マーケティングの行動心理学:人の行動を紐解く19の法則

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水落 絵理香(みずおち えりか)
水落 絵理香(みずおち えりか)

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圧倒的な成果を出せるマーケターは、人間の行動心理を良く理解しながら、マーケティング施策を実践しています。

マーケティングの行動心理学:人の行動を紐解く19の法則

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先天的にこの感覚が優れているマーケターもいれば、後天的に心理学などの理論を学び、実践を繰り返す事で、感覚を研ぎ澄ませるマーケターもいます。

今回は

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を作りたいと悩んでいるマーケティング担当者の方に向けて、必要最低限覚えておきたい19の行動心理学の法則を、実例を交えながらご紹介していきたいと思います。

マーケティングにおける心理学をさらに深く理解したいという方は、以下の無料ガイド「マーケティングに役立つ心理学入門」を参考にしてみてください。

マーケティングに役立つ心理学入門

行動心理学とは

行動心理学は、米国の心理学者「ジョン・ワトソン」が提唱した心理学です。

一般的な心理学とは異なり、ある行動や仕草には心理状態や感情が結びついていると捉え、この行動を取るならこういう感情を抱いているだろうと推し量ります。

行動心理学では人間の行動にルールがあるとしてさまざまなパターンを導き出しているため、日常的な会話はもちろん、カウンセリングやマーケティングなどに応用することが可能です。

本記事ではマーケティングにおける活用を解説していきますが、まずは行動心理学について理解を深めるために、一般的な例から見てみましょう。
 

腕組みをする

腕組みから真っ先に連想される心理は「考え事をしている」でしょう。仕事や勉強に集中しているときに、なんとなく腕組みをしていたという経験は誰にでもあるはずです。

また、腕組みには「心理的防衛」の意識が働いているともいわれています。自分を守りながら安心感を得たいという気持ちが、腕組みとして表れるのです。「電車内で寝ている人」や「順番待ちをしている人」などに見られます。
 

貧乏ゆすりをする

貧乏ゆすりは「欲求不満」や「苛立ち」を解消するための行為とされています。

「転位行動」とも呼ばれ、心の安定を保とうとしたり、無意識のうちに気持ちを相手に伝えようとしたりするときなどに見られます。
 

髪をよく触る

髪をよく触る行動は、以下のような心理の表れとされています。

  • 退屈に感じている
  • 自分をよく見せたい
  • 相手に好意を抱いている

ただし、これだけでは一貫性がないので、状況と合わせて判断することになるでしょう。
 

マーケティングに活用したい行動心理学の19の法則

行動心理学はマーケティングにも活用できます。

ここではマーケティングで活用できる19の法則をご紹介しますので、戦略の策定やデータの分析をするときなどにお役立てください。
 

1)プライミング

皆さんは、一人が何か単語を言って、もう一人がそれを聞いて最初に思い浮かんだ単語を返す「連想ゲーム」をしたことはありますか? 

プライミングとは、基本的にはこの連想ゲームと同じで、何らかの刺激を受けたことにより、後続の刺激に対する反応に影響が出ることを指しています。この最初に受ける刺激は「プライム」と呼ばれます。

プライミングについて、『Psychology Today』では次のような例を紹介しています。

ある実験で、参加者を2つのグループに分け、片方のグループには「yellow(黄色)」の後に「sky(空)」という単語を、もう片方のグループは「yellow(黄色)」の後に「banana(バナナ)」という単語を読んでもらいました。

その結果、「黄色-バナナ」グループが「バナナ」という単語を認識するのにかかった時間は、「黄色-空」グループが「空」という単語を認識するのにかかった時間よりも短いことが分かりました。これは、参加者の脳の中に、「バナナ」と「黄色」の意味的な関連性が存在しているためです。

このプライミングを意識的にマーケティング活動に取り入れることで、サイト訪問者にブランドの重要な情報を覚えてもらいやすくしたり、購買行動に働きかけたりすることができます。

実際に、Naomi Mandel氏とEric J. Johnson氏が行った調査では、ウェブサイトの背景を変えることで、消費者の商品選択に影響が出ることが分かっています。この調査では、参加者は1つのカテゴリから2つの商品のどちらかを選択するように指示されます(例えば、トヨタとレクサスのいずれかを選択)。

