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サブスクリプションサービスやSaaSモデルにおいて、解約率を表す「チャーンレート」は、投資家からも必ずと言って良いほどチェックされる非常に重要なメトリクスとなっています。

この記事では、チャーンレートの分析/計算方法と、チャーンレートを下げる効果的な5つの施策をご紹介します。

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サブスクリプションサービスやSaaSモデルにおいて、顧客の解約率を表す「チャーンレート」が重要な経営指標だというのが、特に海外のSaaS業界界隈では強く意識されるようになってきました。

それでは、なぜチャーンレートが重要視されるのでしょうか。

理由は単純で、「チャーンレートは、サブスクリプションサービスやSaaSモデルの成長性に対して、大きなインパクトを与えるため」です。

では、チャーンレートが、どれほどまでに事業の成長性にインパクトを与えるのか、一例を見てみましょう。

以下のグラフは、チャーンレートが「-2.5%」「2.5%」「5%」の3つのケースで比較した、5年後のMRR(月次経常収益)を表す内容です。

チャーンレート

チャーンレートが「-2.5%」であった場合と、チャーンレートが「5%」であった場合を比較すると、5年後に”MRRで約4倍の差”が生まれている事が分かります。

わずか「7.5%」の違いが、「400%」もの収益の違いとなって現れる・・・チャーンレートは毎月、足し算ではなく、掛け算されていく複利の数値という事です。

仮にスタートアップでユーザー数が少ないサービスだったとしても、チャーンレートが低ければ、サービスの成長性に対して、投資家から高い評価を得られる可能性もあるのです。

かといって、やみくもに「チャーンレートを下げよう!」と号令をかけても、望む効果はなかなか得られません。

ここからは「チャーンレート」を細かく分解し、それぞれの数値が持つ本質的な意味を理解しながら、チャーンレートを事業成長のドライバーとして活用していただけるように解説していきます。

チャーンレートの大分類

チャーンレート 種類

チャーンレートには、大きく分けて2種類の計算式があります。

カスタマーチャーンレート(Customer Churn Rate)
レベニューチャーンレート(Revenue Churn Rate)

「①カスタマーチャーンレート」は、『顧客数』ベースで解約率を見ていく計算式です。

「②レベニューチャーンレート」は、『収益』ベースで解約率を見ていく計算式です。

2種類のチャーンレートが存在する理由は、ユーザーによって収益が違ってくる場合があるためです。この点を分かりやすくご理解いただくため、ケーススタディを見てみましょう

■仮想のSFAシステム

  • 月額1万円と月額5万円の2つのプランがある。
  • ユーザー数は各プランともに2社ずつ存在する。
  • 月額5万円のプランを利用していた2社の内1社が、解約をする事となった。

上記の場合、「カスタマーチャーンレート」は『50%』となる。

一方で「レベニューチャーンレート」は『16.6%』となります。どちらの数字を見るかによって、経営の方向性は大きく変わるでしょう。

更に、「カスタマーチャーンレート」と「レベニューチャーンレート」は、以下のように細分化する事ができます。

カスタマーチャーンレート

カスタマーチャーンレート(Customer Churn Rate)・・・顧客数ベースのチャーンレート
アカウントチャーンレート(Account Churn Rate)・・・会社数ベースのチャーンレート

レベニューチャーンレート

グロスレベニューチャーンレート(Gross Revenue Churn Rate)・・・解約やプランダウンにより失った金額をベースとしたチャーンレート
ネットレベニューチャーンレート(Net Revenue Churn Rate)・・・解約やプランダウンにより失った金額と、プランアップやクロスセルにより拡大した金額を合算したチャーンレート

それでは、各チャーンレートの意味と計算式を見ていきましょう。

 

カスタマーチャーンレート 計算方法

顧客数ベースのチャーンレートで、全体のユーザーのうち一定期間内でサービスを解約した率を表します。

【計算式】カスタマーチャーンレート = 今月失った顧客数 ÷ 前月の顧客数

 

アカウントチャーンレート 計算方法

会社数ベースのチャーンレートで、契約している全企業アカウントのうち一定期間内でサービスを解約した率を表します。

【計算式】アカウントチャーンレート = 今月失った企業アカウント数 ÷ 前月の企業アカウント数

 

グロスレベニューチャーンレート 計算方法

解約やプランダウンにより失った金額をベースとしたチャーンレートで、月初のMRR(Monthly Recurring Revenue:月次収益)でその月に失ったMRRを割って算出します。

【計算式】グロスレベニューチャーンレート = 今月失ったMRR ÷ 月初のMRR

 

ネットレベニューチャーンレート 計算方法

解約やプランダウンにより失った金額と、プランアップやクロスセルにより拡大した金額を合算したチャーンレートで、MRRチャーンレートと呼ばれることもあります。

【計算式】ネットレベニューチャーンレート = (ある月に失ったMRR - アップセルなどのMRR) ÷ 月初のMRR

 

