📋 この記事の要点
- カスタマーサポートにおけるKPIとは、顧客対応の品質や業務効率を定量的に評価し、KGIの達成に向けて業務改善を進めるための重要な指標。
- カスタマーサポートでは、AHT(平均処理時間)や応答率、自己解決率、課題解決率、CSAT、NPS®など、目的やチャネルに応じて適切なKPIを設定・運用することが重要。
- HubSpotの調査では、利用者の88.3%が問い合わせ前に自己解決を試みており、従来の対応時間や解決率に加えて、自己解決率やAIによる回答の正確性、有人対応への引き継ぎ率も重要な指標となる。
- KPIは設定して終わりではなく、KGIとの整合性を確認しながら定期的に実績を分析・見直し、AIを含む適切なツールを活用して継続的に改善することが成果につながる。
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カスタマーサービスの品質を継続的に改善するには、対応時間や解決率、顧客満足度などを数値で把握する必要があります。カスタマーサービスの問い合わせ対応品質を向上させていくには、目的にあわせた適切なKPIを設定することが重要となります。
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顧客が対応に満足すれば良好な関係構築につながり、LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)の向上が期待できます。カスタマーサービスは、問い合わせ対応を担うだけでなく、顧客の継続利用や信頼関係の構築にも関わる部門です。対応品質を改善し、顧客が抱える課題を適切に解決することで、顧客維持や事業成長への貢献も期待できます。
カスタマーサービスの品質を向上するための重要なプロセスとして、本記事ではKPI設定の重要性やカスタマーサービスにおける代表的なKPI、運用時の注意点についてご紹介します。
カスタマーサービスにおけるKPIとは?

カスタマーサービスにおけるKPIとは、顧客対応の品質や効率を定量的に評価し、目標達成に向けた進捗を管理するための指標です。問い合わせ対応や顧客満足度などの重要な項目を数値で把握することで、現状の課題を明確にし、継続的な改善につなげられます。
KPI(重要業績評価指標)とは、ビジネスの最終的な目標に到達するために設定する中間指標です。最終的な目標はKGI(重要目標達成指標)と呼ばれ、KPIはKGIを達成するためのマイルストーンとして設定されます。KPIには定量的な目標を設定し、実績との差を定期的に確認します。数値の変化を追うことで、KGIの達成に向けて施策が想定どおりに進んでいるかを評価できます。
まずKGIを定め、その達成に影響するプロセスや行動を整理したうえで、進捗を確認するKPIを設定します。KPIは、KGIとの関係を説明できる指標を選ぶことが重要です。
また、KPI・KGIは企業全体だけでなく、カスタマーサービス部門ごとに設定することも効果的です。部門の役割や業務内容に応じた目標を設定することで、担当者一人ひとりが目標を意識しながら業務に取り組みやすくなり、顧客対応の品質向上や業務改善につながります。
カスタマーサービスでKPIを設定する目的
カスタマーサービスでKPIを設定する目的は、対応品質や業務効率の現状を把握し、改善すべき課題を特定することです。
目標値に届かなかった場合も、関連する指標を確認することで、対応体制、業務フロー、ナレッジ不足など、原因の仮説を立てやすくなります。分析結果をもとに施策を実行し、数値の変化を継続的に確認しましょう。
カスタマーサービスにおけるKPI設定例
では、カスタマーサービスにおけるKPIを考えてみましょう。最終目標を「今年度末のアンケートで顧客満足度を10ポイント向上させる」と仮定して、カスタマーサービス部門でのKPIを設定してみます。
カスタマーサービスに相談をした顧客は「電話をしてつながるまで待たされた」「迅速な対応だった」「問題が解決できた」など、さまざまな経験をします。それぞれの体験が指標になるようにKPIを検討します。
【KPIの例】
- 顧客の電話問い合わせが受付窓口につながるまでの待ち時間:平均応答速度(●分)
- 顧客が相談してから解決するまでの時間:課題解決時間(●分)
- 問い合わせ数に対して問題が解決できた件数の比率:課題解決率(●%)
