営業マニュアルの作成には、営業の質の底上げや新人教育の効率化など多くのメリットがあります。とくに、担当者によってスキルに差があることに課題を感じている営業部門にとっては、効果的な取り組みです。


時短実現のためのヒント!業務効率化チェックシートとツール選定のコツ
自社に必要な業務効率化の検討ができるチェックシート
- 業務効率化チェックシート
- 業務効率化の効果検証表
- 代表的な業務効率化リスト
- 主な業務効率化ツールの種類
今すぐダウンロードする
全てのフィールドが必須です。

この記事では、営業マニュアルの作成手順と効果的な作成方法をわかりやすく解説します。形式だけのマニュアルにならないような運用方法も紹介しているため、ぜひチームの営業力の底上げにお役立てください。
営業マニュアルとは
営業マニュアルとは、営業活動の手順やルールをわかりやすくまとめた資料のことです。営業担当者が身につけておきたいビジネススキルから、自社の営業プロセスや商品・サービスの詳細まで、新しく入社した社員でもわかりやすい形で記載します。
営業マニュアルの必要性
営業マニュアルがないと、若手の社員は商談の進め方がわからず、逐一先輩や上司に確認をとる必要が出てきます。自己判断でミスをしてしまうこともあるでしょう。営業経験が豊富な社員も、経験や勘に頼った営業活動を行うことになり、パフォーマンスが安定しづらくなります。
マニュアルに沿って営業活動を進めることで次にとるべきアクションが明確になり、業務の標準化が可能です。
営業マニュアルのフォーマット
営業マニュアルの形式には、大きく分けて、紙・電子データ・動画の3種類があります。作りやすさ・使いやすさ・更新のしやすさに注目して、適切なフォーマットを選びましょう。
紙媒体
紙に印刷した営業マニュアルを冊子などにして保管する方法です。 PCやネット環境がない場所でも携帯して持ち運べるのがメリットですが、紛失のリスクがある点に注意しなければなりません。
また、内容を更新する際に手間とコストがかかる点もデメリットのひとつです。細部のみの改訂であっても、ページごと印刷して差し替えるか、直接書きこんで修正する作業が必要になります。紙のマニュアルを作る際は、ページ単位で入れ替えがしやすいよう、ファイルやバインダーで綴じるのがおすすめです。
電子データ
電子データの営業マニュアルは、 PCやスマートフォン、タブレットなどで場所を問わずにアクセスが可能で、紙のマニュアルに比べて更新も容易です。
電子データの営業マニュアルは、主に次の3つの方法で作成できます。
- WordやPowerPointなどのデスクトップアプリで作成する
- Google ドキュメントやGoogle スライドなどのクラウドアプリで作成する
- HTML形式で作成してWebサイトのように社内に公開する
Webブラウザで閲覧や編集、コメントなどが可能なマニュアルは、複数名での作成に向いています。公開時には、利用者が誤って内容を変更しないように「閲覧のみ」などの権限設定を行いましょう。
動画
文章では表現しづらいセールストークをマニュアル化するには、動画がおすすめです。ジェスチャーや言葉のニュアンスなどの細かい部分まで伝えることができます。
スマートフォンで撮影や簡単な編集を行うと、手間をかけずにマニュアルを作成できます。ただし、テキストのマニュアルに比べて容量が大きいため、インターネット環境によっては通信速度が遅くなる可能性があります。長尺の動画はストレージを圧迫する可能性がある点にも注意が必要です。
営業マニュアルを作成するメリット
営業マニュアルは、新入社員や引き継ぎにかかわる担当者はもちろん、営業部全体にプラスの効果をもたらします。主なメリットは次の4つです。
教育や引き継ぎの業務を効率化できる
業務内容を網羅したマニュアルをもとに教育や引き継ぎを行うと、一から説明する必要がなくなるため教育業務が効率化できます。必要な項目の抜け漏れがなくなることもメリットです。
指導を受ける側も、営業マニュアルを何度も見返すことで仕事を覚えやすくなります。一通りの業務をこなせるようになったあとも、わからないところがあればマニュアルで確認できるため、先輩社員に質問したり、1人で悩んだりする時間が減らせるでしょう。
コストを削減できる
