ロイヤルカスタマーとは、企業やブランドに愛着と信頼を持つ顧客のことです。容易に離反せず長期的に自社のサービスを利用してくれるため、結果的に売上の向上につながる存在です。ただし、顧客と関係性を築き、長期にわたり継続することは容易ではないでしょう。
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そこで、本記事では、ロイヤルカスタマーの定義や優良顧客との違い、重要性を解説します。ロイヤルカスタマーを創出する方法や活用できるツールもご紹介しますので、自社のビジネスにお役立てください。
ロイヤルカスタマーとは
ロイヤルカスタマーとは、単に自社の商品やサービスを購入・利用してくれるだけでなく、企業に対する愛着や信頼が高い顧客のことです。ここでは、ロイヤルカスタマーの定義と顧客ロイヤルティとの関係、優良顧客との違いについて解説します。
定義・意味
ロイヤルカスタマーの定義は企業によって異なりますが、一般的には特定の企業やブランドの商品・サービスに対して、信頼や愛着、すなわち忠誠心を持つ顧客を意味します。
ロイヤルカスタマーの主な特徴は次の通りです。
- 競合他社に乗り換えず、継続的に商品やサービスを購入・利用してくれている
- 他の人々に自社の商品・サービスを推薦したり、ポジティブな体験を共有したりしている
- 情報発信やフィードバックをしてくれる
ロイヤルカスタマーは売上に貢献してくれるだけではありません。企業やブランドそのもののファンであり、結果的に企業の成長や成功に重要な役割を果たす存在です。
顧客ロイヤルティとの関係
顧客ロイヤルティとは、顧客が企業やブランドに対して持つ愛着や信頼を意味します。
顧客ロイヤルティは、心理ロイヤルティと行動ロイヤルティから成り立っています。心理ロイヤルティとは、愛着や共感、信頼といった感情のことです。一方、行動ロイヤルティとは、商品・サービスの購入や高額商品の長期利用など具体的な行動を指します。
顧客ロイヤルティが高い状態とは、顧客が感情面で企業やサービスに高い愛着や信頼を感じており、なおかつ商品購入やサービスの利用といった行動が継続的にともなっている状態を意味します。
つまり、ロイヤルカスタマーとは、顧客ロイヤルティが高い状態の顧客のことです。
優良顧客との違い
優良顧客とは、商品やサービスの利用頻度が高かったり、多くの金額を使ったりする顧客です。
しかし、心理面では、「商品やサービスに対して不満を抱いているものの他に利用したいものがないから」「単に安いから」といった理由で利用している場合があります。
この場合、顧客ロイヤルティが高いわけではありません。ほかに不満を解消できたり、価格の安い商品やサービスがあったりすれば、容易に乗り換える可能性があるからです。
つまり、優良顧客は心理ロイヤルティが高いとは限らない点でロイヤルカスタマーと違います。
ロイヤルカスタマーの重要性
ロイヤルカスタマーは次の理由から企業にとって重要な意味を持ちます。
- 売上が安定する
- 情報発信をしてくれる
- フィードバックが得られる
詳しく解説します。
売上が安定する
ロイヤルカスタマーは、企業への愛着が高く、安易に離反せず競合他社へも乗り換えません。また、継続的に商品の購入やサービス利用をしてくれるため、結果として企業の売上が安定します。
ビジネスにおいて、パレートの法則では、「上位2割の顧客が売上全体の8割をもたらす」とされています。ロイヤルカスタマーは、一般的な顧客に比べて購入単価が高い傾向にあるので、上位2割の利用を占めるロイヤルカスタマーを創出できれば、売上の8割近くが保証されるといえるでしょう。
商品やサービスを宣伝してくれる
ロイヤルカスタマーは、商品やサービスに高い愛着を持つため、好意的な情報を積極的に発信する傾向があります。
例えば、SNSに投稿されるユーザーの口コミは、企業が自ら行う宣伝よりも信頼度が高く、説得力があります。友人や知人の口コミを参考に商品やサービスを選ぶ顧客も多いです。
このような発信は、広告宣伝費をかけずとも見込み客や新規顧客の創出につながるため、企業にとって重要なプロモーションの一つです。ロイヤルカスタマーは、販売促進の観点でも重要な顧客といえるでしょう。
フィードバックが得られる
ロイヤルカスタマーによる商品やサービスに対する建設的で率直なフィードバックは、商品やサービスの改善に役立ちます。
ロイヤルカスタマーは商品やサービスに愛着があるからこそ、より良い商品やサービスが提供できるように、企業に助言をしたいと考えています。そのため、企業からのアンケートやヒアリングに対して、あるいは問い合わせなどで積極的にフィードバックをしてくれることが多いのです。
ロイヤルカスタマーからのフィードバックは、商品やサービスをよく使っているからこそ生まれるもので、企業側では気がつきにくい意見や発想が含まれた貴重な情報です。
ロイヤルカスタマーを創出する方法
ロイヤルカスタマーの創出は戦略的に取り組む必要があります。具体的には、次のステップで進めると良いでしょう。
- 現状のロイヤルカスタマーを把握する
- 対象の条件を定める
- 顧客体験を設計する
1. 現状のロイヤルカスタマーを把握する
まずは現状のロイヤルカスタマーを把握し、自社へのロイヤルティが高い顧客の傾向を分析します。傾向分析により、ロイヤルカスタマーになる可能性が高い顧客を中心として、施策を実施するためです。
ロイヤルティを把握する方法には、次の2種類があります。
一つは、顧客満足度やNPS(Net Promoter Score)といった、顧客の心理ロイヤルティを反映する指標を継続して追う方法です。
もう一つは、行動ロイヤルティを測定する方法です。リピート率を測定する方法や、購入頻度、購入金額、直近の購入日などの情報から優良顧客を把握するRFM分析を用いる方法があります。
