📋 この記事の要点
- CRM連携とは、CRMと他の業務システムを接続し、データの共有や処理を効率化する仕組み
- MA・SFA・カスタマーサポート・名刺管理・会計など、多くの業務システムがCRMと連携できる
- 二重入力の解消から部門間の情報共有、個別対応、成果分析までが一貫して進められる
- AI活用が広がる昨今、連携によるデータの統合は分析や提案の精度を左右する土台となる
- 連携手法は標準コネクター・iPaaS・API開発の3つで、技術力とコストに応じて選ぶ
- 進め方は5ステップで、データ整備・権限設計・運用ルールの整備まで含めて設計することが重要
この記事は19分で読めます

「MAはマーケティング部門、SFAは営業部門、問い合わせ管理はカスタマーサポート部門」のように、部門ごとに最適なツールを選んできた結果、同じ顧客の情報が複数の場所に分かれてしまっている企業も多いのではないでしょうか。
初めてのCRM導入ポイント解説
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CRM連携とは、CRMと他の業務システムを接続し、データの共有・同期や処理の自動化を行う仕組みのことです。分散した顧客情報をCRMに集約し、二重入力や情報の不一致を解消する取り組みの基盤となります。
本記事では、CRMと連携できるツールの種類やメリット、3つの連携手法と進め方の手順、注意点までを解説します。
CRM連携とは

CRM連携とは、CRMと他の業務システムを接続し、データの共有・同期や、システム間の処理の自動化を行う仕組みのことです。実現できることは、大きく下記の2つです。
- データの同期
- 業務自動化
前者は複数のツール間で情報を一致させ、後者は登録や転記といった手作業を減らします。例えば、MAツールのフォームから登録された見込み客情報が自動でCRMに反映され、そのままSFAの案件情報として引き継がれる、などです。
接続の形は相互同期だけではなく、目的に応じて次の5つのパターンがあります。
| 連携のパターン | 内容 | 主な用途 |
|---|---|---|
|
他ツールからCRMへ送る |
フォームや名刺のデータをCRMに登録する |
見込み客情報の集約 |
|
CRMから他ツールへ送る |
CRMの顧客リストをMAツールへ渡す |
施策の実行 |
|
双方向で同期する |
どちらで更新しても両方の内容が一致する |
最新情報の維持 |
|
通知だけを送る |
CRMにデータは保存せず、更新等の通知をチャットへ送る |
状況把握の迅速化 |
|
必要なときにデータを参照する |
在庫や請求の状況をCRMの画面から呼び出す |
在庫・請求状況の確認 |
CRM連携の設計では、連携する項目に加えて、更新のタイミングと方向(片方向/双方向)を決めることが大切です。加えて、項目ごとの正本(正式な管理元)と競合時の優先順位を定めることで、古い情報による上書きやデータの不整合を防げます。
データの分断(サイロ化)が起こる背景
部門ごとに最適なツールを選んだ結果、同じ顧客の情報が複数のツールに別々に存在する状態が生まれます。これが「データのサイロ化」です。
サイロ化した状態では、次のような支障が生じます。
- 二重入力や手作業が増える
- 顧客情報が分散し最新データが判断できない
- 部門間の共有漏れにより営業の機会損失を生みやすい
- 担当者が過去の対応履歴を確認できず顧客対応の質が低下する
- データが揃わず正確な分析や経営判断が難しくなる
サイロ化は、ツール導入の失敗だけでなく、部門ごとに異なるツールや運用が定着した結果として生じることがあります。
AI活用を見据えた顧客データの整備
AIによる分析や提案の精度は、参照できるデータの範囲に大きく左右されます。顧客情報がツールごとに分かれている場合、AIが参照できるのは各ツールの中にある断片的な情報です。CRMにデータが集約されていれば、マーケティングの行動履歴、商談の経緯、問い合わせの内容を横断して解釈できます。
例えば、「関心が高い顧客」の抽出でも、Webの閲覧履歴だけを見た場合と、商談経緯まで踏まえた場合とでは結果が変わるはずです。
