営業戦略は、企業目標を達成するための方針です。

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顧客の求める価値を提供し、目標を達成するためには、営業戦略が欠かせません。しかし、「どうすれば適切な営業方針を立てられるのか」「営業活動のパフォーマンスを改善するにはどのような戦略を立てれば良いのか」など、具体的な方法がわからず悩んでいる方も多いのではないでしょうか。

本記事では、営業戦略の立て方や役立つフレームワーク、成果につながる営業戦略を作るポイントを解説します。

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営業戦略とは

営業戦略とは

ここでは、営業戦略の概念と、混同されがちな「営業戦術」「販売戦略」との違いとあわせて解説します。

これらの違いを的確に捉えていないと、個別の施策に注力してしまい、営業活動全体の目標達成から遠ざかる可能性があります。それぞれの言葉の意味を理解し、成果につながる営業戦略を立てましょう。
 

営業戦略とは目標を達成するための方針のこと

営業戦略とは、企業目標を達成するための、中長期的な方針を指します。人員や時間、予算など限られたリソースの中で効率的に営業活動を行い、売上の増大や、シェア・認知度の拡大などの企業目標を達成するための道筋ともいえるでしょう。

例えば、「売上を前年度より〇%増やす」という営業目標を掲げた場合、次のような戦略を立てます。

  • ターゲット層をどこに設定するか
  • どうやって認知度を高めるか
  • 市場でどうポジショニングをとっていくか

「自社のリソースをどのように使えば効率良く目標を達成できるか」という方針が、営業戦略です。
 

営業戦略と営業戦術の違い

戦略と混同されがちな言葉に「戦術」があります。それぞれの意味は次の通りです。

  • 戦略:特定の目標を達成するための大局的・中長期的な方針
  • 戦術:戦略を達成するための具体的な手法・手段

営業戦略と営業戦術の違い

これを営業に落とし込むと、営業戦略は「企業目標を達成するための中長期的な方針」、営業戦術は「営業戦略で構築した方針を実現するための具体的な手法・手段」といえます。

例えば、「売上を前年度より〇%増やす」という営業目標を達成するには、営業戦術として次の施策が考えられます。

  • Web広告を出稿する
  • チラシを配布する
  • 無料オンライン相談を実施する

戦略がないまま戦術を練っても、成果は一時的なものになる可能性が高く、最初に掲げた目標に近づくことは難しいでしょう。まずは中長期的な視点で戦略を作り、その戦略を実行するための戦術を考えることが重要です。
 

営業戦略と販売戦略の違い

営業戦略と混同されやすい言葉に販売戦略があります。販売戦略とは、自社の商品を誰に対して、どのように提供するかという方針を指します。営業戦略と同様に、目標は「売上目標の達成やシェアの拡大」であるため、大枠の意味は同じです。両者の違いは、ターゲットとする顧客の購買フェーズにあります。

販売はすでに購入意欲の高い顧客に対して購入のサポートをするのに対し、営業は見込み客(リード)の創出が主な担当業務です。そのため、販売に比べると顧客の購入意欲が低い状態になります。

営業戦略と販売戦略を混同していると、顧客の購買フェーズを見極められず、最適なアプローチができない可能性があります。顧客体験の向上のためにも、購買行動を的確に捉え、有効な戦略を立てましょう。

 

営業戦略を設計する重要性

営業戦略が重要なのは、企業が活用できるリソースに限りがあるからです。ここでのリソースとは「ヒト(営業担当者)・モノ(営業ツールなど)・カネ(予算)・時間」を指します。

無限に営業担当者を雇えたり、マーケティング予算をかけられたりするのであれば営業戦略を立てる必要はなく、思いつく施策をすべて実践していけば良いでしょう。

しかし、現実にはそのような企業は存在しません。特に中小企業やスタートアップ企業では、大手企業に比べてリソースに大きな制約があります。

こうした制約の下でできる限り効率的に、費用対効果の高い方法で営業活動を行うための方針が営業戦略です。
 

営業戦略を立てる6つのステップ

営業戦略を立てる6つのステップ

ここからは、営業戦略の立て方について6つのステップに分けて解説します。

営業戦略を立てるにあたり、「購買行動は社内ではなく、顧客の心の中で起きている」という前提の理解が重要です。市場分析だけでなく顧客起点での情報整理も行い、営業戦略に反映させましょう。

次の6ステップについて、それぞれ具体的に解説します。

  1. 目標(KGI)を設定する
  2. 現状分析を行う
  3. 顧客像を明確にする
  4. カスタマージャーニーを設計する
  5. 営業活動の課題を明確にする
  6. アクションプラン(戦術)を設計する
     

