CRMツールとMAツール、同時に導入されるケースが多い2つのツールは、実際何が違うのでしょうか。両者とも、顧客体験を向上するうえで非常に有用だという点は同じです。
CRM導入のイメージがわかる「特製スプレッドシート」
ユーザーを一元管理でき、チームで効率よく情報共有ができます。また、多彩な営業支援機能を実装し進捗状況の把握も容易なため、営業活動の時間短縮と顧客への最適なアプローチの実現が可能です。
CRMツールは顧客情報を一元管理して顧客の状況を理解しやすい環境を構築できる、MAツールはマーケティング活動の自動化や効率化の向上に役立てられるというように、機能や活用方法は異なります。
だからこそ、顧客体験の向上から売上アップにつなげていくためには、CRMとMAを連携し、活用することが大切なのです。
本記事では、CRM・MAの機能や役割を比較しながら、それぞれの違いをご紹介します。さらに、CRMとMAを連携させるメリットもご説明しますので、ぜひ自社のツール選定にお役立てください。
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CRM・MAとは?
マーケティングを効率よく進めるには、CRM(Customer Relationship Management)やMA(Marketing Automation)などの活用が欠かせません。
CRMは顧客関係管理と訳され、顧客情報を一元管理することで企業と顧客との関係を強化するためのシステムを指します。
MAはマーケティングの自動化を実現するツールです。メールマーケティングやSNS投稿などを実施する際に必要な作業を自動化することで、より効率的に、成果につながるマーケティング活動が可能です。
CRMやMAに関する詳しい解説は、それぞれ以下の記事で紹介しています。ぜひ参考にしてください。
CRMとMAの違いは「目的」にある
まずは、CRMとMAそれぞれの、利用する「目的」を整理してみましょう。
CRM(顧客関係管理)ツールは、見込み客や顧客の属性データや行動履歴などの情報を一元管理するために活用できます。顧客に関するあらゆる情報を管理・分析し、ニーズに合う適切な施策を講じることで、顧客とより良い関係構築をしていくのが主な目的です。
MA(マーケティングオートメーション)ツールは、マーケティング活動で生じる業務を自動化・効率化するためのツールです。新たな見込み客を創出して、その見込み客の購買意欲を醸成し、営業部門へ送客する。この一連のマーケティング活動を効率的に実施できる環境を構築し、担当者が見込み客に向き合う時間を増やすのが主な目的です。
MAツールの機能を有効に活用するためには、見込み客の情報を一元管理できるCRMツールがほぼ不可欠です。また、CRMで管理している顧客情報を活かして関係構築していくためには、メールナーチャリングやパーソナライズドの機能を備えたMAツールを活用する必要があります。
このように、「見込み客・顧客との関係構築」という同じゴールを目指しつつ、連携前提で異なる役割を担っているのがCRMツールとMAツールなのです。
CRMとMAの機能の違い
ここから、もう少し具体的にCRMツールとMAツールの代表的な機能を見ていきましょう。
CRMツールの機能
CRMツールに搭載されている機能は次の通りです。
- 顧客情報の管理
- 転換率の低いファネルの特定
- 顧客の声の収集
- 購買につながっていないセグメントの特定
見込み客・顧客のあらゆる情報を管理できるという点を踏まえると、CRMツールは営業やマーケティング、カスタマーサポートなど幅広い領域で活用できます。ここでは、各部門で活用できる代表的な機能を紹介します。
顧客情報の管理
顧客情報管理はCRMツールの代表的な機能のひとつです。
CRMツールには、氏名や年齢、住所、電話番号などの顧客の属性データに加え、行動履歴まで蓄積できます。行動履歴とは、例えばECサイトでの購入金額や頻度、クーポンの取得回数、キャンペーンの応募歴などの情報です。
CRMツールはECサイトやアクセス解析ツール、メールソフトなど幅広い外部システムと連携できます。連携機能を有効に活用することで、顧客とのコミュニケーションを通じて得られた情報も集約でき、最適なタイミングでの応対が可能になります。
転換率の低いファネルの特定
CRMツールによっては、ファネル機能が搭載されているケースがあります。ファネルは日本語で「漏斗(じょうご)」を意味します。逆三角形の漏斗のような図に、何らかのプロセスを段階的に記述したものをビジネスにおけるファネルと呼びます。
CRMツールに搭載されているファネル機能は、認知から購買までのマーケティングプロセスや、初回訪問からクロージングまでの営業プロセスなどを図式化できるのが特徴です。
さらに、ステージごとの転換率や離脱率などの可視化によって、プロセス全体を把握しボトルネック(問題の箇所)となっている部分を容易に特定できます。