教育担当者は、通常業務を行いながら教育業務も担当するため、残業をしなければならないこともあるでしょう。営業マニュアルによって教育の業務を効率化すると、残業代などのコストを削減できます。
新入社員の独り立ちを早めることにもつながり、企業の資産である「ヒト」というリソースを効果的に活用できるなどのメリットもあります。
営業の質が安定する
営業は、成果が個人のスキルに依存しやすい仕事です。すべての営業担当者がマニュアルを活用すると、業務が標準化されて顧客体験が向上します。一定水準の営業の質を保てることで、売上も徐々に安定してくるでしょう。
また、マニュアルをもとに営業手順の認識をそろえることで、担当者の不在時の対応や異動・離職に伴う引き継ぎもスムーズに行うことが可能です。
社員の定着率を高められる
営業職は、ノルマや長時間勤務などが理由で離職が起きやすい職種といわれています。営業マニュアルによって基礎的な教育体制が整うことで、経験が浅い社員でも効率的に実績をあげやすくなり、早期離職を防止する効果が期待できます。
また、営業マニュアルは社員のストレス軽減とモチベーション維持にも効果的です。過去の事例や経験を社内のノウハウとして集約しておくことで、実績につながるだけでなく、問題に直面した際に解決の糸口をつかみやすくなります。
営業マニュアルに入れるべき項目・内容
営業マニュアルに含めたい内容は次の通りです。それぞれ項目例とあわせて詳しく解説します。
- 営業の基礎知識
- 扱う商材の情報
- 顧客理解のための情報
- トークスクリプト
- トラブルやクレームの対応方法
営業の基礎知識
まずは、営業活動の前提となる、基本的な知識やビジネスマナーを記載します。
導入
具体的な内容に入る前置きとして、営業マニュアルの意義や使い方をまとめた導入部分を作成しましょう。
- マニュアル作成のねらい・背景
- マニュアルの対象者
- マニュアルの保管・管理ルール
営業マニュアルは社外秘の情報として取り扱います。情報漏えいを防止するため、管理方法についても事前にルールを定めておくことが大切です。
ビジネスマナー
社会人経験のない新卒社員が使うことを想定している場合は、一般的なビジネスマナーも記載しておくと良いでしょう。
- 身だしなみ(服装・髪型・メイクなど)
- 挨拶・名刺交換の方法
- メール・電話のマナー
- 席次・着座のマナー
身だしなみの目安は業界によって異なるため、社内のルールに合わせて内容を決定してください。
会社概要
主に新しく入社した社員に向けて、自社について簡単な説明を記載します。前提知識があることで、商材や営業スタイルへの理解も深まるでしょう。
- 会社概要(設立年・従業員数など)
- 事業内容
- ミッション・ビジョン
- 業界の動向
- 競合情報
ツールの使い方
顧客情報や案件進捗の管理にCRM(顧客関係管理)ツールやSFA(営業支援システム)などのツールを使用している場合は、各ツールの解説ページも作成しましょう。
- ツール一覧
- 各ツールの登録方法
- 各ツールの使い方・利用ルール
業務で使用しているチャットやメール、オンライン会議ツールなどの利用ルールも記載します。
営業の手順
ここからは、具体的な営業活動の内容になります。まずは、リードの創出から成約までの営業プロセスと、各プロセスにおける業務内容をまとめましょう。営業活動の流れが具体的にイメージできるよう、できるだけ細分化して書き出すのがポイントです。
次の内容を参考に、自社の営業プロセスに合わせて調整してください。
- リード創出
- 見込み客の醸成
- アポイントメント創出
- 見積もり作成
- 初回商談
- 提案
- クロージング
- 契約
- 契約後のフォローアップ
- アップセル・クロスセル
トークスクリプト
営業プロセスに沿ったトークスクリプトも用意しましょう。具体的な会話例があることで、経験が浅い営業担当者でも何を話すべきかがわかり、自信を持って商談に臨めるようになります。シーンを問わず使えるよう、シチュエーションや見込み客の関心度、反応などに分けて複数のパターンを作成しておくと便利です。
また、トークスクリプトはチーム全体で運用していくと効果的にブラッシュアップできます。個々の営業担当者が持っているノウハウを集約できると、さらに実践的なマニュアルになるでしょう。
扱う商材の情報
