営業活動効率を向上する手法として注目されているのが、「インサイドセールス」です。
しかし、効率化だけに着目すると、かつてのテレアポと変わらないコミュニケーションにつながります。また、インサイドセールスの導入では、営業担当者の役割が大きく変わるため、組織の文化自体を変革していくことも大切です。
今回は、インサイドセールスを成功させるための導入手順や組織体制について解説していきます。
インサイドセールスとは何か、役割やメリットなどの基本を知りたい場合には、以下の記事もお読みください。
インサイドセールスが向いているケース、向いていないケース
営業活動では、扱う商品やサービス、顧客の業界や商習慣などにより、顧客との適切なコミュニケーション方法や営業プロセスが異なります。
営業活動の一環であるインサイドセールスにも、向いているケースと向いていないケースがあり、単に導入するだけではメリットを享受することはできません。
まずは、どのような商材やサービスがインサイドセールスの導入に向いているのかを見ていきましょう。
インサイドセールスにも、役割などに応じてさまざまな導入方法があります。一般的にインサイドセールスに向くのは、案件単価が少額で商談期間が短く、説明が容易なサービスを扱っている場合です。オンラインや電話でのコミュニケーションには限界があり、複雑な商品やサービスの説明には向きません。
ターゲットとなる顧客が少ない場合には、効率性を追及するメリットは少ないでしょう。また、初期段階から一貫した営業担当者による対応が求められることが多く、フェイス・トゥー・フェイスの関係構築が重要になるため、最初からフィールドセールスが対応することが望ましいです。
自社のサービスやターゲット層がインサイドセールスに向いているかを把握した上で、導入を検討しましょう。
事例リンク:コロナ禍でも顧客数85%増 HubSpotのトップセールスが体現する顧客が求めるインサイドセールス
インサイドセールスの導入手順
インサイドセールスの導入を検討し始めても、何から着手すればよいのか迷う方も多いのではないでしょうか。これからご紹介する導入手順を参考に、導入への一歩を踏み出してみましょう。
目的の明確化
まずは、現状の営業組織の課題を洗い出し、インサイドセールス導入の目的を明確化します。
目的を明確化する過程では、効率化などの自社にとってのメリットだけでなく、インサイドセールスの本質である顧客の購買体験を向上させる視点も忘れないようにしましょう。
マーケティング・営業プロセスの見直し
インサイドセールスの役割を決めるために、マーケティングチームやフィールドセールスチームとの役割分担を明確にし、見込み客の獲得から商談の受注、カスタマーサクセスによるフォローまでの全体のプロセスの見直しを行います。
ここでも、どのようなタイミングでコミュニケーションを取れば、顧客の購買体験が向上するのかという視点を持ち、顧客にとっての最適なプロセスの構築を意識しましょう。
マーケティング・営業全体のプロセスを最適化し、営業組織全体の生産性と成果を向上させるための戦略的な取り組みの参考となる考え方に、セールスイネーブルメントがあります。組織全体の営業力を向上させるうえで、非常に参考となる考え方なので、あわせてチェックしておきましょう。
インサイドセールスチームの役割の決定
見直したマーケティング・営業プロセスをもとに、インサイドセールスがどのような役割を果たすべきなのか、どのプロセスを担当するのかを決定します。
大まかな役割としては「案件創出型」か「クロージング型」のどちらかです。
「案件創出型」の中でもナーチャリング中心、アポイントの獲得中心などによって役割が異なりますので、自社にとって必要なインサイドセールスの役割を定義します。
オペレーションを支えるツールの導入
インサイドセールスの活動を効率的に行い、他チームとの連携を維持するためにはITツールの活用が欠かせません。
インサイドセールスの活動を支える土台となるツールには、マーケティングオートメーションツール(MAツール)、CRMツール、SFAツールなどがあります。
MAツール
MAツールは、見込み客がWebサイト上でどのような行動をとったのかを把握してスコアリングを行い、見込み客の行動に応じたコミュニケーションを自動化できるツールです。
MAツールを活用することで、いまコミュニケーションを取るべき見込み客を特定し、インサイドセールスの活動の一部を自動化するのに役立ちます。
CRMツール
CRMツールは、顧客との関係維持や向上を目的としたツールです。顧客のさまざまな情報を一元管理できるので、MAツールで収集したデータやインサイドセールスの活動履歴などを蓄積し、フィールドセールスの担当者にも簡単に引き継ぐことができます。
