SaaS企業のマーケティング戦略|企業事例をもとに代表的な手法を解説

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水落 絵理香(みずおち えりか)
水落 絵理香(みずおち えりか)

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SaaS型ビジネスにおけるマーケティングを展開するうえで、売り切り型のビジネスとどのような差があるのか、疑問に感じている方は多いでしょう。

SaaS企業のマーケティング戦略|企業事例をもとに代表的な手法を解説

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マーケティング戦略を構築する流れはほぼ同じですが、SaaS型ビジネスのマーケティングには、売り切り型のビジネスにはない独自の考え方や戦略があります。その点を理解すれば、マーケティング精度の向上や、よりスムーズな戦略構築につながります。結果、SaaSで重要な顧客との継続的な関係性が構築できるでしょう

本記事では、SaaS企業のマーケティング戦略の立て方や代表的な手法をご紹介します。

SaaSに関する基礎知識を理解したい方は、まずこちらの記事をご覧ください。

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    SaaS企業のマーケティング戦略の立て方

    SaaS企業のマーケティング戦略の立て方

    まずは、SaaS企業のマーケティング戦略の立て方を、次の手順に沿って解説します。

    1. 明確なターゲットを設定する
    2. サービスを通じて提供する価値を設定する
    3. 製品ライフサイクルごとのアプローチをする

     

    1. 明確なターゲットを設定する

    SaaS企業に限らず、マーケティング戦略を考える際は、明確なターゲット設定が必要です。マーケティングで対象とする消費者や企業があいまいなままでは、戦略の軸がずれたりメッセージがぶれたりして、契約に至る可能性が低くなるからです。

    ターゲットを絞り込む際はペルソナを活用すると良いでしょう。

    ペルソナとは、年齢や性別、職業などの属性を細かく設定した人物像です。さらに行動傾向や趣味・嗜好などの情報も加えることで、より詳細な人物像が完成します。

    頭のなかだけでペルソナをイメージするのは難しいため、実際の顧客をよく知る営業やカスタマーサポートの担当者に意見を求めるほか、アンケートやインタビューを活用するのが効果的です。

    ペルソナを設定する方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。

     

    2. サービスを通じて提供する価値を設定する

    次に、SaaSサービスを通じて顧客に提供できる価値を設定しましょう。顧客に対する価値が明確になるほど、相手の心に響くメッセージを考案できます。適切なタイミングで魅力的なメッセージを提示できれば、自社サービスを選んでもらえる可能性が高まります。

    顧客の考えは、顧客が最もよく知っているものです。そのため、顧客に対して営業担当者が直接ヒアリングするほか、アンケートやインタビューを通じて顧客の声を収集する方法が有効です。収集した意見やフィードバックをもとに、他社と差異化を図れるポイントを見つけましょう。
     

    3. 製品ライフサイクルごとにアプローチする

    最後に、製品ライフサイクルの各フェーズに合わせたアプローチ方法を考えます。

    製品ライフサイクルとは、製品がリリースしてから終了に至るまでの流れを図式化したものです。製品ライフサイクルは次の4つの時期に分かれ、それぞれ適切なマーケティング手法が異なります。

    1. 導入期:製品がリリースしたばかりの時期
    2. 成長期:製品の売上が上昇し始める時期
    3. 成熟期:製品の売上が安定し市場がピークに達する時期
    4. 衰退期:製品に対する需要が減って販売終了に向かう時期

    例えば、ほとんどの人に製品が認知されていない導入期では、認知度の向上あるいはブランディングの優先度が高くなります。順調に売上が伸びて成長期に差しかかると、需要を十分に吸収できるよう、タッチポイントを広げて製品を多数の見込み客へと届ける必要があるでしょう。