KPIを決定する際は、上のような基本的な指標を踏まえつつ、自社の商品やサービス、顧客層、経営方針などを考慮して検討します。
カスタマーサービスでKPIを設定するときの注意点
最終目標を意識したKPIを設定する際には、最終目標とKPIの整合性を取ることが大切です。各KPIがKGIの達成にどのように関係するのかを整理し、その理由を担当者と共有しましょう。日々の業務と組織の目標とのつながりが分かることで、改善に取り組む目的を理解しやすくなります。KPIを適切に設定するには、最終目標となるKGIを明確にしておくのがポイントです。事業として成し遂げたいゴールをKGIとして可視化することで方向性が整理され、より具体的なKPIが設定できます。
未達のKPIが多い場合は、現状に対して目標が高すぎる可能性があります。現場の従業員のモチベーションを高めるためには、努力次第で達成可能な目標をKPIに落とし込む必要があるため、状況に応じてKPIの見直しを検討しましょう。
問い合わせ前に88.3%が自己解決を試みる |カスタマーサービスに関する最新トレンド
カスタマーサービスを取り巻く環境は、生成AIの普及によって大きく変化しています。HubSpotが実施した「日本のカスタマーサービスに関する意識・実態調査2026」では、顧客の問い合わせ行動やAIに対する考え方が変化していることが明らかになりました。これらの変化に対応するためには、従来の問い合わせ件数や対応時間だけでなく、自己解決率やAI対応の品質なども含めてKPIを設計することが重要です。

調査では、利用者の88.3%が問い合わせを行う前に「いつも」または「たいてい」自己解決を試みると回答しています。自己解決の手段としては検索エンジンやFAQ・ヘルプページに加え、生成AIやチャットボットも含まれており、顧客は問い合わせ窓口に連絡する前の段階から情報収集を進めています。企業側には、問い合わせ対応だけではなく、ナレッジベースやFAQを充実させ、顧客がスムーズに自己解決できる環境を整備することが求められます。

AIを活用したカスタマーサービスに対しても、利用者の69.9%が「利用したい」と回答しています。FAQへの回答や簡単な問い合わせへの対応など、定型的な業務ではAI対応を利用したいと考える人が一定数いることが分かります。

一方で、顧客はすべての問い合わせをAIで解決したいと考えているわけではありません。調査では、「自分の状況に合わせた柔軟な対応が必要なとき」や「複雑な技術的トラブルを解決したいとき」は、人間による対応を希望する人が多いことが分かっています。そのため、AIと有人対応を対立するものとして捉えるのではなく、それぞれの強みを生かした役割分担が重要です。AIで対応できる内容は効率化し、複雑なケースではスムーズに担当者へ引き継ぐことで、顧客満足度の向上につながります。
カスタマーサービスで重視したいKPI 11選
カスタマーサービスで用いられる代表的なKPIは次の通りです。以下のKPIには、受電ならではのKPI、さまざまなチャネルで設定できるKPI、チャネルを横断したKPIの3つのカテゴリがあります。
|
カテゴリ |
KPI |
内容 |
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受電 |
AHT(平均処理時間) |
1件あたりの問い合わせ対応にかかる平均時間。通話時間や後処理時間を含め、対応効率を測定する指標 |
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受電 |
応答率 |
着信数に対して、オペレーターが対応できた割合。顧客の待ち時間や対応体制を評価する指標 |
|
受電 |
エスカレーション回数 |
問い合わせを上司や他部署へ引き継いだ回数。担当者の対応力やサポート体制の課題を把握する指標 |
|
複数チャネル |
一次応答時間 |
問い合わせを受けてから、最初に顧客へ応答するまでの時間。対応スピードを評価する指標 |
|
複数チャネル |
自己解決率 |
問い合わせをせず、FAQやチャットボットなどによって顧客自身で課題を解決できた割合 |
|
チャネル横断 |
課題解決時間・課題解決率 |
問い合わせ解決までにかかった時間や、最終的に解決できた問い合わせの割合を示す指標 |
|
チャネル横断 |
CSAT(顧客満足度) |
商品・サービスへの満足度や、顧客対応に対する満足度を測る指標 |
