近年、不動産業界では「デジタルマーケティング」と呼ばれるオンラインを活用したマーケティング施策が積極的に展開されています。
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インターネットを介して消費者が入手できる情報が飛躍的に増えた現代では、戦略的にデジタル手法を活用して消費者と接点を増やす必要があります。
本記事では、不動産業界におけるデジタルマーケティングの必要性や、具体的な施策、成功のポイント、事例を解説します。
不動産業界におけるデジタルマーケティングの必要性
不動産業界において、デジタルマーケティングの必要性が高まっているのは、次のような背景があるためです。
- 人口の減少:人口減少による競争の激化
- 消費者行動の変化:物件情報の収集や比較をオンラインで行う人が増加
- コミュニケーション方法の変化:デジタルでのやり取りを好む顧客
オンラインでの住まい探しに関する調査 2023 賃貸編によると、引っ越しを検討中の「検討者」、もしくは実際に引っ越しをした「経験者」のうち、住まいの探し方として「不動産ポータルサイトで検索」と回答した人の割合が6割以上という結果になっています。不動産の購入についても同様の調査結果となっており、「不動産ポータルサイトで検索」がトップです。
また、内見のやり取りについて、「メールやSMSで完結したかった」と回答している「経験者」の割合は半数以上となり、「検討者」の約37%は、オンラインでの契約を希望していることがわかりました。
このように、不動産の賃貸・購入を考えている消費者は、できる限りオンラインで完結できるような仕組みを希望している傾向があるといえます。人口減少で競争が激化するなか、消費者行動の変化に合わせて不動産の賃貸・購入ができる環境を整えることは、重要な意味を持ちます。
一方で、希望する内見の方法については、同調査で「経験者」「検討者」ともに「不動産会社の店舗で待合せして現地に訪問」がトップという結果になったことも、注目したいポイントです。すべてをオンライン化するのではなく、顧客にとって何が最適なのかという視点で考えることが重要といえるでしょう。
不動産のデジタルマーケティング施策
ここでは、不動産のデジタルマーケティング施策として、次の8つを紹介します。
- Web広告
- SEO
- ポータルサイト
- VR内見
- メルマガ・LINE配信
- SNSマーケティング
- スマートフォンアプリ
- サイネージ広告
Web広告
Web広告は、不動産のマーケティングにおいても有効な手法です。対象者の属性や行動によってターゲットを絞り込み広告を配信するため、費用対効果を高めることが可能で、効果測定や改善が行いやすいのが特徴です。
エリア名や不動産物件名を検索したユーザーに広告を表示したり、不動産や住宅に関係するWebサイトにバナー広告を表示したりする方法があります。
代表的なWeb広告の種類は、次の通りです。
- 検索広告:Google などで顧客が検索したキーワードに応じて表示する広告
- ディスプレイ広告:Webサイト上に顧客の属性や行動に応じて表示する広告
- 動画広告:YouTubeなどの動画の途中や冒頭に流す動画の広告
- SNS広告:SNS上に一般ユーザーの投稿のような形で表示させる広告
- リターゲティング広告:自社サイトへの訪問履歴がある顧客に対して、別のWebサイトで表示するディスプレイ広告
- ジオターゲティング広告:スマートフォンなどから取得した位置情報をもとに配信する広告
SEO
Webサイト上で物件紹介や不動産探しのノウハウといった情報を発信し、検索エンジンでの表示順位を上げることを目指す手法です。顧客が特定のキーワードで検索したときに検索結果の上位表示されることで、自社のWebページを見つけてもらいやすくなります。
ターゲットとなる顧客が検索すると考えられる検索キーワードを見極め、顧客がそのキーワードで検索した際に、自社のWebページが上位に表示されるように対策します。
SEOは、日本語では「検索エンジン最適化」といいます。Google がWebページを上位表示させる仕組みを理解して、Webサイトの設計やコンテンツの制作を行いながら、ユーザー視点で価値のある情報を届けることが重要です。
ポータルサイト
ポータルサイトとは、ユーザーが不動産を検索する際に利用するWebサイトです。賃貸や購入のための物件を探す際は、まずポータルサイトで間取りや路線などの条件に応じて検索したり、物件同士を比較したりする消費者行動が一般的になっています。
