営業は、経営やマーケティングと比較すると学術的な体系化が進んでおらず、実務経験から学ぶことが多い職種です。
また、顧客情報、進捗状況、成約事例等をデータ化して共有を実現するSFAツールが多くの企業からリリースされていますが、顧客とのコミュニケーションに必要な営業テクニックの重要性は今も変わりません。
言い方を変えれば、組織全体の営業テクニックを向上させる継続的な取り組みで、顧客との良好な関係を構築して売上アップなどの成果をあげることができます。
本記事では、営業担当者が習得しておくべき営業テクニックを体系的に徹底解説します。
営業で必要なスキル & ロールプレイング ガイド
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売上が伸びるだけではない。営業テクニックを身につける意外なメリット
営業テクニックとは「顧客と関係構築の際に必要なヒアリング力、課題解決力、トーク力などのスキル」をいいます。
営業担当者は、自社製品やサービスに関心をもつ可能性のある個人や企業を開拓して、最終的には成約につなげるために顧客と良好な関係を築きます。また過去に成約していただいた既存顧客にも、継続的なアプローチが必要です。
顧客の関心を得るステップから成約、さらにはアフターフォローまで、顧客の立場や心理を考えて、適切な方法とタイミングでアプローチする能力が求められます。
実際の営業活動の場では、営業担当者が営業テクニックを磨き、パフォーマンスを向上することで、成約件数アップなどの成果が得られます。また他にも次のような効果が期待できます。
- 成功体験による営業担当者のモチベーションアップ
- 顧客が持つ自社に対するイメージの向上
さらに、営業テクニックの高い担当者で構成された部門ほど、SFAなどの支援ツールの導入効果が大きくなります。
営業テクニック活用のメリット
営業テクニック活用のメリットは様々ありますが、当社HubSpotは「顧客へ提供できる価値が向上する」という一点に尽きると考えています。さらに、この点を具体的に突き詰めると「顧客からの信頼を獲得しやすくなる」「お客様の状況を理解しやすくなる」の2つが挙げられます。
顧客からの信頼を獲得しやすくなる
AppleやNIKEのように、商品に強力なブランド力を有している企業は少数です。多くの企業では、似たような商品を扱っている競合他社が存在します。単に商品の説明をするだけでは、成約に結びつく可能性が低いのが実情です。
営業活動は自社の商品やサービスが顧客のニーズにマッチした上で、営業担当者と顧客との信頼関係があってこそ成約に結びつきます。営業担当者が本記事で説明する営業テクニックを身につければ、顧客との信頼関係もより深められるでしょう。
お客様の状況を理解しやすくなる
顧客との信頼関係を深めることにより、顧客の困りごとから今後のビジネス展開などの話を入手しやすくなります。逆に信頼関係がないと、顧客は営業担当者に多くを語りません。
顧客と信頼関係が構築できれば、具体的なソリューションを提供して新たなビジネスを展開できます。もともと提案をする予定だった商材以外も、導入検討に結びつくかもしれません。将来的にはクロスセル、アップセルが実現して安定的な売上増加も見込めるでしょう。
営業で欠かせない「4つのテクニック」
営業活動では、顧客に商品・サービスを導入するまでに、大きく3つのフェーズがあります。
それが顧客にコンタクトするまでの「準備」、顧客との打ち合わせを通じて進める「商談」、顧客の導入の後押しをする「クロージング」です。
これらのフェーズを踏まえて、営業担当者に求められる4つのスキルを紹介します。
営業リストの作成
営業リストとは、効率的な新規顧客を獲得するための営業候補のリストを指します。
営業リストの作成は、少し工夫が必要です。単に企業の問い合わせ窓口を列挙したリストを作成して、順にアプローチしていく方法では、営業リストの必要性が薄れてしまいます。営業リストの作成前は「自社の商品やサービスを真に必要としている企業はどこか」を考え抜き、厳選した企業をリストアップするのがおすすめです。
当社HubSpotでは、自社の利益を優先して相手への価値提供を考えないアプローチを「アウトバウンド営業」と定義しています。下調べなしのテレアポ、メール送付などはその典型です。