Psychology Todayによると、「背景が緑色(=米ドル紙幣の色)で1セント硬貨の絵が描かれたサイト、つまり「お金」というプライムを与えられた参加者は、「安全」というプライムを与えられた参加者に比べ、価格情報を見る時間が長いという結果になりました。

同様に、「心地良さ」というプライムを与えられた参加者は、「お金」というプライムを与えられた参加者に比べ、心地良さに関する情報を見る時間が長いという結果が出ています。プライムJournal of Consumer Research

このことから、細かいところに気を配り、プライミングをマーケティングに応用してみるとよいと言えます。

ちょっとした違いで、最高価格帯の商品を購入してもらえるか、サイトから直帰されてしまうかの明暗を分けることになるかもしれません。
 

2)返報性の原理

Robert Cialdini博士の著書『影響力の武器:なぜ、人は動かされるのか』で紹介されている法則に、「返報性の原理」と呼ばれるものがあります。

これは、人に何かしてもらったとき、自然とお返ししたい気持ちになる、という心理傾向を指したものです。

身近な例で考えてみましょう。思いがけずにご近所の方からお裾分けをいただいた時、どう感じるでしょうか。ありがたいという気持ちと同時に、なにかお返しをしようと考えるのではないでしょうか。これはまさに「返報性の原理」です。

マーケティングでも、返報性の原理を活用できる場面は数多くあります。ブランド名の入ったトレーナーや、限定eBook、無料のデスクトップ壁紙、特定の分野に関する専門知識など、お金をかけずに提供できるものはたくさんあります。

手書きのメモのようなちょっとしたものでも、相手から何らかのお返しを得ることができるのです。

ただし気を付けなければならないのは、何か見返りを要求する前に、自分から何かを差し出すようにすることです。
 

3)ソーシャルプルーフ

ソーシャルプルーフとは「人間は自分が好み信頼している集団の行動や信念を取り入れる傾向がある」という理論を指しています。非常に重要な法則なので、マーケターの皆さんの多くはすでにご存知かもしれません。

何かのサービスを検討する際、同じ業界で大手企業が導入しているなら安心だ、と追随するようなケースがあるのではないでしょうか。

この例から分かる通り、マーケティング活動においてソーシャルプルーフが功を奏するのが、ケーススタディ(導入事例)の有効活用です。業界内の大手企業や影響力のある新進気鋭の企業などが採用し満足しているという情報は、検討の前進に貢献してくれるでしょう。

その他、ソーシャルプルーフを活用したいのがブログです。まだ実践されていない方は、記事のシェア数やアカウントのフォロワー数が表示されるSNSボタンを是非設置してみてください。

こうしたボタンを目立つ位置に設置し、しかもすでに複数の人からシェアされていれば、たまたまその記事にたどりついた人がシェアしてくれる可能性は大きく高まります。
 

4)おとり効果

これは、よく価格提示の場面で活用されています。最も高価な選択肢を選んでもらうために、あえて「おとり」の役目を果たす価格を提示するというものです。 

Dan Airley氏はTED トーク「我々は本当に自分で決めているのか?」の中で、『エコノミスト誌』の定期購読広告について触れています。広告に記載されていた定期購読のオプションは以下のとおりでした。

  • オンライン版のみの購読:59ドル
  • 紙媒体のみの購読:125ドル
  • オンライン版&紙媒体の購読: 125ドル

紙媒体のみの購読と、オンライン版&紙媒体の購読が同じ値段に設定されています。なぜこのような料金設定にしているのでしょうか?

Airley氏はエコノミスト誌にコンタクトしてその理由を尋ねましたが、はっきりとした答えは得られませんでした。

そこで、マサチューセッツ工科大学の学生100名を対象に実験を行うことにしました。

まず上記の料金体系を提示し、自分だったらどれを購入するかを訊ねました。3つの選択肢がある状態では、ほとんどの学生がオンライン版&紙媒体の購読を選びました。それが一番お得に感じられるからです。

しかし、意味がないように思われる選択肢(紙媒体のみの購読 125ドル)を取り除くと、多くの学生がオンライン版のみの購読を選択したのです。

つまり、2番目の選択肢は意味がないわけではありませんでした。比較対象を与えることで、オンライン版&紙媒体の購読を魅力的に見せ、より高い購読オプションを選ばせる効果があったのです。