    製品ライフサイクルにおける自社SaaSサービスの位置付けを確認し、各フェーズに合わせたアプローチを行うことが大切です。
     

    SaaS企業の代表的なマーケティング手法

    SaaS企業の代表的なマーケティング手法

    では、SaaSサービスを展開する企業では、どのようなマーケティング手法を活用できるのでしょうか。ここでは、具体的なマーケティング手法をご紹介します。
     

    オウンドメディア

    オウンドメディアとは、企業自ら情報を発信するためのWeb媒体です。自社情報を掲載するホームページとは異なり、企業ブログやコラムといった情報提供に主眼を置いたWebサイトを指します。

    オウンドメディアは、見込み客の購買意欲を少しずつ醸成しながらスムーズな成約へとつなげられます

    一例として、給与計算ソフトのSaaSサービスを提供している企業なら、サービスの特徴や機能を積極的にアピールし、すぐに購買行動へと結び付けたいところです。しかし、サービスの存在を知らない潜在顧客がすぐに購入してくれるわけではなく、そもそも自社の課題を把握していない可能性も考えられます。

    そこで、給与計算の基礎知識や会計のコツなどの情報を発信し、幅広い潜在顧客のアクセスを獲得します。さらにオウンドメディアを回遊してもらい、さまざまな情報が目に触れるうちに潜在顧客の課題が明らかになった結果、はじめてサービスに対する興味が芽生えます

    このようなプロセスをうまく活用しているのが、グループウェアや業務改善サービスを提供するサイボウズです。サイボウズは、「サイボウズ式」というオウンドメディアを運営しています。

    サイボウズ式

    サイボウズ式 | 新しい価値を生み出すチームのメディア

    サイボウズ式の各コラムには、同社のサービスが積極的に紹介されているわけではありません。しかし、コラムを読むうちに「自社にもこのような課題がある」といった共感と、「サイボウズという企業はどのようなサービスを提供しているのか」という興味が芽生えます

    オウンドメディアの利点を活かした好事例だといえるでしょう。

     

    Web広告

    Web広告は、インターネット上に広告を出稿して集客や認知拡大をはかる手法です。

    Web広告は、性別や地域、趣味・嗜好などにもとづいて細かいターゲティングができます。また、オウンドメディア運用よりも短期間で効果を得られるのがメリットです。

    Web広告には、出稿先によって次のような種類があります。

    • 検索連動型広告:Google やYahoo!などの検索結果に広告を表示
    • ディスプレイ広告:Webサイトやアプリの広告枠に掲載
    • SNS広告:TwitterやInstagramなどのSNS上に広告を表示
    • 動画広告:YouTubeやTikTokなどのコンテンツ動画内で広告を配信
    • メール広告:メールマガジンの一部に広告を掲載

    広告を配信するプラットフォームによってユーザーの属性が大きく異なります。各プラットフォームの特徴や性質をよく理解したうえで、適切な環境を選択することが大切です。

    Web広告の具体的な活用方法を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

     

    SNS

    SaaS企業のマーケティングにおいてはSNSも重要な役割を果たします。

    SNSはユーザーと直接的なコミュニケーションができるため、信頼関係を築き、ブランドロイヤリティの向上やエンゲージメントの強化が見込めます。さらにSNSの拡散力を駆使して認知度を高め、サービス購入までのスムーズな導線を設計できるのがメリットです。

    後払い決済サービスを提供するPaidy(ペイディ)は、Twitterを有効活用してZ世代のシェア獲得に成功しました。活用した手法は漫画です。漫画はストーリー性があり、内容を自分ごと化しやすいメリットがあります。また、若年層でも違和感なくコンテンツに触れられます。

    Paidyは、Twitter上で4コマ漫画と8ページ漫画を配信し、そのなかでサービスを活用するメリットや利用シーンを紹介しています。気軽に利用しやすいTwitterの性質をうまく活用した事例だといえるでしょう。

    参考:自分事化を促すTwitter広告3つの共感施策 ペイディに学ぶ|日経クロストレンド

     

    動画配信

    YouTubeやTikTokなどで動画を配信し、情報提供を行う手法です。企業による動画配信プラットフォームの活用方法は多様で、マニュアル動画やサービスの機能解説、プロモーション映像などの種類があります。