チャーンレートというと、一般的には「カスタマーチャーンレート」を指すことが多いですが、「レベニューチャーンレート」もしっかりと押さえておく必要があります。

なぜなら、「レベニューチャーンレート」は、サブスクリプションサービスやSaaSモデルの成長において肝となる「ネガティブチャーン」に連動する数値であるためです。

 

サブスクリプションサービスやSaaS型モデルの成長において肝となる「ネガティブチャーン」とは

ネガティブチャーン

ネットレベニューチャーンレートは、顧客がサービスをアップグレード、アップセル、クロスセルしたことにより得た収益と、解約により生じた損失を合算して導き出す数値です。

ネットレベニューチャーンレートがマイナスとなった状態をネガティブチャーンと呼びます。

ネガティブチャーンがマイナスかプラスかで収益にどれほど影響があるのか冒頭で挙げたケースを例に挙げ、詳しく見ていきましょう。

初月の新規顧客からの契約が1万ドル、その後は毎月2万ドルずつ新規顧客獲得による契約金額が増えていくと仮定します(青色の点線)。

ネガティブチャーンレート別  収益の増減

画像引用:https://www.forentrepreneurs.com/why-churn-is-critical-in-saas/

緑、黄色、赤の実線はネットレベニューチャーンレートごとの収益を表しています。黄色と赤の実線は、毎月チャーンが2.5%と5%なので、徐々に収益が減っていく様子が確認できるかと思います。

ネットレベニューチャーンレートがマイナスでネガティヴチャーン(緑)となっている場合、収益が着々と積み上がっていきます。その結果、MRRにどのような差が生じるか。5年経過時点では大きな差が生じます。

ネガティブチャーンレート別 MRRグロース
画像引用:https://www.forentrepreneurs.com/why-churn-is-critical-in-saas/

上図のようにネットレベニューチャーンレートが-2.5%と5%のケースで比較すると、およそ4倍の差が生まれます。ネットレベニューチャーンレートにおける数%の差が、5年経過すると非常に大きな収益の差となります。

つまり、この方程式は、アップセル/クロスセルなどでネガティブチャーンを積極的に狙う事で、サブスクリプションサービスやSaaSモデルを加速的に成長させていく事が可能となる事を表しますので、しっかりと頭に入れておきましょう。

チャーンに直結する原因を把握する


画像引用:https://www.forentrepreneurs.com/why-churn-is-critical-in-saas/

それでは、チャーンレートの各数値が持つ意味を理解したところで、次にチャーンが発生する要因と対策について見ていきましょう。

まず、ここでは解約に直結する主な原因を3つ挙げて詳細に説明します。

1. 価格に不満がある

価格はユーザーが最も気にするポイントのひとつです。

高いと感じた瞬間、ユーザーがサービスを解約する可能性が高いです。

また一定期間無料で使用できるよう特典を与えて加入したユーザーは、無料期間が終了すると解約してしまう傾向にあります。

2. サービス内容に不満がある

ユーザーがこれまで使っていた機能やコンテンツに飽きてしまうと、サービスの利用頻度が下がってしまいます。

これが原因でユーザーがサービスを解約するのは十分に考えられることです。

3. 競合サービスへ乗り換え

価格・サービスで自社を上回る競合が出現すると、ユーザーは競合他社へ流れるケースはよく見られることです。結果として自社サービスを解約するという事態が発生します。

チャーン(解約)の理由を把握する方法

チャーンの理由を把握する方法

それでは、チャーンに至った理由を把握するためにどのようなステップが必要となるでしょうか。チャーンに至った理由を把握するには、「利用状況の把握」「顧客へのコンタクト」の大きく2つステップを踏む事が重要です。

 

ステップ1.利用状況を知る

なぜ解約を検討しているのか、その理由を特定するのが最優先です。

そもそも解約を検討中の顧客はサービスのどの機能を使用していたのか、ログデータから分析します。

実際の使用率を見ることで、顧客にとってのサービス価値が把握できます。

また「ヘルススコア」を導入することで、顧客の状況をよりクリアに把握できます。

ヘルススコアとは、顧客の健康(チャーンリスクが低い)を図る定量的な指標です。

例えば、顧客の健康状態を「グリーン(4点)」「イエロー(3点)」「オレンジ(2点)」「レッド(1点)」といったように定義をして、カスタマーサクセス担当が顧客の中で、誰が一番解約の危険性があるのかを判断するための指針として用いられます。

HubSpotでは、主に以下の3つの要素からヘルススコアを機械学習で算出するような仕組みを活用しています。

  • ツール使用率
  • カスタマーサクセス担当とのエンゲージメント
  • パフォーマンス(例:Webサイトトラフィックやリード増加数)