ファネルは、CRMやMAなどの複合的な機能を持つCRMツールに搭載されていることもありますが、一般的にはSFA(営業支援システム)の代表的な機能だといえます。
SFAの特徴や主な機能を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
顧客の声の収集
CRMツールには顧客の属性データや行動履歴に加えて、コールセンターに寄せられた問い合わせ内容も記録できます。営業やマーケティング、カスタマーサポートそれぞれの部門で情報を蓄積し、共有することでより良い顧客体験の提供に役立てられるでしょう。
データベースに蓄積される具体的な情報には、顧客の属性や問い合わせ日時、対応を行った担当者、質問内容、対応方法などがあります。
これらの情報に含まれる商品・サービスに対する意見やフィードバックは、製品品質の向上につながる貴重なヒントとなります。顧客の声をもとにした商品やサービスの開発・改善によって、顧客満足度の向上が期待できるでしょう。
購買につながっていないセグメントの特定
CRMツールに搭載された分析機能を活用すれば、購入額や購入頻度などさまざまな軸で顧客を分類できます。事前に設定しておけば、自社の基準に従った分類も可能です。
分類されたデータからは購買につながっていないセグメントを特定できるため、リピート率や解約率の改善につながる施策立案が可能になるでしょう。
適切なグループ分けによって課題を特定し、アップセルやクロスセルの可能性を広げるアイデアを創出、実施すれば、LTV(顧客生涯価値)の向上が期待できます。
MAツールの機能
MAツールに搭載されている機能は次の通りです。
- 見込み客を創出する(リードジェネレーション)
- 見込み客の購買意欲を引き上げる(リードナーチャリング)
- 見込み客をスコアリングして営業へ連携する(リードクオリフィケーション)
MAツールには、見込み客になりそうな潜在客にアプローチし、将来的に顧客となる可能性のある対象を絞り込む役割があります。
MAツールを導入するメリットや活用方法を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
見込み客を創出する(リードジェネレーション)
マーケティングで見込み客を創出する活動全般をリードジェネレーションと呼びます。不特定多数の潜在客ではなく、自社商品・サービスに興味を示す対象にアプローチします。
リードジェネレーションにつながる具体的な機能には次のような種類があります。
- Webページやランディングページの作成
- WebページのSEO支援
- Web広告の管理・効果測定
- 問い合わせフォーム作成
- チャットボットの実装
このように、リードジェネレーションの機能にはWebサイトやECサイトの集客を行う、あるいは、サイト訪問者に対するアプローチを支援する役割があります。
リードジェネレーションは、将来的な顧客を創出するためのスタート地点です。課題解決につながる情報提供によって見込み客と接点を持ち、良好な関係構築を目指しましょう。
見込み客の購買意欲を引き上げる(リードナーチャリング)
リードジェネレーションで創出されたすべての見込み客が、高い購買意欲を持っているとは限りません。見込み客の成約確度を高めるためには、購買意欲を引き上げるリードナーチャリングの取り組みが必要です。
MAツールには、メールマーケティングや見込み客の行動に応じた自動通知などのリードナーチャリング機能が搭載されています。
メールマーケティングは、セグメントごとに分類した見込み客に対してメールを自動配信する機能です。各セグメントに合わせてメールの内容や配信頻度などを設定できます。
自動通知は、見込み客が特定の行動を起こした際に、社内メールやチャットツールなどに通知を送る機能です。見込み客の行動に合わせて迅速なフォローを行えるほか、リマーケティング施策を実行する際にも役立ちます。
このような機能を使って見込み客へ継続的なフォローを行うことで、自社への信頼を醸成します。見込み客からの信頼を得て、よりスムーズに受注や成約につなげることが最終的なゴールです。
見込み客のスコアリングをして営業へ連携する(リードクオリフィケーション)
リードナーチャリングによって見込み客の購買意欲を引き上げた後は、顧客になり得る見込み客のみを抽出し、その情報を営業部門へと引き継ぎます。この見込み客を絞り込む手法をリードクオリフィケーションと呼びます。
リードクオリフィケーションの代表的な機能がスコアリングです。スコアリングとは、見込み客の過去の行動や反応をもとに成約確度を数値化する方法です。
例えば、資料をダウンロードすれば5点、セミナーに参加すれば10点といったように点数を加算し、総合点の高さによって成約確度を判断します。見込み客の属性・行動データを一元管理できるMAツールを使うと、より効率的なスコアリングが可能です。
見込み客の情報を受け取った営業部門は、成約確度の高い見込み客のみにアプローチできるため、スムーズな顧客創出や営業活動におけるパフォーマンスの向上につながります。