ですから、皆さんも、ランディングページで2つのコンバージョンオプションを提示している場合は、3つ目を加えることを考えてみると良いかもしれません。そうすることで、最終的にオーディエンスに選んでほしいオプションのコンバージョン率を上げられる可能性があります。
 

5)希少性

航空券を買おうとして、「この料金は残り3席!」といった表示を見たことはありませんか?これが「希少性」です(この概念もCialdini博士によるものです)。この心理的原則は、需要と供給というシンプルな公式に端を発しています。

つまり機会、コンテンツ、商品が希少であればあるほど、その価値は高まるという公式です。

1975年、Worchel氏、Lee氏、Adewole氏は、希少性が人々の認識にどう影響するかという実験を行いました。

実験では、参加者はチョコレートチップクッキーを採点するように言われます。

HubSpot(ハブスポット)ブログのLanya Olmsteadの記事にその結果が紹介されていますが、実験では片方の瓶にはクッキーが10枚、もう片方の瓶には同じクッキーが2枚用意されていました。
そして、どちらも全く同じクッキーであるにも関わらず、参加者は2枚しか入っていなかったほうのクッキーに、10枚入っていたクッキーの2倍もの点数を付けたのです。

ただ、この原則を使用する際は、言い回しに気を付ける必要があります。

もとはたくさんあったのだけれども、人気があるためにあと少ししか残ってない」というアプローチをとれば、効果が期待できます。一方で、「もともと数が少ないので今すぐ購入を」というアプローチでは、それほど効果は期待できません。
 

6)アンカリング

お気に入りのショップがセールをしているとその誘惑に勝つのは難しいですよね。その理由はなぜなのでしょう?

多くの場合、アンカリングに関係があります。人は最初に受け取った情報を基に意思決定を行います

例えば、お気に入りのショップでは、通常ジーンズは1万円程度で販売されているとしましょう。それが5,000円に値下げされていれば、「このジーンズ、すごいお買い得!」と大喜びし、購入するかもしれません。しかし一方で、普段ジーンズに3,000円程度しかかけない人にとっては、5,000円のジーンズは高額に感じられるでしょう。 

同じ値段でも、受け手の基になる情報によって受け止め方が大きく異なるのです。ですからマーケターにとって、このアンカリングを理解することは非常に重要です。

セールのときには、もともとの値段ははっきりと提示し(これが「アンカリング」です)、そのすぐ隣にセール価格を表示するようにしましょう。また何割引きなのかも表示するのも効果的です。アンカリングH&M | Online Fashion, Homeware & Kids Clothes | H&M US
 

7)バーダー・マインホフ現象

ある商品を初めて聞いた後、やたらとその商品を見かけることはありませんか? これが、バーダー・マインホフ現象です。始めて何かを知った後、日常生活のあらゆるところでそれに気付く現象のことです。

例えば、新しい商品を知った後、頻繁にその商品のテレビCMが目に入ったり、スーパーの陳列棚にその商品が並べてあるのに気づいたり、友人皆がその商品を持っていることに気づいたりします。これには理由があります。

『Pacific Standard』によると、この現象(「頻度錯誤」とも呼ばれています)は、2つのプロセスにより起こります。

まず、新しい言葉、モノ、概念などに出会うと、選択的注意が発動します。最初の出会いの後、無意識のうちにそれに対して目を光らせているので、驚くほど頻繁にそれに気付くようになります。

次に、確証バイアスにより、それを目にするたびに、『急にあらゆるところに存在するようになった』という思い込みが強化されるのです。

この現象こそ、マーケティングにおいてナーチャリングが重要な所以です。

オーディエンスがあなたのブランドに気づいたら(つまり、クリックでウェブサイトにたどり着いたら)、そのオーディエンスがありとあらゆるところで、あなたのブランドを目にするように接点を作ることが重要です。

購買意欲を醸成するようなEメールを送ったり、オーディエンスの行動に基づいてリターゲティング広告を打ったりして、コンバージョンの可能性を高めましょう。
 

8)要約効果

Poppenk氏、Joanisse氏、Danckert氏、Köhler氏の研究によると、人は話の詳細よりも要約された内容のほうが記憶に残りやすいそうです。

例えば、ブログ活用のセミナーに参加したとします。このとき、「自分の書いた記事を他の人に校正してもらうこと」という概要は記憶に残っても、どのような流れで校正してもらうのが良いかという詳細は忘れてしまう可能性が高いということです。