商材に関する次のような情報を盛り込むと、アプローチ方法を検討するのに役立ちます。
- 種類
- 特徴・機能
- ベネフィット
- 価格・料金体系
- 利用シーン
- 導入事例
- 競合との比較
- よくある質問
マニュアルを通じて、営業チーム全員が自社の商材について深く理解していると、見込み客への効果的な提案に役立ちます。商材の強みだけでなく、弱みも知ったうえでデメリットを克服するような提案ができると、成約率も高まるでしょう。
顧客理解のための情報
顧客に関する情報は、営業活動の起点となります。これまでに受注した実際の顧客情報をもとに、次のような内容をマニュアルに記載しましょう。失注した場合の情報もまとめておくと改善に役立ちます。
- ターゲット
- ペルソナ
- カスタマージャーニーマップ
- 主な失注理由
- 課題・ニーズ別の購入事例
自社の顧客の傾向をつかむことでニーズの理解につながり、適切な提案が可能になります。
トラブルやクレームの対応方法
トラブルはクレームの対応方法も、マニュアルに盛り込んでおきたい内容のひとつです。具体的には、次のような項目があげられます。
- クレーム・トラブル処理の基本方針
- 対応手順・エスカレーションフロー
- 過去事例(原因・対応・結果)
クレームやトラブル処理の基本方針をマニュアルに記載しておくと、イレギュラーな事態が発生した際も、あわてず適切な対応ができます。対応手順やエスカレーションフロー(担当者では対応できない案件を上司に引き継ぐこと)なども具体的に記載しましょう。
過去の事例をあわせて蓄積・共有することで、再発防止にも役立つでしょう。
【準備編】営業マニュアルの作り方
営業マニュアルを作る際は、事前に運用の方針を決めてから着手するとスムーズです。まずは次の手順で準備を行いましょう。
1. 目的や利用者を明確にする
はじめに、誰が・どのような目的で使うための営業マニュアルを作るのかを明確にします。
新しく入社した社員が基本的な仕事を覚えるためのマニュアルと、営業部全体の生産性向上を目的としたマニュアルでは、必要な内容や表現が変わってきます。新卒社員の研修に使うマニュアルであれば、専門用語を避けて基礎的なビジネスマナーのページに比重を置くなど、目的を明確にすることで記載すべき内容が定まります。
2. マニュアルの内容を決める
続いて、マニュアルに必要な内容を検討します。次の項目を基本として、目的に合わせて内容を追加しましょう。
- 営業の基礎知識
- 扱う商材の情報
- 顧客理解のための情報
- トークスクリプト
- トラブルやクレームの対応方法
いきなり詳細を書き出すことはせず、まずは目次を並べた概要を作成します。目次ができた段階で、ベテランの営業担当者やマネージャーなど業務に詳しい人のチェックを受けて、抜け漏れがないかどうか確認しましょう。
3. フォーマットや保管場所を決める
営業マニュアルは、利用者がスムーズにアクセスできることが大切です。まずは紙に印刷するかデータで共有するかを決め、その後フォーマットに応じた保管場所を検討しましょう。
紙媒体の場合は、ハンドブックや冊子にして各担当者に配るか、ファイルに綴じてオフィスの共用部に置いておくとすぐに確認できます。データの場合はPDF化して配布するほか、Google ドライブやDropboxなどのクラウドストレージサービスに格納する方法があります。営業担当者は外出先からマニュアルにアクセスすることも多いため、スマホ対応のクラウドストレージサービスを利用すると便利です。
4. 作成スケジュールを設定する
通常業務に追われて営業マニュアルの作成が先延ばしにならないよう、目安となるスケジュールをあらかじめ設定しておくことも大切です。完成させたい日から逆算して無理のないスケジュールを立ててください。
作成担当が複数名いる場合は、ここで「誰がどのページを担当するか」というおおまかな割り振りも行います。遅延や抜け漏れが発見しやすいよう、ガントチャートやToDoリストを活用して、スケジュールとタスクを管理しましょう。
【作成・運用編】営業マニュアルの作り方
マニュアルの準備ができたら、実際の作成に取り掛かります。
1. 構成を固める
準備段階で決めた項目を細分化し、見出し・小見出しを書き出して構成を固めます。例えば、「初回商談」のフローは次のように分解できます。
