チャーンレートとは?意味・重要視すべき理由や8つの改善方法を解説

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水落 絵理香(みずおち えりか)
水落 絵理香(みずおち えりか)

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チャーンレートは、ユーザーの解約率・離脱率を意味する指標です。サブスクリプションモデルでは、ビジネスの成長を測る指標として重要視されています。

チャーンレートとは?意味・重要視すべき理由や8つの改善方法を解説

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サブスクリプションサービスは顧客の継続的な利用が見込める一方で、ひとたび価値を感じられなくなると、すぐに解約されてしまうリスクもあります。そのため、サブスクリプションビジネスの成長にとって、チャーンレートを抑えることは重要な課題です。

チャーンレートにはいくつかの種類があり、それぞれ意味や用途、計算方法が異なります。本記事では、チャーンレートに関する基礎知識や計算方法をわかりやすく解説します。

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    チャーンレートとは

    チャーンレート(Churn Rate)とは、現在の契約数に対するチャーン(解約)の割合を示す数値です。解約率、退会率、離脱率とも呼ばれます。有料会員から無料会員にダウングレードした場合もチャーンレートに含まれます。

    チャーンレートは「当月の解約顧客数÷期首の全契約顧客数」のように、期間を決めて解約率を把握するために利用します。

    例えば、当月の解約者数が10人で、前月末時点の全契約顧客数が100なら、次のように算出できます。

    チャーンレート=10÷100×100=10(%)
     

    チャーンレートを重要視するべき理由は?

    チャーンレートを重要視するべき理由は?

    チャーンレートが重要指標として注目されるようになったのは、次のような理由からです。

    • サブスクリプションモデルでは継続率が重要なため
    • チャーンレートを下げる=LTV向上につながるため

     

    サブスクリプションモデルでは継続率が重要なため

    チャーンレートが重視されるようになった背景には、サブスクリプションサービスの台頭があります。従来の売り切り型のビジネスモデルでは、新規顧客を多く創出することに重点が置かれていました。それに対してサブスクリプションモデルでは、利用を継続してもらうことに重点が置かれます。

    次のグラフは、毎月10社ずつ顧客を増やした場合、チャーンレートが総顧客数にどれだけ影響を与えるかを示したモデル図です。

    チャーンレート別顧客数

    チャーンレートが2.5%、5%と悪化するにつれて、顧客増加の伸びは抑制されます。そして期間が長くなればなるほど、顧客数の差が開いていきます。

    5%のチャーンレートでは、4年目を過ぎる頃には毎月10人の新規顧客を創出しても10人が解約することになり、総顧客数は頭打ちになってしまいます。

    顧客が定額で支払う料金が収益となるサブスクリプションモデルにおいて、顧客数の減少はMRR(月次経常収益)の減少に直結します。

    MMRについては、次の記事もあわせてご覧ください。

    次に、チャーンレートが、どれほどまでに事業の成長性へインパクトを与えるのか、一例を見てみましょう。

    次のグラフは、チャーンレートが「-2.5%」「2.5%」「5%」の3つのケースで比較した、5年後のMRR(月次経常収益)です。

    MRR(月次経常収益)

    参考:Unlocking the Path to Negative Churn:For Entrepreneurs

    顧客増加やアップセル・クロスセルなどによって、本来ならば収益を向上させているはずが、チャーンレートが5%である場合、ほとんど成長できていないことがわかります。

    チャーンレートが「-2.5%」であった場合と、チャーンレートが「5%」であった場合を比較すると、5年後にMRRで約4倍の差が生まれます。

    低いチャーンレートを維持できれば、高い収入を維持し、サービスが成長していく可能性が高まります。

     

    チャーンレートを下げる=LTV向上につながる

    サブスクリプションモデルにおいて、チャーンレートと並んで重要な指標に、LTV(Life Time Value=顧客生涯価値)があります。

    LTVは顧客1人(1社)がサービスの利用を始めてから解約するまでに自社へもたらした利益を算出する指標です。チャーンレートが下がり、継続期間が長くなるほどLTVが高まり、企業の利益が増えることになります。