|
チャネル横断 |
NPS®(ネットプロモータースコア®) |
顧客が商品やサービスを他者へ推奨したい度合いを測定し、顧客ロイヤルティを評価する指標 |
|
チャネル横断 |
CES(顧客努力指標) |
顧客が問題解決やサービス利用で感じた負担の大きさを測定する指標 |
|
チャネル横断 |
LTV(ライフタイムバリュー) |
1人の顧客が企業にもたらす生涯価値を示し、長期的な顧客関係を評価する指標 |
|
チャネル横断 |
リピート率・チャーンレート |
継続利用や解約状況を測定し、顧客維持やサービスへの満足度を評価する指標 |
各指標の特徴や計算方法を解説します。
なお、顧客満足度に関わる指標については、メールやチャット・SNSなどのチャネルで対応後にアンケートを実施することで、顧客のリアルな声を収集できます。
1. 【受電】AHT(平均処理時間)
AHT(Average Handle Time:平均処理時間)とは、1件の問い合わせ対応にかかる平均時間を示す指標です。一般的には、顧客との通話時間、保留時間、対応後の入力や記録にかかる時間を合計し、対応件数で割って算出します。計測対象は利用するシステムや運用方法によって異なるため、社内で算出条件を統一しておきましょう。
AHTを確認することで、問い合わせ対応のどの工程に時間がかかっているのかを把握し、業務フローや対応体制の改善に役立てられます。ただし、問い合わせの内容や難易度によって必要な対応時間は異なるため、AHTだけで担当者の能力や対応品質を評価するのは適切ではありません。課題解決率や顧客満足度などの指標とあわせて確認することが重要です。
AHTが長い場合は、通話時間、保留時間、後処理時間を分けて原因を確認します。例えば、必要な情報を探す時間が長ければ、社内ナレッジや検索環境を見直します。保留や引き継ぎが多い場合は、担当範囲やエスカレーションの手順を整理します。後処理に時間がかかっている場合は、入力項目の見直しやテンプレートの整備、CRMへの記録の自動化などを検討しましょう。
2. 【受電】応答率
応答率とは、電話がかかってきた件数(着信数)に対して、オペレーターの応答件数の割合です。「応答件数 ÷ 着信数 × 100」の計算式で求めます。
待ち時間が長いと、顧客が相談自体を断念するケースがあります。顧客が課題を解決できないままになると満足度が大きく低下するため、応答率が低い場合は早急な対応が求められます。
また、応答率に関連するKPIとして、「サービスレベル」と「平均応答速度」と呼ばれる指標があります。それぞれの概要は次の通りです。
サービスレベル(SL:Service Level)
サービスレベルとは、サービスの提供にかかるスピードや時間のことです。サービスの提供が速いほど、顧客満足度につながるという考え方です。
電話によるカスタマーサービスは、「着信から20秒以内に応答」のように、一定時間内にオペレーターが応答した件数の割合を示します。通常の応答率は一定時間内より応答が遅れてもカウントされますが、サービスレベルはカウントされません。
平均応答速度(ASA:Average Speed of Answer)
平均応答速度とは、電話が着信した瞬間からオペレーターが応答するまでの時間のことで、顧客を待たせている時間を表します。
3. 【受電】エスカレーション回数
エスカレーション回数とは、問い合わせへの回答が困難な際に、上司や他部署の担当者に相談する回数です。
エスカレーション回数が増えると電話口の相手を待たせることが増え、信頼度や顧客満足度の低下につながる可能性があります。
また、「総エスカレーション回数 ÷ 問い合わせ総数 × 100」の計算式で、組織全体の平均値を求めるケースもあります。平均エスカレーション回数が目標よりも多い場合は、マニュアル・社内向けFAQ・トークスクリプトの作成や研修の実施など、スキル向上に向けた取り組みが欠かせません。
なお、エスカレーションはオペレーターレベルでは解決できない課題や、クレーム対応の引き継ぎなど、必要不可欠なケースもあります。こうした必要なエスカレーションと、オペレーターの一次対応で解決できたエスカレーションを区別し、別々に評価することが大切です。
以下コラムでは、クレーム対応のポイントについて解説しているので、あわせてご覧ください。
4. 【複数チャネル】一次応答時間