これを「要約効果」と言います。そして、これはマーケティングコンテンツの成果に大きく関連しています。

現在、人々がオンラインで実際に「読む」時間は減り続ける一方です。

Charbeatのデータによると、ウェブサイト訪問者のうち、半数以上がそのサイトに15秒未満しか滞在していません。そのため、しっかりコンテンツを読んでもらうためには完璧なヘッドライン(見出し)を作るのに注力することをおすすめします。

ヘッドラインは、検索しやすく、シェアしやすいだけでなく、記事の内容を正確に説明している必要があります。そうすれば、そのベッドラインは人々の記憶に残るので、同じトピックに関してより詳しい情報が欲しくなったときに、その記事のことを思い出し、Googleで検索してくれるはずです。

また、十分なSEO対策を行っていれば、記事は検索結果に表示されるでしょう。
 

9)クラスタリング

人間の短期記憶容量には限りがあります。実際、多くの人は、一度に7つの情報(状況によってプラスマイナス2つ)しか覚えられません。

そこで大部分の人は同じ情報をまとめる(クラスタリングする)ことで、日々のさまざまな場面に対処しています。

例えば、スーパーで買わなければならないもののリストがあるとしたら、多くの人は頭の中で同じカテゴリ(乳製品、穀類、肉類など)のアイテムをグループ化することで覚えやすくしています。

マーケティングでコンテンツを作る際も、記憶に残りやすくなり、後から思い出してもらえるよう、クラスタリングを意識してみてください。人々の記憶に残りやすいデザインやレイアウトを考えましょう。

  • 似たようなトピックをグループ化する・番号付きの箇条書き
  • ヘッダーのサイズを変える

など色々と考えられます。多くのコンテンツがある場合にはなおさら、読者が読みやすいよう工夫することが大切です。
 

10)損失回避

人は一度手にしたものは失いたくないものです。

Daniel Kahneman氏がこの概念について実験を行っています。実験では、参加者を3つのグループに分け、最初のグループにはマグを与え、次のグループにはチョコレートを与え、最後のグループには何も与えませんでした。

その後、参加者は2つのオプションのいずれかを選ぶように言われます。マグまたはチョコレートをもらった人は、それをそのまま保持するか、もう片方の品物と交換するか選びます。何ももらってない人は、マグかチョコレートのいずれか好きな方を選びます。

結果はどうだったでしょう? 始めに何ももらってない人たちが、マグとチョコレートを選んだ割合はほぼ半々でした。しかし、最初にマグをもらった人たちは、86%がそのままマグを保持したのです。

マーケティング活動において損失回避の法則が大きな影響力を発揮するのは、フリーミアムや無料試用からのアップグレードなどの場面でしょう。例えば、無料版のユーザーに対して一定期間だけ有料版の機能を解放し、該当期間終了後は、有料版にアップグレードしないと使えないとするような場面です。

一度その機能を手にしたユーザーは、使い続けたいと考える可能性が高いでしょう。この心理ゲームは慎重に行う必要があるものですが、マーケターとして損失回避の法則を理解しておくことは大切です。

マーケティングにおける心理学をさらに深く理解したいという方は、無料ガイド「マーケティングに役立つ心理学入門」を参考にしてみてください。
 

11)バンドワゴン効果

バンドワゴンとは「人気のある側」を意味する言葉です。行動心理学では、人気があるものに対して人の興味が向きやすいことをバンドワゴン効果と呼びます。

いわゆる「流行っているものや人気のものに消費者が集まる」という状態を指し、売上や利用者数、人気が増えれば増えるほど、さらに需要が増していきます。

分かりやすい例では、「全米が震撼した」「◯◯分の行列ができるお店」と聞くと自分も見に行きたい、食べてみたいという心理が働きます。また、SNSのフォロワー数が多いアカウントの発信が気になったり、いいねが多くついた商品やお店が気になったりすることもバンドワゴン効果だと言えます。