    サブスクリプションモデルでは、LTVの計算にチャーンレートを用います。

    LTV=顧客の平均単価×粗利率÷チャーンレート

    例:顧客の平均単価が1万円、粗利率が50%、チャーンレートが2%の場合

    LTV=10,000×0.5÷0.02=250,000(円)

    チャーンレートが2%から1%に改善されると、収益が倍増します。

    LTV=10,000×0.5÷0.01=500,000(円)

    チャーンレートの改善がLTVに大きな影響を与えることがわかります。

     

    チャーンレートの種類・計算方法

    チャーンレートの種類・計算方法

    チャーンレートには3つの種類があります。

    • カスタマーチャーンレート
    • アカウントチャーンレート
    • レベニューチャーンレート
      • グロスレベニューチャーンレート
      • ネットレベニューチャーンレート

    同じビジネスでも何をベースとするかによってチャーンレートの算出方法が異なるため、使い分けが必要です。

    次の条件で、各チャーンレートの計算方法を説明します。

    <プラン>
    ・1ユーザーにつき月額5,000円のベーシックプラン
    ・1ユーザーにつき月額10,000円のプロフェッショナルプラン
    <期首の契約状況>
    ・ベーシックプランは15社30ユーザー
    ・プロフェッショナルプランは20社40ユーザー
    <期間中の契約状況の変動>
    ・ベーシックプラン:1社2ユーザー解約、プロフェッショナルプランへのアップグレードが1社2ユーザー
    ・プロフェッショナルプラン:1社3ユーザー解約、1社3ユーザーがベーシックプランにダウングレード
    <期末>
    ・ベーシックプラン:14社29ユーザー
    ・プロフェッショナルプラン:19社36ユーザー

     

    カスタマーチャーンレート

    カスタマーチャーンレートは、顧客数の解約率をベースにしたものです。顧客が一定期間でどれだけ解約したかの割合を指し、単に「チャーンレート」という場合は「カスタマーチャーンレート」であることが多いといえます。

    【カスタマーチャーンレートの計算方法】

    カスタマーチャーンレート = 一定期間で解約した顧客数(ユーザー数)÷期首の顧客数(ユーザー数)×100

    この数式に上の条件を当てはめて、カスタマーチャーンレートを求めてみましょう。

    カスタマーチャーンレート(%)=5 ÷ 70 ×100=約7.1%
     

    アカウントチャーンレート

    アカウントチャーンレートは企業アカウント数をベースにしたものです

    カスタマーチャーンレートとの違いは、単位がユーザーかアカウントかです。顧客が一定期間でどれだけ解約したかが測れるという点では、どちらの指標も同じように活用できます。

    BtoBの場合は、解約した企業アカウント数を基準にしたアカウントチャーンレートを用います。

    【アカウントチャーンレートの計算方法】

    アカウントチャーンレート = 一定期間で解約した企業アカウント数 ÷ 期首の企業アカウント数×100

    上の条件をこの数式に当てはめると、解約した企業は2社なので、次のようになります。

    アカウントチャーンレート(%)=2÷35×100=約5.7%
     

    レベニューチャーンレート

    レベニューチャーンレートは収益をベースに計算する解約率で、収益が一定期間でどれだけ減少したかを測る指標です。複数の価格プランがある場合に有効です

    レベニューチャーンレートは増収分(アップセル・クロスセル)を含めるか含めないかで2つの種類に分かれます。

    • グロスレベニューチャーンレート
    • ネットレベニューチャーンレート

     

    グロスレベニューチャーンレート

    解約やダウングレードによって損失した収益を基準に、一定期間でどれだけ損失が発生したかを測る指標です。

    グロスレベニューチャーンレート=期間内の損失額÷期首の総収益×100

    上の条件をこの数式に当てはめてみましょう。

    期間内の解約による損失額は次の式で求められます。

    5,000×2+10,000×3=40,000(円)

    次に、ダウングレードによる損失額を求めます。

    5,000×3=15,000(円)

    損失額は解約とダウングレードを合わせて55,000円になります。

    次に、期首の総収益を求めます。

    5,000 × 30+10,000 ×40=550,000(円)

