2011年、Marc Andreessen氏はウォール・ストリート・ジャーナル私たちの世界はソフトウェアに飲み込まれつつあるというテーマの論文を寄稿し、議論を呼びました。

それから7年が経ち、同氏の主張は正しいことが証明されました。SaaS(Software as a Service)企業はその大きな影響力で世界経済を変革してきました。この流れはこれからも止まらないでしょう。

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この変化を支えたのはテクノロジーです。ソフトウェア開発はかつてないほど簡単かつ低コストになりました。また世界のインターネット人口は2018年の時点で40億人に達しており、SaaS企業の潜在顧客は膨大な数に上ります。

参入障壁の急速な低下と潜在顧客の広がりによって、ソフトウェアはハードウェアよりも魅力あるビジネスになりました。

現在のようなソフトウェア開発の高度化はテクノロジーの進歩によって成し遂げられました。そして現在のようなSaaS業界の隆盛を支えているのは、多くのSaaS企業が採用するサブスクリプションモデルです。SaaS企業の場合、自社製品をクラウドに格納し、クラウドから提供してそのサブスクリプション料金を請求するというビジネスモデルが一般的です。このモデルは収益性を確保するまでに時間がかかり、継続的に価値を提供しなければ顧客に契約を打ち切られるというリスクを伴います。

SaaSモデルは毎月のコストを抑えられるというメリットを顧客に提供できます。その一方で、SaaS企業が投資家に選ばれるためには安定して経常収益を生み出し、事業の健全性を容易に予測、把握できなければなりません。

企業が健全性を確保するために必要なのは成功を積み重ねることであり、継続した成功に必要なのは絶え間なく成長することです。そこで今回の記事では、SaaS企業におけるリードジェネレーション(見込み客の獲得)の取り組み強化に役立つ戦略をまとめて紹介します。自社の戦略をさらに飛躍させるヒントをお探しの方は、以下のアイデアを参考になさってください。

コンテンツマーケティング

世界中の企業がコンテンツマーケティングを活用してブランドを構築し、ウェブサイトに訪問者を呼び込み、リードを獲得しています。コンテンツマーケティングの主な利点は効果が複合的に拡大することです。賢明な投資と同じように、時間の経過と共に価値が増大するのです。

コンテンツの強みは、一度作成すればリードを継続的に獲得できることです。PPC(クリック課金型)広告など、コンテンツ以外のマーケティング手法でリードを獲得するためには、継続的な投資が必要です。つまり、コンテンツは企業が所有する資産だと考えられるのに対し、オンライン広告は賃借した資産だと考えられます。SaaS企業のマーケティング担当者はこの違いを十分に検討する必要があります。

コンテンツを活用してリードを獲得しているSaaS企業3社の事例を紹介します。

Dropbox

Dropboxの場合、ファイル共有/ストレージサービスという性質上、多様なタイプの潜在顧客が想定されます。このため、各タイプの顧客を惹きつけるターゲット別コンテンツとして、DropboxDropbox BusinessDropbox TechDropbox Developerという4種類のブログを公開しています。また、潜在顧客に専門知識を伝えるためのウェビナーも数多く開催しています。

デジタルデザインに関するDropboxブログ

Intercom

Intercomは、製品管理、デザイン、スタートアップ、マーケティングを軸とするコンテンツマーケティング戦略を展開しています。同社の顧客コミュニケーションプラットフォームが公開するInside Intercomブログポッドキャスト書籍はいずれも充実した内容で、ブランドの構築と有望なリードの獲得に貢献しています。プラットフォーム自体の知名度も急速に向上しています。

営業、マーケティング、顧客コンバージョンに関するInside Intercomブログ

Moz

ソート リーダーシップ コンテンツが高く評価されているのが、SEOソフトウェア企業Mozです。同社は、毎日更新のブログ記事信頼性の高いガイド、毎週更新のWhiteboard Friday動画を公開し、リード獲得につなげています。

SEO戦略に関するMozブログ

もちろんコンテンツの質は戦略において非常に重要ですが、その配信方法をおろそかにしてはいけません。コンテンツの届け方がいいかげんでは内容にいくら労力をかけても意味がありません。コンテンツ配信の重要性についてさらに詳しく知りたい方は、配信に時間を費やすことの重要性​​について、HubSpotのマーケティング担当バイスプレジデント、Kieran Flanaganが執筆したブログ記事(英語)をご覧ください。

製品トライアル

製品トライアルは、ここ最近のSaaS業界で有力なリードジェネレーションの手法として重視されつつあります。製品の「試運転」ほど効果的なものはありません。まだ自社ウェブサイトで対応していない場合はぜひトライアルの提供を検討してください。