ステップ2.顧客へコンタクトする

顧客の現状を把握できたら、次は顧客へアプローチを行います。

この場合はメールだと返信が来ない可能性もあるので、顧客に電話することをおすすめします。

さらに過去の解約抑止実績などを踏まえて、顧客とベストコミュニケーションが取れる担当者を割り当てるようにしましょう。

その際、担当者から現状の利用状況を踏まえてサービスをより便利に使える機能や契約プランの見直しなどを顧客に提案します。

まずは、上記の2つのプロセスをしっかりと踏んでチャーンに至った理由をできるだけ正確に把握するよう努めましょう。

正確なチャーンの理由を把握した上で、はじめてチャーンレートの低減に向けた着実な施策の立案が可能となります。

 

チャーンレートを低減させる5つの施策

チャーンを低減させる 施策

それでは、実際にチャーンを食い止める施策としてどのような方法があるでしょうか。ここではチャーンに至りやすい原因に合わせて以下の5つの施策を順番に紹介します。

  • 施策1.すでに備えている機能などをわかりやすくまとめる
  • 施策2.価格体系の見直しを行う
  • 施策3.カスタマーサクセスを立ち上げる
  • 施策4.SaaSビジネスを促進させるソリューションを導入する
  • 施策5.解約されるサービスや顧客との関係を調べてサービス設計に反映させる

施策1.すでに備えている機能などをわかりやすくまとめる

サービスが持っている機能が十分伝わらず、ユーザーが使いきれていなかったため、チャーンに至るケースは頻繁に見受けられます。

その際は、既存の便利な機能などをしっかり伝える施策が求められます。

この場合、まずは顧客が自走して課題を解決できるようなヘルプページの準備、およびサービス機能の使い方動画などを、ステップごとに送るメールなどが有効的でしょう。

 

施策2.価格体系の見直しを行う

競合他社と比較した際に価格面で劣っていると見なされるケースもあります。

このような場合は月額プランだけでなく、月額費用を抑えた長期プランの提案なども有力です。

また、顧客属性(企業の大きさやニーズ)に分けて価格体系を複数準備する事も有効的です。

HubSpotがチャーンレートの改善に成功したのも価格体系を顧客属性別に分けたからでした。現在では、HubSpotのプランは3製品 × 3プラン存在しています。請求システムの再構築など、非常に大きな労力がかかりましたが、大きな成果を挙げられました。

以下、HubSpotにおけるチャーンレートの推移を実数字で公開いたします。

HubSpot チャーンレート低下施策
価格体系などが細分化されていない場合は、是非ともトライしてみてはいかがでしょうか。

 

施策3.カスタマーサクセスを立ち上げる

SaaSビジネス界隈を中心に着目されているのが、カスタマーサクセスという概念です。

カスタマーサクセスは、受動的に顧客の要望を満たすためだけをサポートするのではなく、顧客の成功(事業の成果)と自社の収益とを両立させることを目指し、能動的に顧客に対して働きかけます。

カスタマーサクセスをもっと詳しく知りたい方は、下記のブログを参考にしてみてください。

カスタマーサクセスとは?カスタマーサポートとの違い|どちらを優先させるべきか?

 

施策4.SaaSビジネスを促進させるソリューションを導入する

世の中には、サービスを契約している顧客とのコミュニケーションを促進するソリューションがあります。

このソリューションを用いると、顧客との長期にわたるリレーションシップを構築し、売り上げを安定的に向上させることが期待できます。

そのソリューションのひとつが「Zuora」です。

Zuoraは世界で約800社が導入しており、請求書発行機能だけでなく、データを分析して顧客のダウングレードや解約のライフサイクルを分析して、継続に直結する提案を行えます。

このようなサブスクリプションビジネス支援プラットフォームを活用することでチャーンレートの低減が可能になるかもしれません。

 

施策5.解約されるサービスや顧客との関係を調べてサービス設計に反映させる

解約されるサービスの種類や契約している顧客の企業規模や業種などの関係を調査して相関を取ることも有力な施策です。

調査を進めると中小企業が解約する割合が高いサービス、大企業であまり使われていない機能などが明らかになるかもしれません。

これらを踏まえてサービス設計することで、チャーンレートの低減に結びつきやすくなります。

 

チャーンレート低減こそが、LTV向上に繋がる

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サブスクリプションサービスやSaaSを提供する企業にとって、「チャーン=解約」という言葉は、非常にネガティブな響きを持つものです。

しかし、「チャーンレート」を重要な経営指標として認識し、味方にしていくことで、サービスを飛躍的に成長させるためのインパクトポイントを見出しやすくなります。

チャーンレートから目を逸らすこと無く、細かい数値の把握と分析を実現し、みなさまの事業成長にお役立ていただけることを願っています。

HubSpotではこの他にもマーケティングやセールスに役立つ資料を無料で公開していますので、ぜひこちらからご覧ください。

 

SaaS事業を成長させるためのKPIテンプレート

元記事発行日: 2019年9月25日、最終更新日: 2020年5月13日

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カスタマーサクセス