扱うツールやチャネルが増えるほどデータがサイロ化していくため、集約先をCRMに定めて整備しておくと、AI活用の選択肢を広げやすくなります。
CRMと連携できる主なツール【課題別】
CRMと連携できるツールは幅広く、どこから着手するかは解消したい課題によって決まります。代表的な課題と対応する連携を整理したうえで、ツールごとに同期されるデータと実現できることを解説します。
| 連携するツール | CRMと同期される主なデータ | 解決したい課題 |
|---|---|---|
|
MAツール |
|
見込み客の行動履歴が共有されず、商談が手探りになる |
|
SFA・営業支援ツール |
|
商談情報が個人にとどまり、施策の成果を検証できない。営業が属人化している |
|
CMS |
|
フォームの内容を手作業で転記しており対応が遅れる。Web上の行動データをもっと活用したい |
|
カスタマーサポートツール |
|
過去の対応状況がわからず同じ説明を繰り返してしまう。購入後の問い合わせ状況が見えず追加提案の機会を逃す |
|
CTI |
|
着信のたびに状況を調べ直し、顧客を待たせてしまう |
|
名刺管理ツール |
|
顧客情報の登録が属人化し、古い情報のまま残る |
|
ビジネスチャット |
|
案件の動きに気づくのが遅れ、対応が後手に回る |
|
会計・請求管理ツール |
|
受注から請求までの転記によって、誤請求が起こりやすい。会計業務に時間がかかっている |
|
ERP |
|
納期や在庫の確認に時間がかかり、回答が遅れる |
複数の課題に当てはまる場合は、発生している手作業の量が多いものから着手するのがおすすめです。
MAツール
MAツールとは、見込み客の創出から醸成までを自動化するツールのことです。
【同期される主なデータ】
- フォーム経由の見込み客情報
- Webページの閲覧履歴
- メールの開封
- クリック状況
MAツールと連携すれば、マーケティング活動で蓄積した行動履歴が営業側の顧客レコードに紐づき、接触した時点で相手の関心を把握できます。例えば、資料をダウンロードした見込み客の閲覧ページが営業の画面に表示され、初回商談の切り口を用意できます。
見込み客の行動履歴が営業に共有されず、商談が手探りになっている企業にとって、優先度の高い連携です。
SFA・営業支援ツール
SFAとは、案件情報や商談の進捗など、営業活動を記録・管理するツールのことです。
【同期される主なデータ】
- 商談情報
- 活動履歴
- 受注実績
SFAとの連携によって、商談情報の転記が不要になり、営業担当者の入力負荷と記録の抜け漏れを減らせます。例えば、どの施策から生まれた見込み客が受注に至ったかを、一連のデータとして追跡できます。
商談や受注の情報が個人にとどまり、施策の成果を検証できていない場合や、営業担当者ごとの受注率に大きく差がある場合などは、この連携が突破口になるでしょう。
CMS
CMSとは、専門知識がなくてもWebサイトやブログを構築・更新できるシステムのことです。代表的なCMSはWordPressです。
【同期される主なデータ】
- フォームの入力内容
- 閲覧ページ
- 資料請求などのコンバージョン履歴
CMSとCRMを連携することで、フォーム送信などで識別された訪問者のWebサイト上での行動がCRMに蓄積され、どのコンテンツが最初の接点になったかを追えます。例えば、問い合わせフォームから送信された内容が、転記なしでCRM上の顧客情報として登録される、などです。
フォームの内容を手作業で転記しており対応が遅れがちな企業には、効果が見えやすい連携です。また、CMS上での行動データをさらにマーケティング活動に活かしたいといった企業にも向いています。
カスタマーサポートツール
カスタマーサポートツールとは、問い合わせの受付から対応状況の管理までを一元化するツールのことです。
【同期される主なデータ】
- 問い合わせ履歴
- 対応状況
- 満足度
CRMと連携することで、購入後の対応履歴が顧客情報に蓄積され、部門や窓口が変わっても同じ前提でやり取りできます。電話とメールで担当者が変わっても、顧客が経緯を一から説明し直す必要がありません。