1.目標(KGI)を設定する

まずは営業戦略策定の目的である「目標(KGI:経営目標達成指標)」を設定します。目標は、数値を用いて具体的に設定することが重要です。

例えば、「売上を1年後に現在比で〇%アップさせる」「半年後の成約数を〇件にする」など、「何を・いつまでに・どれほど改善させるか」を明確にします。半年?数年程度の中長期的な目標を立てましょう。
 

2.現状分析を行う

目標が決まったら、自社が置かれている状況を分析しましょう。市場や競合企業、顧客などの外部環境、自社の強みや弱みなどの内部環境について洗い出します。現状を把握できれば、対処すべき課題や進むべき方針が定まります。

後述する3C分析やSWOT分析などのフレームワークを活用すれば、自社を取り巻く現状が見えてくるでしょう。
 

3.顧客像を明確にする

ターゲットとする顧客の年齢・性別・地域・職業・家族構成などの属性や特徴を分析し、顧客理解を深めましょう。

自社の商品・サービスを利用する理想的な顧客モデルを「ペルソナ」と呼びます。ペルソナを具体的に設計すると、顧客が何を必要としているか、何を知りたいのかなどの理解が深まり、顧客視点から営業戦略を立案できます。

さらに次のような観点で顧客が抱えるニーズや購買行動を分析すると、より明確な顧客像が見えてくるでしょう。

  • 顧客が自社の商品・サービスに興味を持った経緯
  • 購入に至った理由
  • 購入に至らなかった理由

活用できる分析データがない場合は、顧客へのアンケートやインタビューなどのユーザーヒアリングも検討してみてください。

 

4.カスタマージャーニーを設計する

カスタマージャーニーを設計する

カスタマージャーニーとは、ペルソナが自社の商品・サービスを知り、購入に至るまでのユーザー行動や思考の変化のことです。

認知、興味・関心、比較・検討、行動(購入)の各フェーズのユーザー行動や心理・感情を1枚のマップにまとめることで、その時々に合ったアプローチ方法を整理できます。

設計したカスタマージャーニーを営業やマーケティング、広報など各フェーズに関係する担当者と共有すれば、施策の漏れや認識のズレを防ぐことができ、顧客体験の向上にもつながります。
 

5.営業活動の課題を明確にする

営業活動の課題を明確にする

続いて、営業活動を細分化し、どこに課題があるのかを把握しましょう。細分化されたプロセスをペルソナやカスタマージャーニーとすりあわせ、どのプロセスが顧客の行動と結び付いていないのかを考えます。

例えば、商談化率が低い場合は、見込み客の大半がターゲット層に合致していない可能性が考えられます。受注率が低いのであれば、見込み客が求めている情報を適切なフェーズで提供できていない可能性があるでしょう。

営業活動の課題を把握できれば、どのフェーズにリソースを使うべきかが明確になります。

 

6.アクションプラン(戦術)を設計する

営業活動の課題を洗い出せたら、その課題に対するアクションプランを設計しましょう。それぞれの課題における短期的な目標(KPI:重要業績評価指標)やそれを達成するための具体的な戦術を策定します。

アクションプランの設計は、次の2つのポイントを考慮すると良いでしょう。
 

POINT1. 内部環境・外部環境を考慮する

内部環境とは、営業担当者の数や予算、使用ツールなど、営業活動に使えるリソースを指します。自社リソースで実施できる現実的なアクションプランを設計してください。

一方、外部環境とは、消費者の考えの変化、競合企業の変化など、自社ではコントロールできない市場の変化を指します。外部環境を考慮できていないと、実際の状況と乖離したアクションプランとなり、成果に結びつきにくくなってしまいます。

内部環境・外部環境を考慮に入れ、実情に沿ったアクションプランを設計しましょう。
 

POINT2. 効果検証のために目標やスケジュールを具体的に設定する

いつまでに、どのような状態になっていれば成功なのか、具体的な計画を立てることも重要です。例えば、「3か月で新規顧客を〇人増やす」「1か月の商談数を〇件にする」など、数値を用いて目標や期間を設定しましょう。

具体的な数値があれば、営業担当者が目標達成に向けて、いつどのように行動すべきか、目標達成に近づいているのかが明確になります。さらに効果検証を行うことで、何が足りなかったのか、なぜ目標を達成できなかったのか、などの課題を分析しやすくなります。

抽象的な目標やスケジュールでは、分析や改善の効果を十分に得られない可能性があります。効果検証のための目標やスケジュールは具体的に設定しましょう。

 

営業戦略のアイデアになるフレームワーク

営業戦略のアイデアになるフレームワーク

営業戦略を立てるには、現状分析が不可欠です。ここでは、営業戦略を立てる際に役立つ代表的なフレームワークを3つご紹介します。

  1. 3C分析
  2. SWOT分析
  3. 4P分析

 