    グロスレベニューチャーンレートは次の式になります。

    解約の損失額÷期首の収益×100=55,000÷550,000×100=10(%)
     

    ネットレベニューチャーンレート

    ネットレベニューチャーンレートは、解約やダウングレードによる損失額に、アップセルやクロスセルなどの増収分を加味し、一定期間でどれだけ損失額が発生したかを測る指標です。

    減収と増収を両方含めて計算するため、収益全体を把握したいときに効果的です

    【ネットレベニューチャーンレートの計算方法】

    ネットレベニューチャーンレート=(期間内の損失額-期間内のアップセルなどで得られた収益)÷期首の総収益×100

    条件をこの数式に当てはめてネットレベニューチャーンレートを求めましょう。期間内の損失額は、先ほど求めたように、解約による40,000円とダウングレード15,000円を合わせた55,000円です。次にアップグレードによる収益を算出します。

    5,000×2=10,000(円)

    期間内の損失額55,000円から収益10,000円を引いた45,000円を、期首の総収益550,000円で割れば、ネットレベニューチャーンレートが得られます。

    (55,000-10,000)÷550,000×100=約8.2%

    各チャーンレートの結果は次のようになります。

    ・カスタマーチャーンレート:約7.1%
    ・アカウントチャーンレート:約5.7%
    ・レベニューチャーンレート
     グロスレベニューチャーンレート:10%
     ネットレベニューチャーンレート:約8.2%

    KPIとしてチャーンレートを設定する場合は、自社のビジネスに合わせて適切な算出方法を選択する必要があります。
     

    チャーンレートの目安

    業種や企業規模によって異なりますが、月次チャーンレートの平均値は3~10%といわれています。

    アメリカの業界別の平均チャーンレートを見てみましょう。次のグラフは、サブスクリプションサービスを提供するRecurly社による業界別の平均チャーンレートです。

    チャーンレートの目安

    出典:Recurly Research:Churn rate by industry

    上のグラフから、ソフトウェアやビジネス関連サービスのようなBtoBサービスの方が、デジタルメディア・エンタテインメント、教育、消費財や小売などのBtoCよりも、平均してチャーンレートが低くなる傾向が見て取れます。

    また、顧客規模によってもチャーンレートには差があります。次の表はベンチャー・キャピタリストTomasz Tunguzによる企業規模別のチャーンレートです。

    企業規模別のチャーンレート

    出典:Customer Account Churn Rates by Segment:Tomasz Tunguz(英語)

    この表によると、SMB(中小企業)で3~7%、Mid-Market(300~1000人規模の企業)で1~2%、Enterprize(大企業)で0.5~1%となり、導入企業の規模が大きくなればなるほど、解約されにくい傾向が見て取れます。大企業を顧客とする場合は、0.5%~1%をターゲットとすると良いでしょう。
     

    チャーンレートを改善するためには?

    チャーンレートを改善するためには?

    チャーンレートは、数値を少し改善しただけでも大きな成果を生みます。ここでは、チャーンレートを改善するための8つの施策をご紹介します。

    1. 解約の原因を把握する
    2. 機能や使用法などをわかりやすくまとめる
    3. 価格体系を見直す
    4. パーソナライズを行う
    5. リアルタイムの対応を意識する
    6. カスタマーサクセスを立ち上げる
    7. 顧客ロイヤルティを醸成する
    8. ヘルススコアの計測ができるツールを導入する

     

    1. 解約の原因を把握する

    チャーンレートを改善するためには、顧客がなぜ解約を考えるに至ったか、原因を把握することが重要です。

    原因を把握するには、次の2ステップで行います。

    1. 利用状況を把握する
    2. 顧客にコンタクトする

    最初に解約を検討中の顧客がサービスのどの機能を使用していたのか、ログデータから分析します。

    サービスの利用状況を把握し、使用率の低下している機能が分かったら、顧客にアンケートメールを送ったり、電話でコンタクトを取ります。解約を検討している理由を聞き、利用状況を踏まえてサービスをより便利に使える機能や契約プランの見直しなどを提案します。
     