窓口や担当者が変わるたびに顧客へ同じ説明をさせている企業ほど、連携の効果を実感しやすいでしょう。
さらに、蓄積された履歴は追加提案や解約予兆の把握にも活用できます。
CTI
CTIとは、電話とコンピューターを連携させ、着信や発信をシステム上で扱えるようにする仕組みのことです。
【同期される主なデータ】
- 着信・発信履歴
- 通話時間
- 通話メモ
CTIとCRMを連携させることで、着信した時点で相手の顧客情報が画面に表示され、過去のやり取りを踏まえた対応ができます。
着信のたびに顧客情報や過去の対応履歴を確認している企業にとって、導入効果の大きい連携です。とくに、複数の担当者で対応するコールセンターを持つ企業では、対応時間の短縮や応対品質の均一化が期待できるでしょう。
名刺管理ツール
名刺管理ツールとは、受け取った名刺をデータ化し、人物や企業の情報として蓄積するツールのことです。
【同期される主なデータ】
- 氏名
- 役職
- 企業情報
- 接触日
展示会や商談で受け取った名刺がデータ化され、そのままCRM上の顧客情報として登録されます。例えば、同じ相手から新しい名刺を受け取ると、名刺管理ツール側で同一人物として照合され、更新後の部署や役職がCRMにも反映されます。手入力を挟まない分、接点の記録が担当者任せにならないのも利点です。
顧客情報の登録や更新が属人化し、古い情報のまま残っている企業は、まずここから見直すとよいでしょう。
ビジネスチャット
ビジネスチャットは、社内のやり取りをリアルタイムに行うコミュニケーションツールです。
【同期される主なデータ】
- CRM上のイベント通知
データを蓄積する連携ではなく、情報に気づく速度を上げる連携である点が他と異なります。例えば、受注フェーズに進んだ案件をチャンネルへ自動通知することで、関係部門が同時に状況を把握できる環境を作る、などです。
案件の動きに気づくのが遅れ、対応が後手に回っている企業に向く、比較的手軽な連携です。
会計・請求管理ツール
会計・請求管理ツールとは、見積や請求、入金の管理といった経理業務を扱うツールのことです。
【同期される主なデータ】
- 見積もり
- 請求
- 入金情報
受注情報や請求ステータスを連携することで、営業と管理部門の転記作業や二重入力を減らせます。ただし、請求書の発行や会計処理そのものは、会計・請求管理ツール側で行うのが一般的です。
受注から請求までの転記が多く、誤請求が起こりやすい企業では、連携の効果が見えやすいでしょう。
ERP
ERPとは、会計や在庫、生産、人事といった基幹業務を1つのシステムで統合的に管理する仕組みのことです。会計・請求管理ツールが経理業務に特化しているのに対し、ERPは部門をまたぐ基幹データを扱う点が異なります。
【同期される主なデータ】
- 受注・出荷状況
- 在庫
- 原価
ERP側の情報をCRMから参照できるようにすると、営業が顧客対応に必要な情報を確認しやすくなります。一方で、在庫管理や会計処理そのものはERP側で行うのが前提です。
納期や在庫の確認に時間がかかり、顧客への回答が遅れている企業にとって、検討する価値のある連携です。
なお、ERPは標準コネクターが用意されていない場合もあり、後述するiPaaSやAPI開発が選択肢になります。
その他
上記以外にも、次のようなツールがCRMと連携できます。
- AIツール(Claudeなど):CRM上の顧客データを参照させ、要約やメール文面の下書きに活用する
- アクセス解析ツール(Googleアナリティクスなど):Web上の行動データを顧客情報と結びつける
- カレンダー・日程調整ツール(Googleカレンダーなど):商談の予定と実施記録を自動で残す
- ウェビナーツール(Zoomなど):参加申込や視聴状況を見込み客の情報として蓄積する
- 決済システム(Stripeなど):購入や課金の履歴を顧客情報に紐づける
- 電子契約システム(Docusignなど):契約締結の状況を案件情報と同期する
以上が、CRMと連携できる代表的なツールです。なお、こうした連携をそもそも設計しなくて済むアプローチとして、マーケティング・営業・カスタマーサービス・CMS機能を最初から統合したプラットフォームを選ぶという方法もあります。