エリアや間取り、価格、設備、内装の写真といったさまざまな情報の掲載が可能で、具体的に引っ越しや物件購入などのニーズを持った「顕在層」にアプローチできるのがポータルサイトのメリットです。
有力なポータルサイトは複数あり、多くのユーザーが訪問するため、ポータルサイトに自社の物件を掲載し、ユーザーに認知してもらうことは集客のための戦略として重要です。
VR内見
VR内見とは、360度回転できる画像や3Dツールなどを使用して、物件の中を見学する方法です。インターネットを通じてパソコンやスマートフォンから専用のサイトにアクセスし、実際に物件を訪れているような体験ができます。
好きな位置や角度から部屋の中を見ることで、写真だけではわからないイメージをつかむことができるため、実際の内見や契約につながりやすくなります。遠方から物件を探している人を早い段階で見込み客にできるメリットもあります。
メルマガ・LINE配信
メルマガやLINE公式アカウントに登録のあった見込み客や顧客に対して、定期的にメッセージを配信する手法です。
不動産のような高額商品は、契約までのリードタイムが長くなるため、見込み客に対する継続的なアプローチが欠かせません。問い合わせや資料のダウンロードなどで接点が生まれた見込み客に対して、メルマガ登録やLINE公式アカウントの友だち追加を促しましょう。
物件探しのコツや最新の物件情報の配信、期間限定のクーポン配布など、活用方法はさまざまです。見込み客のデータを蓄積し、状況やニーズに合った情報を個別に配信すると、さらに高い効果が期待できます。
SNSマーケティング
InstagramやFacebook、X、TikTok、YouTubeなどのメディアを使ったマーケティング手法です。
最大の特徴は、SNSへの投稿に対するユーザーの「いいね」やシェアなどの行動によって、より多くの人に情報が拡散されることです。ユーザー自身の口コミやコメントによって、さらに自社の情報が広範囲に届きやすくなります。
また、口コミによる第三者からのレコメンド効果があることもポイントです。
自社のアカウントでユーザーに興味を持ってもらえそうな情報を投稿するだけでなく、フォロワーやユーザーと積極的にコミュニケーションをとり、関係性を築くことも重要です。
スマートフォンアプリ
スマートフォンアプリは操作性に優れているのが特徴で、「お気に入り」や検索条件の保存といった便利な機能も充実しています。移動中や隙間時間に不動産情報を検索できるのもメリットです。
ポータルサイトのアプリ版も多く、掲載物件が連動しているため、あわせて活用すると良いでしょう。
サイネージ広告
タクシーサイネージ広告や駅ビルのデジタルサイネージ広告は、不動産においても効果的な集客ツールです。
特に、タクシーサイネージ広告は、経営者や富裕層など高所得者層にアプローチできる媒体として注目されています。タクシーの平均乗車時間は18分程度ですが、乗客の目の前にディスプレイが設置されているため、じっくりと広告動画を見てもらうことができます。不動産のなかでも、高級不動産や投資物件の訴求に適した手法です。
また、駅などのデジタルサイネージは、多くの通行人の目に触れる機会があり、物件情報やキャンペーンを動的に表示できます。通勤路線の沿線で不動産を探しているユーザーに効率よく訴求ができます。
不動産のデジタルマーケティング成功のポイント
不動産のデジタルマーケティングを成功させるポイントは、主に次の4つです。
- ターゲットの選定
- KPIの設定
- PDCAの実行
- MAツールの導入
ターゲットの選定
デジタルマーケティングの特徴は、ターゲットを選定して広告や施策を実行できることです。効果を高めるためには、まずは見込み客となるターゲットの条件をしっかりと定めることが重要です。
ターゲットを選定する際は、まずは3C分析を用いて、顧客・競合・自社の3つの観点でターゲットの条件を明らかにすると良いでしょう。
【3C分析の観点】
- 顧客(Customer):企業の規模、業種、売上、従業員数など
- 競合(Competitor):市場シェア、サービス、戦略、商流など
- 自社(Company):市場シェア、サービス、強み・弱みなど
ターゲットを明確にすると、ターゲットに適した施策の選択や広告展開、訴求を行えるため、より高い集客効果が期待できます。
KPIの設定
KPI(重要業績評価指標)は、最終的な目標を達成するための中間目標のことです。