トライアルのリード獲得効果が特に高いのが、テクノロジーに詳しいオーディエンスをターゲットにする場合です。このようなオーディエンスは、営業担当者とやり取りするよりも製品を直接使ってみるほうが話が早いと考えています。基本的にセルフサービスなので、マーケティング投資を最小限に抑えつつ継続的にリードを獲得できる点も製品トライアルの利点です。

ただし、注意点もいくつかあります。トライアルを利用してもらう上で重要なのは、製品に対するポジティブなイメージを与えることです。このため、製品の複雑さやリード単位の想定収益に応じて、ある程度の導入支援やサポートを提供することを検討してください。具体的には、1対1での電話、集団でのウェビナー、自動送信Eメール、またはこれらの組み合わせが有効でしょう。

トライアルの良いところは、それを利用すること自体がかなり確度の高い購入意思と判断できる点です。プロスペクトはわざわざ時間をかけて製品を理解しようとしているのです。HubSpotの実績でも、試用版を実行しているリードがそのまま購入へと至る確率は高く、これらのリードを「プロダクト クオリファイド リード(PQL)」と呼んで非常に注意深く追跡しています。

製品トライアルを提供する目的はプロスペクトに面倒を感じさせずに価値を伝えることがですが、そのために労力とコストをかけすぎてもよくありません。大切なのは両者の最適なバランスを見極めることです。そのためには試行錯誤が求められますが、最適な妥協点を見つける努力を惜しまなければ、製品トライアルは非常に有望なリード供給源になるでしょう。

検索エンジン最適化(SEO)

Google、Bing、Yandex、Baiduなどの検索エンジンに対するコンテンツの検索性を高めるSEOは、コンテンツマーケティングと切り離すことができない取り組みです。SEOは、相互に補完する2種類のカテゴリー(オンページSEOとオフページSEO)に分けて考える必要があります。

オンページSEO

オンページSEOのメリットは、コンテンツ作成者がSEOの要素を完全に制御できることです。もちろん、訪問者が閲覧、リンク、シェアしたいと思うような質の高い内容は重要ですが、オンページSEOではコンテンツの中身とは別にキーワード戦略、内部リンク、タイトルや説明文の使い方、ページの読み込み時間、UIなどについて考慮します。具体的なウェブサイトの最適化方法については、以下記事ご覧ください。

オンページSEO対策の基礎知識: ウェブサイトをキーワードで最適化するうえで重要なこととは?

オフページSEO

オフページSEOとはリンクの獲得のみを指すというのは、よくある誤解です。リンクは重要ですが、さらに重要なのはそれらのリンクの質です。オーソリティーが高く信頼されているサイトから良質なリンクを獲得しているほうが、単にリンク数が多いことよりも常に重視されます。またソーシャルメディアも重要です。影響力のあるソーシャルアカウントによるシェアやリンクは、質の高さを示す重要な指標です。

リンクやシェアを獲得するための最も簡単で確実な方法は、適切な配信戦略を作成することです。詳しくは、HubSpotの顧客獲得担当ディレクターMatthew BarbyがSearchLeedsで行った講演「There's more to life than "great content"(「優れたコンテンツ」以上に重要なこと)」をご確認ください。

紹介マーケティング

紹介や推薦によって獲得したリードの成果が非常に高いことは、数多くの調査によって証明されています。紹介によって獲得したリードは通常、低コストかつ比較的短期間で成約に至ります。ただし現状では、営業チームとマーケティングチームとの間で紹介に対する認識にずれがあります。営業担当者の56%が紹介を非常に重要と考えているのに対し、紹介プログラムを実施している企業はわずか3分の1です。

また、企業が紹介者にインセンティブを支給するべきかどうかについてはさまざまな議論が交わされています。インセンティブなしでは多数の紹介を得ることができないという見方もあれば、過度なインセンティブを与えると紹介の価値や質が低下するという意見もあります。インセンティブについては、自社のSaaSビジネスに適した方法を試して最適化することをお勧めします。

ただ、この最適化よりも行うべき最も重要な取り組みは、紹介プログラムを立ち上げることです。紹介プログラムを最初から最後まで実施できるソフトウェアもありますが、最低でも自社ウェブサイトに紹介用のランディングページを作成することをお勧めします。

質の高い紹介を得るためには、顧客の役職、業界、企業の規模など、有望な紹介の条件を定義することが必要です。それに加えて、インセンティブの有無、実施方法、獲得条件を明確にしておきます。

さらに、営業、カスタマーサクセス、サポートの各チームが簡単に紹介を依頼できるようにする必要もあります。これについては、マーケティングチームがテンプレートの下書きを作成しておくことが有効です。ここで特に重要なのは、営業担当者がスムーズに依頼できるようにして、営業担当者による積極的な依頼を促すことです。