CRM連携で得られる5つのメリット
CRM連携により各システムをつないだ結果、日々の業務はどのように変わるのでしょうか。手作業の削減といった直接的な効果から、顧客体験の向上やAI活用の基盤づくりまで、CRM連携で得られる主なメリットを5つ紹介します。
手作業の二重入力を解消できる
CRMと各ツールの連携を適切に設定すれば、同じ顧客情報を複数のツールへ入力する作業を減らし、転記時のミスも抑えやすくなります。例えば、商談化までに3か所へ入力していた企業情報を、CRMへの1回の入力で各ツールに反映する運用が可能です。
入力工数が削減できるだけでなく、各ツールで同じ情報を参照しやすくなり、データそのものの信頼性も上がります。
部門間で顧客情報をリアルタイムに共有できる
マーケティング、営業、カスタマーサポートが同じ顧客レコードを参照できる状態になります。サポートが対応中の顧客に営業が別件で連絡してしまう、といった行き違いも起こりにくくなります。
部門間で情報を受け渡す作業自体がなくなり、同じ情報を同時に見る運用へ変わる点が大きな違いです。
顧客の行動履歴に基づく個別対応ができる
閲覧ページ、メールへの反応、問い合わせ履歴が1つのレコードに集まり、相手の関心に沿った提案ができます。特定の製品ページを繰り返し閲覧している見込み客へ、関連する導入事例を届けるといった対応も可能です。
顧客の側から見れば、どの部門と接しても同じ前提で話が進むため、状況を説明し直す手間がなくなります。
見込み客創出から売上までを一貫して分析できる
見込み客の創出から受注までが同じデータでつながり、どの接点が成果に寄与したかを分析しやすくなります。複数のツールからレポートを出力して手作業で突き合わせる負担を減らせるため、施策の振り返りや改善に時間を使いやすくなります。検証から改善までを同じ基盤の上で回せるため、施策の見直しが早くなります。
AIによる分析や提案の精度を高められる
部門を横断して顧客データが集約されると、AIが顧客の背景にあるコンテキスト(文脈)まで踏まえて解釈できるようになります。単なる行動ログの積み重ねではなく、過去の商談や問い合わせの経緯まで含めた解釈が可能です。
なお、データの重複や欠損が多いとAIの出力にも影響するため、連携時のデータ整備が精度を支える前提となります。
CRM連携の主な手法3つ
連携手法は大きく3つに分かれ、必要な技術力もコストも異なります。プログラミングの知識がなくても始められる方法があるため、まず全体像を比較したうえで、それぞれの特徴と適したケースを確認しておきましょう。
| 標準コネクター | iPaaS | API開発 | |
|---|---|---|---|
|
必要なスキル |
専門的な開発スキルは不要(設定のみ) |
基本操作の習得 |
プログラミング知識 |
|
導入までの期間 |
短い |
中程度 |
中長期 |
|
対応範囲 |
提供されている範囲内 |
複数ツールを横断 |
自由に設計可能 |
|
主なコスト |
ツールの利用料に含まれる |
サービスの月額利用料 |
開発費と保守費 |
なお、「API連携」の実現方法には、提供元や連携サービスが用意した接続機能を利用する方法と、自社でAPIを呼び出すプログラムを開発する方法の大きく2通りがあります。本記事では、前者を「標準コネクター」、後者を「API開発」として分けて解説します。
標準コネクターによる連携
標準コネクターとは、ツールの提供元があらかじめ用意した連携機能を、画面上の設定だけで有効化する方法です。「API連携機能」と表記されることが多いですが、提供元がAPI(※)を使って作った接続をそのまま利用する点は変わりません。
導入が早く保守の負担も小さい一方、同期できる項目は提供されている範囲に限られます。主要なSaaS同士の一般的なデータ同期を短期間で実現したい場合に適した手法です。
※API:ソフトウェア同士が機能やデータをやり取りするための接続口のこと
iPaaSによる連携
iPaaS(Integration Platform as a Service)とは、複数のクラウドサービスを仲介して連携させるサービスのことです。同種の技術には、EAI(社内システムをリアルタイムに統合する仕組み)やETL(分析用にデータを集約する仕組み)があります。iPaaSは、これらをクラウド上で扱えるようにしたものです。