顧客体験の質を最大化するにはCRMとMAの連携が必須
CRMツールとMAツールは、いずれかを単体で活用するよりも、両方を導入して機能を連携させるほうが効果を最大化でき、顧客体験を向上させられます。CRMツールとMAツールを連携させた方が良い理由は次の通りです。
部署間の連携強化により見込み客や営業機会の損失を防止できる
CRMツールとMAツールとを連携させることで、マーケティング部門と営業部門の分断を回避できます。
MAツールでは見込み客の情報を管理できますが、顧客情報の管理やファネルなどの機能がなく、営業部門にとって最適とはいえません。
CRMツールとMAツールを連携させれば、見込み客情報に加えて顧客情報も管理できるようになり、ファネル機能によって営業フローを可視化できます。これにより、顧客に対するコミュニケーションエラーを減らすことができ、最適なタイミングでアプローチできるようになります。
さらに、リードクオリフィケーションによって確度の高まった見込み客の情報を、部門を問わずに確認できる点もメリットです。マーケティング部門から営業部門への見込み客情報の引き継ぎから、見込み客へのアプローチまでをスムーズに行えるようになるため、営業機会の取りこぼしを防げます。
インバウンドの実現につながる
CRMツールとMAツールを連携し、適切に活用することは、「インバウンド」の思想に基づいたマーケティング・営業活動の実現にもつながります。
インバウンドの思想とは、価値あるコンテンツを継続的に提供し、見込み客から自社に対して興味を持っていただき、そこから良好な関係を構築し、最終的にはすべてのステークホルダーに利益がもたらされる状態を目指すものです。
当社HubSpotが創業当初からあらゆる企業で、あらゆる部門で取り入れるべきだと提唱している概念です。
リストに無作為に営業電話をかけるなど、アウトバウンドな手法が中心の活動では、そもそものニーズがない方に対しても強引に自社製品を売り込むケースが多く、アプローチした数に対しての成約率は低くなる傾向にあります。
営業活動としては非常に非効率なうえ、アプローチした先からは良くない印象を持たれる可能性が高く、売り手・買い手ともに疲弊しがちです。
CRM・MAツールを導入することで、見込み客の状況やニーズをある程度理解したうえでアプローチできるため、マーケティング・営業活動が効率化できるうえ、買い手側からは「自分がほしい情報をくれる」「ちょうど話を聞きたいと思ったタイミングで連絡がきた」と良い印象を持ってもらえる可能性が高くなります。
インバウンドについてより詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
CRMとMAを導入・連携するときに注意すること
CRMやMAは連携することで、マーケティングの効率や成果をさらに高められます。しかし、ただ導入すればよいというわけでもありません。いくつか注意すべき点が存在します。
以下は、CRMとMAを導入する際に、チェックしておきたいポイントです。
ツールの推奨環境 |
BtoB向け、あるいはBtoC向けか |
管理するデータの範囲 |
管理すべき顧客データやチャネルを明確にしておく |
ツールの相性 |
導入するCRMやMAは相互で連携できるか、相性はどうか |
搭載されている機能 |
データクレンジング機能の有無 |
導入に向けた環境作り |
従業員が導入したツールを使いこなすために、必要な研修やオペレーションを実施する |
CRM・MAとSFAの関係
CRMやMAと合わせて導入することでさらにマーケティングを効率よく進められるようになるのが、SFAです。SFAとは、営業支援システムのことです。
営業担当が直接顧客とやり取りする営業活動は、担当者以外のスタッフが進捗情報を把握していないケースがあります。進捗情報が共有されず、個人の管理のみに委ねていると、埋没して失注する案件が出てくるかもしれません。
また、管理ができていないと、その先を予想した案件創出活動が行えません。
こういった問題点を解決するのが、SFAです。SFAは、現在の見込み案件をはじめ、営業担当の対応履歴などを記録して共有できる機能を備えています。
営業部門のマネージャーを配置し、SFAを通じて進捗をチェック、適宜必要なサポートを考案することで営業活動をより有利に進められるようになるでしょう。
CRMとMAを適切に活用し、顧客とより良い関係構築を
今、ビジネスを取り巻く環境は大きな変動期を迎えています。商品が溢れコモディティ化が進む一方で、少子化により国内の購買力は低下傾向にあります。自社を選んでもらうことがさらに難しくなるなか、重要さが増しているのは、ビジネスの基本である「顧客理解」「長期的な関係構築」です。
CRMとMAは、まさしくその2点を効率的に推進することを目指すツールです。両ツールの機能の違いを理解し、どのように連携すれば自社や顧客にメリットがもたらされるのかを考えたうえで導入を検討しましょう。