- CS(顧客満足度):商品やサービスに対する満足度
- NPS(Net Promoter Score):顧客ロイヤルティ(企業への愛着や信頼)を定量化した指標
- RFM分析:最近の購入日・購入頻度・購入金額をもとに顧客を分析する手法
2. 対象の条件を定める
続いて、顧客ロイヤルティを高める対象を決めるための条件を定めます。条件の定め方は2種類です。一つは、満足度や購入頻度、購入金額を基準にしてロイヤルカスタマーとみなす条件を設定する方法です。
パレートの法則を参考に、上位2割の顧客の傾向を抽出するなど、どのような条件を満たしたらロイヤルカスタマーと呼べるのかを定めましょう。
二つめは、どのような属性の顧客にロイヤルカスタマーが多いかを分析する方法です。BtoBの商材であれば、ロイヤルカスタマーの業種、業態、従業員数を分析することで、属性を明らかにできます。
3. 顧客体験を設計する
対象となる顧客が定まったら、どのような段取りで顧客ロイヤルティを高めるかを設計します。商品やサービスを使う際にどのような体験をすると、顧客ロイヤルティが高まるのかを調べましょう。効果的な顧客接点やサポート、情報提供の手法を検討するのも大切です。
顧客視点に立ったうえで、商品やサービスの使用を開始してからロイヤルカスタマーになるまでのすべての体験を洗い出し、各所での顧客体験を最適化できるように設計するのがポイントです。
ロイヤルカスタマーを創出するためのポイント・注意点
ロイヤルカスタマーを創出するためのポイントは、次の3つです。
- 顧客との接点を増やす
- 顧客の期待を上回る
- 特別感を演出する
顧客との接点を増やす
自社の商品やサービスに愛着を持ってもらうには、顧客との接点を増やすのが効果的です。役立つ情報が定期的に提供されたり、利用している商品やサービスのアップデート情報を迅速に受け取れたりと、必要なサポートが最適なタイミングで提供されると、顧客にとって商品やサービスがより身近なものとなり愛着につながるからです。
具体的には、メールマガジンを定期的に送付して活用事例を共有する、公式LINEやチャットサポートなどを充実させて顧客が必要なときに連絡できる環境を整える、FAQページを公開して不明点を自分で調べられるようにする、などの方法があげられます。
顧客の期待を上回る
顧客満足度を高めるには、顧客の期待を上回る体験を提供することが重要です。なぜなら、顧客が期待した通りの商品やサービスでは、競合他社を上回る愛着を持たないからです。顧客のニーズを把握し、期待を上回る品質を提供することで顧客の満足度は向上します。
商品による差異化が難しければ、問い合わせに対するレスポンスを迅速に行う、丁寧でわかりやすい対応を行うといった、顧客サポートで期待を上回るのも有効です。
特別感を演出する
ロイヤルカスタマーを創出するには、特別なサービスを提供するなどの方法もあります。企業に大切にされていると感じると、顧客ロイヤルティは高まるからです。
例えば、一般顧客と明確に区別し、一定の条件を満たせば特別な価格での提供やサービスが受けられるなどのメリットを示す方法があります。商品やサービスを愛用し、今後も利用を継続しようと考えている顧客であれば、積極的にロイヤルカスタマーの条件をクリアしようとするでしょう。
ロイヤルカスタマー創出に役立つツール
ロイヤルカスタマーの創出には、顧客との関係性を継続的に高めることが重要です。ここでは、ロイヤルカスタマー創出に役立つツールとして、CRM、MA、SFAの3つをご紹介します。
CRM
CRM(Customer Experience Management)は、顧客との良好な関係を維持するために顧客属性や行動履歴データを一元管理するツールです。
顧客の会社名や業種、従業員数、キーマンなどの詳細な情報や、商談や契約内容、営業履歴などを管理します。CRMツールを使えば、顧客に関する情報を集約し、関係部門で共有できるため、顧客の状況に応じたアクションを効果的に行えるメリットがあります。
MA
MA(Marketing Automation)は、顧客とのコミュニケーションなどマーケティング関連の業務を自動化できるツールです。
顧客情報や行動データをツールに蓄積することで、顧客の状況に応じて個別に自動でメッセージを送って購買意欲を醸成したり、フォローアップを自動化したりして、顧客体験の向上に活用できます。
顧客一人ひとりの状況に最適な対応を実施し続けるのは多くの工数を必要としますが、MAを利用することで効率的に、かつ更に個別最適化されたマーケティング活動を実施できるのがメリットです。
SFA
SFA(Sales Force Automation)は、営業支援ツールのことであり、顧客情報管理のほか、商談や営業の行動の管理や、レポート・分析機能を搭載しています。営業活動を可視化・自動化することで情報共有を容易にし、顧客に対する組織的な対応を可能にします。
SFAには、顧客満足度やアンケートの収集が可能なツールもあります。顧客ロイヤルティを高めるための計画的なアクションを立案するのに有用です。
ロイヤルカスタマーを創出できるような、価値の高いビジネスを
ロイヤルカスタマーは、単に購入金額が高いだけでなく、企業や商品・サービスへの高い愛着や信頼を持つ顧客です。
ロイヤルカスタマーが増えると、結果的に企業の売り上げは安定します。また、商品やサービスに関する口コミの創出や改善のためのフィードバックが得られるため、企業にとって重要な存在です。
ロイヤルカスタマーを創出するには、本記事でご紹介した手順を参考にしてください。顧客との接点を増やして顧客の期待を上回る顧客体験を提供するのも有効です。
なお、CRMやMA、SFAといったツールの活用もおすすめです。顧客体験の向上にはHubSpotの「Service Hub」が役立ちますので、ぜひご利用ください。