オンプレミスの基幹システムが中心ならEAI、クラウドやSaaSが中心ならiPaaSが選ばれやすい傾向にあります。
標準コネクターが用意されていない組み合わせや、条件分岐を含む処理にも対応できます。その分、サービスの利用料が継続的に発生する点は考慮しましょう。
APIを用いた個別開発
APIを用いた個別開発とは、標準コネクターや既成の連携機能を使わず、API仕様をもとに自社で独自に開発する方法です。具体的には、どのAPIをいつ呼び出すか、どのデータを変換・マッピングするか、エラー時にどうリトライ・通知するかまでを自前で設計・実装します。
自社業務に合わせた自由な連携フローや独自の変換を実現できるのが強みです。一方で、初期の開発工数に加え、API仕様変更への追随や認証・レート制限の管理、監視・ログ運用といった継続的な保守も発生します。
基幹系や独自開発のシステムをつなぐ場合は、この手法が選択肢に入ります。
CRM連携を進める5つのステップ
連携は、対象を広げるほど設計と検証の負荷が増えます。解消したい課題を起点に範囲を絞り、次の5つのステップで進めることで、成果を確かめながら着実に広げられます。
| ステップ | 主な作業 | 決めておくこと |
|---|---|---|
|
1. 課題の特定 |
手作業や情報の分断が起きている業務を洗い出す |
対象業務と効果を測る指標 |
|
2. 範囲の設計 |
同期する項目と更新の方向を決める |
項目ごとの正となるツール |
|
3. 手法の選定 |
標準コネクターの有無を公式サイトで確認する |
必要な技術力とコストの上限 |
|
4. 整備と検証 |
名寄せを行い、少量のデータで動作を確認する |
想定どおり反映される条件 |
|
5. 運用と拡大 |
運用ルールを共有し、対象を段階的に広げる |
見直しの頻度と担当者 |
1. 解消したい課題と対象データを決める
最初に決めるのは「どの業務のどの手作業をなくすか」という点です。目的が曖昧なまま連携範囲を広げると、設計も検証も複雑になりがちです。
対象が決まったら、必要なデータ項目を洗い出し、入力時間や対応時間など効果を測る指標もあわせて設定します。
2. 連携するツールと同期の方向を決める
項目ごとに、どのツールを正式な管理元(マスター)とするかを決めます 。あわせて、片方向か双方向か、どのタイミングで更新するか、更新が競合した場合にどちらを優先するかまで整理しましょう。
この段階で、正式な管理元、更新方向、更新タイミング、競合時の優先順位を決めておくと、運用後のデータの食い違いを防ぎやすくなります。
3. 連携手法を選ぶ
先述した「標準コネクター」「iPaaS」「API開発」のうち、どの連携手法が良いかを選びます。
まずは、使用中のツール同士に標準コネクターが用意されているかを、提供元の公式サイトで確認しましょう。用意されている場合は、公式の手順に沿って設定・検証を進めます。
標準コネクターが用意されていない場合は、iPaaS側に対象ツールのコネクターや接続機能があるかを確認します。複数のツールをまたぐ処理や、条件分岐、データ変換、エラー処理などが必要な場合は、iPaaSを検討しましょう。iPaaSの機能では要件を満たせない場合や、大量データ、複雑な業務ロジック、厳密なエラー制御、強いセキュリティ要件などがある場合は、API開発を検討します。
4. データを整備してテスト環境で検証する
連携前に、重複レコードの名寄せと表記ゆれの修正を済ませておきます。整備の順序を逆にすると、重複したデータがそのまま他のツールへ広がってしまうためです。
その後、少量のデータで実際に同期し、想定どおりの項目が想定どおりの形で反映されるかを確認します。
5. 小さく始めて運用ルールとともに広げる
最初は1つの連携から始め、効果を確認したうえで次の範囲へ広げていきましょう。決めたマスターや更新方向はドキュメント化し、関係部門で共有しておきます。
運用開始後は、連携エラーや更新漏れの監視が必要です。また、ツールの仕様変更や組織変更に合わせて、連携中のアプリ、項目、権限、設定を定期的に棚卸しします。