Google AdWords

インバウンドマーケティングを展開することでAdWordsの費用を大幅に削減できますが、依然として毎日数百万人が検索エンジンの広告をクリックしています。つまり潜在的なリードを少しでも多く獲得するには、引き続きPPCへの投資は有効です。特にGoogleの検索結果に表示される広告の数が増えている点は見逃せません。

PPCの人気が今なお続いている理由はいくつかあります。ひとつは、ターゲットを絞ってウェブサイトにトラフィックを呼び込めること。もうひとつは、非常に拡張性が高いこと、つまりビジネスのニーズに応じていつでも費用を増減できることです。また、コストと結果の両面について予測可能性が高い点はCFOやマーケティング予算管理の担当者にとって魅力的でしょう。

まずは一連のテストを実行して、最も高いROIを生み出す施策を検証することをお勧めします。業界によって競合度は大きく異なりますが、PPCへの投資をいとわなければ非常に多くのトラフィックとリードを獲得できるという事実に変わりはありません。

HubSpotユーザーは、HubSpotが提供している広告効果測定ツールを使用してインバウンドおよび有料キャンペーンをソフトウェアから直接実行できます。

共同マーケティング

多くのSaaS企業は、相互補完的な製品を提供している企業や、業界での立ち位置やアプローチが似ている企業と協力して、共同マーケティングキャンペーンを実施しています。

共同マーケティングに関する厳密なルールはありませんが、通常はeBookなどのコンテンツの作成、ウェビナーの開催、調査結果の公開などを参加企業で協力して行います。これらによって獲得したリードは共有し、発生したコストも分担します。

共同マーケティングのメリットは、参加企業を支持するユーザーを相互に利用し合う形で新しいオーディエンスにリーチし、開拓できる点です。参加企業のチームの足並みがそろっていれば、共同マーケティングは大きな効果を上げることができます。そのためには、取り組みをスタートする前に目標や成果に対するチーム間の共通認識と合意を形成しておくことが大切です。

共同マーケティングに有名企業を巻き込むことができれば、より魅力的なコンテンツを作成し、より多くのリード獲得につなげられるでしょう。効果的に実施された共同マーケティングでは、リードの獲得、ブランドのリーチ拡大、ソートリーダーシップのアピールといった成果を高い費用対効果で達成できます。HubSpotもさまざまな企業との共同マーケティングキャンペーンを頻繁に展開しています。以下に示すLinkedInとの共同キャンペーンもその一つです。

HubSpotとLinkedInによるソーシャルメディアと営業に関する共同マーケティングオファー

リターゲティング

eBookのダウンロード数、オンライン購入の数、無料試用版への登録数など、重視するコンバージョン指標は企業ごとに異なります。共通しているのは、ウェブサイト訪問者の大半が決して思惑どおりには動いてくれないという事実です。リターゲティング(「リマーケティング」とも言います)を使えば、ウェブサイトを離脱したユーザーに再び働きかけ、コンバージョン率を大幅に向上できます。

リターゲティングでは、ウェブサイトの訪問者を追跡し、その訪問者が訪問した別のサイト上にオンライン広告を表示します。このように、それまでの行動を踏まえたオファーを提示して訪問者を呼び戻すリターゲティング手法は、多くのeコマースサイトで採用されています。あるウェブサイトでジーンズを見た後に、いつも利用しているウェブサイトやソーシャルメディア上に同じジーンズの広告が表示された経験はありませんか? 割引価格が提示されていることも多いでしょう。これがまさにリターゲティングです。

苦労して獲得したウェブサイト訪問者を顧客に変えるリターゲティングは、業界を問わず推奨されます。業界を問わず「必須」と言ってもいいかもしれません。また、現在ほとんどのリターゲティングソフトウェアでは、ウェブサイトの訪問者以外もターゲットに設定できます。たとえば、Eメール開封やウェビナー参加などのイベントに基づいてキャンペーンを開始できるツールがあります。ツールによっては、自社ウェブサイトを訪問したことがないユーザーでさえ共通の特性に基づいてターゲットに設定できます。

ブランドに対する信頼感、信用、親近感を築くきっかけをウェブサイト以外にも配置できるリターゲティングは、マーケティング担当者の心強い味方です。なお、HubSpotユーザーはMarketing HubでAdRoll連携を通してリターゲティングを活用できます。

いかがでしたでしょうか。今回の記事では、ソフトウェア企業の成長を後押しする実証済みのSaaSマーケティング戦略を紹介しました。もちろん、自社にとって最も効果が高い戦略を見極めるには、テスト、分析、最適化を行う必要がありますが、皆さまのご参考になれば幸いです。

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元記事発行日: 2020年4月23日、最終更新日: 2020年4月23日