一次応答時間とは、顧客から問い合わせを受けてから、カスタマーサービスが最初に応答するまでにかかる時間のことです。顧客は解決したい課題があって問い合わせを行っているため、迅速に対応することはカスタマーサービスの基本的な役割といえます。
特に、メールや電話、チャット、SNSなど複数の問い合わせチャネルを用意している場合、チャネルごとに一次応答時間を計測することで、対応体制の課題を把握しやすくなります。例えば、問い合わせが集中する時間帯や、対応までに時間がかかっているチャネルを特定することで、担当者の配置や業務フローの改善につなげられます。
また、近年ではAIチャットボットを導入し、問い合わせへの一次対応を自動化する企業も増えています。AIチャットボットであれば、営業時間外でも顧客からの問い合わせに即時対応できるため、一次応答時間の短縮に効果的です。
一方で、AIチャットボットを導入する場合は、単に応答までの時間だけでなく、「自己解決率」「回答の正確性」「有人対応への引き継ぎ率」などもあわせて確認することが重要です。
5. 【複数チャネル】自己解決率
自己解決率とは、問い合わせ総数に対して、顧客が自ら課題を解決できた件数の割合のことです。オペレーターに直接質問することなく、FAQやマニュアル動画などを見て顧客自ら問題を解決できた場合は、自己解決件数としてカウントします。
自己解決率を高めることで、問い合わせ件数の削減が可能です。適正水準の問い合わせ件数を確保できれば、従業員の負担軽減や顧客の待ち時間減少につながります。問い合わせ件数が減ると、人によるサポートを必要とする顧客に、より時間をかけて対応することが可能になり、顧客満足度を高められます。
6. 【チャネル横断】課題解決時間・課題解決率
課題解決時間とは、顧客から問い合わせを受けてから、問題が解決するまでにかかった時間のことです。一般的に、解決までの時間が短いほど顧客満足度は高まりやすいため、重要なKPIの一つとなります。
また、課題解決時間を確認する際は、チケットの再オープン率もあわせて確認しましょう。多くのカスタマーサービスツールでは、電話やメール、チャットなどの問い合わせを「チケット」として管理します。一度「解決済み」としたチケットが再度問い合わせによって「オープン」になる割合が高い場合、表面的には解決していても顧客の課題を十分に解消できていない可能性があります。
課題解決率は、問い合わせ総数に対して最終的に解決できた割合を示す指標です。さらに、対応品質を高めるためには、以下のような指標もあわせて設定すると効果的です。
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KPI |
内容 |
|
課題解決時間 |
問い合わせを受けてから、顧客の課題が解決するまでにかかった時間 |
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課題解決率 |
問い合わせ総数に対して、最終的に解決できた問い合わせの割合 |
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ワンコール解決率 |
1回の問い合わせ対応で解決できた問い合わせの割合 |
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一次解決率 |
顧客からの最初の問い合わせ時点で、転送や追加対応なく解決できた問い合わせの割合 |
ワンコール解決率や一次解決率は、課題解決率よりも高い対応品質が求められる指標です。特に一次解決率は、顧客が少ない負担で問題を解決できる理想的な状態を示すため、カスタマーサービスの品質向上を目指すうえで重要なKPIとなります。
7.【チャネル横断】CSAT(顧客満足度)
CSAT(Customer Satisfaction Score:顧客満足度)とは、商品・サービスや顧客対応に対する満足度を測る指標です。カスタマーサービスでは、問い合わせ対応の直後にアンケートを実施し、担当者の対応や問題解決の結果にどの程度満足したかを確認するために活用します。
例えば、「今回のサポート対応にどの程度満足しましたか」と質問し、「非常に満足」「満足」「どちらともいえない」「不満」「非常に不満」といった選択肢で回答してもらいます。一般的には、満足と回答した件数を回答総数で割って算出します。
CSAT(%)=「満足」以上の回答数 ÷ 回答総数 × 100