マーケティングとして活用する際は、みんなが買っている・利用していることを上手く宣伝するようにしましょう。一方で、広告に嘘を混ぜてしまわないように注意が必要です。
 

12)スノッブ効果

スノッブ効果とは、限定品や1点ものなど、簡単には手に入らないものを欲しがる心理を指します。

上記の「みんなが持っているものを欲しがる」バンドワゴン効果とは逆の心理を示す効果で、「他の人が持っていないものが欲しい」というものです。

スノッブ効果では、多くの人が持っているもの、どこでもいつでも手に入るものは希少価値がないため手を出したくないという心理が働き、限定と聞けば欲しくなります。

マーケティングに活用するには、自分だけが持っている・今しか手に入らないという限定感を演出するコピーを含めるようにしましょう。例えば、観光業において地域限定のお菓子を売り出したい場合、必ず限定であることを商品名や宣伝文句に含め、旅行客に「今ここでしか買えない」と思ってもらいます。
 

13)ウィンザー効果

ウィンザー効果とは、本人からの評価や意見よりも、第三者を介した評価や意見のほうが信頼性が高くなるという心理です。

身近な例で言うと、賛辞や労いの言葉は本人からかけてもらっても嬉しいですが、第三者から「こう言ってたよ」と伝えてもらうほうが嬉しくなることがあります。

マーケティングにおいては、自社商品やサービスを第三者に宣伝してもらうことがウィンザー効果として挙げられます。

人々は広告には一定の距離を取りますが、第三者が言った意見は信頼しやすく、購入や利用の決め手となります。マーケティングにおいてはSNSの活用が重要であり、第三者に自社商品やサービスについて発信してもらいやすい仕組みや仕掛け作りが重要です。
 

14)フット・イン・ザ・ドア

フット・イン・ザ・ドアとは、人は小さな要求を飲み込んだあとはさらに大きな要求も承諾しやすくなるという心理を利用したテクニックです。

営業において役に立つとされることが多く、本題とは関係ない、あるいはより小さい話から相手に「イエス」と返事させます。

例えば、ある実験では、2つのグループに離れたところへ苗木を植えて欲しいとお願いをしました。すぐにお願いをしたグループは半数以上が「ノー」と言いましたが、別のグループにはその前にアンケートに答えてもらったところ、8割以上が「イエス」と答えたといいます。先にアンケートに答えてもらったことが、承諾しやすい心理を作り出したといえます。

訪問営業の担当者がドアに足を挟み、「商品は買わなくていいから、まずは話だけでも聞いて欲しい」と簡単な要求から始めることから、フット・イン・ザ・ドアと呼ばれます。
 

15)ドア・イン・ザ・フェイス

上記のフット・イン・ザ・ドアと逆に心理を利用するのが、ドア・イン・ザ・フェイスのテクニックです。

ドア・イン・ザ・フェイスでは、最初に本来の要求よりも高いレベルの要求を出し、相手に断らせます。相手は一度断ると、断ったことを申し訳なく思う傾向があるため、このあとに本来の要求を伝えることで「イエス」と言ってもらえる可能性を上げるというものです。
 

16)松竹梅の法則

松竹梅の法則とは、異なる品質の3つの選択肢があったとき、人は真ん中のものを選ぶ傾向にあるという心理を指します。

人は極端なものを避ける傾向にあるため、極端に安いものは安物買いの銭失いにならないように避け、極端に高いものも特別な場合でなければ避けたがります。結果として、真ん中の品質のものが選ばれる可能性が高くなります。

マーケティングにおいては、本当に売りたいものを松竹梅の竹、つまり真ん中の価格帯で用意するという手法があります。こうすることで竹の商品が多く選ばれ、売上目標などを達成しやすくなります。
 

17)ザイオンス効果

ザイオンス効果は単純接触効果とも呼ばれ、接触回数を増やすことで好感度が上がるという心理を指します。

始めから好意的に思っている対象はもちろん、始めは興味がなかったものに対してもザイオンス効果は発揮されるといわれています。一方で、始めからネガティブな印象を持っている相手にはほとんど発揮されません。

ザイオンス効果は営業担当が活用することで知られており、何かに理由をつけて企業への訪問を繰り返すことで、顔を覚えてもらい、印象も良くなっていくと期待できます。

マーケティングにおいては、テレビCMやウェブ広告によって消費者との接触回数を増やすことが有効です。SNSの発信も効果的で、多すぎない範囲で発信を続けることで多くの消費者と接触回数を増やし、好感度を高めることができます。
 