CRM連携における注意点と対策
連携は設定して終わりではなく、運用が始まってから見えてくる課題もあります。あらかじめ想定しておけば対処できるため、着手前に4つの注意点と対策を押さえておくと安心です。
データの重複や表記ゆれが生じやすい
同一の企業が「株式会社◯◯」「(株)◯◯」など異なる表記で登録され、別のレコードとして扱われることがあります。
対策として、連携前に名寄せを行い、重複判定の基準(メールアドレスやドメインなど)を決めておくと良いでしょう。
運用ルールの整備に工数がかかる
どのツールの値を正とするか、更新の方向をどうするかを決めないまま連携すると、古い情報で上書きされることがあります。
項目ごとにマスターとなるツールを定め、ドキュメント化して関係部門で共有しておくのが有効です。ツールの仕様変更に合わせて設定を見直す運用もあわせて決めておきます。
権限設計とセキュリティ対策が必要
連携によって、これまで部門内に閉じていた顧客情報を横断的に参照できる状態になります。
対策として、役割ごとに閲覧・編集の権限を設計し、連携アプリの認証情報を管理する担当者を明確にしておくと安心です。個人情報を扱う範囲が広がるため、社内規程との整合もあわせて確認しておきましょう。
連携範囲によってコストが変動する
手法によって、初期費用、月額利用料、開発・保守費など発生する費用の種類が異なります。
全ツールを一度につなぐのではなく、効果が見込める範囲から段階的に広げるのが基本です。先に効果が確認できた連携から段階的に広げていけば、投資判断の根拠も社内で共有しやすくなるでしょう。
CRM連携は顧客データ活用の基盤づくり
CRM連携の本質は、単なる業務効率化ではありません。部門の垣根を越えて顧客を「ひとりの相手」として理解し、一貫した対応ができる状態をつくることにあります。
成果を左右するのは、手法の高度さや構築の複雑さではなく、解消したい業務課題を起点に「小さく始められるかどうか」です。手間のかかる連携設計に追われるのではなく、本来の目的である「顧客理解」に集中できる環境をつくることが大切です。
こうした「小さく始めて効果を検証する」というステップと相性が良いのが、CRMをプラットフォームとして構築されたツールです。例えばHubSpotの場合、CRMを土台に、MA(Marketing Hub)・SFA(Sales Hub)・カスタマーサービスツール(Service Hub)・CMS(Content Hub)などがCRMを共通の土台として動く構成になっており、ツールをまたいだ連携設定をしなくても、顧客データが最初から一元化されています。部門間でデータをつなぐことに工数をかけるのではなく、集まったデータをどう顧客理解に活かすかに集中することが、CRM連携の本来の目的です。
CRM連携に関するよくある質問
プログラミングの知識がなくてもCRM連携はできますか?
多くのケースで可能です。主要なSaaS同士であれば、提供元が用意した標準コネクターを画面上の設定だけで有効化できます。プログラミングの知識が必要になるのは、既製の連携手段が用意されていない基幹システムや、独自開発のシステムをつなぐ場合です。
AI活用のためにCRM連携は必要ですか?
AI機能はツール単体でも利用できますが、参照できるデータの範囲が広いほど出力の妥当性は高まります。AI検索経由で獲得した見込み客の行動を追跡する場合も、流入後のデータをCRM側で受け止める設計が前提になります。
データ連携によるセキュリティリスクはありませんか?
リスクはゼロではありません。ただし、主要なSaaSツールの多くは暗号化通信やOAuthなどの標準的な認証プロトコルに対応しており、こうしたツールを選ぶことでリスクは最小限に抑えられます。
技術面以上に重要なのは、アクセス権限の設計です。誰がどのデータを参照できるかを部門ごとに定義し、必要最小限の範囲で連携する運用がリスクの低減につながります。あわせて、管理者が連携中のアプリを定期的に棚卸しし、使っていない接続を解除する体制を整えておくと安心です。
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