CSATを確認することで、対応チャネルや問い合わせ内容、担当チームごとの満足度の違いを把握できます。ただし、回答率が低い場合や、満足・不満を強く感じた顧客に回答が偏る場合もあるため、回答数や自由記述の内容もあわせて確認しましょう。
また、CSATは主に直近体験の評価に向いており、単独では長期的なロイヤルティやブランド全体評価の把握には不十分です。長期的な顧客ロイヤルティや推奨意向を確認する場合は、NPS®などの指標と組み合わせて分析します。
8. 【チャネル横断】NPS®(ネットプロモータースコア)
NPS®(Net Promoter Score:ネットプロモータースコア)とは、顧客が商品やサービスをどの程度他者へ推奨したいと思うかを数値化する指標です。問い合わせ対応直後の満足度を測るCSATとは異なり、企業や商品・サービス全体に対する推奨意向を確認する際に活用します。
カスタマーサービスでは、問い合わせ対応後に「このサービスを家族や友人、同僚にすすめたいと思いますか」といったアンケートを実施し、対応品質や顧客体験を評価できます。例えば、問題を迅速に解決できたか、担当者の説明が分かりやすかったかなどを確認することで、改善すべきポイントを把握できます。
また、NPS®は継続利用や口コミにも影響する重要な指標です。問い合わせ対応を単なる問題解決の場ではなく、顧客との関係性を深める機会として捉えることで、NPS®の向上につながります。
9. 【チャネル横断】CES(顧客努力指標)
CES(Customer Effort Score:顧客努力指標)とは、顧客が問題解決やサービス利用のために、どの程度の負担を感じたかを測定する指標です。顧客が少ない労力で目的を達成できるほど、良い顧客体験を提供できていると判断できます。
カスタマーサービスでは、「問い合わせによって問題を簡単に解決できましたか」「必要な情報を見つけやすかったですか」といったアンケートによって測定します。問い合わせ回数が多い、複数の窓口をたらい回しにされる、必要な情報へたどり着けないといった状況では、CESが悪化します。
近年では、FAQやAIチャットボットによる自己解決環境の整備も、CES向上につながる取り組みの一つです。顧客が問い合わせをする前に必要な情報へアクセスできる環境を整えることで、問い合わせ対応の負担を減らし、顧客満足度の向上を目指せます。
10. 【チャネル横断】LTV(ライフタイムバリュー)
LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)とは、1人の顧客が取引を開始してから終了するまでに、企業にもたらす総利益や価値を示す指標です。新規顧客の獲得だけでなく、既存顧客との関係性を維持・向上させる重要性が高まるなかで、多くの企業が注目しています。
カスタマーサービスは、LTV向上に大きく関わる顧客接点の一つです。問い合わせへの迅速な対応や丁寧なサポートによって顧客満足度を高めることで、継続利用や追加購入につながる可能性があります。
一方で、LTVはカスタマーサービスだけで決まるものではなく、商品・サービスの品質や価格、営業活動など複数の要素によって変化します。そのため、NPS®やCESなどの顧客体験に関するKPIとあわせて確認することで、長期的な顧客関係の改善に役立てられます。
11. 【チャネル横断】リピート率、チャーンレート
リピート率とは、一度商品やサービスを利用した顧客が、再度利用する割合を示す指標です。一方、チャーンレート(解約率)は、サブスクリプション型サービスなどにおいて、一定期間内に契約を終了した顧客の割合を示します。
リピート率が高く、チャーンレートが低い状態は、顧客が商品やサービスに価値を感じ、継続的に利用していることを示します。そのため、売上の安定化やLTV向上を目指すうえで重要な指標となります。
カスタマーサービスは、リピート率やチャーンレートを直接決定するものではありませんが、顧客との継続的な関係構築に大きな影響を与えます。問い合わせ時の対応品質や、顧客の不満・課題を早期に解消する取り組みは、解約防止や継続利用の促進につながります。
特に、解約理由や問い合わせ内容を分析することで、サービス改善や顧客離脱の防止策を検討できます。カスタマーサービスを「問い合わせ対応」だけでなく「顧客維持のための活動」と捉えることが重要です。
KPIを達成するためには?