アウトバウンド営業は絶対に避けるべき営業手法です。営業リストを活用し、リストアップした企業の担当者がどのような課題を持ち、どのような情報を欲しているのかを推測して適切な手法でアプローチをしましょう。
また顧客との良好な関係を築くためにも、アプローチ状況や顧客状況はできる限り一元管理し、いつでも確認できる状態にしておくのが理想です。
営業リストは営業活動の成否を左右するため、非常に重要なのです。テクニックです。営業リスト作成の際には、無料で作成する他に有料サービスを利用して作成する方法があります。
業務効率を上げる営業リストの作成・管理方法やおすすめのツールは、 こちら で詳しくお伝えします。
営業トークを磨く3つのメソッド
営業トークは顧客と直接コミュニケーションをする「テレアポ」「セミナー」「打ち合わせ」など、あらゆる場面で求められます。そのため、営業テクニックのうち、トークスキルは身につけるべき最も重要な技術のひとつです。本章では、「トークスクリプト」「顧客との実際の商談」「営業ロープレ」の3つのシーンに分けて、スキルを向上するテクニックを解説します。
トークスクリプトを作成する
営業活動におけるトークスクリプトとは、テレアポやセミナーなど顧客へのアプローチにおける営業トークの例を集めたものです。顧客の課題やニーズに合ったトークを選別して、すべての顧客に寄り添った会話を実現するために活用します。またトークスキルの属人化を小さくして、営業部門全体をレベルアップする手段でもあります。
トークスクリプトを有効に活用するためには、スクリプトごとの効果を測定して、継続的なメンテナンスを行うのが大切です。
トークスクリプトの詳細は「 『電話営業つらい』は時代遅れ?トークスクリプト&話し方のコツを紹介 」をご覧ください。トークスクリプト作成時に役立つ考え方として、当社HubSpotが提唱するGPCTフレームワークを解説しています。また電話営業におけるトークスクリプトの具体的な事例も紹介しています。
実際の商談では、話すよりも「聴く」側に徹する
営業活動の各ステップ(あいさつ、自己紹介、アイスブレイク、ヒアリング、提案、テストクロージング、疑問点・不安要素の解消、クロージング)では、顧客との対話によって意思疎通を行い、信頼関係を構築します。
トークスクリプトを理解した上で、「ゆっくり」「はっきり」と話すのはもちろん、「顧客の会話を聴く力」も大切です。顧客が伝えたいことを十分に理解し、かつ顧客の立場を想定して「リスクやデメリットを正直に伝える」など、顧客の質問に的確に応えるのも営業トークのスキルの1つです。
また、顧客への質問のクオリティを高めるのも重要です。適切な質問をすることで、見込み顧客の課題やニーズを正確に引き出せます。
営業ロープレは事前準備がカギ
営業ロープレ(ロールプレイング)とは、営業活動における登場人物の役割を演じて、トークスキルを磨く研修です。疑似的な成功体験、失敗体験を通じて、商談本番での成功確率を高められます。
営業ロープレは、営業担当者と顧客の2名で行うのが基本形です。営業担当者役と顧客役以外の営業担当者が、営業ロープレを観察することにより、チーム内で営業ノウハウが共有できます。
営業ロープレを実施する際は「目的」と「設定」を明確にした上で、「営業ロープレでの成果」を想定しておきます。また先輩・上司の協力を得て、実体験に基づくノウハウを盛り込むと、さらに効果が高まります。
営業ロープレを行う前に「 効果的な営業ロープレを行うには?具体的なやり方を解説 」を参考にして準備を進めましょう。営業ロープレ前の準備から開催後のフィードバックまでのポイントを解説しており、営業ロープレの全体像が理解できます。
商談・クロージングのテクニック
顧客への営業活動の内、商談とクロージングは成約の成否に直接関連する重要なステップです。こちらでは、商談とクロージングで活用したいテクニックを紹介しましょう。
商談に欠かせない「準備」と「アフターフォロー」
商談とは、「顧客の課題や問題の共有」「解決策の提案」「成約」までの一連のコミュニケーションを指します。商談の多くは打ち合わせの形式で、営業担当者は商談前の準備を十分に行い、商談をスムーズに進める役割を担います。
