、どのようにして顧客ロイヤリティを目に見える形で表していくと良いでしょうか。ここでは、顧客ロイヤリティの定量化においてよく利用される指標である「NPS(Net Promoter Score)」について解説をしていきます。

・NPSを計測する6ステップ

  1. 顧客に「このサービス(企業・ブランド・商品)を周囲の家族や友人に勧める可能性はどのくらいありますか?」という質問を行う。
  2. 勧める可能性を0〜10の11段階で回答してもらう。
  3. 11段階のうち、9〜10と評価した顧客を「推奨者」と分類する。
  4. 7〜8と評価した顧客を「中立者」と分類する。
  5. 0〜6と評価した顧客を「批判者」と分類する。
  6. 回答者全体の推奨者の割合(%)から、批判者の割合(%)を引いた数値がNPSの指数となる。

以上がNPSを計測する手順となります。

調査項目がそれほど複雑ではないことも、NPSが良く利用される要因の1つとなっていますが、日経BPコンサルティングとEmotion Techが共同で行った以下の調査結果で「NPSが売上に直結する」ことが立証されたのも、NPSの浸透を加速させるきっかけとなったようです。

  • 12社の自動車メーカーを調査対象に、2012年~2016年の年間販売台数平均成長率とNPSとの相関係数が「0.88」と非常に高い数値を示しました。
  • この数字は、自動車業界において「NPSスコアが高いほど、販売台数が多くなる」ということを示しています。

参考:自動車業界ロイヤルティ調査レポートPart.1 | 株式会社Emotion Tech(エモーションテック)

なお、HubSpot社でも、カスタマーサポート部門のKPIをNPSに設定しており、カスタマーサポート部門の役割は「顧客ロイヤリティを高める部署である」と定義しています。

 

顧客ロイヤリティを高めようとする前に知っておきたい2つのこと

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顧客ロイヤリティを高める具体的な方法を知る前に、まずは押さえておきたいポイントが2つあります。

  • 顧客ロイヤリティを”継続的”に定量評価すること
  • 「LTV=顧客ロイヤリティ」ではないことを理解する

ここからはそれぞれのポイントについて解説しておきます。

 

ポイント1.顧客ロイヤリティを”継続的”に定量評価すること

顧客ロイヤリティを高める上で、まず始めにやらなければいけないことは「顧客ロイヤリティを継続的に定量評価すること」です。

ロイヤリティ=忠誠心というと、どうしても主観的になってしまいがちな指標ですが、主観的な指標では経営指標として活用することができません。

定量化する方法は、先ほど上げたNPSをはじめ、独自で設計するアンケートや再利用意向の調査、感動指標の調査などの手法も存在します。

昨今では、カスタマイズした顧客アンケートが一斉配信できて、結果が自動集計されるツールなども存在しています。

いずれの手法でも結果を定量化し、定点観測をしながら過去データとの比較分析を行うことが肝要となります。データにはある程度の母集団が必要となるので、手作業では難しいため、ツールの活用も検討してみると良いでしょう。

 

ポイント2.「LTV=顧客ロイヤリティ」ではないことを理解する

購入単価が高い顧客の中には「切り替えるのが面倒だから仕方なく使っている」顧客が存在しますし、継続期間が長い顧客の中には「別のサービスが見当たらないから、仕方なく使っている」顧客も存在します。

LTVと顧客ロイヤリティは混同されがちですが、「LTVの高さ=顧客ロイヤリティの高さ」ではないことを理解した上で、顧客ロイヤリティを高める施策を検討する必要があります。

 

顧客ロイヤリティを高める方法

顧客ロイヤリティ 改善

それでは、顧客ロイヤリティを高めていくためには、どのような手法が考えられるでしょうか。

 

カスタマーエクスペリエンスで考える

カスタマーエクスペリエンスとは、顧客がブランドや商品と接触する一連の流れを図式化したものを指します。

商品の利用時に限らず、WEBや口コミなどから受けるイメージや、導入前の営業や導入後のサポートから受けるイメージも含めて、顧客の体験を一連の流れで捉えるものです。

全ての顧客体験を洗い出し、NPSを始めとするロイヤリティの数値が悪かった箇所に対して最も影響を与えているであろうプロセスを特定し、優先的に対策を考えていくことが重要です。

それらを一個一個つぶしていくことによって、顧客ロイヤリティはじわじわと、確実に改善されていきます。

さらには、各プロセスで顧客が期待するレベルを把握し、そのレベルを超えていくことができると顧客ロイヤリティは飛躍的に高まります

つまり、顧客ロイヤリティを高めるポイントは「顧客の期待を超えること」であると言い換えることもできるでしょう。

顧客の期待を超えることが出来たならば、顧客は間違いなく貴社のファンになってくれることでしょう。

次に、様々なプロセスが存在するカスタマーエクスペリエンスの中でも、最も顧客ロイヤリティに影響を与えやすいと言われるプロセスについて解説をしていきます。

 

「購買直後」こそ、顧客の期待を超えるべきタイミング

ブランドや商品に対して、顧客の関心度合いが高いタイミングこそ、顧客ロイヤリティを最も大きく左右するタイミングであると言えます。

では、顧客の関心度合いが高いタイミングとはいつのことを指すでしょうか。

それは購買直後です。

購買直後は不安や慣れない面もあり、顧客は企業から提供される情報に対して、より注意深くなっています。そのタイミングで提供された情報は、顧客の印象に残りやすく、良いイメージも悪いイメージもインパクトが強くなります

反対に、サービスの利用期間が長くなればなるほど、顧客は企業が発信する情報を注視しなくなっていきます。

当然、ブランドや商品によって力の入れどころは変わってきますが、一般的には「購買直後に顧客の期待を超えるアクションを起こすこと」が、顧客ロイヤリティを高める上で最も効率的な施策であると言えるでしょう。

 

顧客ロイヤリティを高める手順

 

顧客ロイヤリティ 高める 手順

ここまでご覧いただいて、顧客ロイヤリティを高めるべき理由と、顧客ロイヤリティを高めるために必要となるアクションについてご理解をいただけたと思います。

ここで、あらためて顧客ロイヤリティ向上を実現させるための手順を、時系列で整理しておきます。

  1. 顧客ロイヤリティを定量化する
  2. 顧客ロイヤリティを定点観測する
  3. カスタマーエクスペリエンスを可視化する
  4. 顧客ロイヤリティに最も影響を与える顧客体験を特定する
  5. 顧客体験を改善する施策を立案し、実行する

顧客ロイヤリティに関するおすすめ書籍のご紹介

顧客ロイヤリティ 本

最後に、顧客ロイヤリティに関するおすすめの書籍3冊をご紹介いたします。

まとめ

そもそも顧客ロイヤリティは定量評価が難しく、経営指標への取り込みに乗り出せないケースも多かったようですが、昨今ではITツールの進化も進み、情報の収集・蓄積・分析が飛躍的に簡易になりました。

一方で、一度失った顧客ロイヤリティを後から取り戻すことは非常に難しいのが現実です。

「顧客ロイヤリティの重要性に気づいているものの、まだ実践に移すことができていない」という企業様には、まず売上に直結する指標であるNPSの定量化とその定点観測を皮切りに、顧客ロイヤリティの向上を実現することを目的としたカスタマーサポート組織を、早期に構築されていくことをおすすめ致します。

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元記事発行日: 2019年9月09日、最終更新日: 2019年9月10日