設定したKPIを達成するためには、以下のポイントを意識し、カスタマーサービスのチーム全体で達成を目指すことが重要です。
全従業員と目標を共有する
KPIの設定は管理者レベルで行うものの、その内容や、なぜそのKPIが必要なのかを従業員が知らなければ、達成に向けて改善することはできません。
KPIを全従業員へ共有する際は、なぜそのKPIを達成したいのか、カスタマーサービスは社内でどのような立ち位置を目指しているかなどを同時に伝えることが大切です。
KPIと実績の確認を定期的に行う
KPIを設定したら、目標を達成できているか、あとどのくらい必要なのかなど、実績の確認を定期的に行います。
その際には、従業員もできるだけ巻き込むといいでしょう。常に目標を見据えることで、当事者意識を醸成し、カスタマーサービスのチーム全体で目標を達成する意識作りになります。
必要に応じてKPIの見直しを行う
一度決めたKPIは達成するまで変えないのではなく、必要に応じて見直しも行います。
例えば、競合の動きや新しいテクノロジー・ツールの登場、市場の変化など、外的要因によって自社の目指すべき方向性を調整しなければならないことがあります。こういった場合にはKPIを柔軟に見直し、そのときに必要な業務改善を行うことが大切です。
AIを始めとした適切なツールを導入する
設定したKPIを達成するには、KPIに対して適切なツールを導入し、現場の対応レベルを上げていくことが重要です。
AIを始めとしたツールの導入は、導入が目的になってはならず、KPI達成の手段として十分に検討する必要があります。ツールを導入する際は、改善したいKPIや顧客の課題を明確にしたうえで、必要な機能を検討します。AIは、定型的な問い合わせへの回答やナレッジ検索、有人対応への引き継ぎなどに活用できますが、導入目的や運用体制に合っているかを確認することが重要です。
HubSpotのカスタマーサービスでも、AI技術を段階的に導入することで、約40%のチケットをAIのみで解決することに成功しています。AI技術の導入を検討する際は、AIと人間の役割を明確にし、顧客視点でのサービス設計を忘れないようにすることが重要です。
【Q&A】カスタマーサービスのKPIについてよくある質問
カスタマーサービスのKPIについてよくある質問をまとめましたので、自社に適した目標を定める際の参考にしてください。
Q1. カスタマーサービスにおけるKPIとは何ですか?
カスタマーサービスにおけるKPIとは、顧客対応の品質や業務効率を定量的に評価し、目標達成に向けた進捗を管理するための指標です。問い合わせ対応時間や課題解決率、顧客満足度などを数値化することで、現状の課題を把握し、継続的な改善につなげられます。
Q2. カスタマーサービスでKPIを設定する目的は何ですか?
KPIを設定することで、カスタマーサービスの成果や課題を客観的に評価できるようになります。目標未達の場合でも、複数の指標を分析することで原因を特定しやすくなり、具体的な改善施策の検討につながります。また、チーム全体で目標を共有することで、業務改善やパフォーマンス向上にも役立ちます。
Q3. カスタマーサービスで重視される代表的なKPIには何がありますか?