    2. 機能や使用法などをわかりやすくまとめる

    サービスの利用率が低く、「使いにくい」「わかりにくい」という理由が多くあげられる場合には、ヘルプページやFAQページを見直す必要があります。機能や使用法の説明を第三者に読んでもらい、すぐに理解できるかどうかフィードバックしてもらいましょう。

    また、動画を使えば使い方や便利な活用法を視覚的に説明できます。顧客の状況を把握し、利用状況に合わせてサービス内容をわかりやすく伝える方法を検討してください。
     

    3. 価格体系を見直す

    単にプライスダウンするのではなく、顧客属性に合わせて価格やサービス内容の変更が必要な場合もあります。

    初期構築費は安価でも、月額料金などが高額だとランニングコストの問題で乗り換えを検討されることもあります。競合他社と比較して価格体系を見直すことも必要です。
     

    4. パーソナライズを行う

    パーソナライズとは、顧客データを利用して、顧客1人ひとりに最適化された顧客体験を提供することです。具体的には、顧客のニーズや好みの理解に基づいた商品の提案やウェブページの表示、適切なタイミングで送られる適切なメッセージ、SNSでのコミュニケーションなど、さまざまな方法があります。パーソナライズを通じて構築された顧客との信頼関係は、チャーンレートの改善に効果を上げます。

     

    5. リアルタイムの対応を意識する

    顧客のサービスの利用履歴や、CRMを活用した行動履歴などのデータから、顧客の状態を把握できます。

    例えば、サービスの利用が途絶えたり、ヘルプページの閲覧が増えるなどの顧客行動は、顧客がフォローやサポートを求めているのかもしれません。顧客行動を把握し、状況に合わせて、リアルタイムのフォローやサポートを行いましょう。
     

    6. カスタマーサクセスを立ち上げる

    カスタマーサクセスとは、サービスの利用を通じて顧客が目的を達成できるようにするための取り組みです。カスタマーサポートが顧客の問合せやクレームに対して受動的に対処するのに対し、カスタマーサクセスは、顧客理解を深め、顧客の疑問に先回りする積極的な顧客支援を行います。

    5.で紹介したリアルタイムの顧客サポートを実現するためには、顧客と並走し、顧客の要望をもとにサービスを改善するカスタマーサクセスの設立を検討してください。

     

    7. 顧客ロイヤルティを醸成する

    顧客は何らかの価値が得られると期待してサービスを利用します。パーソナライズやカスタマーサクセスによる援助など、顧客が予想するより高い体験価値を得られれば、顧客はそのサービスやブランド、企業のファンになり、利用を継続します。

    企業が顧客との関係をはぐくみ、顧客が求める以上の価値を提供することを通して顧客ロイヤルティの醸成を図りましょう。

     

    8. ヘルススコアの計測ができるツールを導入する

    ヘルススコアとは、顧客が自社の製品を継続して使い続けてくれるかを測る指標のことです。定期的にログインしているか、必要な機能を利用しているか、など、ヘルススコアの指標を決めて、顧客の健康状態を「グリーン(4点)」「イエロー(3点)」「オレンジ(2点)」「レッド(1点)」と定義します。カスタマーサクセス担当が顧客の中で、誰が一番解約の危険性があるのかを判断します。

    ヘルススコアの計測ツールを導入することで、顧客のヘルススコアが正確に把握でき、解約の可能性がある顧客に解約を留まらせる対策が打てます。
     

    チャーンレートを改善して事業を成長させよう

    チャーンレートは顧客の解約率や離脱率、退会率を意味します。有料会員から無料会員にダウングレードする場合もチャーンレートに含まれます。

    顧客がサービスを利用し続けることで収益を伸ばすサブスクリプションモデルでは、チャーンレートは最重要指標のひとつです。

    そのため、チャーンレートは定期的にチェックするとともに、顧客の利用状況の把握に努めましょう

    より良い顧客体験を提供することに焦点を当ててサービスを提供しましょう。

    チャーンレートは事業の売上に直結する指標です。常に数値を分析し、改善を続けましょう。

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