- 挨拶
- 自己紹介・名刺交換
- アイスブレイク
- 商談の目的の確認
- ヒアリング
- 課題の整理
- 解決方法の提案(商材の概要説明)
- 商談の設定
- お礼メールの送付
全体像を固めてから詳細に落とし込むことで、あとから大幅な修正が発生することを防げます。こまかな項目まで洗い出せたら再度業務に詳しい人にチェックしてもらい、抜け漏れがないか見直しましょう。
2. 本文を考える
見出しがそろったら、手順や注意点などを文章にまとめます。誰が読んでも内容が正しく伝わるように、簡潔でシンプルな表現を心がけましょう。
一般的でない単語は、言い換えるか注釈を追加します。業務に精通している人ほど専門用語や業界特有の表現に気づきにくいため、若手の社員に理解しにくい部分がないかチェックしてもらうのもおすすめです。
文章だけでなく、箇条書きや図、キャプチャなども活用すると良いでしょう。
時間をかけずに見やすいデザインのマニュアルを作りたい場合は、業務マニュアルのテンプレートやマニュアル作成ツールを利用すると便利です。
3. 運用する
営業マニュアルが完成したら、マニュアルの内容や保管場所、更新ルールを関係者全員に共有します。新しく入社した社員の教育や引き継ぎだけでなく、フィードバックや勉強会などにも積極的に活用しましょう。
例えば、商談やロールプレイング後のフィードバックでは、マネージャーやリーダーが営業マニュアルに沿って、「○○は良かったが○○ができていなかった」のように指導を具体的に行うと効果的です。
4. 効果測定を実施する
作成後は、当初の目的に沿ってマニュアルの運用がされているか、期待した効果が得られているかどうかを振り返ります。運用開始前後の商談化率や成約率を比較するほか、営業部内でアンケートをとってフィードバックしてもらう方法も有効です。
改善点が見つかった場合は、内容を修正して再度共有しましょう。このとき、変更箇所と変更日がわかりやすいように、バージョンを記録して残しておくことも大切です。
マニュアルを活用するための運用ポイント
作成した営業マニュアルは、適切な運用体制を整えることで、さらなる活用が可能です。そのためのポイントを見ていきましょう。
定期的にブラッシュアップを行う
作成したマニュアルは、運用担当者を中心に定期的な見直しを行います。新しく入社する社員が増える4月には、マニュアルのアップデートが完了するようにスケジュール調整を行うと良いでしょう。
入社・異動・退職に伴う引き継ぎが発生した際には、関係者にマニュアルのチェックを依頼すると効果的です。教育担当者や引き継ぎ担当者には、マニュアルの中で現状の業務と乖離があるところや説明が不足しているところを洗い出してもらいます。実際にマニュアルを使って指導や引き継ぎを受けた社員には、手順がわかりづらかった部分などをメモしておいてもらい、改善に役立てます。
マニュアル運用担当者を決めておく
営業マニュアルの作成後、業務プロセスや商品・サービスの仕様などに変更の必要が生じた際は、すぐにマニュアルを更新します。迅速に対応できるよう、あらかじめ営業マニュアルの管理責任者を任命しておくことが大切です。
管理責任者は、項目ごとに分けて複数名設定すると効率的です。マニュアルの管理業務が属人化することを防げるだけでなく、さまざまな人の意見を取り入れることで、マニュアルの内容をさらにブラッシュアップできます。現場の状況を熟知している現役の社員を担当者にすると良いでしょう。
実践的なマニュアルで営業力を強化しよう
営業マニュアルには、新人教育の効率化やノウハウの共有など、さまざまなメリットがあります。作成後も現場のフィードバックをもとにブラッシュアップを続けることで、マニュアルの価値が高まり、営業の質の向上にもつながります。自社に最適化された営業マニュアルを作成して、営業力の強化を目指しましょう。
HubSpotのSales Hubには、営業ノウハウを蓄積できるセールスプレイブック機能が搭載されています。パフォーマンスの高い営業担当者のアクション内容を簡単に分析・共有できるだけでなく、担当者別のプレイブックの使用状況や効果測定も可能です。再現性のある営業活動をマニュアル化することで、営業部門全体のパフォーマンス向上が目指せます。プレイブック機能は、デモで体験可能ですので、ぜひお試しください。