1. 3C分析

 3C分析

3C分析とは、「顧客(Customer)」「競合企業(Competitor)」「自社(Company)」の3つの視点から分析を行い、営業戦略の成功要因を導き出す手法です。

具体的には、次の要素が分析対象となります。

  • 顧客:市場規模や成長性、ターゲットとなる顧客の特徴・ニーズ・購買行動など
  • 競合企業:競合企業の事業規模や商品・サービス、市場シェア、売上、営業利益、価格競争力など
  • 自社:自社の売上や営業利益、市場シェア、商品・サービスの特徴など

顧客と競合企業という外部要因、自社という内部要因それぞれを分析し、自社の強みと弱みを客観的に特定することが可能です。

自社がシェアを取りやすい市場や顧客層が明確になり、自社の強みに合わせた営業手法を検討できます。
 

2. SWOT分析

 SWOT分析

SWOT分析とは、自社商品やサービスなどの内部環境、市況や法律、競合企業などの外部要因を、プラスとマイナスの視点から分析する手法です。

内部環境

  • Strength(強み):自社商品の価格や品質、技術力などの強み
  • Weakness(弱み):競合と比較した際の自社の弱み

外部環境

  • Opportunity(機会):市場の拡大、規制緩和、技術革新など
  • Threat(脅威):競合企業の成長や新規参入、法律による規制など

SWOT分析では、初めに外部環境を分析し、洗い出した要因に内部環境の強み・弱みを掛け合わせるクロス分析を行い、勝機を見つけます。

例えば、「強み×機会」ならば「強みを活かして機会を最大限に有効利用する」、「弱み×脅威」ならば「自社の弱みを把握し、脅威を最小限に抑える」などの戦略が考えられます。
 

3. 4P分析

4P分析

4P分析とは、「Product(商品・サービス)」、「Price(価格)」、「Place(販売場所・流通方法)」、「Promotion(販促活動)」の4つの要素について、自社と競合企業を比較する分析手法です。

具体的には、次の視点での分析が重要です。

  • Product:どのような商品・サービスを提供するのか
  • Price:いくらで提供するのか
  • Place:どこで(どのような経路で)流通させるのか
  • Promotion:どのように販促を行うのか

4P分析により、競合企業と比較した時の自社の優れている点・劣っている点を客観的に洗い出します。得られた結果を個々ではなく総合的に捉え、「商品の強みをどう価格設定に反映するか」「商品に最適な流通経路は何か」などを営業戦略に落とし込みましょう。
 

成果につながる営業戦略を作る2つのポイント

ここでは、成果につながる営業戦略を作る2つのポイントを解説します。営業戦略の立案には他部署を巻き込み、データを基準に事実ベースで行うことが大切です。
 

1. 営業部門だけで完結しない

成果の出る営業戦略を立てるためには、営業部門だけではなくマーケティングやカスタマーサクセスなど、部門を横断して設計する体制が欠かせません。

なぜなら、顧客にとって営業・マーケティング・カスタマーサクセスという区分は存在せず、1つの企業・商品として認識されているからです。顧客が最も重要視しているのは、「抱えている課題をスムーズに解決し、利益をもたらしてくれるかどうか」です。

各部門が独立した戦略を持っている場合、顧客視点に立つと購買に至るまでの道のり(カスタマージャーニー)が一直線ではなくなります。非効率な営業になってしまうのはもちろんのこと、顧客体験の低下にもつながるでしょう。

顧客体験が損なわれると、成約率の低下や解約率の上昇を招きます。そのため、顧客視点を持ち、部門を横断して戦略を立てることが重要です。
 

2. データを活用する

部門を横断して議論するためには、経験や勘のような属人的な要素をできるだけ減らすことが重要です。

すでに顧客関係性管理(CRM)や営業支援システム(SFA)を導入している場合、それらを活用し、数値的な根拠をもとに議論しましょう。こうしたシステムを導入しておらず情報が一元管理されていない場合は、根拠のある営業戦略を作るためにも導入の検討をおすすめします。

SFAについて詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

 

顧客に寄り添った営業戦略で成果を出そう

営業戦略は、営業活動の目的を達成するための重要な方針です。顧客視点に立ち、営業だけではなく複数の部門と連携して営業戦略を立てましょう。それにより顧客体験が向上し、結果的に売上やシェアの拡大につなげられます。

社内や市場・市況などの大きな要因だけに目を向けていると、顧客のニーズとかけ離れた施策に終始してしまうかもしれません。「購買活動の意思決定者は顧客である」と認識し、実際のユーザー行動に合った営業戦略を立てていきましょう。

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元記事発行日: 2020/09/30 23:00:00、最終更新日: 2023年3月01日

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