カスタマーサービスでは、問い合わせ対応の効率や品質を測るさまざまなKPIが活用されます。代表的なものには、以下のような指標があります。
- AHT(平均処理時間):問い合わせ対応にかかる平均時間
- 応答率:着信数に対して対応できた割合
- 一次応答時間:問い合わせ後に最初に応答するまでの時間
- 自己解決率:顧客自身で課題を解決できた割合
- NPS®:企業や商品・サービスに対する推奨意向を測る指標
- CES:顧客が問題解決に要した負担を測る指標
- CSAT:問い合わせ対応への満足度を測る指標
自社の目標や顧客との接点に合わせて、適切なKPIを設定することが重要です。
Q4. カスタマーサービスにおけるAI活用では、どのような点をKPIとして確認すべきですか?
AIを活用したカスタマーサービスでは、単純な対応時間だけでなく、自己解決率や回答の正確性、有人対応への引き継ぎ率なども確認することが重要です。AIチャットボットによって定型的な問い合わせを効率化しながら、複雑な問い合わせは担当者が対応するなど、AIと人間の役割分担を明確にすることで顧客満足度の向上につながります。
Q5. KPIを達成するために意識すべきポイントは何ですか?
KPIを達成するには、設定した目標をチーム全体で共有し、定期的に実績を確認することが重要です。また、市場環境や顧客ニーズの変化に応じてKPIを柔軟に見直すことも必要です。さらに、AIをはじめとした適切なツールを導入し、KPI達成に向けた業務改善を進めることで、カスタマーサービスの品質向上につながります。
自社のカスタマーサービスの課題に合ったKPIを検討しよう
本記事では、カスタマーサービスにおけるKPIの重要性や、業務改善につながる代表的な指標について解説しました。
カスタマーサービスでKPIを設定する際は、最終的な目標となるKGIを明確にし、その達成に必要な指標を設定することが重要です。KPIを活用することで、問い合わせ対応の品質や業務効率を数値で把握でき、継続的な改善につなげられます。
記事内では、主に以下のポイントを解説しました。
- カスタマーサービスにおけるKPIとは、顧客対応の品質や効率を定量的に評価するための指標である
- KPIはKGI達成に向けた中間指標であり、目的に合わせて適切な項目を設定することが重要
- KPIを活用することで、課題の発見や改善施策の検討、チーム全体の目標共有につながる
カスタマーサービスで活用される代表的なKPIについて、主に以下を解説しました。
- AHT(平均処理時間):問い合わせ対応にかかる平均時間を測定し、業務効率を評価する指標
- 応答率・一次応答時間:顧客をどれだけ早く受け入れられているかを確認する指標
- 自己解決率:FAQやAIチャットボットなどによって顧客自身で問題を解決できた割合
- 課題解決時間・課題解決率:問い合わせがどれだけ迅速かつ確実に解決できているかを測る指標
- CSAT:問い合わせ対応への満足度を測る指標
- NPS®:企業や商品・サービスに対する推奨意向を測る指標
- CES:顧客が問題解決に要した負担を測る指標
- LTV・リピート率・チャーンレート:長期的な顧客関係や継続利用の状況を確認する指標
近年では、生成AIの普及によって顧客自身が情報を検索し、自己解決を目指すケースが増えています。そのため、従来の対応時間や解決率だけでなく、AI活用による自己解決率や対応品質も含めてKPIを設計することが重要です。
適切なKPIを設定し、定期的に数値を確認・改善することで、カスタマーサービスの品質向上だけでなく、顧客満足度や企業の収益向上にもつなげられるでしょう。
KPIは設定したら終わりではなく、定期的に見直しながら自社の状況に合わせてアップデートしていくことが重要です。顧客対応の品質と効率を継続的に改善するための基盤として、KPI管理を組織に根付かせることを目指してください。
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