    動画コンテンツのメリットは、画像よりも詳細に、テキストよりも端的に情報を伝えられることです。また、ブランドイメージを視覚的に訴えかけられるため、ブランディングにも大きな効果を発揮します。

    動画コンテンツを有効活用しているのが、クラウド会計ソフトを提供するfreee(フリー)です。YouTubeアカウントには、人事労務の基礎知識や個人事業主向けといった複数のテーマがあり、会計業務に役立つ動画コンテンツが多数掲載されています。

    例えば、手続きが複雑な確定申告の手続きを、わかりやすいイラストとともにステップ別で解説しています。なかには10万回再生を超える動画もあり、YouTubeを最大限に活用した事例だといえるでしょう。

    参考:freee YouTube公式アカウント

    さらに多くの動画マーケティング事例を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

     

    リファラル・マーケティング

    リファラル・マーケティングとは、あるユーザーが別のユーザーに向けて商品やサービスを紹介する手法です。紹介されたユーザーが新たに商品やサービスを購入すると、紹介者に報酬が支払われます。

    企業は広告を出稿することなく集客が可能になり、紹介者には見返りがもらえるメリットが発生します。被紹介者にとっても信頼度の高い情報が得られるため、三方良しの関係を築けるのが特徴です。

    リファラル・マーケティングを実施する際は、ブランドやサービスに対して好印象を持つユーザーを徹底的に洗い出しましょう。ポジティブな感情を持つユーザーが紹介することで、自社サービスの魅力が第三者に伝わりやすくなります。
     

    メールマガジン

    メールマガジンは、企業側による積極的な情報発信を行うコミュニケーション手法のひとつです。マーケティングの目的によって、さまざまな用途に活用できます。

    例えば、送客目的のメールマガジンなら、新商品やコンテンツの更新情報を発信し、Webサイト・ECサイトへのアクセスを促せるでしょう。購買目的のメールマガジンであれば、セールやキャンペーン情報によって購入促進を行えます。

    メールマガジンのメリットは、あらかじめユーザーのセグメントを分けて、属性や行動履歴に添った配信ができることです。マーケティング戦略で設定したペルソナをもとにターゲットを絞り込むことで、ユーザーに対して効率的にアプローチできます。
     

    ホワイトペーパー

    ホワイトペーパーとは、Webサイトのコンテンツページやランディングページに、資料のダウンロードボタンを設置する施策です。ユーザーが資料をダウンロードする際に入力フォームを経由することが多く、見込み客となる属性データを収集する際に役立ちます

    ホワイトペーパーの施策を実行する際は、ユーザーにとって有益な情報をまとめた資料を用意することが大切です。ホワイトペーパーのクオリティがユーザーの期待を上回るものであれば、企業に対して良い印象を持ってもらえるでしょう。

    質の高いホワイトペーパーを作るためには、作成時のコツやポイントを押さえるのがポイントです。こちらの記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてください。

     

    テレビCM

    テレビCMは、幅広い顧客層の認知を拡大したい場合に効果を発揮します。特定のターゲットに向けてピンポイントにアプローチできるWeb広告に対して、テレビCMは幅広い層の消費者にサービスの魅力をアピールできるメリットがあります

    宿泊関連のマッチングサービスを提供するAirbnb(エアビーアンドビー)は、テレビCMの情報拡散力を有効活用しています。

    2017年には、幅広い人種が登場する映像をテレビで放映し、人種や宗教の多様性に対する寛容性を大々的にアピールしました。同時に、Instagramの公式アカウントで、テレビCMのメッセージに合わせた「#WeAccept」のハッシュタグを付け、多様性に関する写真を投稿しています。

    当時の米国では、厳しい移民政策を敷いていたトランプ大統領が政権を担っていたこともあり、Airbnbの表明は大きな話題を集めました。
     

    イベント・セミナー

    特定のユーザーに向けてイベントやセミナーを開催するのも方法のひとつです。

    想定顧客が抱える課題解決に役立つイベントやセミナーを開催すれば、確度の高い見込み客の創出につながります。また、オンラインセミナーなら、場所を問わないことで幅広いターゲットへのアプローチも可能です。