18)ストループ効果

ストループ効果とは、異なる2つのタイプの刺激を与えられたとき、その2つに乖離があると認識するのに時間がかかるという心理を指します。

有名な例として、赤色の文字で「あか」と書いた紙と青色の文字で「あか」と書いた紙の2つを用意し、何色で書いてあるかを答えてもらう実験があります。この場合、青色の文字で「あか」と書いてある紙を「これは青色である」と答えるのにはタイムラグが生じます。

ストループ効果が発揮されると人は物事を認識するのが遅れるため、マーケティングにおいてはストループ効果を「起こさない」工夫が重要です。例えば、HubSpotが広告を出すとき、背景色を緑色にしてしまうとあまり認識されにくくなるでしょう。

また、広告コピーと画像を一致させることも重要です。極端な例ですが、「◯◯ベーカリー」の宣伝をしたいのにお米の画像を使うと、人々に伝わりにくくなります。
 

19)ハロー効果

ハロー効果とは、目立つ優れた特徴があると、その印象に引っ張られ、それ以外の部分についても優れていると判断してしまう認知バイアスの一種です。

例えば、高学歴の人をそれだけで「頭が良い人」と判断してしまう例が挙げられます。ハロー効果が発揮されてしまうと、企業の面接において他に欠点があっても、学歴で勝る人を採用してしまう可能性があります。

特に「最初の印象」がハロー効果により引っ張られる傾向にあるため、マーケティングにおいては、とにかく良い印象を前に押し出すことが重要です。

効果があると認められた成分が含まれていること、新機能であること、専門家が監修していること、ロングセラーであることなどが挙げられます。

また、CMキャラクターにイメージの良い有名人を起用することなどもハロー効果につながります。
 

行動心理学をより理解できる参考書籍

ここまでマーケティングに活用できる行動心理学について解説してきましたが、書籍を読むことでより深く理解し、さまざまなシーンでの活用につなげられるでしょう。

ここでは、おすすめの5冊をご紹介します。
 

行動分析学入門』杉山 尚子

心理学の大きな潮流の1つ、行動分析学を一般向けに解説した入門書です。

行動の原因はどこにあるのかを求めた行動分析学は心理療法にも活用されていて、本書はその面白さを分かりやすく解説しています。いわゆる行動心理学を深く理解するための一歩目としてもおすすめです。
 

影響力の武器:なぜ、人は動かされるのか』ロバート・B・チャルディーニ

人がどのような心理的な作用で行動を起こすのかについて、訪問販売や宗教の寄付などで苦い思いをしたという著者が解明を試みた書籍です。

こちらを取り込もうとする相手がどのようなずるい手を使ってくるのかについてをユーモアを交えながら解説しています。

転じて、相手をどのように説得するのかについても解説しています。
 

現代広告の心理技術101』ドルー・エリック・ホイットマン

現代の広告における集客の手法を、行動心理学などのエッセンスから詳しく解説している書籍です。

具体的なシーンを設定しながら広告におけるテクニックを解説しているので、すぐ実践できるものが見つかるかもしれません。
 

マンガでわかる! 心理学超入門』ゆうきゆう

とっつきにくさを感じる人にも分かりやすい、心理学の入門書です。平易な言葉で解説しているパートとマンガによるパートに分かれ、行動心理学を始めとした身近な心理学を解説しています。

解説した心理学をどのように活用するかについても書かれており、日常生活からマーケティングまで広く活用できます。
 

1分でスッキリ! 行動心理学 なぜ、あの人は予測を裏切るのか』匠 英一

行動心理学をテーマに、どうすればビジネス・コミュニケーションで上手くいくのかについて解説した書籍です。人間の行動や態度を心理的裏付けから解説し、他人の理解できない行動にはどんな意味があるのかを探り、よりよい人間関係を築くことを目指します。

2021年12月の発売であり、オンラインにおける仕事のヒントも書かれています。
 

行動心理学で人間関係を分析してマーケティング活用を

行動心理学を意識したマーケティングで、コンバージョン率を高めていきましょう。

行動パターンを分析してマーケティングに取り入れれば、自然流れで成約に結びつける戦略のヒントがきっと見つかります。

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