SFAツール
SFAツールは、営業プロセスを可視化し、組織全体の営業活動のパフォーマンスを向上させるためのツールです。インサイドセールスから引き継いだ見込み客を、フィールドセールスが受け入れて商談がスタートするプロセス以降で利用されます。
MAツール・CRMツールと連携することで、どのようなルートで見込み客となった場合に商談化率や受注率が高いのかといった評価を行うこともできます。
KPIの設定
インサイドセールスチームが目標達成するためのKPI(重要評価指標)を設定します。
インサイドセールスで用いられるKPIとしては、「架電数・架電あたりの通話時間」「メール開封率・クリック率」「アポイント数・アポイント率」「商談化数・商談化率」「受注数・受注率」などが挙げられます。
インサイドセールスチームのマネジメントや他チームとのコミュニケーションは、ここで設定したKPIを中心に行います。
なお、KPIは全体の営業状況によっても変化することがあります。たとえば、フィールドセールスが忙しい時期には確度の高い商談を渡すことが求められますが、余裕のある時期には確度の高さよりも、商談数が求められます。
状況に応じたKPIや目標数値を活用して常に全体最適な活動を行えるようにしましょう。
組織体制の確立
設定したKPIを実現できる人材の再配置や、採用、教育、トークスクリプトなどのコンテンツの準備などを行い、組織体制を確立します。
人的リソースが足りない場合や、ノウハウが足りない場合などは、インサイドセールスのアウトソーシングを請け負っている企業やインサイドセールスの立ち上げ支援を行っている会社との契約も検討します。
効果的なインサイドセールスを行うためのポイント
効果的なインサイドセールスを行うための3つのポイントを解説します。
(1)常に顧客視点を意識する
インサイドセールスの導入では、自社にとっての業務効率化や売上の最大化に目が行きがちです。しかし、そのような成果は、顧客との関係性を築き、顧客の購買体験を向上させることができて、初めて手にいれることができます。
効率化ばかりに目を向けすぎると、インサイドセールスの導入といいながら、かつての無理なテレアポとあまり変わらないコミュニケーションに繋がりますので、注意しましょう。
(2)組織文化の変革
インサイドセールスの導入では、多くの場合、これまでと異なる分業体制をとるため、営業担当者の役割が大きく変わります。
実際に顧客とコミュニケーションを取るのは担当者です。担当者の意識が変わらないまま、プロセスやツールだけ整備しても、顧客の購買体験は向上せず、関係性も変わりません。
なぜ、いま組織を変える必要があるのか、自分がその役割を担う必要があるのかなどを時間をかけて担当者に説明し、組織の文化自体を変革していくことも意識しましょう。
(3)プロセス全体のPDCAサイクルを回す
一度、目標設定を行い、目標達成のためのKPIを決めて活動を開始すると、目標達成や数字を追いかけることだけにとらわれて、本来の目的を見失ってしまうことがあります。
インサイドセールスを導入すると、業務の効率化が進む一方で、担当業務の幅が狭まり視野が狭くなりやすいため、その傾向は強まります。
インサイドセールスが果たすべき役割は顧客の購買体験の向上です。これを忘れずに、関係するチーム間のコミュニケーションを行いながら、定期的な振り返りと計画の見直しを行いましょう。
インサイドセールスの成功事例
これまでご紹介した導入手順やポイントを押さえ、インサイドセールスの導入に成功した事例を2つ紹介します。
各事例の背景や成功要因を参考としてください。
事例記事紹介①:営業とマーケティングをつなぎ、MRRで5倍の成長を達成。部門横断でお客様に向き合う体制をいかに実現したのか~ピー・シー・エー株式会社~
事例記事紹介①:アナログ・デジタルのハイブリッドで顧客体験を向上させ「徹底的にお客様とつながる」営業DXの挑戦~パナソニック インダストリー株式会社~
顧客視点を意識したインサイドセールス導入を検討しよう
営業活動効率を向上する手法として注目されているのが、インサイドセールスです。しかし、効率化ばかりを求めると、その効果を最大限に享受できない結果につながります。
インサイドセールスの本質は、適切なコミュニケーションによる顧客の購買体験の向上です。今回ご紹介した導入手順や必要なツール、ポイントを押さえながら、インサイドセールスの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
インサイドセールスを前提とした営業フローや詳しい役割分担など、さらに詳しい情報については、無料ガイドをご覧ください。