例えば、売上を「商談数 × 成約率 × 成約単価」とした場合、商談数や成約率をKPIとして設定できます。KPIを達成すると、最終目標であるKGI(経営目標達成指標)が達成できるようにKPIを設計する方法が一般的です。
まずは商談数や成約率といったKPIの達成を目指すことで、より具体的な施策の立案が可能になります。結果的に、売上・利益の増加やコスト削減といった大きな目標達成につながるでしょう。
デジタルマーケティングの具体的なKPIの例は、次の通りです。
【KPIの例】
- クリック率:広告やリンクをクリックしたユーザーの割合
- コンバージョン率(CVR):広告などの施策のゴール(CV)に至ったユーザーの割合
- 顧客創出単価CPA:創出した1コンバージョンあたりにかかった費用
- 開封率:メールやLINEなどを見たユーザーの割合
- 表示数:広告やWebサイトがユーザーのデバイス・ブラウザに表示された数
- 再生数:動画などが再生された数
- 平均視聴時間:ユーザーが動画を視聴した平均時間
PDCAの実行
PDCAとは、計画(Plan)・実行(Do)・評価(Check)・改善(Action)の頭文字を取ったものです。
デジタルマーケティングは、オンラインで実施するという特性上、データの取得がしやすいというメリットがあります。蓄積されたデータを分析し、仮説を立ててPDCAサイクルを回すことで、徐々に成果を高めていくことが可能です。
改善を行っても期待したような効果が現れなかった場合は、仮説が外れている可能性があります。まずは仮説を見直し、次にKPIやターゲットを見直すという流れで、徐々に上流へとさかのぼって見直しを行うのがポイントです。
MAツールの導入
MA(マーケティングオートメーション)ツールとは、マーケティング施策の実行・分析を自動化するためのツールです。
リストを用いたメルマガ配信の自動送信やコンテンツの出し分け、広告の成果分析など、マーケティング業務の一元管理が可能です。CRM(顧客関係管理)ツールやSFA(営業支援システム)などのツールと連携することで、最新の顧客情報をもとにしたマーケティング施策の展開が実現します。
不動産業界におけるデジタルマーケティングの事例
ここでは、オウンドメディアとSNSを活用した不動産業界におけるデジタルマーケティングの事例を紹介します。
SUUMOジャーナル|オウンドメディアの活用事例
「SUUMO(スーモ)」は、株式会社リクルートが展開する不動産情報サイトです。SUUMOのドメイン配下にある情報メディア「SUUMOジャーナル」では、住まいと暮らしに関する幅広いコンテンツが公開されています。
出典:スーモジャーナル - 住まい・暮らしのニュース・コラムサイト | SUUMO
「買う」「借りる」「リフォーム・内装」「住まいの雑学」など、住まいと暮らしに関する幅広いカテゴリでユーザーが楽しめる記事を多数用意し、タッチポイントを増やすことに成功しています。
LIFULL HOME'S PRESS|オウンドメディアの活用事例
株式会社LIFULLでは、不動産仲介に興味のあるユーザーを集めるために、情報メディア「LIFULL HOME'S PRESS」を運営しています。
出典:住まいの本当と今を伝える情報サイト【LIFULL HOME'S PRESS】
「借りる」「買う」などのトピックスのほか、住宅の専門家による記事や、街ごとの物件の相場といった調査情報など、不動産の賃貸や売買に役立つ情報を数多く掲載しています。
職人社長の家づくり工務店|SNSの活用事例
職人社長の家づくり工務店では、注文住宅や平家建築に関する家の作り方や注文住宅の建て方、耐震性の高い家のポイントなど、家を建てたいと思うユーザーが気にする動画コンテンツをYouTubeで多数公開しています。
フォロワー数は16万以上で、10万回を超える視聴回数の動画も多数あり、コンテンツをSNSで公開し自社の宣伝に役立てています。
最新のデジタルマーケティングで顧客体験の向上を目指そう
消費者行動やコミュニケーション方法の変化により、不動産業界においてもデジタルマーケティングの重要性が高まっています。デジタルを活用して顧客との接点を増やすことで、自社の魅力を知ってもらいましょう。
さらに顧客のニーズに合ったコンテンツの提供は、顧客と良い関係性を築くことにもつながります。
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