    営業DXサービスを展開するSansan(サンサン)は、「Sansan Evolution Week 2021 Spring」というイベントを開催しました。

    「経営戦略の中核であるDXを後押しできるような出会いを提供する」をテーマに、ビジネスに役立つ最先端のテクノロジーや画期的ソリューションなどを、LIVE配信で紹介しました。来訪ユーザーに加えて、スポンサーや登壇者ともオンライン上で名刺交換が可能で、ビジネスの可能性が広がります。

    参考:Sansan Evolution Week 2021 Spring|Sansan
     

    SaaS企業がマーケティングを行う際のポイント

    SaaS企業がマーケティングを行う際のポイント

    SaaS企業がマーケティングを行う際のポイントは次の通りです。

    • ユニットエコノミクスを重視する
    • データドリブンマーケティングを心がける
    • ツールを有効活用する

    それぞれのポイントを詳しく解説します。
     

    ユニットエコノミクスを重視する

    SaaS企業におけるマーケティングでは、ユニットエコノミクスと呼ばれるKPIが重要な役割を担います。

    ユニットエコノミクスとは、1顧客あたりの採算性を示す指標です。ユニットエコノミクスを算出する際は、次の計算式を用います。

    • ユニットエコノミクス = LTV(顧客生涯価値)÷ CAC(顧客獲得単価)

    サブスクリプションモデルを採用するSaaS型ビジネスでは、顧客の継続利用により、初期投入コストを回収しきった時点でようやく採算が取れます。ユニットエコノミクスを参考にすれば、さらにコストをかけて顧客数を増やすか、それともコストを抑えて収益力増強に注力すべきかが判断できます

    ユニットエコノミクスの考え方や改善方法を知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。

     

    データドリブンマーケティングを心がける

    徹底的なデータ活用にもとづいてマーケティングの意思決定を行うことを、データドリブンマーケティングといいます。マーケティング施策の策定や実施の際にデータを活用することで、属人的な意思決定を避けられます

    具体的には、次の手順に沿ってデータドリブンマーケティングを実施します。

    1. データ収集
    2. データの可視化(加工)
    3. データ分析
    4. アクションプランの策定
    5. 具体的な施策を実施
    6. 効果測定

    このように集計・整理されたデータは、運用中の効果検証にも役立ちます。あらかじめKPIを設定し、目標と実績の差を確認すれば、アクションプランのなかにある課題を特定できます。課題に対して適切な対策を考え、徐々に施策を改善することで、より精度の高いマーケティングを実施できるでしょう。
     

    ツールを有効活用する

    マーケティングに役立つツールを有効活用するのも効果的です。マーケティングツールには、業務効率化やパフォーマンス向上につながる幅広い種類が存在します。適切にツールを活用すれば、より効率的にマーケティングの成果を高められるでしょう。

    具体的な種類は次の通りです。

    • CRM(顧客管理システム)
    • MA(マーケティングオートメーション)
    • ABM(アカウント・ベースド・マーケティング)
    • アクセス解析ツール
    • 広告効果測定ツール

    CRMとMAに関しては、こちらの記事で詳しく解説しています。

     

    顧客と持続的な関係性を構築できるマーケティングを意識しよう

    購買後も良好な関係を構築することを前提にしたマーケティングは、SaaSに限らずすべてのビジネスで実施すべきものですが、特にSaaS型ビジネスでは、その重要性が高いといえます。サービスの継続率が高まればLTVの向上につながり、企業の持続的な成長に直結するためです。

    そのためには、マーケティング戦略を構築する段階で、適切なターゲットや提供可能な価値を明確にする必要があります。また、顧客ニーズを明らかにしたうえで、的確なマーケティング施策を考えましょう。

    HubSpotではこの他にもマーケティングやセールスに役立つ資料を無料で公開していますので、ぜひこちらからご覧ください。

     

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    トピック: SaaS

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