営業担当者も顧客も、初めて会った際は少し緊張していることがほとんどです。そこで、営業担当者は緊張した雰囲気をほぐす会話(アイスブレイク)から打ち合わせをスタートするのが良いでしょう。アイスブレイクの際は営業担当者だけが話すのではなく、顧客の心の声に耳を傾け、疑問点や不安要素の解消に努めます。
商談が終わればフォローアップメールを送り、感謝の意を示しましょう。また商談中に決定した項目の確認や次回打ち合わせの日程も記載して、顧客との認識にズレがないか確認します。
当社HubSpotでは「多様な選択肢」をもとにした「顧客起点」を第一に、商談の手段を選ぶ営業スタイルを提唱しています。「 商談の基本とは?準備方法や気をつけたいポイントを解説 」では、当社の提唱する営業スタイルに基づく営業パイプライン策定(案件化、契約・受注、納品までを可視化するためのプロセス)の重要性だけでなく、具体的な商談イメージも解説しています。
クロージングは「顧客のアシスト」に徹する
クロージングとは、顧客と契約を結ぶためのプロセスです。「契約により商談を終える」という意味で、クロージングと呼ばれます。
顧客は商談を通じて商品やサービスを理解しようとしますが、最後まで疑問が残っているかもしれません。クロージングでは、疑問に対して的確に回答しつつ、契約に向けて「顧客の背中をそっと押す」ことが求められます。強引に背中を押して契約を催促するのではなく、顧客自身が一歩踏み出せるようアシストするイメージです。
営業担当者の中には、クロージングが「むずかしい」と考えている人もいます。クロージングの精度を高めるには、苦手意識を取り除き、成功確率の高いクロージング手法を身につけるしかありません。クロージングについて学ぶ場合には「 営業でクロージング率を高めるためには?コツと注意点を解説 」が参考になります。
営業で役立つ「心理学テクニック」
一般的に、人は必ずしも合理的な判断をするとは限りません。感情や心理状況に左右されることもあります。そこで営業活動で使える心理学テクニックも身につけましょう。心理学テクニックについては「 営業で役立つ心理学テクニック10選|顧客により信頼されるためには? 」で詳しく解説しています。
営業活動で心理学テクニックを活用すると、以下のようなメリットが期待できます。
- 顧客と信頼関係が構築しやすくなる
- 顧客の行動にポジティブな影響を与えられる
- 営業担当者自身の認知バイアス(無意識の思考のクセ)を把握し、失敗を未然に回避できる
心理学テクニックは、顧客の声の高さ、話すスピード、雰囲気、呼吸を合わせる「ページング」や好意を示されたらお返しをしたくなる「返報性の原理」など、様々なメソッドがあります。今回はその中でも実用性が高い「オープン・クエスチョン」と「クローズド・クエスチョン」を紹介します。
2つの質問メソッドを使い分けて、顧客との心理的距離を縮める
オープン・クエスチョンとは、自由な回答が可能な質問のことです。例えば「この商品を使っていただいて、どう思われましたか?」のような質問が、オープン・クエスチョンにあたります。顧客の意思を引き出したいときなどに有効な質問です。
一方、クローズド・クエスチョンは「ご予算はいくらですか?」など具体的な回答を求める質問です。商談のステップを進める際に有効で、質問される側の意思を固める効果も期待できます。
オープン・クエスチョンとクローズド・クエスチョンの特徴を理解し、状況により使い分けるようにしましょう。詳しくは「 オープン・クエスチョンとクローズド・クエスチョンを活用した営業術 」をご覧ください。
営業テクニック習得の狙いは「顧客との良好な関係構築」
営業担当者には、見込み客の発掘から契約、アフターフォローのすべての段階で、高度な交渉能力が求められます。基本的な営業テクニックを習得して実践することで、各担当者のスキルが向上するとともに、営業部門全体のレベルアップが可能です。
また営業テクニックに磨きをかけると、見込み客に提供できる価値が高まり、成約に至る確率も格段に上がるでしょう。
だからこそ、営業担当者は基礎的な営業テクニックを身につけて自分の弱みを克服し、強みを伸ばし続けることが欠かせません。
そして個々の営業担当者が能力を伸び、組織として営業力が高まると、SFAなどの支援ツールもより有効に活用できます。ぜひ部門・組織が先導して、営業担当者がレベルアップする環境を作りましょう。